俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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 新章スタート。
 しかしながらまだ第七章の題名を決めていないので、後々追加させていただきます。
 タイトルの通り、第七章のメインは日向君とゆいにゃんです。


第7章 《守りたい人~The person who would like to protect~》
051 《I Love Yui》


 直井文人による天上学園の反乱は幕を閉じた。

 ――が、全てが元通りと言うわけにはいかなかった。

「……」

 静かな雰囲気が死んだ世界戦線の本拠地である校長室に流れる。

 直井が言ったこと、そして今回気づかされてしまったこと。

「永遠なんてあり得ない。停滞なんて存在しない」

 俺がそう呟くと、ピクリと反応してゆりっぺちゃんが俺の方を向いてくる。

「その通りね。あたし達は逃げていた」

「でもゆりっぺ、それは仕方ないことだぜ? 俺達には目標があって、その為に行動してたんだからよ」

「それでもよ。今回のことであたし達は学ばなければならないの。この世界で神を倒すということを目的に戦っていたとしても、停滞や永遠なんて存在しないのよ……」

 神を倒すという思いを忘れたわけではない。

 ただ理解してしまったのは、今までのオペレーションが楽しかったという事実のみ。

 楽しかったと認めてしまえば、現在の戦線の状況がただこのメンバーでもっと遊びたいという停滞にしか思えないだろう。

「いつか停滞も永遠も終わってしまう。その時あたし達は何をすべきなのか、学ばなければならないわ。直井君が反乱を起こしたように」

 直井は夕緒という人物との日常を楽しみ、停滞を求めていた。

 永遠を求めていたんだ。

 だけれどもそれは、夕緒の消失という突然の出来事によって崩れ去る。

 崩れ去った停滞に納得が出来なかった直井は神になり世界を救うという言葉と共に、反乱を引き起こした。

 これは未来の戦線でもありえる状況だ。

 それこそNPCを殺してでもそれを成し遂げようとするだろう。

「まぁ深く考えてもしょうがないでしょ。俺達がすべき事は他にもあるでしょ?」

 俺の言葉にそれもそうねと答えたゆりちゃんはゆっくりと息を吐くと、ベレー帽を被り直した。

「――オペレーションは一時中断。休暇にするわ」

『は?』

 そう答えてしまったものの、確かに俺達に今必要なのは休暇かもしれない。

 それぞれ思うところがあって、きっとそれを考える時間が必要だと考えたんだと思う。

「考えることは自分で考えなさい。そして――各々で行動をしなさい」

 ゆりっぺちゃんが去ってしまった校長室で、気怠そうに天井を眺めていた藤巻君は決心したかの様に立ち上がった。

「俺は部屋に戻らせてもらうぜ。なんつーか、今はここに居たいって気分じゃねぇ」

 誰も止めはしない。止める権利なんて無いし、止めることが出来るはずがない。

 元々不干渉を貫いてきていた死んだ世界戦線に、干渉するなんてことが出来るわけがないのだから。

 いつの間にか椎名ちゃんも居なくなってるなと思いながら、俺はゆっくり腰につけている二本の刀を撫でると部屋から出ていくことにした。

「じゃあ俺はしおり達のところに行ってくるね」

「待ってくれ多々」

 日向君が唐突に声をかけてきたことに驚いて振り返ると、何だか気まずそうに俺の方を見てから床へと顔を逸らした。

 何か聞きたいことがあるのかと思ったけれど、どうもその類いの話じゃなさそうだ。

「……日向君、ちょっと自動販売機までコーヒーを買いに行こうか」

 真面目な話をここで話させるのは酷だと思い、俺は日向君にそう告げると二人で自動販売機まで歩き出した。

「聞いてこないんだな」

「俺は日向君を弄るのは好きだけど、虐めるのは好きじゃないんだよね」

 元々虐める側じゃなくて、虐められる側だったし。

「まぁ日向君が虐められたいって言うなら虐めて上げるけどね」

「俺はドMじゃねぇよ!」

 いつも通りのツッコミに戻ったことを確認してから、俺は大きく息を吐いた。

「ゆいにゃんかな?」

 一瞬息が詰まったような顔をした日向君だったけれど、苦笑する。

「やっぱりわかっちまうか?」

「あぁやっぱりゆいにゃんのことだったんだ」

「カマかけただけかよ!」

 だって実際日向君が関わっていて俺に聞いてくる様な人ってゆいにゃんしかいないし。

「あぁそうだよ。ゆいのことが好きなんだよ」

「えっ……」

 それは気がつかんかった。

 え、これ俺どうすればいいの?

「まさか本当に気が付いてなかったのか?」

「勿論」

 うがぁと叫びながら倒れ込んでしまった日向君に流石に悪いことした気分になったけれど、別に日向君だからいいやとしれっと諦めた。

「取り敢えず、現状日向君がゆいにゃんのことが大好きだってことはわかったけれど、それで俺にどうしろって言うのさ」

 大好きじゃねぇよと呟きながらも、日向君は辛気臭そうに顔を逸らした。

「その……さ。今回のことでわかったんだ。永遠の停滞なんてありえねぇって」

 それはある意味で、日向君以外の全員にも言えることだった。

 永遠の刹那を求めた皆だけれど、その存在の矛盾に気がついてしまった。

 気が付いていないからこそ成り立っていたものが、気がついたことにより炙り出されてしまった。

「だからちょっと前に進んでみることにしたんだ。だけど俺達がその一歩を踏み出せると思うか?」

 事実高松君は遊佐ちゃんに対して一歩踏み出したけれど、全員が全員高松君と言うわけじゃない。

 むしろ高松君は例外的な側面が強いし、その一歩が踏み出せないからこそ死んだ世界戦線は続いてきた。

「出せねぇんだよ。出したいとか、出さないとかそういう問題じゃねぇんだ。特に俺やゆりっぺは最古参のメンバーだからな。絶対に足を出せない様な奴らだ」

 最古参のメンバーと言うことはそれだけ長いこと一歩踏み出さず、そして踏み出すことを拒み続けてきた。

 そんな日向君達が考えが変わったからと言う程度の問題で、足を踏み出せるはずがない。

「それで、俺に頼んだんだ」

「あぁ。一歩踏み出す勇気が欲しい」

 いつもなら茶化してしまうその言葉だけれど、今の俺にはそれを茶化すことができなかった。

 真摯な瞳だ。

 同時に俺が一番驚いたことでもある。

「正直、驚いたよ。俺は一歩踏み出そうとしている人が出てくるとは思ったけれど、それが日向君なんて夢にも思わなかった。だって日向君だよ?」

 日向君が一番、他人と関わることを拒み続けてきたと言うのに。

 確かに音無君や俺とすぐに仲良くなったから他人と関わることを拒んでいないと思うかもしれないけれど、日向君は実のところ他人の過去に一切触れようとしない。

 聞いたりすることはあっても、それに関わる話題を殆ど出してこない。

 むしろ俺に関わってきたことによって関わらされてきたと言えるかもしれない。

 そんな日向君がいの一番に、踏み出そうとしたのだから。

「そうかもな。お前には気づかれちまってるよな」

「そりゃ勿論。だけど日向君、厳しい様だけど一つ言うことがあるよ」

 真っ直ぐに日向君を見ると、俺は口を開いた。

「俺に頼む時間があるなら、自分でゆいにゃんのところに行きな」

「……まぁ、言われると思ったぜ」

 むしろ日向君が一番言われたかったであろうそのセリフを告げると、日向君は頭を掻きながら笑った。

 もう日向君はドMなんだから。

「じゃあ行ってくるわ」

 日向君はそう言うとコーヒーを買って俺に投げてきた。

 サンキューなと言う言葉を残しながら去っていく日向君を眺めながら、俺はコーヒーを開けて啜る。

 久しぶりにコーヒーを飲んだなと思いつつも、ふと思考をズラす。

 あの時見た姿。

「まぁ、居るとはわかっていたけどさぁ……」

 雨野(はるか)

 俺の実の姉であり、前回の俺の意識が飛んだ原因とも言える人物。

 この世界にいることはまぁなんとなく察していたけれど、あの質問とかも全て姉さんがしていたとすれば納得がいく。

 要するに俺は姉さんに弄ばれていたわけだ。

 生きていた頃と同じく、気づかない間に弄ばれて、驚いていたわけだ。

「あーもう! 考えてたって仕方ないか!」

 コーヒーを一気に飲み干すと、その空き缶を投げる。

 カンと言う音と共にゴミ箱に弾かれ、コロコロと俺の足元に転がってくる。

「……」

 それを見た俺は空き缶をしっかりと手で持ってゴミ箱に捨てると、日向君も向かってであろうガルデモの練習室に向かった。

 

 

 

「そうなったかー」

 ガルデモの練習室に着いた俺は、空笑いかつ苦笑いをするしかなかった。

 日向君の精一杯を振り絞ってしたことは、ゆいにゃんに突撃告白だったらしい。

「いきなりゆい、付き合ってくれって言ってたけどゆいにゃんが普通に嫌だって言っちゃってねー」

「あー」

 忘れていた。失念していた。

 例え日向君が進もうとしていても、ゆいにゃんが停滞を望んでいればそれは叶わないのだ。

 ゆいにゃんにとってはいつもの様に日向君が絡んできて、いつもの様に返してしまっただけなのだ。

 いつも通りの笑い話だ。

 あまりにも――いつも通り過ぎる。

「それで日向君は去っていったと」

「うん。そっかーって言いながらね。多分心のどっかで気が付いてたんだと思うよ」

 正直に言って、今回のことに関して俺は干渉する気は全くしなかった。

 日向君が自分で踏み出すには必要なことだと思ったし、ゆいにゃんもそれでなんとかなればと思った。

 でもダメだ。

 絶対にこの恋は成就しない。

 進行と停滞は同じ場所へは居られない。

「じゃあ仕方ない。手伝おうか」

 重い腰を上げないとと思いながらも、その言葉に一部始終を話してくれたしおりも頷いた。

 ここにいるのはしおりと俺とみゆきちちゃんだけだ。

「みゆきちちゃん、手伝ってくれるかい?」

「勿論だよ。戦線の問題は私達の問題でもあるんだから」

 そう。これはある意味で戦線の第一歩なんだ。

 失敗は許されない。

「コホン。じゃあ、オペレーション・ラブハリケーン――スタート!」

「そのオペレーション名はダサいわー」

「し、しおりん言い過ぎだよ。いくらダサくたって、そこまで言っちゃダメだよ」

 心に突き刺さる無数の刃。

 俺だって、俺だって自分にネーミングセンスが無い事ぐらいわかってるよ。

 多分これは遺伝だな。

 俺の両親だって、人の名前に多々なんて付ける程ネーミングセンスが無いんだから。

「じゃああたしが言ってしんぜよう。オペレーションは被るから、チームTSM作戦行動開始!」

「GIG!」

「じ、じーあいじー?」

 ノリが悪いなぁみゆきちちゃんは。

 俺が不貞腐れてみゆきちちゃんを見ようとすると、しおりからの目潰しが俺の両目を直撃した。

「めがぁ! めがぁ!?」

「みゆきちに変な視線を送るな!」

「え? 私今変な視線向けられそうになってたの?」

 なんか話が変な方向に急激に脱線し始めたのを感じながらも、俺はきちんという事にした。

「日向君成就作戦開始!」

「まぁそれでいっか」

「妥協点だね」

 協力者が俺に対して厳しすぎる気がするのは気のせいだろうか?

 




 にゃにゃにゃ。
 皆さん明日から艦これのイベントです。
 そして戦国アスカzeroの人気投票は誰に入れましたか?
 俺は柳生宗厳ちゃんが入っていなかったので、順調に天草四郎に投票しています。
 あー、早くレイドイベント始まらねーかなー。

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