とりあえずですが、今回の章末ラジオはコメンタリーバージョンとなります。
ラジオっぽいのかコメンタリーっぽいのかどちらが良いかはまだわからないので、感想等を参考にしながら行いたいと思います。
取り敢えずこの第五章はここで終了となります。
え? ここでと本編を見て思う方も多いかもしれませんが、ぶっちゃけ第五章の意味は物語を進める上でのキーポイントです。
ここに来て原作第四話までしか終わっていないということに軽くビックリしながらも頑張っていきたいと思います。
コメンタリーのキャラこれでして欲しいとかも募集!
セカンドフライが上がった瞬間、俺はやってしまったと思った。
日向君の過去は聞いている。
セカンドフライが取れてしまったら、きっと日向君は消えてしまうのだろう。
だからこそ、そんなトラウマを――。
「こんな形で破ってしまうなんて」
手からすっぽ抜けたバットは満足そうな表情でセカンドフライを取ろうとしていた日向君の股間にヒット。
金玉を破壊し、絶命と言う死をくれてやった。ショック死である。
唖然とする全選手。
俺も一塁を過ぎて二塁で止まった所で現状の酷さを確認した。
折角報われるのかと思い手を伸ばしてしまったまま硬直して死亡している日向君。
日向君が消えてしまうかと思って追いかけていた体制のまま止まっている音無君。
その痛みを知っているが故に股間を押さえてしまっている野田君と松下君。
あまりの出来事に理解が追いついていないしおり、ゆいにゃん、みゆきちちゃん、まさみちゃん。
唯一動けた椎名ちゃんだけが俺に気がついていたけれど、場は騒然としていた。
野球部も涙目である。
「すいません担架お願いします」
満足気な表情のまま死亡した彼を実行委員が連れて行った所で試合スタート。
何というか音無君がそんなのってねぇよ。あんまりだよと呟いていたけれどその言葉はまだ早いのでは?
取り敢えず日向君のご冥福をお祈りしながらも、次のバッターが打ったのを見て走り出す。
サードには椎名ちゃんの姿。
俺は椎名ちゃんに向けてダイブ!
避けられました。
ベースに触れたままズシャァと音を立てて滑った俺の顔は少し皮膚が擦り剥けていた。
野球部らしい傷である。
「よっしゃー! バッチコーイ!」
サードライナー。俺の顔面を強襲。
来いとはいったがあれ程の速さで来いと言った覚えはない。
そう思いながら俺は倒れた。
目が覚めるとそこは保健室だった。
取り敢えず隣のベットにも誰か寝ているなと理解し、起き上がると寝ぼけ眼を擦って伸びをする。
「目が覚めたの」
そこにいたのはゆりちゃんだった。
少し真剣そうな顔をしているゆりちゃんに、俺はあぁやっぱりかと確信する。
「彼、閉じこもったわ」
「今回はわざとじゃないんですごめんなさい」
日向君は絶賛引きこもり中だった。
あそこまで完璧に再現された中で唯一跳んでいったバット。
これが取れたら最高に気持ちがいいだろうなと言った後で来たのは、気持ちよさではなく激痛だった。
これは辛い。
「わざとじゃない分タチが悪いのよ。これでわざとだったら、きっと彼も怒るだけで済んだでしょうけど」
割と大問題じゃないか。
ギャグのせいでシリアスが巻き起こるのは勘弁願いたい。
「どうするつもり?」
「うーん、俺が謝った所で正直状況は変わらないだろうしなー」
そう。ここでの問題はそこなのだ。
俺が日向君の股間にバットをシュートして超エキサイティングしたのは事実だけれども、それはあくまで事故であり原因の一つでしかない。
きっとだけれど日向君が本当に悩んでいるのは、自分が勝手に成仏しようとしたことと、あれだけカッコ良く成仏しそうになっておきながら結局残っていることへの恥ずかしさだ。
それさえ抜ければ、ごめんごめんで済む話なんだ。
しかしそれを俺が言っても、これについては意味がない。
「ま、誰かがするでしょ」
「……適当ね。今初めて貴方を少し軽蔑しそうになったけれど」
「はっはー。ゆりちゃん。誰かがするんだよ。何時するかは知らないけれどね」
日向君の為に動く人物を俺は二人知っている。
一人は間違うことなく音無君。
だけれどもう一人俺は知っている。
きっと音無君もそれを邪魔しないだろう。
「貴方は誰かがこの状況を打破すると知っているからこそ言っている。それは理解しているわ。それでも、自分から解決しようとしないのは良くないことよ」
「分かってないねゆりちゃん。俺から解決しようとしないんじゃなくて、俺は解決する役目を譲ってあげているだけなんだよ。もっと相応しい人がいるからね」
もっと相応しい人が、このお役目をしていることは誰よりも俺がわかっているからね。
「そう。それなら貴方を信用するわ」
「そうしてもらえると助かるよ」
さてと、そろそろ動き出す頃かな?
SIDE:高松
――初恋だった。
初めて見た感想は、何も動かない人だなと言う一点だけだった。
しかしインカムを通して常に連絡をしている所を見て、真面目だという印象を受けた。
いつの間に彼女のことを好きになっていたのかはわからない。
だけれど、彼女のことが好きと言う感情に気づいたのはつい最近だった。
多々さんが遊佐さんと話しているのを見て、心が苦しくなったのを知ってからだ。
もしかすると多々さんもと思ったが、実にあっさりと関根さんと付き合い始めた。
そのイチャつき度と言えば、校内でブラックコーヒーの売り切れが続々と続くほどだった。
だからかもしれない。私が多々さんに相談したのは。
「多々さん。実は遊佐さんのことが好きなんです」
「そう。それを俺に言っても何も解決しないよ」
きっぱりと前から切り裂かれた。
相談と言ったのに対し、その切り返しである。
実はこの人は女子にだけしか興味が無くて、男子に酷く冷たい人物なのではないかと思った。
しかし実際は違った。
ふと多々さんが遊佐さんの情報を聞き出しているのを聞き、それをノートに纏めているのを見た時だった。
この人は私が遊佐さんのことが好きだと知って、その上で付き合おうとしていたのではないか。
イメージとしてあった男子に酷く冷たい人物と言う考えが先行してその考えに至り彼の前に出た時、彼はそのノートを私に放り投げた。
「まず行動で示す。どれだけ好きなのか理解した上で、相談しに来な。ただし、好きなことを相談するな」
好きなことを相談するな。
最初はその意味がよく分からず、そのノートを見て熱心に勉強した。
好きな食べ物や嫌いな食べ物。よくノってくれる会話等も細かく記されていたそのノート。
これさえあれば遊佐さんの心も掴めるのでは無いかと考え、何回か行動に移した。
しかし全部失敗した。
彼女は私に関心を示してはくれなかった。
なぜと疑問に思った。
考えて考えて考えた結果、とあることを思い出したのだ。
――どれだけ好きなのか理解した上で、好きなことを相談するな。
自分が何を相談したのか。
遊佐さんのことが好きなんです。どうすればいいですか?
違う。これは要するに、自分が遊佐さんを好きだと宣言したまでだ。
相談と言うべきじゃない。
私は多々さんに、何を相談するべきだったのか。
その答えは簡単に、余りにもあっさりと日向さんが教えてくれた。
「お前遊佐のこと好きって言ってたもんな。で、どうすんの?」
そう。自分がどうしたいかだった。
それが明確に決まっていないのだ。
私はそのことに漸く気がつき、その上で多々さんの所に相談しに行った。
「多々さん。遊佐さんと付き合いたいです。自分がすべき行動を教えてください!」
「違う! 君は遊佐ちゃんと付き合いたいだけじゃないはずだ!」
「遊佐さんの○○○○を○○して私が○○って、その状態で○○○をしたいです!」
「と言うと?」
「実は私は黒パンスト派でしてね。確かに遊佐さんの黒パンストはエロくて堪らないくらいハイテンションになるのですが、別に性欲的な意味で襲いたいとかそう言う欲求不満ではないのです」
「わかる。俺もしおりのことを愛してるししおりのあの絶対領域が完璧だと思うけれど襲いたいとは思わない。襲うつもりはあるけれど」
「つまりエロいけれども恋している相手には何故か襲い掛かりたくならないのです!」
「よく言った!」
欲望だだ漏れの話だった気がする。どこからそれたのだろう?
私はさっぱりオボエテイナイ。
黒パンスト派の私にとってこの程度の話は造作も無かったですし、久しぶりに男子とずっと猥談をし続けると言うのも懐かしい気もしました。
多々さんは白ニーソと言うよりもどちらかと言うと黒ニーソの関根さんを見たいとぼやいていましたが。
しかし二人共コスプレ好きなのですし、多々さんは裁縫が尋常ではないほどうまいので問題ないかと思いました。
そんな男子高校生らしい猥談の最後に、多々さんはこう言いました。
「確かに遊佐ちゃんの黒パンストを脱がして自分で被ってその状態でエッチしたいと言う個性的な願望はいいかもしれないけれど、一つだけ言うとすれば君がどれくらい遊佐ちゃんのことが好きかどうかってことだ」
私はそう言われると思っていました。
ですから多々さんに渡されたノートを、多々さんに返しました。
「多々さんの努力は嬉しかったです。ですが本来、このノートに書かれていることは私が本人に聞くべきことです。なのにそれをせず、ノートに甘えてしまった。それが最初の、自分が好きの程度を知らない頃でした」
だからこそ、言えるのだ。
「今の私は本気で遊佐さんを愛しています。これ以上の遊佐さんに関する情報は要りません。それは自分の信頼関係を表すものでもあるんです。本気で、全力で、遊佐さんを幸せにします」
それを聞いていた多々さんはにっこりと微笑んでいた。
「安心したよ高松君。最初の頃の高松君からは、ただただ己の願望を叶える為だけに遊佐ちゃんに強要したいという思いが感じられたからね。恋って言うのは、確かに自分の欲望を叶えたいってものでもあるけれど、同時に相手の欲望を叶えたいって願いも持たないといけないんだ」
そこからの毎日はまさに怒涛の日々だった。
まず会話の作り方から練習し、歩き方や聞き方等全てのことを教えられました。
勿論その全てを理解したわけではありませんし、多々さんの行動をまんま使うと言うことが違うと言うことは知っていました。
だからアドバイスなのです。
彼はアドバイスをすると言っていたのです。
「遊佐さん。一緒に寮食に行きましょう」
「はい」
二人で寮食に行った時のことは、今でも鮮烈に覚えている。
彼女がうどんで、私がそばを食べた。
緊張して味なんてわからなかったはずなのに、酷く美味しく感じた。
あの感覚が忘れられなくて同時に――心の壁を感じた。
SIDE:音無
何かわからない。
普通に過ごしているはずなのに、どこか疑問が上がるようなこの感覚に俺は異様な悪寒を覚えていた。
何かが動き出そうとしている。
止まりかけていたはずの時計が、何処から電気を手に入れたのか再び針を揃えて動き出すように。
俺も、俺達が何も知らない何かが動き出すような感覚がしていた。
そもそもこれは悪寒なんだろうか?
最早これ自体が何かヨクナイモノなんじゃないだろうか?
わからない。わからないけど――不気味で仕方が無かった。
日向に起きたあれはただの事故だ。
多々が起こしてしまったと言う原因はあるにしても事故だ。
ならばこの悪寒は多々のせいではない。
何かもっと別のよからぬ何かが動き出そうとしているんだ。
「クソ……。何なんだよこれ……」
あまりにも簡潔にそれは始まるのだろう。
多々も知らないその物語が、動き出すまでのリミットはもうあまり残されていない。
たった一つの思いを貫く為の物語が――。
コメンタリーと言うことでセリフ次回予告は伏せさせていただきます。
と言うわけで次回はコメンタリー。ゲストは原作主人公こと音無君と、ぶっ飛び系ヒロインことしおりんでお送りいたします。
何故主人公はいないの? と言うのも本編で明かしますので、どうかご期待下さい。
「――ただで辞めると思ったら大間違い! タッ君の彼女こと関根しおりとぉ!」
「え、えっと。入江みゆきです」
「もー。元気ないぞみゆきち。あたし達ふたり揃ってガルデモの黒子テツヤだよ?」
「素直に影が薄いって言った方がいいんじゃないかな?」
「うぐっ。痛いところをついてくるな。次回予告!」
「え? え? じ、次回予告!」
「最近気がついたんだけどさ、みゆきちって優遇されすぎだよね」
「そ、そんなことないよ。しおりんだってヒロインだよヒロイン」
「ヒロインなのに可愛いシーンがあまりない。やっぱりみゆきちの方が可愛く描かれてる気がする!」
「私の方が可愛いなんてことないもん」
「もんとか可愛すぎるぞコラー!」
「ひゃわっ!? し、しおりんいきなり胸揉んだりしないで!」
「うへへへへ。良いではないか良いではないか!」
「――やめろ」
「はい」
「次回、【俺としおりんと時々おっぱい】第五章、041話《Commentary First》」
「あたしが大活躍するよ!」