俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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今回はシリアス回。
後書きはなしれす。


004 《Set Abroach》

「出られないってなんだよ……」

 多分だけどひさ子ちゃんって頭いいよね?

 というか頭の回転早いよね?

 他の3人は可愛く首をかしげてるよ?

「それの何が悪いんだ?」

「聞いた感じだと確かにこの世界にとどまれるってことはいいことかもしれないけど、あたし達は何でここにいる?」

 その言葉にようやく気が付いたしおりんちゃんとみゆきちちゃんが、驚いてから悲しそうな瞳を向けてきた。

 うん。シリアスだ。シリアルじゃない。

「こいつは要するに、自分の未練が絶対にこの世界で無くならないってことなんだよ。つまりだ。もしあたし達が何かの拍子に次々と満足して消えていったとしても、こいつだけはずっと残り続けなきゃならないんだよ」

 そこで気がついたまさみちゃんが俺の方を見てきたので、軽く手を振る。

 しかしシリアスにそんなものは通用せず、普通に悲しそうな目で見られた。

 やばいな。俺が順応出来てない。

「まぁいいじゃないっすか。どーせ皆居てくれるんだし、遊んでたってわけねーですよ」

 明るく振る舞うもこの空気は変わらない。

 何この空気? お通夜? お通夜なの?

「お前なんでそんなに普通で入れるんだよ。それだけ深い過去があるなら、何でなんとも思わないで普通に過ごしてんだよ。おかしいだろ!」

 俺の為に怒ってくれているひさ子ちゃんマジカワユス。

 テラカワユスでもいい気がしてきた。

 でもおかしい……か。

 さんざん言われてきたセリフだよなぁ。

 お前はどうしてそんなに笑顔でいられるんだと。

 お前はどうしていつも笑っていられるんだと。

 おかしいって言うのは、ある意味俺を構成している重要なパーツなのかもしれない。

 だから――俺は昔から言っているみんなに返す言葉を告げる。

「俺はおかしいよ」

 自分でもわかっているから。

「俺に悲しいなんて感情はないんだ」

 自分が一番憎いから。

「自分なんてどうでもいい存在に思えている」

 自分が一番嫌いだから。

「だから俺はおかしい」

 だって―ー俺は結局誰1人として救えなかった愚か者だから。

「タッ君……」

 だからそんな悲しそうな声を出さないで欲しいな、しおりんちゃん。

 俺は君の明るい表情が大好きなんだよ?

「だったらあたしがタッ君が未練叶えて消えるまで一緒にいるよ!」

 告白ですかと勘違いしそうになる程の言葉だった。

 でも俺はその言葉を茶化すことが出来ず、素直に聞いてしまっている。

「一人だったら、悲しいけど。二人いればダイジョーブ!」

 それはきっと、しおりんちゃんが実体験したことなんだろう。

 ひとりがダメでも二人いれば大丈夫。

 凄くしおりんちゃんらしくて、あったかい言葉だと思った。

「あたし達ガルデモは、マネージャーにも優しいスーパーバンドですから!」

 その言葉に賛同するように肯定の意を示してくれる、まさみちゃん、ひさ子ちゃん、みゆきちちゃんを見て俺は泣きそうになった。

 いつもならここが俺のハーレムとか叫ぶんだろうなぁ……。

 でもちょっとだけ、今だけは鑑賞に浸らせて欲しい。

 それが終わったらまた、いつものセクハラ大好きなスーパーイケメンに戻れると思うから。

 

 

 

 結局の所12時くらいまで、一緒にだべりつつもお菓子を食べてパジャマパーティをしていた。

 勿論のこの時間になれば天使とか言うやばい奴が俺達を狙って野獣のように待機しているらしいが、そこはどうにかするしかないと思う。

 取り敢えず窓から飛び降りた俺はジーンとする足をそのままに、男子寮へと走り出す。

 教師達も結局はライトを使ってるから丸わかりだぜ。

 問題は天使だけど、それも問題なくクリアして俺は寮に戻ってきた。

 窓あけといて良かったと思いつつ、中に入ると同部屋の子が起きていた。

「……どこに行ってたの?」

「いやー。女子寮で一緒にパジャマパーティしてましたわー」

「この時間に出歩くのは校則違反だし、そもそも女子寮は男子禁止だよ?」

「女子寮の中では俺女の子だったから」

 意味がわからないとつぶやいた同部屋の子ーーNPCの本郷君はそのまま寝た。

 ふむ。NPCに睡眠薬はあまり聞かないと。

 多々覚えた。

 取り敢えず当面は女子寮に行くのが日課になりそうだなーと思いつつ、俺はゆっくりと部屋にあったPSPでモンスターをハントするあれを始める。

 このハントする相手がgirls dead monsterだったら最高なのにとか思いつつ、だったらハントじゃなくてゲッチュだわと思う。

 そんな無駄なことを考えながら、ふとどうしてガルデモの皆に出れないなんて話したのかなと思う。

 別に出れないことを話す必要は無いはずだ。

 報われたい……ってどこかで思っている自分がいるのかもしれない。

 確かに俺は俺のことが嫌いだし、だからこそ自分を客観的に見て、自分の被害を度外視で行動することが出来る。

 そんなことしてたら、生きてた頃は不気味って言われて近寄ってこられなかったけどなー。

 でも今でもそれは変わらないのに、ガルデモの皆は優しい。

 それがすごく嬉しくて、苦しいんだと思うんすよ。

 でも最後のしおりんちゃんの言葉は嬉しかったなぁ。

 本当に、好きになっちゃったよ。

 別に本当は嫌いとかじゃなくてみんな好きなんだけど、loveじゃなくてlikeの方。

 でも今回のこれは、loveだ。

 はっきりと分かる。

 昔みたいに、はっきりとこの子のことが好きだとわかったのだなら間違いない。

 どーしようもなく好きだから恋なのだ。

「明日から頑張りますか!」

 割とガチで頑張り始める件について。

 

 

 

 SIDE:関根

 タッ君が帰った後、あたし達はまだ話していた。

「雨野のことだけど……さ。あいつ多分かなり重症だと思う」

 ひさ子さんの言葉に私は頷くしかない。

 みゆきちもそうだ。

「あいつは多分本当に、自分のことをどうでもいい存在だと思ってる。心の中ではどうにかしたいって思ってんどろうけど、自分ではどうでもいいとおもってるから、あいつはあたし達に話した」

 タッ君は本当に単純な連絡として、あたし達に自分の未練はかなわないと告げた。

 まるで自分のことじゃないみたいに、あまりに客観的な言葉。

 どうしても、譲れないことがそこにあるんだと思う。

「あたしはタッ君を見捨てない」

 堂々とそう言う。

 みゆきちと出会って変われたみたいに、タッ君立って変わることが出来るはずだ。

 一度みゆきちに救われたあたしだからこそ、タッ君を救うことが出来るはずだ。

「私も……です。しおりんとあたしは元々、自分のことが嫌いって思ってましたから」

 あたし達は似ている。

 だからこそ、タッ君はあたしが救いたい。

 その為ならみゆきちとタッ君と三人だけで永遠と残り続けたって構わない。

「関根って雨野のことすきなのか?」

「何ですと!?」

 よくよく考えたらタッ君って男の子だった。

 ってことはあたし、男の子に対してずっと一緒にいたいって言ったってこと!?

 告白じゃん!

 もろ告白じゃん!

 何で言ってくれなかったのさタッ君! とタッ君に対しての恨みを覚えながらも考える。

 みゆきちが好きだ。大好きだ。結婚したい。

 ならタッ君は?

 わからない。男子とここまで一緒にいたのも初めてだし、今の今まで男子と思ってなかった位だし、そもそも異性との話し方がわからない。

 まぁ普通に話してれば伝わるからその分タッ君は楽でいいけど。

 今はまだ、話せる友達って感覚だと思う。

「あたしはみゆきち一筋ですから!」

 なんかモヤモヤする。

 この気持ちが何かわからないけど、取り敢えずタッ君のせいってわかったから明日殴ろう。

 でもなんか殴ろうと思うとまたもやもやする。

 うー。なんか変な感じだよ!

「にしても、そろそろトルネードがあるんじゃないのか?」

「確かに食券も減ってきましたね」

 そろそろあるとすれば、それがタッ君の初仕事になる。

 タッ君はこの試練を乗り越えることが出来るかな?

「まあだとしたらお守り役は関根で」

「それは賛成だ」

「私もしおりんがいいと思う」

 何ですと!?

 まさか、あたしにタッ君のことをすべて押し付けるつもりか!?

「ま、いっか。タッ君話しやすいし」

 他の戦線メンバーの男衆と比べても、話しやすさがダンチなんだよね。

 やっぱりネタを知っている人はやりやすくていいなぁ。

 正直胸のない女子扱いだよねタッ君って。

 男子として見てる人っているのかな?

「取り敢えず次のトルネードに向けて練習するか」

 おーと全員の声が揃ったのを確認してから、あたし達は寝ることにした。

 

 

 

 SIDE:多々

 皆さんおはよーございます!

 七つの世界を渡る力を持つトールこと、多々です。

 すみません。嘘です。

「わーい」

 取り敢えずガルデモの演奏を聞きながら、悪いところがないかを聞かれることになりました。

 どう考えてもしおりんちゃんが暴走しています。

 しおりんちゃん、暴走します!

「関根ぇぇぇええええええ」

「ぎにぁぁぁああああああ」

 ひさ子ちゃんのアイアンクローに叫び声を上げているしおりんちゃんを笑いつつ、俺は聞いた曲を思い出す。

「取り敢えず、まさみちゃんは楽譜そのまんまっすね。それについては問題ないっす」

 ただし楽譜そのまんまなだけなんだよね。

「みゆきちちゃんはしおりんちゃんに合わせようとして、でも楽譜を忘れられなくてズレちゃってるね」

 可哀想に。真面目な子なのにしおりんちゃんに引っ張り回されちゃってる。

「しおりんは言わずもがな。暴れすぎ。ライブの時は自重するんだろうけど、それでも暴れすぎじゃね?

 エヴァじゃねーんだから」

「エントリープラグが外れちゃった」

「後で自分でつけなさい」

 てか女子のエントリープラグとかどこに差し込むんだよ。

 そんな事言ったら男子もだけど。

「ひさ子ちゃんは……お疲れ様です。楽譜通りのまさみちゃんに合わせつつもしおりんちゃんの暴走に付き合わされて、 乙であります!」

 敬礼したところ、思い切りグーで殴られた。

 グーっておま、グーって。

 女子のすることじゃないことだろ?

「取り敢えず、曲として完成してるのにバラバラって言う珍しい状況だと思う」

「多々って何か音楽の仕事関係してたの?」

「軽音部に入ってたって言わなかったっけ?」

 そう言えばそれを伝えたのはゆりちゃん紹介された時にいた人だけでした。

 驚かれたけど、しおりんちゃんはいたよね?

 みゆきちちゃんからも呆れた目で見られていますがそれはいいのですか?

「なら楽器出来る?」

「一応ギターできるけど、ボーカルだったしなぁ」

 歌歌うのは得意です。

 偉い人にはそれがわからんのです。

「なら歌ってみる?」

「ご勘弁を。お願いしますからそんなイキイキした顔で俺を見ないでください」

 俺は歌いたくない!

 絶対に歌いたくないでござる!

 




次回予告
「――オペレーショントルネード?」
「貴方には――プロデューサーになってもらうわ!」
「駆逐してやる……! 一匹残らず駆逐してやる! 待ってろNPC!」
「どうも。多々Pです」
「それいいんじゃね? こう、食券を上に向ける感じにすれば巻き取りやすいだろ」
「んなわけねーだろ。誰も買わねぇよ」
「え? 俺のハーレムのメンバーでしょ?」

「ただ奴らを殺す。その為だけの為に生きている」
第5話《First Produce》

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