俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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スランプ、入りました。
脱却出来ません。1話だけは出せますが、暫くの間投稿を控えます。
申し訳ありません。必ず復活するので、ご容赦ください。


036 《Search Second》

八人目《TK》

「多々について……何か知らないか?」

「♪」

「あの……TK?」

「ワイは彼を師匠と慕っているんや」

「!? まさかの関西弁!?」

「師匠のことはやから話せん」

「……わかった」

「すまんのう音無はん」

「いや、こっちこそ悪かった」

 

 

 

九人目《松下》

「多々についてか……。奴は非常に人を操るのが上手い」

「人を操るのが上手い? どういうことだ?」

「主に天使においてだが、奴は麻婆豆腐が好きだ。だからか知らないが、許可が取ってなく天使が来た時も麻婆豆腐を基本としたあの手この手で動きを封じる」

「知らなかった……。でも俺と一緒に天使と戦った時はそんなことしてなかったぞ?」

「奴はキチンとシリアスな時はシリアスに、コメディの時はコメディに出来る奴だ。心の中は知らんが、有能であることに変わりはない」

「まぁ確かに有能だよな」

「それとゆりっぺには秘密だが、生徒会副会長ともコネがあるようだ」

「生徒会副会長? それって確かNPCの……」

「本当にNPCであるかどうかは別だがな。見たところNPCの様に見えるが、俺は実は違うのではないかと思っておる」

「生徒会副会長がもしかするとNPCじゃなくて人間かもしれないってことか?」

「多々のこともある。普通にしていても消えない人間がいてもおかしくはないのではないかと思ってな」

「確かにそうだな。多々だけが消えないなんて誰か決めたわけじゃないし」

「あぁ。俺が疑っているのもこのことも、内密にして欲しい。俺は多々の友好関係に文句を言うつもりはないし、多々のことを疑いたいとも思わない。変な誤解を招くからな」

「わかった。色々教えてくれてありがとな」

「気にするな。新しいメンバーが来て、多々も喜んでいる」

「なんとなくだけど、まるで多々の兄貴みたいなことを言うんだな」

「兄貴……か。奴の兄になるならばそれもいいか」

「そっか。慕われてるんだな」

 

 

 

十人目《大山》

「た、多々君!? 今は彼のことが若干トラウマになってるんだ!」

「何かあったのか?」

「前回君達がやったラジオの時に僕の送った手紙がバレて、それはそれは酷い罪を受けたんだ!」

「何を受けたんだ?」

「そこを聞いてくるの!? 怖い、怖いよ音無君!」

「いや別に普通に知りたいから聞いただけなんだけど」

「そうなんだ……。良かった。前回のラジオの結果、僕は全裸にさせられて女子寮の前に磔にされたよ」

「それはまた……酷い目にあったんだな」

「それだけならまだ良かったよ。でも多々君は――僕が見られて興奮するタイプだから自ら磔されたって学園中に言いふらしたんだ!」

「そう言えば情報操作が得意って言ってたな」

「おかげで女子は僕のことを避けていくし、男子からは冷ややかな目で見られるしもう散々だよ! それにいつも静かなのは趣味を隠すためとまで言われてるし!」

「じゃあ最近出てこないのは……」

「外に出るのが怖くて部屋の中に閉じこもっているからだよ。音無君、悪いことは言わない。多々君を怒らせる様な真似は絶対にしちゃダメだよ? ゆりっぺみたく肉体的に酷い目に遭うんじゃなくて、精神的に酷い目に遭うから」

「あぁわかった。しっかりと注意しておく」

「それと、困った時があったらいつでも聞いてね」

「サンキューな」

 

 

 

十一人目《岩沢》

「多々? あいつがまた何かしたのか?」

「いや。普通にあいつと結構一緒にいるのに何も知らないなと思って」

「そうなのか。あいつについて……」

「別に難しく考えなくていいぞ」

「そうか。あぁ、あいつはNPCだ」

「ぶほっ!?」

「おいどうしたいきなり吹き出して。何か飲み物が喉に突っかかったのか?」

「いきなりそんな爆弾発言されたら誰でもそうなるわ!」

「わ、悪い。でも別に普通のNPCってわけじゃないらしいぞ? 何でも、普通の価値観のままだと本来の青春を知らないままで死んでしまうから、止む終えずNPCと一体化させて一般的な価値観を示すだったかな? 私も詳しく聞いたわけじゃないからな」

「それでも凄い情報が飛び出してきて俺は驚いたよ」

「でもあいつは人間だよ。じゃなかったら、あんな重苦しい過去は持ってない」

「つまりNPCに憑依した人間ってことなのか?」

「そうなるな」

「と言うかこれって話ていいことだったのか?」

「多々は自分のことについて誰かに言わないで欲しいと思うことなんて殆どない。あいつが私達に告げた時点でそれは公式発表ってことさ」

「随分と信頼されてるんだな」

「そりゃあいつがマネージャーで私達のことを信頼してくれるんだ。こっちもその信頼に答えないといけないだろ?」

「それもそうか」

「まぁ他にも言ってみれば、あいつは歌うことが大好きな奴だ。特に誰かの為に歌うっていう行為がな」

「誰かの為に歌う……」

「あぁ。そこがあいつの悪いところでもある。自分の為には歌わず、人の為にだけ歌う。自分がどうでもいい存在だと思っていた弊害だよ」

「昔にそう思っていたことが、もう違うと思ってる今でも出てきてるってことか?」

「うん。度々あるんだ。自分が周りから信頼されていて、大切に思われているから無駄な存在じゃないとわかった。それでも自分が犠牲になればって、自己犠牲を最初に考えてしまう悪い癖。考え方の一つや二つで変わるほど簡単な問題じゃないんだ」

「それを、アンタ達はわかって一緒にいるんだな」

「誰かが一緒にいてやらないと、あいつは壊れてしまうよ。そんなことはさせたくない」

「そっか」

「あんたもあいつと一緒にいてやってくれ。一人でも多い方が、あいつの為になるはずだ」

 

 

 

十二人目《ひさ子》

「多々? 馬鹿に決まってんだろ」

「馬鹿か。まぁ確かにやることなすこと馬鹿だけど、あいつは頭がいいんじゃないのか?」

「勉強が出来ることと頭がいいことは違うんだよ。あいつは勉強は出来るけど馬鹿だ」

「それに根拠があるってことか」

「そう。あいつはややこしくものを考えすぎてる。頭が良すぎるとも取れるかもしれないけどな」

「勉強が出来る故にってことか?」

「それだな。まぁでも素直に人の話は聞かないし、勝手にネタに走るし、他人の気持ちを無視して平気で突っ走るし、散々な奴だよ」

「酷い言いようだな」

「そりゃそうさ。だけど、そんなあいつにあたし達ガルデモは救われたんだ」

「少しだけ聞いたよ。ガルデモを大切に思ってることは」

「あいつがそう思うように、あたし達もあいつのことを大切に思ってるってことさ。あいつの死因の大抵はあたし達ガルデモに関わることだ。もしあたし達に関わらなければ、あいつは殆ど死なないで居られたはずだ」

「でもそうすると実働部隊だろ? もっと死ぬ確率が増えるんじゃないのか?」

「ギルド降下作戦で一回死んだけれど、それはあいつが武器を捨ててたからだろ? 万全の状況だと天使にだって互角以上に戦える様な奴だ。死ぬことなんて殆ど無いだろうよ」

「なるほど。ゆりみたいなもんか」

「そういうこと。あたし達も結局の所死んで、苦しい思いが一杯あってここにいるんだ。それを緩和してくれているのは、多々だ。実の所を言うと、あたしも岩沢も入江も関根も皆多々がいるからここにいるだけなんだよ」

「それってつまり、多々が消えれば自分達も消えるってことか?」

「そう言うこと。あたしなんて実は多々に未練叶えて貰ったんだ。でも全員で約束した、多々が消えるまで消えないと言う願いがある限りあたし達は絶対に消えない。消えちゃならないんだ」

「そこまでして、どうして多々に固執するんだ? 俺は記憶が無いからどれだけ皆が苦しい思いをしてきたのかわからない。多々の真実もきっと酷く重いものなんだろうとはわかってる。だけど知りたいんだ」

「そう……だな。強いて言うなら家族みたいなもんだ。多々を中心として集まってきた家族。バラバラだったはずの心が、思いが、多々と一緒にこの世界から卒業すると言う願いに変わったんだ」

「家族……」

「家族を思い出せないお前にはちょっと酷かもしれないけれど、家族って言う存在は凄いんだ。家族がいるから我慢できることっていうのはたくさんある」

「その一つが、多々への思いなんだな」

「そうだな。詳しくは関根に聞けよ。あいつが一番多々のことをわかってるからな」

 

 

 

十三人目《入江》

「多々君は、いい人かな?」

「いい人か。それはどういった意味でのいい人なんだ?」

「私達はやっぱり多々君のことが好きでここにいるところがあるから、全体的にいい人だと思う」

「好き? あいつには関根っていう彼女がいるんじゃないのか?」

「しおりんは気がついてるかもしれないけれど、ひさ子さんも岩沢さんも隠してるつもりで実は異性として多々君のことが好きなんだよ。勿論私もだけどね」

「あいつそんなに好かれてるのに気が付いてないのか」

「気がつかない様にしてるの。それに私達は気がつかれたくないと思ってる。友情エンドはヒロインに含まれないって多々君はよく言ってるからね」

「それは気がつかれているって意味じゃないのか?」

「多々君にはlikeを送る。でも心の中はloveで一杯。それが今の私達の状況。苦しくなんてないんだ。だって、多々君はそれを知っていてくれるから」

「知っていると気がつかれるは違うのか?」

「言葉遊びに近いけどね。知っているのは、元々知識として存在しているもの。気がつかれるのは唐突に知識として把握するもの。要するに、多々君が持ち出したら負けってことかな?」

「もし持ち出されたら、どうなるんだ?」

「多々君を巡って血で血を洗う世紀末な世界に変わるかもしれないね」

「なんつーか、面倒な所に多々は立ってるんだな」

「多々君はきっと皆から好かれているって聞いたら、全員幸せにしようとする」

「それはいいことなんじゃないのか?」

「普通はね。でも多々君はそれに失敗して、心が壊れて、人として一般的な価値観を失ってまで自らを幸せって言って正当性を高めようとする様な人なんだよ? また皆を幸せにしようとなんてしたら、心が壊れちゃう」

「だから、誰にも気がつかせない」

「音無君に言ったことは秘密だよ? 多々君が苦しむ姿はもう見たくないから」

「よくパジャマパーティをする時に見るのか?」

「たまにね。でもそれも全部しおりんが何とかしちゃうから凄いと思うんだ」

「……ありがとう。じゃあ一番重要な奴に聞いてくる」

「うん。行ってらっしゃい」

 

 

 

十四人目《関根》

「やっほー音無君。待ってたよ」

「知ってたのか」

「そりゃあたしはみゆきちのパートナーですから。健やかなる時も病める時も一緒です」

「それは多々に言ってやれ」

「アイタタ。予想外の所から反撃くらっちった。でもまぁ話してあげる。タッ君についてでしょ?」

「あぁ」

「タッ君はねぇ、寂しがり屋さんなの。

 いつもずっと一人でいて、それが実は寂しくて周りの暖かさを求めるんだ。

 だけれどもそれはいつも叶わなかった。お姉さんと元カノをそれで失ってしまった。

 いつもタッ君は恐れている。自分の友達が消えてしまうことを。

 いつもタッ君は恐れている。自分の大切な人を失ってしまうことを。

 恐れて恐れて、心の中で目一杯恐れているからいつも笑ってる。

 自分が恐れていることを見られたら、きっと自分が壊れてしまうから。

 かつてタッ君の周りの人は皆タッ君に依存して、タッ君は依存に依存した。

 だから自分だけは常に正常でいなければならないと思ってるし、絶対に正常だと思い込んでしまっている。

 正常だと思い込んでいるからこそ、自分がしたことが幸福だと思って涙を流さない。悲しまない。

 幸福だから悲しいはずがないと、涙を流すはずがないと、心の奥底に封印してしまう。

 いつかその封印が解けてしまった時、タッ君は壊れてしまう。

 だからあたしはいつもタッ君と一緒にいる。

 タッ君に依存するんじゃなくて、タッ君があたしと一緒に歩めるように。

 おんぶ抱っこで少しずつ進む関係じゃなくて、二人で一緒に歩ける関係になれる様に」

「……凄いな。聞き入っちゃったよ」

「それがあたしの話術なんだぜぃ! と言う冗談は置いておいて、実際さっき言った通りなの。タッ君は全てを恐れているから笑ってるし、泣かないし、悲しまない」

「矛盾してるって言いたいけれど、それすらダメなんだろうな」

「周りが思っている以上にナイーブな子だからね。周りに温めて欲しいと近づけないから、あたし達が温めるために近づかないといけないんだ」

「だから、多々のことをいつも思っているんだな」

「そのとーり! あたしはタッ君のことが大好きだからね!」

「愛は変わらず、思いも変わらず。本当に凄いよお前達は」

「でも結構難しいんだよ? タッ君が最も楽な姿勢である依存をさせずに、一緒に歩くのは」

「かもしれないな。でもするんだろ?」

「勿論だよ。だってそれが――あたしの役割だもん」

 

 

 

 笑顔でそう言った関根を最後に、俺はこのインタビューをやめた。

 同時に理解できたんだ。なんでこんなに多々が好かれているのか。

 確かに複雑なことが色々とあったけれど、それを踏まえても多々は――人間らしいんだろう。

 普通とは違う状況で生きて、もがいているのに明るく振舞おうとする多々を――救いたいんだろう。

「お前はすごいよ多々」

 心の底から、正直にそう思った。

 

 

 

 




次回予告
「エロゲでもするか」
「助けて天使モーン!」
「私的にアグモンが素晴らしいわ」
「貴方の隣に何体も這い寄る変態、多々君だよー! もしくはDJ撫子だよ!」
「ノリが変わりすぎて良くわからないわ」
「脅しが怖いよう」
「しおりのナース服が見たいな」

「雨野多々さんの保護者の関根しおりさん。貴方の彼氏が重度の頭の悪さで保健室で休んでいます。支給保健室まで迎えに来てください」
第37話《Break Time》

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