今回はそんなこんなで、音無君の多々君調査回を行います。
番外編みたいなものなんですけれど、実は色々な所の伏線を含めているので色々と考えてみるのも一興かと思いまする。
べ、別に音無君が空気だから出番を与えようとか思ったわけじゃないんだからね!
お気に入り700突破!したのに申し訳ないのですが、1週間の休養をください。
もうストックが無いのと、体調が著しく悪いので一時的に休ませていただきます。
申し訳ありませんが、必ず1週間後に復活するのでご容赦ください。
035 《Search First》
SIDE:音無
ふと思ったんだ。
俺は戦線メンバーについてまだあまりよく知らない。
最初は記憶を取り戻す為の準備期間だったつもりだけれど、こんなに長くいれば親近感だって湧いてくる。
だから色んな奴と話そうと思ったんだけど、何も話題がわからない。
そして同時に思ったんだ。
そうだ――誰かのことを調べれば、それについて聞いてまわってるとすれば話せるんじゃないかと。
その一番手として挙がったのは――多々だった。
あいつはいつも何かしているし、実は頭が良くて運動が出来る天才タイプの人間だ。
それに俺に色々なことを教えてくれた、優しい奴でもある。
でもその反面謎が多い奴だ。
だから聞いてみることにした。
一人目《仲村ゆり》
「多々君について知りたい?」
「あぁ。あいつってよくわからないことが多いし、いつも世話になってるのに知らないのはもどかしいなと」
「なるほどね。いいわ。教えてあげる。彼は――正真正銘のリア充よ」
「うん知ってる」
「それでいて運動神経抜群でバスケが非常に上手くて、頭の回転も速い上に頭脳が非常に高いの」
「聴けば聴くほどあいつって凄いやつだな」
「えぇ。それでいて周りへの気遣い、特に女性の扱いに長けているわ」
「それはどういう点からわかったんだ?」
「あら、やっぱり男子だものね。多々君の扱い方を学ぶことはいいことよ。そうね、他の人にも聴くなら私だからこそ話せることにするわ」
「頼む」
「多々君が来て数日のことだったけれど、前を見ないでいた男子生徒が私とぶつかったの。そこに多々君はいなかったんだけど後から来てね。すぐに尻餅をついている私に手を差し伸べたのよ」
「まぁ普通だな」
「それだけじゃないわ。その男子生徒に対して注意して、尻餅をついた私をその……お、お姫様抱っこして保健室まで連れて行ってくれたの。あれは不意打ちだったわ。歩けると言ったのに、調べた方がいいと言って連れて行ってくれてそのままずっと外で待っていてくれたの」
「やっぱりいい奴なんだな」
「そうね。彼はいい人よ」
二人目《日向秀樹》
「多々について知りたいだ? お前、これなのか?」
「それはお前だろ?」
「なぁ!? 多々のせいで俺がホモだと思われてる!?」
「それについてお前に聞きたいんだが、あいつは何をしてるんだ?」
「あいつがしてること? そうだな……一番してるのはやっぱりガルデモのことだろうぜ。あいつはマネージャー兼プロデューサーをしてるんだ」
「それって凄いことなのか?」
「あぁ凄いことだとも。あいつが来るまでガルデモにマネージャーもプロデューサーもいなかったんだ。だけどあいつがマネージャーをし始めてからはガルデモの練習を覗こうとしていた奴らも許可を取らなきゃならないと言うルールを定めたり、飲み物を飲む時間や練習時間を正確に決めたりしたおかげでガルデモの実力も鰻上りになったらしいぜ」
「そんなになのか」
「あぁ。それにプロデューサーとして最初のライブを大成功させたんだ。因みにその時ご飯を食べるのも水を飲むのも忘れて三日間徹夜して餓死した。それがこの世界で最初の死因だ」
「真面目なんだな」
「そうだな。あいつは仕事に一番真面目な奴だ。多分戦線の奴ら誰もが認めている努力家だよ。努力は人を裏切らないって言ってるしな」
「努力家か。俺は記憶がないから何をするべきなのかもわからないな」
「それは仕方ねぇよ。あ、後多々は情報操作もしてるんだぜ?」
「情報操作? 初めて聞いたな」
「気がついてる奴は殆どいないかもしれないけど、あいつがこの学園内にある噂の殆どを作り上げてるんだ。それでいて戦線が不利になる情報とかは自然に封鎖していたりとか、ライブの情報もかなり制限しながら流していたりとかされてるんだ」
「知らなかった」
「そりゃ知らなきゃ気がつかないレベルの情報操作をしてるんだからな。そう言う意味でも尊敬できるよあいつは」
三人目《高松》
「多々さんですか……彼は一言で言えば師匠ですね」
「し、師匠?」
「えぇ。実は以前彼に恋愛相談を持ちかけたことがあるのですが、それはそれは親身になって聞いてくれました」
「そ、そうなのか?」
「はい。それに私の肉体について理解もありますし、多々さんも実はかなりの筋肉の持ち主なんです。脱いだら凄いんです」
「それは知らなかった」
「多々さんは色々多彩な趣味を持っていまして、その中の一つに読書等があるので多くの知識を持っているのです。私は実は遊佐さんのことが好きなのですが、最近では一緒にご飯を食べれるところまで進歩しました」
「すごいな!?」
「勿論この気持ちを告げたいと言う気持ちはありますが、私は多々さんと違って消えてしまう。なのでもし私達がこの世界を去ることがあれば、最後に遊佐さんに告げる方がいいと言われました。そのあるかないかの最後の為にも、私には努力が必要だと」
「いや多々も凄いけれどそれを理解して実行するお前も凄いと思うんだが……」
「多々さんは言っていました。恋愛とは逃げではなく攻めが基本なのだと」
「あいつほど恋愛相談が似合いそうな奴はいないからな」
「その通りです。この戦線唯一の彼女持ち。もしくは嫁持ちと言う凄まじい人なんです。貴方もいつか彼に弟子入りしたいと願う日が来るでしょう」
「確かに男としては弟子入りしたい奴だな」
「はい。それでは今から遊佐さんとお茶を飲みに行くので」
「あぁ。頑張れよ」
四人目《野田》
「奴は……俺のライバルだ」
「ライバル?」
「俺はゆりっぺに惚れているが、奴の動きにはゆりっぺに好意を持つ動きがある」
「いやそれが女性に対して行う仕草らしいぞ。ゆりも言ってた」
「何!?」
「それに高松はあいつの恋愛指導を受けていいところまで行っているらしいぞ」
「そ、それは本当なのか!?」
「あ、あぁ。小細工とかそう言う仕方じゃなくて、女性に対する接し方や恋愛相談を受け入れているらしい」
「俺は……どうするべきなんだ?」
「さぁ?」
「俺は確かにゆりっぺのことが好きだ。だがだからと言って奴に頼み込むのは、小細工をしているのと変わらんのではないか?」
「――野田。俺はお前に何があったのかは知らない。記憶も無いからお前について何も言うことは出来ないかもしれない。だけど、俺は一つだけ言えることがある」
「……何だ」
「誰かに恋愛を相談することは小細工ではなく努力だ」
「!?」
「それは相手に気に入られようとする小細工じゃなくて、相手を幸せにしたいって言う努力だと思うぜ?」
「……ふっ。俺はお前を間違った目で見ていたようだ」
「そうか」
「少し奴の所に行ってくる」
「あぁ行ってこい。……あいつチョロイな」
五人目《椎名》
「それで、多々のことを知ってるか?」
「……知ってる」
「普通に喋れるんだな。じゃあ教えてくれないか?」
「奴は可愛いものをくれた」
「は?」
「この人形も元々は多々が作ってくれたものだ」
「これをあいつが作ったのか!? この犬のぬいぐるみを!?」
「そして私に裁縫を教えてくれたのは多々だ」
「あいつそんなことまで出来るのか!?」
「奴のパジャマである着ぐるみは私が作った」
「確かあいつがいつも着ているパジャマだよな?」
「そしてこのパジャマは奴が作ってくれたものだ」
「このウサギのパーカー風パジャマをか? あいつもお前も手先が器用なんだな」
「あさはかなり……」
「照れたのか?」
「照れてなどいない」
六人目《遊佐》
「どうも遊佐です。ドヤリ」
「あ、あぁ。ところで多々について知ってるか?」
「多々さんのことを知ってどうするつもりですか? 襲うつもりですか? 多々さんを襲っても残念ながら薄い本は厚くなりませんよ?」
「そんなものはいらねぇし襲うつもりも無い! それで多々について今色んな人に聞いてるんだ」
「そうだったのですか。多々さんはネタに生きています」
「だろうな」
「なのですが実際はそのネタで誤魔化しているだけの普通の傷ついている人です」
「そうだったのか」
「はい。彼はただの強がりです。ネタに走って元気一杯に見せかけて、実はいつも心の中で泣いている可哀想な少年なんです。シュン」
「俺、知らなかった」
「と言う設定でどうでしょう?」
「設定かよ!」
「それを慰める為に音無さんが俺で暖めてやるよと襲いかかるのはどうでしょう?」
「本人目の前にして薄い本の話をするな!」
「ダメでしたか。では次の設定を――」
「俺は多々本人について知ろうとしてるんだ! お前の薄い本の設定を知ろうとしているわけじゃない!」
「残念です。シュン。ですが私は諦めません。ドン!」
「口で自分の状態を表すな」
「多々さんには面白いと言われたのですが。ニヤリ」
「本当にニヤリとしてないのにニヤリとか言うな。ともかく、多々ってどんな奴なんだ?」
「完璧超人から性格を抜き取った人です」
「……今までで一番わかりやすい説明に俺が驚いている」
「全音無さんが驚愕した遊佐のストーリーです。きっと大ヒット間違いなし。ブイブイ」
「だからネタに走るなって。じゃあ俺次の奴に聞いてくるわ」
「行ってらっしゃい。まぁ実際あの設定は本当なんですけどね」
七人目《藤巻》
「多々について? あいつがなんかしたのか?」
「いやそういうわけじゃなくて、ただ単純に多々ってどんな奴なのか気になっただけだ」
「多々がどんな奴かって言われたら、あいつは元々軽音部だったっつーことか」
「軽音部? だからガルデモのバンドを手伝ってるのか?」
「あぁ。何でもボーカルをしてたらしくてな。あいつ滅茶苦茶歌が上手いんだぜ」
「やっぱり完璧超人か」
「あ、でもあいつ甘いものが苦手って言ってたな」
「意外だな」
「なんか甘いものは高級品だからって言ってたんだが、まぁそこらへんはきっと過去に色々あったんだろうよ。詮索してやんなよ」
「わかった。他にはなにかないか?」
「俺もそんなに長く多々と一緒にいるわけじゃないからな……。あ。あいつは大体四つに人を分けてるぜ」
「四つ?」
「確か、愛してる奴、大好きな奴、普通、嫌いだ」
「その四つなのか? 大嫌いとかはないんだな」
「そうらしいぜ。何でも嫌いの中は殺したい奴しかいないらしい。因みに俺達戦線メンバーは普通以上大好きな奴未満が多いらしい。ガルデモメンバーは全員大好きな奴。関根が愛してる奴らしい」
「あいつって割と一途なんだな」
「他の女に手を出す時もあるが、あいつがいつも言ってるのは可愛いし大好きだけれども愛しているのはしおりただ一人だとよ。あいつに愛されてる奴は幸せもんじゃねぇのか?」
「確かにそうかもしれないな」
「あいつは常に女の幸せを考えながら動いているし、絶対に彼女を裏切る様な真似をしねぇ奴だと俺ははっきり言えるね」
「あいつのことを信頼してるんだな」
「まぁな。確かにあいつは見た感じ頭がおかしい奴かもしれねぇが、結局の所一人の人間だったってことだよ。勿論天才で完璧超人でも苦悩するし、普通の奴と変わらないってことだ」
「なるほど。ありがとう」
「気にすんな。あいつになにかされたらすぐに動けよ。手遅れになるからな」
「あぁ。気をつけておくよ」
取り敢えず本日の成果はこのくらいか。
もう遅いしまた明日にしよう。
SIDE:多々
「多々!」
「うわぁ!? どうしたの野田君!?」
「俺を……弟子にしてくれないか」
「いきなりどうしたのさ」
「俺はゆりっぺを俺の手で幸せにしたいんだ。頼む! お前にしか頼めないことだ!」
「そんな土下座までして!? でもその心意気、流石だよ野田君」
「多々、お前……」
「俺で良かったら協力させて!」
「ありがとう! いや、ありがとうございます師匠!」
「やめてよその言い方は」
「ではマスターとお呼びする!」
「……なんか嫌な予感がしてきた」
次回予告
「すまんのう音無はん」
「兄貴……か。奴の兄になるならばそれもいいか」
「そこを聞いてくるの!? 怖い、怖いよ音無君!」
「いきなりそんな爆弾発言されたら誰でもそうなるわ!」
「誰かが一緒にいてやらないと、あいつは壊れてしまうよ。そんなことはさせたくない」
「多々? 馬鹿に決まってんだろ」
「多々君を巡って血で血を洗う世紀末な世界に変わるかもしれないね」
「勿論だよ。だってそれが――あたしの役割だもん」
第36話《Search Second》