俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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お年始お疲れ様です。
艦これ新年テイルズ新年パズドラ新年とやることは沢山あって困ります。


033 《Engage》

「――つまり貴方は可略化して言うと、NPCに憑依した人間と言うことなの?」

「それで大体合ってる」

 漸く自分のことを理解した俺は、リーダーであるゆりちゃんにキチンと説明していた。

 と言うのも説明しなさいとしおりに怒られたからである。鬼嫁だ。

「はぁ。確かに貴方は普通とは違うと思っていたけれど、まさかそんな存在だったなんてね。いつどこででもイレギュラーと言うものは有り続けると言うことかしら?」

「そんな感じじゃないかなぁ? そこに存在している以上、バグやイレギュラーって言うのは必ず何処かに存在しているものだからね。強いて言えば影みたいなものかな」

 人がいれば光にあたって影ができる様に、存在していればバグやイレギュラーは起こってしまうんだ。

 それは何処の世界であっても何であろうとも、変わらないと言うことだね。

「とにかく、貴方は人間でありNPCであると捉えていいのかしら?」

「そこらへんはゆりちゃんの勝手にしてくれにゃ。俺的にはガルデモと一緒にいれれば万事オーケー」

 ラブじゃなくてライクですけどね。ここは譲れない俺の一線。

 ハーレムとか言っているけれど実際はただの一途な男の子なのれす。

「そう。なら貴方は人間と扱うわ。元々人間として扱っていたわけだしね」

 その方がありがたいでござると言おうとしたけれどやめた。

 結局の所俺はどっちでも良いしなー。

「超個性派NPCとして扱っても良かったんだけど、それだとNPCとしての前提が崩れるじゃない」

「まぁそう思うんならそれでいいんじゃない?」

 別に俺達が思っていることなんて、全部把握できているわけじゃないし。

「なら報告は終わりよ。貴方は私達の仲間。それでいいじゃない」

「流石はゆりちゃん。そこに痺れる憧れるぅ!」

 そんなことを言いながら校長室を後にすると、ふぅとため息を吐いた。

 ――しおり成分が足りない。

 

 

 

「アイキッスユー!」

「うわっ!?」

 しおりに飛びついた。

 いやぁもう名前の通り飛びつきましたともそうですとも。何か問題でも?

「うわぁ……。アホップルがいる」

 ゆいにゃんに何か呟かれていた気がするけれど、そんなことは問題ないない!

 取り敢えずひさ子ちゃんに襟首掴まれて持ち上げられてしまったので、どこからそんな筋力が出ているのか小一時間問い詰めいたい多々君です。

 胸か!? 胸なのか!? それは実は胸筋なのか!?

「お前なぁ。暴れるのはいいが練習中に関根がギターを置いた瞬間に飛びつくのはやめろ」

「廊下で機会を伺ってました。ここだと言う瞬間に飛びつきました。反省はしてません」

 投げられますた。だからどこからそんな筋力が――以下略。

 投げられた方向にいた遊佐ちゃんにやっと手を挙げると、やっと手を挙げて返された。

 今日も今日とてノリが良くてお兄さん嬉しいです。多分俺の方が年齢下だけど。

「多々さんはいつでもひさ子さんに投げられていますね。その襟首は飾りですか?」

「ごめん。俺でも理解できないネタは振らないで欲しいんだ」

 そこからどう偉い人にはそれがわからんのですと繋げれば良いのでせうか?

「多々さんはこの世界について気がついているので一つアドバイスを。この世界は卒業する場所です」

 俺にしか聞こえない声で、遊佐ちゃんはそう言った。

 多分そうだとは思っていたけれどね。

 この世界は青春時代をまともに遅れずに死んだ者達で、未練を無くして卒業――成仏して転生する世界であることも。

 いつか全員で卒業しなければならないことも。

「そっか」

「わかってはいるようですね」

「理解することと実行することは別だよ。今しなきゃならないことは別に他にもあるし、最優先ってわけじゃないかなぁ」

「実際岩沢さんの卒業を食い止めていましたからね」

 そうなんだよねぇ。俺がまさみちゃんの卒業を止めちゃったんだよねぇ。

 これは責任取らないといけないかな。

「別にいいさ。ガルデモのメンバーは俺と一緒に卒業してもらうから」

「お熱いことで」

 遊佐ちゃんの言葉に俺はクスリと笑った。

 例えそれがエゴであっても、愛している人と大好きな人達と一緒にいたいんだよ。

 それが――人間って生き物だからね。

「きっと選択する時はいつか必ずくる。それを、無碍にするわけには行かないんだ」

 選択がいつ起きるのかはわからないけれど、それでもし俺を選んでくれたとしたならば俺は皆を導く責任がある。

 だから俺は進むんだ。次のステージに、進まなきゃいけないんだ。

「それならば問題ありませんね。いつか私も貴方に卒業させてもらえることを楽しみにしています」

「……そうかい」

 また一人大切な人が増えたなと思いつつも、それが嬉しくて仕方が無かった。

 大切な人がドンドン増えていって、いつか大切な人の輪が出来る。

 そうすれば俺は本当に、あぁここにいてよかったなぁと思うことができるんだろう。

 だけどまだ、根本的なところが解決していない。

 どうすれば俺が卒業することが出来るのかということが分かっていない。

 ヒントとなるのは、姉の存在だ。

 ややこしいことになるなーと思いつつも、俺はゆいにゃんの歌声を聞きながら瞳を閉じた。

 

 

 

 ――目を開くと夕方になっていた。

 結構長い間寝ちゃったかなと思い練習室を覗くと、そこにはしおりの姿があった。

 恐らく俺が起きるのを待っていてくれたんだろう。

「起こしてくれればよかったのに」

「あはは。タッ君がいい寝顔で寝てたからね」

 笑いながら言ったしおりに、そうだったんだと答えつつも俺達は無言になった。

「実はあたし、タッ君のこと知ってたんだ生きてた頃に見たテレビに雨野多々って人が出てた。タッ君特番を組まれてたこともあったんだよ?」

「いやそれ以前の問題として俺のことを最初から知っている時点で驚きなんですが」

 ってことは最初から俺が殺人犯だったって知ってたってこと?

 何故それなのに俺に近づいたし。

「幸せを求めて死んだ殺人犯ってタイトルでね? その時タッ君ってもう被害者の扱いだったんだ。映画にまでなってたんだよ? 両親に捨てられて、大切な人を奪われた主人公が復讐の為にヤクザに乗り込むストーリー。結構人気の映画だったんだ」

 まぁわからなくはない。

 日本人が好きそうな波乱万丈の人生だったし、ヤクザを日本から遠ざけたい人にとってはこういうことをしてますアピールにも十分使えただろうしさ。

 死人に口なし。誰がなんて言おうとも、美化しようとも、俺という存在がそれに文句を言えることは何もなかったんだから。

「死因は変えられてたけどね。映画は最後にヤクザに撃たれて死んじゃったけど」

「そりゃ死因テクノブレイクなんてしたら映画としての評判ガタ落ちでしょ」

 ただの喜劇じゃねぇか。

「あたしはその映画を見て、あぁこういう人もいたんだって思ったんだ。あたしはまだマシかなって」

 あの頃の俺はそんなこと思ってないし、NPCに一般的な感性を貰わなかったら今でもあれが幸せだと思い続けていたんだと思う。

 蓮花と共依存して、姉さんの為だけに時間と労力を惜しんだ空っぽな俺。

 自分がそこに無かったとしても、それも幸せだと考えてしまう程俺の思考は衰弱していた。

「最初にタッ君と会った時、別人だと思ってた。あたしより前に死んだ人だし、明るい雰囲気だったから。でも違った。過去を聞いた時に、あぁやっぱりこの人はあたしの知っている映画の中の主人公なんだって思った。あの時の一人じゃダメでも、二人ならダイジョーブって言うのはあたしがその映画を見てずっと思っていたことだったんだ」

 次々と現れていく事実に、俺は聞くことしかできない。

「タッ君も、タッ君の元カノも、タッ君のお姉さんも、依存はしていても一緒じゃなかった。考えるのは全員一人で、二人でどうしようかと考えるシーンが殆ど無かったのだから――」

「二人ならダイジョーブ。二人なら二人で分かち合うことが出来る。そんな根本的なことも、あの頃の俺達は理解できていなかったんだな」

 全く酷い人生だったよと軽く呟いた。

 俺は、俺達は何もかもを知らなすぎた。

 一般的なことを知らなすぎたんだ。

「そして一緒にいて、あぁこの人はやっぱり自分で自分のことをずっと考えちゃう人なんだなと思って、ずっと一緒にいたいと思った。最初はそんな気持ちだったけれど、段々それが好きって気持ちに変わっていった。で最後には、愛してるって気持ちになったんだ」

 しおりから愛してると言われた瞬間結婚しようと言いそうになったけれど、それを我慢して心の奥にしまう。それを言ってしまったらいけない気がしたから。

「だからあたしはタッ君が好き。愛してる。これからもずっと一緒にいてください」

「しおり……」

 俺はしおりに近づくと、しおりを抱きしめた。

 壊れないように優しく。されど離さないように強く。

 しっかりとしおりのことを抱きしめて、その体温を感じながら俺は思う。

 あぁこの子には絶対に勝てない。しおりには勝つことなんて出来るはずがないんだ。

「愛してる。ずっと一緒にいたい」

 自分の中の何かが壊れていく音を聞きながらも、俺はしおりを抱きしめ続ける。

「結婚しようしおり」

「――うん」

 互いの愛を知り、愛を受け止めることをしった俺はしおりに告白をした。

 それが叶えられた時、俺の中の何かがカチリと無くなった。

 

 

 

SIDE:???

 ――一つ目が解けたんだ。

 私はそれを察すると、少し笑みを浮かべてしまう。

 良かったね多々。

 貴方が叶えたいと願っていたものが、遂に一つ叶えることが出来たのだ。

 この長い長い時を生きる中でも、忘れなかった貴方の大切さと思い。

 それを十二分に理解して、貴方にそれを与えたの。

 まだ後二つ残っている。

 だけれども、それで貴方の中にあったプロテクトは無くなった。

 今までの貴方は生前の貴方。

 価値観が手に入っただけの、昔と変わらぬ貴方。

 だけれども今からは違うの。今からの貴方は、この世界で進化していく。

 プログラムなんて関係なく、ただ自分の行きたいと思う方向に進んでいくことができる存在。

 自由の翼を手に入れた天使。

 さぁ見せて。貴方が何を望むのかを。

 




次回予告
「珍しく音無君がやる気満々!?」
「割と普通ね。もっと面白いこと言いなさいよ」
「墓穴掘ったのか?」
「流石ゆりちゃん! ただでは終わらせない!」
「見た目だけならね。頭の中は底なしの馬鹿だしな」
「またコアなところ使ってきたなー」
「プルンプルン揺れてるからですね。無いからなー」

「――第三回死んだ世界戦線ラジオ!」
第34話《On Air Third》

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