俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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 爆焔特攻ドワーフさん、HDtamagoさん評価ありがとうございます。
 割と本編の方もいい感じに進んできました。
 100話行かずに終わるかも知れないですねこの作品。
 頑張ってやるぜ☆


024 《Moving Monster》

 暫く進んで漸く休めた俺達は、息をついた。

 途中で水で溺れて死にそうになった藤巻君の意識を刈り取って連れて行ったり、椎名ちゃんが飛び込もうとしたところを俺が代わりに飛び込んでとってきたりとしたけどね。

 取り敢えず椎名ちゃんからの好感度がバカみたいに上がったから良しとしよう。

「良くもまぁ全員生き残ってるわね」

「殆ど多々のお陰だけどな。もし多々がいなかったらって考えるとぞっとするぜ」

 藤巻君の言葉に、賛同する様に全員が頷いた。

 まぁ他人に殺されるのが気に食わないだけなんだけどね。

「それにしても、そろそろギルドだと言うのに物音が聞こえてこんな」

「松下君の言う通りだよ。俺は今から先に行くから、後で来てよ」

「待てよ。一人で行くつもりか?」

 日向君の言葉に、俺は笑顔で返した。

「俺はお前を一人で行かせたくない。お前は一人で何もかも背負いすぎだ。関根と二人でそれでも分かち合ってるのかもしれねぇけど、俺達も信じろ。俺達もお前の味方なんだ」

 日向君の言葉に、俺は好感が持てた。

 やっぱり日向君は優しいんだなと思うと同時に、だからこそ自分がやらなきゃいけないと言う思いに押される。

「じゃあ休み終えたらすぐに来て。俺はもう体力を回復したからさ」

 元々使ってない体力だからねと言いつつ、俺は走り出した。

 武器はナイフ二本。

 そして頼れるのは自分の運動神経と肉体のみ。

 最高にワイルドで、ハッスルできる状況じゃないかアミーゴ。

 俺は走り出すとすぐにギルドの入口と思える場所を見つけたが、それよりも先に音を聞く。

 下にある機械らしきものの音は聞こえるけれど、天使ちゃんが何かにかかった音は聞こえない。

 ――ドンと、小さな音が聞こえた。

「こっちか」

 俺はそっちに向けて慎重に歩き出す。

 トラップがあればそれを見抜くことも、割と難しいことじゃない。

 元々対天使用とは言っても高校生が考えたトラップなんだから、大丈夫だ。

「漸く会えたね、子猫ちゃん」

「私は子猫じゃないわ」

 暫く進んだ先で見つけた天使ちゃんを見て、俺はナイフを構えた。

 ハンドソニックを展開している天使ちゃんに微笑みかけながら、俺は少しずつ距離を詰める。

「貴方達がしていることは校則違反よ。この学園の地下にこんなものを作るのは許されてないわ」

「そうかもしれないね。だけど、君にとっての大切なものみたいに俺達にとっても大切な場所なんだよここは。だからそれを邪魔させるわけには行かないね」

 俺は軽く地面を蹴ると加速した。

 同時に加速していた天使ちゃんのせいで、俺の予想よりも二三歩早く攻撃圏内に入る。

 勿論先に動き出していたとも言える俺は準備が整ってなくて、天使ちゃんは整っているからすぐ行動を開始してきた。

「ちぃ!」

 ハンドソニックが振るわれ、俺はナイフでそれを抑えつつも後ろに跳んで衝撃を減らす。

 その後すぐに体勢を立て直すとナイフを一本天使ちゃんに投げつけた。

 それをハンドソニックで弾いた瞬間俺は天使ちゃんの懐へ入り込むと、ナイフを使って天使ちゃんの右手の付け根を切り裂く。

 だがそれに瞬時に反応して右手を下げたことによって、若干切り裂かれただけで全ての傷が終わる。

 次の瞬間背後に移動していた天使ちゃんを、何故か理解できた。

「――貴方」

 ナイフで切り裂いた右手から血を流しながら、天使ちゃんは俺の方を驚いた様に見ていた。

「へへへっ。中々いい趣味してんじゃん」

 俺は切り裂かれた右脇腹を見ながら、天使ちゃんの腹にナイフを突き立てた。

「どうして後ろに移動するってわかったのかしら?」

「勘だよ勘。そろそろ皆も来そうだし、終わらせるにはここかなってね」

 ナイフを抜くと、血を払ってから天使ちゃんを見た。

「第二ラウンドしますか!」

 右脇腹の激痛に耐えながら、俺は右腕を振るった。

 ナイフは既に右腕でしか持っていない。

 それを使って天使ちゃんを倒すには、五体満足で傷もない状態じゃないといけない。

 そんなのは今の俺には無理だ。

「でもさ、言ってくれたんだ。俺の味方だって」

 こんな人間かどうかすらわからない俺の、味方をしてくれるって。

 だから――答えるしかないじゃないか。

 その思いに、答えたいと思ってしまうじゃないか。

「無理矢理は嫌いでね。一緒にいくのが好きなんだぜ俺は」

 自分の右脇腹の傷の中に――手榴弾を押し込むとそのまま天使ちゃんに抱きついた。

「くっ……!」

「じゃあな天使ちゃん。また今度」

 超至近距離からの爆発で――天使ちゃん諸共俺の体は弾けとんだ。

 

 

 

「――目が覚めたら知らない天上が広がっていたでござる」

「そりゃ保健室の中だもの。空なんて広がってない天上よ」

 俺は起き上がると、制服が新しくなっているのに気がついた。

 誰かが着替えさせてくれたらしい。

「ギルドは守られた。天使が入ってきた道を埋めて入れないようにして、別の道を作り上げたわ。貴方のおかげよ。ありがとう」

「俺は別に褒められる様なことはしてないぜぃ。俺は俺に出来ることをしただけだからな」

「それでもそのおかげで私達は道を示された。貴方のおかげで、私達はギルドを放棄すると言うことをせずに済んだのよ」

 俺はこの命を誰かに使えたことに、少し達成感を感じられていたんだから。

 これが……消えるってことなのかもしれないな……。

 だというのに、俺は消えると言うことが一切無い。

 ――やっぱりか。

「少し疲れちまった。ちょっと一人にしてくれないか?」

「えぇわかったわ。誰も入れないようにしておく」

 ゆりちゃんはそう言ってそのまま保健室を出て行った。

 一人になった保健室で俺は溜息を吐いてから、ベッドを叩きつけた。

「ちく、しょう……!」

 最悪だった。

 自分が人間だと証明する為に行ったことが、自分が人間では無いことを証明する為の行いになってしまった。

 俺という存在が、どういう存在なのか、自分で理解してしまうことになってしまった。

 それがどうしようもなく最悪で、絶望的なことだと一番俺が理解していたのに。

 世界って言うのは理不尽だ。

 こんなにも最悪な結果を、俺に向けてくるのだから。

「だけど――」

 ここで諦める訳にはいかない。

 ここで迷い始めるわけには行かない。

 この世界にはまだ秘密が残っていて、俺はそれを解き明かす可能性がある存在なんだ。

 こんなちっぽけな存在でも、ゆりちゃん達と一緒に抗うことが出来るかもしれないんだ。

 そして何よりも――ここには俺が愛した人がいる。

 真実を知ったとき、拒絶されるかもしれない。

 真実を知ったとき、嫌われるかもしれない。

 それでも最後までそれを隠して、彼女を笑顔で送ってあげたいんだ。

 俺という存在がここにいたことを、自分で証明したいんだ。

「抗い続けなければならない」

 例え植えつけられた心だとしても、例え受け付けられた思いだとしても、しおりを愛したいと言う気持ちは本物だから。

 ゆりちゃん達と楽しく過ごしたいと言う思いは本物だから。

 例え――自分がNPCだとしても。

 

 

 

SIDE:???

「気がついちゃいましたか」

 私は案外早く気がついたことに、流石は多々だと思った。

 自分がNPCと自覚することが出来るNPC等存在しないと言う大前提を塗り替えて、自覚することが出来るNPCになる。

 無個性な集団だけで神様が本当に青春を出来るとは思ってないでしょうしね。

 きっと元々NPCには進化するプログラムか何かが入っていたのかもしれません。

「でも違いますよ多々」

 貴方のその回答は正答ではない。

 もしもそれで全てを納得してしまったら、何が間違いで何が真実なのかを貴方は理解できていないママになってしまう。

 それでは許されないのが、この世界の掟なのだからもっと多くのことに気が付いてもらう必要があります。

「ANGEL PLAYER」

 私はそれを起動した。

 プログラムの内容は影の設定。

 ただし彼と彼の愛する彼女のみを除く全ての人物を対象とした、愛が生まれた瞬間に発生するプログラム。

 もしも発動したならば、それは多々を巻き込んだ壮絶なモノへと発展する。

 そして発展してしまえば、危機を乗り越えた二人は更なる高みへと上がるかも知れない。

 私は別に多々のことが嫌いなわけではないし、むしろ好きだから本当は言いたい。

 だけれどそれをしてしまえば、多々はその重さに耐えかねて自壊してしまう。

 そんなことは嫌だ。

 世界は残酷だけれども美しくなければならないのだから。

 多々と言うプログラムに隠された、本当の意味を理解しなければいけないのだから。

「楽しみですね、多々」

 貴方がこの世界の真実に、私の真実に、己の真実にたどり着くのがいつになるのか。

 もしかすると永遠に来ることはないのか。

 楽しみで仕方ない。

「世界はやっぱり美しい」

 私は美しくないのかもしれませんが、私は美しい全てを見ることが好きなんです。

 楽しみにしてますよ、多々。

 

 

 

SIDE:しおり

 タッ君の様子が変だ。

 あたしはすぐに気がついていた。

 最もかなり危険なレベルでマズイと気がついたのはラジオの時だけれどね。

 人間かどうか聞かれた時のタッ君は驚いてはいたものの、周りからしてみれば変な質問が来て今までと違ったから驚いている程度にしか見えなかったかもしれない。

 だけれどもあたしにはちゃんと、その質問が自分の真意を撃ち抜いていたから驚いて答えられなかったと理解していた。

 タッ君は自らが人間かどうかで悩んでいる。

 タッ君には秘密だけれど、あたしは既に気がついていた。

 と言うのもあたしはタッ君のことをなんでも知ってるからである。(`・ω・´)ドヤァ

 タッ君は最初に会った時から今まで、銃を疑ったことはない。

 あたしだって最初に見た時は驚いたけれど、タッ君は銃が本物であることを自分が撃ったわけでもないのに理解していた。

 まぁそれだけでもいいだろう。

 次に疑問に思ったのは、タッ君が悲しいと思ったところを見たことがないことだ。

 確かに悲しいよぉとか言っている時はあったけれど、その瞳には悲しみなんて一つもなかった。

 自分の話をするときも、怒りはあれど悲しみはなかった。

 悲しみという感情が欠落しているのかもしれないから、まぁそれでもいいだろう。良くないけど!

 次に疑問に思ったのは、銃を撃っていた時だ。

 その時のタッ君はまるで歴戦のゴルゴ13の様に獲物のことだけを考えていて、周りの言葉を一切聞いていなかった。

 と言うか戦闘になった瞬間雰囲気がまるで変わっていた。

 まぁそれも実は傭兵で戦っていたと言うことならいいだろう。良くないけど!

 ともかく、不思議な部分が沢山あったことに一番近いあたしだから気がついていた。

 一緒にいるからね!

 最近はそれに自分でも気がついたらしく、不安げな顔を見せる時もあった。その時の顔もちょっと可愛くてドキドキしたのは内緒。

 そしてあたしは何個かタッ君を出した。

 一つはタッ君が実は新種のNPCで、あたし達が過ごしやすいように神様が作り出したプログラムかもしれないという仮説。

 そしてもう一つが、タッ君はNPCと人間を足して二で割った存在かも知れないという仮説。

 正直に言えば二つ目の仮説が一番ありえないけれど、一番正しいと思っている。

 タッ君はNPCにタッ君と言う人間が憑依して生まれた、報われても消えることができない人間じゃないかと言う話なんだよね。

 最初に消えられないと言っていたのが、どうも気になる。

 この世界の消え方なんて、満足するくらいしか言ってなかったはずなのに。

「タッ君。貴方は誰? 一体何を考えて、何をしようとしてるの?」

 わからない。

 わからないけれど――タッ君があたしのことを好きだと言うことだけは絶対に譲れないし、それはタッ君の本心だと言うことは理解していた。

 

 

 




次回予告
「だからなんで毎回テンション高いんだお前は!」
「日向さんがウザイのでボッシュート」
「――金さえくれればなんでもやりますよ。ニヤリ」
「まさかヤリ逃げ!? 日向君がそんな事する人だとは思わなかったよ。ちゃんと女に興味あったんだね」
「遊佐ちゃん。幾ら俺でも激怒プンプン丸だからね!」
「先生。実は私――腐女子なんです」
「ふーつーうーじゃーなーいー!」

「と言うわけで第二回死んだ世界戦線ラジオ始めるよー!」
第25話《On Air Second》

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