俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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クリスマスイブなので連続投稿。
20時30分にも投稿する予定。
25日の00時30分にも投稿予定。
その後10時30分と17時30分と22時30分を持って通常通りに戻します。
一挙7話の投稿ですが、ストックはあるので頑張ります。



019 《First Mission》

 軽く拳銃を撃っていたゆりちゃんが、手に持っていたグロック17を渡した。

「はい音無君。初めてでも撃てるわ」

「ダメだよゆりちゃん。そこは初めてだけど優しくしてねッ――」

 俺の腹にしおりの拳が突き刺さり、尚且つゆりちゃんがブン投げた拳銃が俺の頭に直撃した。

 全く美少女は当たりが辛いぜ。

「足を狙いなさい。取り敢えず追ってこなくなるわ」

「因みにたまに地面を這いつくばりながらのっそのっそと襲いかかってくるぞ☆」

「そんなテケテケみたいなことは起きないわよ」

 ちぇっ。新人を少しビビらせようとしただけなのに。

「女の子相手にか? 傷はすぐに癒えるのか?」

「そういうのは経験して覚えていきなさい。私達もそうしてきたんだから」

「なる程。ゆりちゃんは処女卒業後に再び処女膜再せ――」

 しおりのハートブレイクショットが炸裂して動けなくなった俺に、ゆりちゃんが発砲して俺のソファーの真横を撃ち抜いた。

「次言ったら殺す」

「イエスマム」

 両手を挙げた俺を見て、音無君が苦笑いをしていた。

 するとゆりちゃんは部屋を暗くしてスクリーンを下ろした。

「まず音無君にはいつもやっている簡単な作戦に参加してもらうわ」

 へー、オペレーションやるのって俺的にはサンタクロースデッドエンド以来な気がするなぁ。

「作戦名オペレーショントルネード」

 俺は飲んでいたコーラを盛大に吹き出した。

 怪訝そうな顔で俺を見てくる音無君に対し、俺はそんな音無君にボケをする暇もない。

「え?」

「こいつはでかいのが来たな」

「と、トルネード……」

 音無君は別の方向のトルネードを考えているみたいだ。

「生徒から食券を巻き上げる!」

「その巻き上げるかよ! しかもでかくねぇよ! いじめかよ! 武器や頭数だけ揃えやがってよ!」

 野田君が動き出していたので足をかけると、面白い様に転んでハルバートを床に突き刺してそこに刺さって死んでくれた。

 あ、殺しちゃった。ごめん野田君。生き返るから許してちょんまげ。

「我ら――」

「はいはーい。皆が喋ると面倒だから俺が説明するよ! 簡単さ! 音無君、トルネードと言う意味で文字通り巻き上げるんだ。それが理解できれば、君も一流の戦線メンバー」

 わかるかな? わからないかな?

 因みに全ての戦線メンバーが尽く馬鹿だから期待はしていない。

「いい? 貴方は天使の侵入を阻止するバリケード班。作戦ポイントである食堂を取り囲む様に、それぞれ指定のポジションで武装待機。安心しなさい。楽な所に置いてあげるし、今回は陽動部隊所属だけれど実働部隊としても優秀な多々君を置くわ」

 チラリとこちらを見てきたので、俺はニヒルに笑って返した。

 しかし無視されてしまった。解せぬ。

「意外に優秀な多々君ってよく言われるクマー」

「本当にこいつは大丈夫なのか?」

「えぇ。サンタクロースに見せかけてここにいる男子メンバーの殆どにヘッドショットを決める位には戦力になるわ」

 ちょっ、ゆりちゃんそれをここでばらさないでくれるかなぁ!?

「何!? あの時俺達を撃っていたのは多々だったのか!?」

「通りで綺麗にヘッドショットを決めると思いました」

「ふんっ。貴様が敵だったか! 死ねぇ!」

 生き返った野田君は取り敢えずハルバードを蹴り飛ばして防ぐ。

 だけどそのまま突撃しようとして天上に突き刺さったままのハルバードに激突して死亡してしまった野田君を、スルーした俺は悪くない。

「野田が死んだ! この人でなし!」

「いや、俺に言われても……」

 音無君に振ったけれどこれはスルーされた。

「でもゆりちゃん、今回俺は実働部隊なの? まぁ夜だからいけど」

「朝だと問題あるのか?」

「ふっふっふっ。実は俺は吸血鬼――」

「多々君は昼は紫外線が浴びるからお外きらーいって陽動部隊のサポートと引きこもりをしてるのよ」

 なんだよー。最後まで言わせてくれたっていいじゃんかよー。

 そう思いつつも話が進まなくなってゆりちゃんに次こそ撃ち抜かれそうだったのでステイした。

「紫外線って……」

「紫外線はお肌の天敵なんだゾ!」

「お前は女子か!」

「女子力高め系男子です! 因みに俺のことを否定しようともそれでモテてるから否定できないゾ☆」

「音無君、彼はうざいけれど。本当にうざいけれどやる時はやるタイプよ」

「わかった。本当にうざくて正直居ても居なくても俺の精神衛生上酷く邪魔だけれど、連れて行く」

 しおりに抱きついて慰めてもらった。

 最近戦線の皆が俺に厳しい件について。

 優しいのは藤巻君と日向君だけです。

 因みに日向君はホモの疑惑がかかっているので、出来れば藤巻君だけにしてくれるとありがたいのです。

「今回は多々君が実働部隊だから通常通りの普通のライブになるけれど、岩沢さん頼めるかしら?」

「あぁ。多々が居なくてもできる所を見せてやる」

 自信満々なまさみちゃんだけど、結局の所頑張るのひさ子ちゃんとしおりとみゆきちちゃんだから。

 あんた結局音楽キチすぎていつもパフォーマンスみたいなの忘れてるだろうが!

 因みにみゆきちちゃんはドラムキチである。前声かけられたら思い切り打楽器にされた。

 あの時のみゆきちちゃんは阿修羅すら凌駕する存在でした。

「人呼んでみゆきちちゃんスペシャル!」

「そんなもの、あたしの無理でこじ開ける!」

「いや、こじ開けるのは俺の息子なんで」

 おーっとここでしおり選手の肝臓打ち!

 モロに喰らった多々選手は倒れ込んで腹を抑えた!

「と言うかガチな奴や……。これガチな奴や……」

 モロ肝臓打ち完成したしヒットしたせいで、中途半端に痛い痛い言えない位痛くなってる奴や……。

 てか最近しおりさんガチじゃないっすかね?

「タッ君、最近ネタと言うよりセクハラが多くなってる気がするけど」

「ははっ。そりゃしおりがそれだけ可愛いってことだよ」

 あ、皆ブラックコーヒー一気飲みした。

「でも残念でした。あたしはタッ君のことが確かに大好きだけど、そんなにセクハラしたくないから!」

「女子がセクハラって何? 詳しく求む」

「ふんっ!」

 待てしおり。それはマズ――。

 俺はしおりが振るった野田君のハルバードによって意識を絶たれた。

 

 

 

「あー。頭いてぇ」

「自業自得だろ」

 第二連絡橋のバリケードをしている俺は、しおりの活躍を見たかったなと思いつつFiveSevenを見る。

 何となくだけど、やっぱり愛着が沸いてくるよな。

「やっぱりお前も、神に抗いたくて戦ってるのか?」

「神様なんてどーでもいいよ。俺はただ単に、殺したい奴がいるだけさ」

 そう。殺したい奴がいるだけだ。

 勿論それ以外にも未練はあるけれど、最もなものはそれだ。

「そう……か。俺には記憶がないからそういうのはまだよくわからない」

「気長に待てばいいさ。それこそ何年でも何十年でも考える時間はある」

 本当に、永遠にこの生活が続けばいいのにと何度望んだことか。

 本当に……。

「人生ってのはくだらないものだよ」

 ポツリと零してしまった言葉に、俺は急いで音無君の方を見る。

 驚いた様な顔をしている音無君にごめんごめんと言ってから、俺は空気を感じ取って話すのをやめた。

「多々?」

「やぁ天使ちゃんのご登場みたいだね」

 俺がそう呟くと、音無君はゆっくりと月明かりで照らされていく連絡橋の先を見た。

 天使ちゃんがいるのを見て、すぐに銃を構えた音無君に対して俺は気軽に話しかける。

「お久しぶり天使ちゃん。今日はどんなご要件かな?」

「……貴方は今日はライブに参加しないのね」

「まぁそうだね。あ、もしかして俺の歌声を待っててくれたの? 残念だけど俺の歌は大切な人の為にあるからね」

 軽口を叩いてるものの、天使ちゃんはゆっくりと歩いている。

「ストップ。これ以上進むならまた戦わなきゃいけなくなる」

「でも貴方達がしていることは校則違反よ。直ちにライブをやめて」

「ノーノーノー。三つのノーでお断りさせて頂きます。彼女達は俺の居場所だ。邪魔なんてさせねーぜ」

 カチャリと構えたFiveSeven。だけれども俺の武器はこれだけじゃない。

「――音無撃て!」

 パンと言う軽い音と共に音無君の拳銃から放たれた銃弾は天使ちゃんの腹部に命中する。

 と言うかあそこは子宮じゃないでしょうか?

「女の子の子宮を狙うとか音無君マジイケメン」

「文句言うな! 俺だって必死なんだよ!」

「わかってるわかってる」

 俺はFiveSevenをしまうと、ナイフを取り出した。

 ナイフよりも少し刃が長く小太刀の様なものだ。

「舞おうぜアミーゴ」

「――ガードスキル《ハンドソニック》」

 次の瞬間ハンドソニックとナイフが激突する。

 真正面からぶつかれば吹き飛ばされること確定な戦いも、戦い方によっては有利に進められる。

 ハンドソニックの一撃を避けつつ、俺はナイフを構えて天使ちゃんの体に一太刀入れる。

 それを咄嗟の判断で身を引いて最低限の切り傷に抑えた天使ちゃんを見て、俺は素直に感嘆の声を漏らしてしまった。

「すっげぇ……」

「ガードスキル《ディレイ》」

 瞬間移動の様に次の一太刀を躱した天使ちゃんがハンドソニックを構えて俺の後ろに現れる。

 だけど俺はそれを、転ぶようにして避けた。

「多々!」

「大丈夫だぜ音無君」

 俺はそのまま転がると、立ち上がって天使ちゃんの方を見る。

 だがそこには誰も――!

「後ろか!」

 ナイフを振るうとハンドソニックと激突して俺の体は弾き飛ばされた。

 倒れた状態で天使ちゃんの馬鹿力に抵抗できるわけねぇだろ!?

「ちぃ!」

 立ち上がってすぐに連絡橋の端に追いやられた事実に気がつき、俺はナイフを握ったままニヤリと笑った。

「――今だ音無君!」

 俺が叫んだ瞬間驚いた様な表情をした天使ちゃんは、弾かれるようにそこから距離を取ると音無君の方を見てハンドソニックを構えた。

「へ? お、俺?」

 しかしそこにいるのは全く状況を理解していない音無君。

 だがそれでいい。

 俺はその間に立ち上がると、横からFiveSevenで天使ちゃんの心臓を撃ち抜こうとして――止まった。

 心臓を撃ち抜こうとした瞬間非常に恐怖した天使ちゃんの表情が見えたからだ。

 それは大切なものを壊されそうになった女の子の表情で、俺は無意識に銃口を下に向けて両足を一気に撃ち抜いた。

「へへっ、やってやったぜ……」

 どうしてと言いたげな天使ちゃんの表情を見て、俺は再びニヤリと笑った。

「俺は女の子には優しいタイプの人間なんだ」

 無力化する為に撃つとしても、その子が大切にしているものまで壊そうとは思わない。

 だから俺は天使ちゃんの心臓を撃ち抜くのはやめた。

 そう言えば、音無君って心臓が無かったんじゃないっけ?

 心臓がない音無君と、心臓を大切にしようとする天使。まぁもしかすると死ぬこと自体を恐れていたのかもしれないけれど。

「気になるなぁ」

 今度聞いてみようかなと思いつつも、俺は立ち上がって背中に痛みを覚える。

 多分天使ちゃんに吹き飛ばされた時に背中を打ったんだろう。

「よし戻るぞ音無君!」

「あ、あぁ。いいのか?」

「いいのいいの」

 俺は無理矢理音無君の肩を掴んで食堂に向かう。

 そろそろトルネードする時間だし、俺的にもこれ以上この空間に居たくはない。

 だけど銃声を聞きつけた仲間達が集まってきた。

「おい。天使はどうした」

「倒しちゃったぜ☆ みんな――速さが足りない」

 ドヤ顔で言うと野田君がハルバートを投擲してきたので、俺は音無君を蹴っ飛ばすと同時に避ける。

 向こう側へと飛んでいったハルバートは、野田君が走って拾いに行きました。

「多々君天使を倒したって本当?」

「いや、こいつならありえるぜ。流石は鬼畜外道だ」

 俺は思い切りナイフを藤巻君に向けて投擲すると、藤巻君の脳天に直撃したナイフはそのまま藤巻君の命を奪った。

「藤巻君今日は夕飯要らないって」

「そう言うと思ったぜ。取り敢えずお疲れ様」

 日向君はそう言って労ってくれた。

 ふっふっふっ。俺の実力からしてみればこの程度余裕ってことですよ。

 上から降ってきた食券を見つつ、今日は食堂のおばちゃんに挑戦してやろうと思う。

 多々専用盛りの実力、試させてもらう!

「今日は醤油ラーメンの気分ってことで。後色々拾っておこう」

「一応早くしないとゆりっぺに怒られるぜ?」

「安全な場所って言ったのに狙われたんだから俺が文句を言いたい」

 全く困ったリーダー様だぜと思いつつも、手に入れた食券を持って食堂の中に入る。

 ライブも終わったから人も減るだろうと思いつつも欠伸をして席を取って待つ。

「今日はどうだったかい音無君」

「記憶を戻るまでの考える時間が、こんなにもハードだとは思わなかった」

「そりゃ上々。これがハードだと思わなかったらどんな世紀末を生きてたんだろうって俺は聞きたかったよ」

 軽く笑ってみると、音無君も笑って返してくれた。

 音無君が笑っている所を俺は見てなかったからね。

 記憶が無い状況でこんなところに放り出されたら確かに不安だし、笑うことすらできないのも無理はないのかもしれない。

 それでも笑っていた方が、苦しんでいるよりも心は軽くなるだろ?

「お前の彼女、頑張ってるな」

「おう! 自慢の彼女だぜ」

 ベースを弾いているしおりを眺めながら、俺は食券をクルクルと回して笑顔を浮かべる。

 今弾いているのはAlchemyだ。

 それを聞きつつも俺は音無君に問いかける。

「正当化出来ないかい?」

「えっ?」

 納得が行かないって言う顔をしてたからね。

 多分俺達が戦っていることを正当化できていないんだろう。

 消えないためとは言え、女の子をよってたかって銃撃したりしていることが。

「正当化なんてしなくていいよ。消えない為に、自分が何を出来るのかを考えて行動すれば答えは見えてくるはずだ」

「自分が、何を出来るのか……」

「そう。俺達はここに銃があり、武器があり、戦う術があるから戦っている。もし君が――そうだね。あの天使ちゃんを説得できる程の力があるのなら、それを行使すればいい」

 消えたくないならば何かアクションを起こさなければならない。

 まぁ未練も知らない状態ならば何がトリガーとなって消えてしまうかわからない状況だから、実はあんまり色々なことをしない方がいいんだけどそれは置いておこう。

 俺は誰かが消えることに、悪い印象を持っているわけじゃないから。

「さてと、人も少なくなってきたしそろそろ飯を頼みに行くか」

「あんたは――。多々は消えて欲しくない人はいるのか?」

 その問いに俺は少し笑みを浮かべた。

 消えて欲しくない人は、沢山いるさ。

 でも消えて未練を無くしてほしいとも思っている。

「秘密」

 だから俺は言葉を濁した。

 きっとその答えは、俺と同じ場所に立てる君が気がつくはずだからね。

 




次回予告
「音無君、そんなにテンション低かったら休み時間の間出来ないゾ☆」
「最近多々君が彼女とイチャイチャし過ぎて困っています。どうにかして頂けませんか?」
「それ言ったらアカン奴や!」
「「「おあご、れんごはためわだんるれなくださねいぇ!」」」
「もーひさ子先輩、おんなじこと言わないでくださいよー」
「「「「「お前痴漢役な」」」」」
「図が高いな。全てに勝つ僕を抜いて逃げようなど、烏滸がましいにも程がある」

「――第一回死んだ世界戦線ラジオ始めるぞー」
第20話《On Air》

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