皆様の評価と感想とお気に入りが、私の元気の源です。
今回は珍しく多々がカッコイイよ!
お気に入り200突破今更ながらやったぜ。
「じゃあ始めるわよ」
「ちょーっと待ってくれないかなぁゆりちゃん」
唐突に始めようとしたゆりちゃんを止めた。
現在ここは女子寮の屋上。
「言ったでしょ? 女子は密かに入り込む。男子は頭を撃ち抜いてからプレゼントを置くって」
「うん。ゆりちゃんは男子に何か恨みでもあるの? それは流石に俺でも引くレベルなんだけど」
流石に可哀想だよゆりちゃん!
でも俺にも銃を向けられたので両手をあげてステイした。
「リーダーの言葉は絶対よ」
「イエッサー!」
脅されてしまったので、仕方なく俺は狙撃銃を構える。
狙っているのは男子寮。ここから狙うのが一番いいらしい。
「……照準設定完了」
「撃ちなさい」
「了解」
放たれた銃弾は真っ直ぐに飛んで行き、高松君の頭蓋骨を一発で破壊した。
「命中確認。次弾装填」
薬莢を取り出して次の銃弾を込めると、松下君に狙いをつける。
戦線のメンバーの何人かはNPCに部屋を交代してもらって、互いに住んでいるらしい。
高松君の部屋にいた松下君は驚愕して外を見たけれど、それは間違いだよ。
「照準設定完了」
「撃ちなさい」
「了解」
松下君はそのまま窓を開いた状態で銃弾を受けて仰向けに倒れた。
脳天を撃ち抜いたのを見てから、死亡したと理解した。
「た、タッ君がゴルゴ13になってる!?」
「俺の後ろに立つな」
「タッ君の後ろじゃなかったらあたし落ちますから!?」
しおりの声に和みつつも、次の相手である野田君に照準を合わせた。
だけれど野田君はある意味一番危険だ。
「野田君はアホだけど反射神経はいいわ。日向君が最初に狙撃し、それを避けて調子に乗っている所を撃ち抜きなさい」
その言葉に了解と二人で答えると、俺は野田君をスコープ越しに見ている。
「……こちらを見ていますが」
「日向君ファイア」
ふっ。見えているぞと言う声が聞こえてきそうな程の自信満々な顔をしていたので、俺は日向君が撃った一秒後に撃った。
一発目をハルバートで弾き飛ばしてカッコつけていた野田君の頭をぶち抜いたのを確認すると、大山君の方は日向君に任せてTKを狙う。
「TK。君の犠牲は忘れないよ」
銃弾はTKを襲い再び頭を撃ち抜いた。
「全弾命中。凄いわね」
「射的ではいつも好きなもの取り放題ですた」
だって射撃得意なんだもん。因みにガンダムのゲームで使っていたのはカラミティです。だって射撃が沢山あるんだもん! むしろそれ以外いらない!
「大山君も殺害完了ね。じゃあオペレーションスタート!」
ロープを使って屋上から降りると、そのままプレゼントの入った袋を持ってサンタ衣装で男子寮へと突撃する。
男子寮突撃班は俺と日向君と藤巻君だ。
「第一段階チェックオッケー」
「「了解」」
俺がいつも女子寮に出入りする為の道を使い、男子寮へと入り込んだ。
「部屋内チェック完了」
拳銃を構えたままそう言った俺は、プレゼントを持ってTKの部屋に入る。
そこには怯えている生徒がいたが、もうこの時点でこの作戦はハチャメチャになってると思う。
「脈が無いのを確認した」
それを伝えると、日向君がTKの墓前にプレゼントを置いた。
これはどう考えてもお供え物です。わかります。
「こ、これは君達がしたのかい?」
「安心しろ。演技だ」
俺はそう答えると再び日向君達と共に次の部屋へ向かう。
高松君と松下君が転がっている場所に入り込むと、墓前にプレゼントを二つ置く。
「っ! 目が覚めそうだ」
高松君が呻き声をあげて目を覚まそうとしたので、眉間に拳銃を押し付けると乾いた音と共に高松君の命を奪う。
――あまりにも慣れすぎている。
俺自身でもそう思っていた。
「おいおいあいつ大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。安心しろ」
仲間を殺したと言うのに、俺の心は依然として冷めたままだった。
――何かが欠損している。
「次は野田君か」
野田君の部屋に入ると、プレゼントを机の上に置いて次の部屋に向かう。
生き返るまでのタイムラグは誤差がある。
「最後に大山君」
大山君の部屋にプレゼントを置くと、ミッション完了を理解して俺達は部屋を出て行った。
「なんつーか、さっきのお前おかしくなかったか?」
「うん……。なんか自分の体じゃないみたいだった」
何かが起きている気がする。
その何かがわからないけれど、もしかすると俺は俺自身のことをまだ完全には理解していないのかもしれない。
もしかすると俺は――。
いややめよう。仮定の話を深く考えすぎるのは悪いことだ。
「ごめんね日向君、藤巻君。迷惑かけたね」
「いや別にいいぜ。俺達はお前のことを信頼してるからな」
藤巻君の言葉が胸に染みる。
「ありがとう。じゃあ女子寮の方に――」
パリンと言う音が聞こえた。
ここからするわけが無い。
するとしたら女子寮に決まってる。
「多々――」
「うん行こう!」
俺は窓から飛び降りると近くの木に捕まって降り立つ。
日向君達も俺の真似をしてついてくるのを一瞥しながら、しおりが無事であることを祈りながら走る。
「しおり……!」
俺はそのまま女子寮のいつものしおりの部屋へと侵入すると、そこにはスヤスヤと眠っているみゆきちちゃんの姿があった。
プレゼントは置いてない。やっぱり何かがあったんだ。
「……ふぇ……」
うっすらと目を開いたみゆきちちゃんと視線が合う。
「た、多々君? どうしてここにいるの? しおりんは?」
「色々あってね。少し眠ってて」
扉を薄く開くと、ドタバタと廊下を走っていく教師の姿が見えた。
男性教諭が入ってるってことは、恐らく何かがバレたんだろう。
「遊佐さん、何があったの?」
[関根さんがひさ子さんの部屋に入ろうとしている所を発見されました。既に1時を過ぎており点灯時間も終了なので逃げ出しています]
ちっ。よりにもよってしおりが見つかったのか。
「さっきの音は?」
[ゆりっぺさんが注意を逸らすために窓ガラスを割った音です]
余程切羽詰まってるんだろう。
俺は仕方がないと思いつつ、扉を開いた。
「ヘイ教師の皆! そんなに走ってどこ行くの?」
「タッ君!?」
俺の方を驚いてみているしおり。
もしかして今追いかけられていたところかな?
「おい男子生徒までいるぞ!」
「何人かそっちに向かえ! 俺達はそこの女子生徒を――」
「聖なる夜は性なる夜ってね。俺は彼女とイチャラブしに来ただけさ。そこにいる俺の彼女とね」
俺は堂々とそう告げると、しおりに向けて走り出した。
勿論その間には教師がいる。
俺は教師の前でジャンプして壁を蹴ると、天上を蹴って一回転しながらしおりの前に降り立った。
「やぁお姫様。迎えに来たよ」
「たたた、タッ君!?」
お姫様を抱き抱えると、俺はしおりに微笑みかける。
スマイルスマイル。
真っ赤になっちゃって可愛いなぁ。
まぁ俺も真っ赤だろうけど。
「不純異性交遊は禁止だ!」
「知ってるよ。でもね、禁止されているからこそ燃えることもあるんだぜっと」
俺はしおりをお姫様だっこしたまま走り出した。
階段の所までしおりを連れて行くと、しおりを下ろしてあげる。
階段を下に降りていくしおりを一瞥してから、教師達の前に立ちふさがる。
勿論しおりが上がったか下がったかわからないようにしてだ。
「すみませんねゴブリン共。お姫様を守る騎士の役目は俺が引き受けさせてもらうぜ」
「ゴッ……! 反省室で夜を明かす覚悟は出来ているんだろうなぁ……!」
オーケー。あんた達は何も分かっていないんだ。
確かに戦線はあんた達にとって邪魔な存在で、こちらからは手を出してはいけないと言うルールをゆりちゃんが出しているのかもしれない。
今回の行動も俺達の規則違反が悪いのもわかってる。
でもなぁ……。
「関係ねぇんだよ」
「何?」
「あんたが俺の彼女に手を出そうとして、俺はそれに怒ってる。生徒と教師の関係以前に、男と男の問題だ。その金玉――潰される覚悟は出来てんだろうなぁ!」
踏み出す。
今までの何時よりも強く、どの時よりも早く。
あの時には踏み出せなかった一歩を。
目の前で奪われ汚されていく姉さんを救えなかったあの時に出せなかった一歩を、今ここで踏み出す。
あの世界で俺は無力だった。
でもこの世界では抗うことが出来る。
「らぁ!」
拳を振るった。
右拳は教師が腕をクロスして防ごうとしている状態で、弾き飛ばす。
防げると思うなよ俺の怒りを。
見くびるなよ俺の怒りを。
「自分が悪かろうがなんだろうが、自分の女に手を出されて何も出来ない奴はそれ以前の問題だ!」
あの時俺は気が付くことができなかった。
俺の為に自らを犠牲にしていた蓮花を。
俺は最低だ。
だけど――今は抗わせて欲しい。
この世界でたった一人の大切な人を、守らせて欲しい。
「潰す」
もう一人の教師の顎を右足で思い切り蹴り上げると、回し蹴りを腹に入れる。
その間に先ほど殴り飛ばした奴が俺を抑えにかかるけれど、それを上手投げで放り投げると右足を振り上げた。
「はぁ!」
振り下ろした右足の踵は教師の金玉に直撃し、ぶちゅっと言う嫌な感覚と共に教師が叫び声をあげた。
手を出してはいけないから、後でゆりちゃんに怒られるだろう。
校則違反を犯したから、後で天使に殺されるだろう。
だが知ったことか。
怒りって言うのはそういう理性も含めて全部、吹っ飛ばすような大きなものなんだよ。
「お、お前……! 教師に対して何を!?」
「教師じゃねぇ。男と男の喧嘩だ」
俺は思い切り拳を振り上げると、倒れている教師の金玉を殴り潰した。
全てを終えて痙攣している教師達を前にして、俺は息を荒らげてその場に立ち尽くす。
「……貴方は何をしているのかしら?」
そこで現れたのは――天使ちゃん。
既に俺の体は満身創痍。こんな状況じゃあ抵抗することだって出来ない。
「はっ。天使ちゃんにはわからないかもしれないが、男には男のやるべきことがあるんだよ。どれだけ自分が理不尽なことを言っていようと、自分の女を守る為に動く。それが男のやるべきことだ」
「それは校則よりも大事なこと?」
校則よりも大事なこと……か。
「あぁそうだよ。世界のルールだ。男は惚れた女を守る。それが世界のルール」
守れなければ、クソ野郎に成り下がるだけのルール。
俺はそれを理解しながらも、天使ちゃんに笑みを浮かべた。
「殺りなよ。俺はそれをされる理由がある」
「……そう」
ハンドソニックと呟いた天使ちゃんの右手に刃が現れ、俺の心臓は一突きで貫かれた。
激痛が体中を走り廻る中で、思う。
これが死ぬって苦しみなのかと。
そして――やっぱり誰かを守れるって言うのは気持ちがいいなと思った。
――反省室。
そこは独房の様になっており、普通では出られない様になっていた。
俺はそこに入れられている。
理由は勿論二人の教師の金玉を潰したことだ。
「ははっ。多分この世界初だろうな。金玉潰して反省室送りか」
まぁそういうことをしちまったからしょうがないか。
ネタをしようにも相手がいなければ、俺のネタも通用しない。
ここに来る厨二病副会長――もとい直井君だけが俺の話し相手になってくれる人だ。
「そろそろ僕の小説のデータが入っているものを全て出してもらえるか?」
「ははっ。テラワロス。闇魔界の狩人様はそういうことを言うのですか?」
「……貴様は死にたいようだな」
「もう死んでるでござりますよ、ルシファー・シュヴァリエ殿」
思い切りアイアンクローをされるけれど、ひさ子ちゃんより全然痛くないっす。
俺を痛がらせたければその千倍は持って来い!
「ところでだ。お前は奴らの中にいる人物と付き合っているんだろう? 何故消えない?」
直井君は俺に自分が死んだ人間だと言うことを隠していない。
俺も他の人に言わないけれど、それは直井君がもし死んだ人間であったとしても戦線とは違う理念を持っているからだ。
変に刺激して別の方向に向かせるよりも、俺が教えてもらった作戦通りに動いてもらった方がいざという時に止めやすいしね。
「さぁ何でだろうね? しおりと付き合えたことに幸福感は感じているけれど、きっと満足には程遠いんだよ。多分俺が本当に叶えたい願いを叶えるまでね」
「復讐……か」
「気づく?」
「お前の目を見ていればな。昔の僕によく似ている」
直井君の視線は何か遠いものを見ているようだった。
それを見て、やっぱり直井君も辛い過去があったんだろうなと理解する。
何処か達観しているのは、俺という人物がどこかおかしいからだろうか?
「直井君、おっぱいって良いよね」
「あぁ。……って違う。貴様は僕に何を問いかけてくる!?」
「やっぱり爆乳もいいと思うんだけれど、普通の美乳が一番だと思うんだ」
「何を言っているんだ貴様は」
ため息を吐かれてしまった。
「貧乳が至高に決まっているだろう」
「――あぁ?」
俺と直井君の視線がぶつかりあった。
おいこいつ俺に喧嘩売ってきてるぜこんちくしょう。
「おっぱいって言ったらでっかいか普通くらいがちょうどいいだろう! 因みにしおりはどストライク!」
「甘いぞ! 確かに大きな胸には夢と希望が詰まっているかもしれないが、貧乳には夢と希望を与える力がある!」
「てか貧乳の人がこの世界に巨乳になりたかったのにと言って血の涙を流しながら来たら、この世界はどう対応するんだろうか? 説明求む」
二人して黙った。
「「消えられないな」」
確かに貧乳はステータスで希少価値かもしれないが、どれだけ頑張った所で貧乳は貧乳だ。
巨乳になることは出来ない。
「だからこの世界には巨乳が少ないのかッ!」
「ふん。もしくは、この世界の神が貧乳好きなのかもしれないがな」
こいつ、調子に乗りやがってこんちくしょう……!
「お前あのFカップ考えてみろよ! 最高だろうが!」
「なんだと貴様!」
この不毛な争いは、生徒会長が俺達を止めるまで続いた。
俺の反省室入りは延長である。
次回予告
「ここは……どこだ……?」
「ここは死んだ後の世界。何もしなければ消されるわよ」
「あれが死んでたまるか戦線の敵――天使よ」
「あぁ消えたいんだ。こんな、いきなり記憶も無しにこんな場所に放り出されて、どうしろって言うんだよ!」
「さっき言った捕まった人よ。死因はテクノにブレイクしたの」
「貴方は――ツッコミ属性持ちなんだな」
「結局全部俺に押し付ける為じゃねーか!」
「ようこそ。死んでたまるか戦線へ」
第18話《Departure》