たった2日で10話作れたぜぃ。
……クリスマス。
それは赤い服を着たサンタクロースが、子供達に玩具を配る日。
もしくは真っ赤なお鼻のトナカイが唯一活躍できる日。
もしくは聖なる夜。
もしくは性なる夜。
恋人同士がサンタクロースに玩具を貰える子供を欲しがって夜遅くまで喘ぐ日。
「――と言うわけでクリスマス何だよしおりんちゃん」
「下ネタやめろ」
思い切りハートブレイクショットを放たれた。
くっ。この程度じゃ俺の愛は止まらない!
「子作りしようよ子作り。もしくはセ○クス」
「女の子に対して何て言葉遣いをするんだいたびた君」
「たびた君って語呂悪くない?」
「……そだね」
と言いつつも一緒に手を繋ぎながら歩いている今日この頃。
この世界の冬は雪も降るらしく、今日は珍しく雪が降っていた。
一つの長いマフラーを二人で巻いて、ヌクヌクとしながら互いに手を繋いでいない方だけ手袋をつけている。
だってそうしないと、手を繋ぐ時に相手の温もりがわからないでしょ?
「……雪だね」
「そだね」
こんな雪の日はきっとゆりちゃん辺りが遊びたいって言いそうだなぁと思ってると、しおりんちゃんが俺の手を強く握り締めた。
「今他の女の子のこと考えてたでしょ」
「ごめんごめん。でも、ゆりちゃんが何かしたいって言いそうだなぁって」
いつもはここまでくっついてはいないけれど、今日はみゆきちちゃんに恋人の日だからゆっくり二人で過ごしてくださいって言われてしまったのです。
みゆきちちゃんはマジ天使。
「今度は誰のこと考えてたの?」
「みゆきちちゃんはマジ天使」
「ちなみにあたしは?」
「俺の嫁」
もうと答えたしおりんちゃんの姿が超可愛い。
雪の降る道を歩きながら、俺達は学校を目指していた。
学校の中には暖房が完備されているので、少しでもあったかい所に行こうと思ったんだ。
「雪って、みゆきちの名前もみゆきでしょ?」
「そう言えばそうだね。美しい雪って書くのかな?」
「それとも魅せてくれる雪とか?」
二人でみゆきちちゃんの名前を考え合ってクスリと笑い合う。
一緒にいられるだけで、こんなにも安心できる人はそこまでいない。
幸せだなぁと思う反面、それでも満足できない俺がいた。
ヤリたいと言う思いだけではなく、あいつらを殺したいと言う願いも。
でも今はそれを少しの間だけでいいから忘れて、一緒にいるこの時間を楽しみたい。
「白。タッ君の髪の色と同じだね」
「そう言えばそうだったね」
俺の髪の色も白色。強いて言うならば銀だけれど、雪の振った場所を銀世界と呼ぶくらいだから強ち間違いでもない。
白と銀は多分、紙一重だから。
「タッ君は白色好き?」
「白かぁ……。白は好きだよ? 何色にも染められる色。きっと心が白色の人は、何者にもなれる人だね」
「ならタッ君は金色だね」
笑いながら言ったしおりんちゃんの言葉に、何故だか疑問に思う。
「元々は白色だったけど、あたしの金色に塗りつぶされましたってね」
「他の人を好きになんてなりませんからダイジョーブ」
他の色に塗りつぶされたりしません。
だって俺はしおりんちゃん一筋ですから。
そんな他愛ない会話をしながら校舎に着くと、空き教室を見つけて中に入る。
暖房を付けてからマフラーを取ると、あっと寂しげな顔をしおりんちゃんが浮かべていた。
――そんな切なそうな顔されたら俺だって困っちゃうよ!
マフラーを畳んで置いてから、俺は厚着を脱いで開放的になり机の上に座った。
外は更に雪が積もって白く染まっている。
「うわぁ! こんなに雪降ったの初めてだよ」
「そなの?」
「まぁね。昔からいなかったタッ君は知らないでしょう?」
ふふんと胸を張って言ったので、俺はしおりんちゃんの胸を凝視した。
次の瞬間俺の目に指が突き刺さったけど。
「目がぁ! 目がぁぁぁ!」
「ムスカ大佐は落ちていったよ」
「下界に? つまりここは天上と」
「落ちたら下にはきっと地獄か現世があるね」
有り得ない話じゃないかな。
実はここは天国で、この下に地獄がある。
その中間には俺達が生きていた現世がある。
「確かキリスト教の考えだっけ?」
「そんな感じだった気がする」
まぁ興味のないことなんてそうそう覚えてないよね。
俺だって最初の頃のことを殆ど忘れちゃってるけれど、しおりんちゃんとの思い出は全部事細かに覚えている。
永遠に忘れることは無いと思う。
例え俺が、消えて再び蘇ったとしても。
「ねぇサンタクロースって、本当にいるのかな?」
クリスマスに欠かせない存在とも言えるサンタクロース
イエス・キリストの誕生日に何で来るんだろう?
まぁ俺の所に来たのはほんの数回で、正体も知ってるんだけどね。
「サンタクロースはトナカイじゃなくて、最近はバイクに乗ってるしね」
「オーストラリアではサーフィンしてるんでしょ?」
「「サンタってアグレッシブだなぁ」」
本人が目の前にいたら絶対に違うと言いそうだけれど、いなければそれまでなのだよ。
つまり俺達の意見がそのまま俺達のサンタ像になるってこと。
「実はサンタクロースって女の子だったりするのかな?」
「俺はしおりんちゃんがミニスカサンタコスをしてくれると信じていた」
「だが残念。現実は残酷である」
項垂れた俺を見て、しおりんちゃんがクスクスと笑っていた。
どうやら本当は持ってるらしい。
「――ねぇタッ君。この時位はしおりって呼んでみて?」
その上目遣いに俺の心は打ち抜かれた。
いつもハートブレイクショットを喰らってるけれど。
「……し、しおり」
恥ずかしかったので顔を赤くしながらそう言うと、しおりは俺の方を見て顔を赤くしていた。
「や、やっぱり照れるね」
「お、おう」
……。
なんだこの沈黙は。
いつも煩いコンビとか、迷惑コンビとか、ネタの塊とか言われている俺達が喋れないだと!?
まぁ処女ビッチと経験豊富チェリーなんてそんなもんでしょ。
いつもは話すくせに、大体二人っきりになると話せなくなっちゃうものなの!
俺達は悪くない!
「ねぇタッ君。あたしいつも思うんだ」
「何を?」
「この世界の何処かに神がいて、いつもあたし達を見てる。それでこの感情も実は神に刷り込まれてしまったものじゃないかって」
「それは――」
否定は出来なかった。
古来から神って言う存在は全知全能として崇められてきた。
その神が気まぐれで感情を動かしていたら。
気まぐれで人の行動を決めていたら。
「でもね、最近は違うの。昔は神なんかに刷り込まれた感情なんてやってられるかと思ってたけれど、今は例え刷り込まれていてもそれはあたし。だってあたしはもし別の状況でも、刷り込まれないとしても、絶対にまたタッ君のことを好きになるって確信してるから」
俺の心臓がとくんと高まった。
「タッ君のことが好きって気持ちは、永久永遠。世界の誰がどう変わろうとも変わらない」
「――俺もだよしおり」
今度は普通に名前で呼ぶことができた。
「世界がどれだけ俺に厳しくても、どんなに俺達の仲を引き裂こうとしても俺は絶対に君を愛し続ける。それが雨野多々と言う人物だからね」
雨野多々は関根しおりを愛する為にここにいる。
それを堂々と胸を張って言える。
勿論それ以外の理由もあるけれど、今の大きな理由はそれだ。
「あたしもそう。タッ君がいるからこそあたしはここにいられる」
誰が何を言おうとも、この愛の形は変わらない。
互いに大好きで、でもそれ以外の苦しい思いを抱えている。
一人じゃ怖くても、二人ならダイジョーブ。
俺もしおりもまだここから消えれる位に満足はしていないけれど、いつかそれが来ることを願っている。
おかしいかな? 死んだ世界戦線のメンバーなのに消えることを望むなんて。
でも別に消えたいっていうのは、死んだ世界戦線を抜けたいって思いじゃない。
俺の大切な人達がまだ残ってるし、そんな状態で消えるわけには行かない。
まだ復讐を遂げていないのに、消えるわけには行かない。
かつてしおりが俺に伝えてくれた消える理由。
――俺が消えることが出来ること。
それがしおりの未練であり、俺の未練。
俺はいつの間にか、四つの未練を背負ってしまっていたんだ。
「……でも悪くない」
「うん? どうかしたの?」
しおりが首を傾げてきたので、何でもないよと頭を撫でた。
猫の様に目を細めるしおりを見つつ、やっぱり悪くないと確信した。
これは俺の心にある背負うべきものだ。
人間として当然の、背負うべきもの。
大切な人を守りたいのならば、俺が守るのは当然だ。
その未練を叶えてやるのも、当然なんだ。
「しおりは可愛いなぁって思っただけだよ」
「タッ君はいつも誤魔化す時にそう言うよね。まぁ悪くないけど」
二人してクスクスと笑う。
やっぱりこんな関係が悪いはずがない。
だってこんなにも楽しくて、嬉しいことは今まででも珍しいくらいだから。
「サンタクロースなあたしを見てみたい?」
「それは勿論」
「じゃあ反対側向いててね」
ここで着替えるんですか!? と言う言葉を言うのはやめて、目を閉じて後ろを向く。
「よいしょっと」
ふわりとスカートを脱ぐ音が聞こえて、俺の心臓が高まるのを感じた。
静まれ俺の煩悩! 今暴走すれば俺はしおりと離れなければならなくなるんだぞ!
そう思うと落ち着いてきた時に、今度はスカートを履く音が聞こえてきた。
お願いだ止まってくれ俺の煩悩! お前は世界を救うって決めただろ!? ナンバーワンになるって決めたんだろ!?
だったら静かにしてくれお願いだから。いや、お願いしますから!
「で、出来たよ」
緊張した声で言ったしおりの方を振り返って――煩悩が再びやってきた。はぁいって。
フリルのついたミニスカート。
赤い色の少し短いブーツ。
肩を露出している半袖の赤い服。。
お馴染みのサンタ帽。
そして肘近くまである白い手袋。
煩悩さん煩悩さん。俺は襲いかかっても良いのでしょうか?
ダメですね。わかります。ですが理性さんが仕事をしてくれないのですが!?
「ど、どうかな? 手芸部の人達が作ってくれたんだけど……」
「やっぱりしおりは俺の嫁」
堂々と宣言させてもらった。
こんなの耐えれる訳無いだろう!?
俺の股間の残量値がマッハだよ! ギンギンだよ!
「真顔でそんな恥ずかしいこと言わないでよ」
「いやだって真顔にもなるよ。こんな可愛いしおり、いつものしおりの可愛さにプラスしたらもう俺の命が吹っ飛ぶくらいだよ。やべ、消えかけてきた」
「消えるの!? やっぱり幸せになりすぎちゃった!?」
「ごめん。消えなかったわ」
残念ながらこの状態でヤルまで多分俺の消える可能性は無いです。
まぁヤったりしたら童貞を卒業することになって俺の夢が叶ってしまうんですけどね。
流石にまだそれは困る。
「もう。驚かせないでよ」
「ごめんごめん。でもしおりが可愛すぎるのが悪いんだよ? 他の皆が嫉妬する位可愛いよ。誰にも見せないけどね」
こんな露出が多い格好、俺以外の人が見たらその人の目をくり抜くレベルだよ。
「独占欲が強いんだから」
「しおりだからだよ。手放したくない最愛の人だからね」
ミニスカサンタのしおりを抱きしめると、とくんとくんと動いている心臓の感覚がわかった。
とくんとくん。とくんとくんと互いに波打つ心臓の音。
死んでいるというのに、生きていると言うことを確認しあう。
「本当に死んでるのかな? まるで生きているみたいだ」
「生きてたらタッ君の子供を産んであげられるのにね」
結婚式をあげて、新婚旅行に行って、初夜を過ごして、子供を作って、子供を産んで、子供を育てて、子供の成長を一緒に見届ける。
そんな世界があったらいいのに。
「もしも俺の未練が全てなくなったら、その時に一緒に消えてまた人間になれればいいさ」
「じゃああたしかタッ君のどちらかが人間じゃなかったら?」
「二人が人間になれるまでずっと繰り返せばいい。何度も何度も、二人で一緒に過ごせるその日まで」
ペロリと抱きしめたまましおりの首筋を舐めると、ひゃうと言う声が聞こえた。
意地悪するなと言う目をしていたので、流石に軽く謝る。
でも可愛いよしおり。
「そこにみゆきちも入れてあげないとね」
「三角関係だね。俺を取り合って修羅場になるのかな?」
ふふふと二人で笑い合う。
実際は多分みゆきちちゃんも相手がいて、しおりとみゆきちちゃんが仲良くして、俺とみゆきちちゃんの夫が仲良くするんだろう。
そしてその子供も仲良くなってくれればいいなと思う。
そんな関係。
「ねぇタッ君」
「何だい? しおり」
「世界で一番大好き」
「俺もだよ。世界で一番大好きだ」
俺はゆっくり体を離してから、再び近づいてしおりと唇を合わせた。
次回予告
「おいそこのバカップル」
「ギルティ」
「今日も今日とて平常運転でございまする」
『先生ブラックコーヒー買ってきてもいいですか?』
「俺……交通事故で死んだんだ」
「流石はしおり! 俺達の期待を裏切らない!」
「日向君嫁が俺に辛く当たってきて辛いです」
「さぁ、ゲームを始めよう」
第15話《Life Game》