俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

12 / 61
ごめん嘘。1話だけ更新せさて。
クリスマス記念の話も出すつもりでござるので、それまでに話を進めとかなければならないのでござる。
という訳でぬるーりとずっぽり。



012 《Live Song》

 結論から言おう。

 勝ちますた。

 そりゃあんだけ凄いプレーを求められて、普通のプレーしかしなかったら観客もブーイングばかりになります。

 と言うかバスケ部の人達は、俺達が魅せるバスケをしようと言っていたことを忘れていたようです。

 堅実に勝利を望んだ結果、堅実じゃない方が勝つというなんとも言えない結果に終わりますた。

 いやぁこれもありだよね。と言うよりも世界の真理の一つだよね。

「と言う訳で俺達が勝ったからお店は俺達が運営するぜ」

「くっ。仕方ない……」

 俺達はこの試合に出店の権利をかけていた。

 つまり勝った俺達の権利なのです!

「じゃあ貰ってくね」

 俺達は出店権利書を持って悠々と歩き出した。

「いやぁタッ君スーパープレーの連続だったね!」

「かっこよかったよ」

「ねぇねぇ日向君。俺こんなに褒められてるんだけどどう? ねぇどんな気持ち?」

「うるせぇ! 俺だって野球だったらあのくらいやってやんよ!」

「ひなっち先輩には無理ですね」

 騒ぎながら歩いている俺達は、妙に視線を集めてる。

 俺が手を振ってみたら、何人か黄色い子を出していたけれど何かあったんだろうか?

「まぁあれだけすげープレーをしてたから当然か」

「何が?」

「ん? お前にはわからないことだよ」

 ドヤ顔で言ってきた日向君が非常に苛立たしかったので脛を何度も何度も蹴った。

「いてぇよ! 何でそんなに脛ばっかり蹴るんだよ!」

「そこに脛があるからだよ」

 折れるまでやろうと思ったけれど、回復には時間がかかるらしいのでやめておいた。

「――じゃあ始めようか」

 鉄板に置いてあるのは肉だ。

 俺達が出すのは焼肉。

 バーベキューみたいなもんだ。

「でも本当に客なんて来るのか? ただ肉と野菜焼いてるだけだろ?」

「甘いよ日向君。こっちにはさっきスーパープレーを連発して有名になっているこの俺と――」

「あたし達ガルデモのメンバーがいるんだから!」

「取り敢えず自分でスーパープレーを連発したとか言うのやめような?」

 失敬な。別に自分でスーパープレー連発するとかネタ以外で言う訳無いじゃん。

 むしろネタだからこそ言ってるんだよ?

「ともかくだよ。人気的にはかなりあるんだ」

 そしてと屋台の後ろに用意しているものを見る。

 バンドセット準備完了!

「みなさーん! バーベキューを始めましたー!」

 俺はそう叫ぶと、スピーカーの電源を入れて音楽を再生させ始めた。

 勿論――ガルデモの曲だ。

「おいあそこにいるのってガルデモのメンバーじゃないか?」

「それにさっきのバスケのすげー奴もいるじゃん!」

「もしかして後でライブとかするのかな!?」

 わいわいと集まってきたので、俺はその人達に告げる。

「皆の者! ライブをして欲しいか!」

『はい!』

「だったら買うがいい! 売り切れたらガルデモじゃない――もう一つのガルデモを見せてやろう!」

 売れる売れる。

 俺が用意してもらった大量の肉が、野菜が飛ぶように売れていく。

 勿論金と交換ではなくて、食券との交換だ。

 食券によってどの野菜が、肉が貰えるのかを決めてある。

「俺にはカルビをくれ! ここにラーメンの食券がある!」

「ここには肉うどんがあるわ! 早く塩タンを!」

 ふはははは。これが俺の商法!

 一回だけならば通用する素晴らしいこの作戦を見て――しおりんちゃん以外はドン引きしていた。

「なんつーかあいつ、イキイキしてないか?」

「しかも別のガルデモって、本物のガルデモのライブするなんて一言も言ってないです。多々先輩はやっぱり非道です。外道です」

「よっしゃー! あたしも売りつけてやる!」

「しかもライブ聞きたかったら買えって……」

 何とでも言うがいい。

 俺は売りつけて必ず大量の食券を手に入れるんだ。

 非合法的に大量の食券を手に入れることに意味があるんだ!

「貴方達が学園祭で食券を集めているお店?」

 そんなことをしたら生徒会長殿がいらっしゃいました。

「へいらっしゃい! 何を頼む?」

「店の売り買いはお金でするように決められているはずよ? 物の交換は認められていないわ」

 後ろで日向君達がマズイ天使だと言って慌てていたけれど、君達はまだまだだね。

 敵とは情報を手に入れた上で行うものだよ。

「ここに麻婆豆腐の食券が沢山あるんだ。困ったなぁ。俺達は誰も食べないんだけど。だれか譲り受けてくれる人はいないかなぁ? 本当に、コマッタナー」

 ふっふっふっ。幾ら平常を装っていても君の視線が麻婆豆腐の山に向けられていることなんてお見通しさ!

 何度も何度も食堂に通って君の好物を調べていた俺に資格は無い。

「あーあ。しかもこのまま続けてたら更に増えるのか」

 ピクンと反応した天使ちゃんを見て、俺はにやりと笑みを深めた。

「これって、賄賂って奴じゃないですかね?」

「違うぞ関根。これは脅迫だ」

 そこ煩い。

「食券って言うのは通貨みたいなものじゃないですかね? 例えば素うどん100円なら100円玉と同じです」

「貴様それ以上にしておけ」

 生徒会副会長が出てきた。

「あぁそう言えば俺の部屋に誰が書いたか知らないけれど、凄いカッコイイ主人公の小説が置いてあったな。確か闇の王者――ダークネス・ファ」

「仕方ないですね生徒会長。ここは許してあげられませんか?」

 君の弱点を知らないと思っていたのかこの厨二病。

 お前の机の中から奪ってきた――もとい拾った厨二病の塊の小説等手に入れておるわ。

「……仕方ないわね。後で余った食券は生徒会で回収するわ」

「毎度ありー! あ、副会長には後で別の紙媒体のものをあげるね」

 帰っていく生徒会に手を振っていると、後ろからヒソヒソ話が聞こえてきた。

「おいあれって完全に脅迫だよな?」

「大丈夫ですよひなっち先輩。外道が外道らしくえげつないことをしただけです」

「あたしタッ君の裏を見た気がする」

「気にしちゃダメだよしおりん。ふぁいとっ!」

 ニコニコとした笑顔で振り返ると、全員が姿勢を正していた。

 ふふふ面白いなぁ四人とも。後で説教してやる。特にゆいにゃん。

「後でO☆HA☆NA☆SHIしないとね」

『ひえっ……』

「大丈夫。痛くしないから」

「と言うかO☆HA☆NA☆SHIをするって言ってるのに痛いってどういうこと!?」

「あってるよ日向君。O☆HA☆NA☆SHIって言うのはそういうものだから」

「そういうものなのか!?」

 全く日向君は理解できていないなぁ。しおりんちゃんの言うとおりO☆HA☆NA☆SHIって言うのはそういうものであってるよ?

 相手を縛り付けて至近距離から全力全開で相手に対して最大の攻撃をブチ込むことをO☆HA☆NA☆SHIと言う。

「じゃあ更に売って売上を伸ばそうか! 生徒会公認だし!」

 生徒会公認マークをお店につけると、再び生徒たちが集まってきた。

 やっぱりバーベキューは人気だなぁ。

 ふふ、ふふふ。これで暫くはトルネードの必要も、俺が疲労する必要も無い。

 まさにパーフェクト!

「まぁこれで食券が増えてトルネードが遅れると、岩沢さんが音楽キチっぷりを発動し始めるんですよね」

 みゆきちちゃんの言葉に俺は止まった。

 まさか俺はトルネード以上にめんどくさいと言うまさみちゃんの相手をしなくてはならなくなるのではないか?

 そしたら――ひさ子ちゃんに押し付ければいいか。

 ひさ子ちゃん優しいから、きっとまさみちゃんに音楽の話を振ってくれるよ。

「安心して。犠牲者は既に決まってるから」

「ひさ子さんですねわかります」

 日向君が黙祷をし始めていた。一体誰がお亡くなりになったのだろうか?

 と言うかここ死んだ世界だからそんなこと意味ないし。

「馬鹿な日向君ワロタ」

「お前に馬鹿とは言われたくない」

「何だって? 心の奥深くまで傷つけられた。これは戦うことも辞さぬ」

 抱き枕カバーを堂々とベランダに干しておいて、近隣住民からの暖かい視線を受けながらしまう諸行をさせてやる。

 以外と心に来ると思う。

「処す? 処す?」

「おけ処そう」

 しおりんちゃんの言葉に合わせて日向君に対してハートブレイクショットを放った。

 いつも真正面から受けているからコピーは完璧だ。

 ぐへぇと言いながら倒れた日向君を無視して鉄板焼きを続ける。

 え? バーベキューじゃないのかって?

 似たようなもんでしょ。適当だけど。

 売り続けているとドンドンと減っていく野菜とお肉。

 そろそろ日向君でも捌いてお肉にしようかと考えている頃に、野菜が終了した。

 ……日向君を肥料にして野菜を作っても出来るまでに時間が――そうか。この世界で命があるものは生まれないのか。

「野菜終了! お肉も終了します!」

 お店が終了したのを確認してから、俺達はガスを切って店先に集まっている人達をどける。

 そして――それをどけた。

 中に現れるのはドラムセットとギターとマイク。

 スピーカーに繋げたことを確認してから、俺はマイクに声を向けた。

「初めましての人はこんにちは。初めてじゃない人はこんにちは」

「いや、両方こんにちはじゃね?」

「ガルデモのマネージャーこと多々君です!」

 どもどもと手を振ると、割と歓声が聞こえてきた。

 むむむ。女子が多いと見た。

「今日は俺達のお店に来てくれてありがとう。そのお礼に――俺達がバンドをさせてもらいます!」

 歓声半分どよめき半分ってところかな?

「実はボーカルとリードが別の仕事をしていたので、俺達が代わりをすることになりました。全く新しいバンドだけれど、俺達の歌で満足させてみせる」

 俺はそう言うと、しおりんちゃんとみゆきちちゃんに目を向けた。

 頷いて返してくれた二人を見てから、日向君とゆいにゃんに目を向ける。

「聞いてください――CrowSong!」

 音が鳴り始め、俺は目を閉じる。

 あの頃を思い出すんだ。

 姉さんが歌ってほしいと言って、その為だけに努力していたあの時の声を思い出せ。

 誰かに伝える――俺の歌を。

「――」

 口を開いて出たのは、あの頃の声だった。

[今度一緒にカラオケ行こうね姉さん]

[今ここで歌ってくれてもいいんだよ?]

[まだ歌が上手くなってないからさ。今度でいいんだよ今度で]

 まだ張り上げることが出来るはずだ。

 もっと盛り上げることが出来るはずだ。

 あの時感じた誰かを楽しませたいと言う思いは、今でもまだ通用するはずだ。

 皆が驚いた様に俺を見ている。

 こんなことも出来るのかと呟きながら俺を見ている。

 まだ出したりない。

 もっと出せるはずだ。

 俺の声は誰かに届ける為だけにある。

 俺なんかじゃなくてもっと多くの――大事な人達の為に?

 大事な人達って誰だ? NPCか?

 そもそもこの世界にいる俺の大事な人は――誰なんだ?

 わかっている。しおりんちゃんだ。

 だけどそれ以外にいない。

 大事な人は姉さんと蓮花としおりんちゃんだけのはずだ。

 それなのにどうしてこんなに、大事でも無い人達に歌を聞いてもらって喜んでいるんだ?

 俺は一体――何なんだ?

 歌を終えると同時に俺達へと歓声が来た。

 一緒に歌っていたゆいにゃんの歌唱力の高さにも驚かされたし、日向君が予想以上に上手に弾けていたのでかなり楽しんで歌えた。

 なのになんだ? この違和感は?

 まるで()()されたかのようなこの違和感は。

「次行くぞー!」

『うぉー!』

 それでもその違和感を無視して、俺は歌い続けることにした。

 だってそれしか俺は知らないから。

 だから不審そうな顔で俺を見ている、しおりんちゃんには気がつかなかった。

 




次回予告
「この世界に神はいる……か」
「一人で抱え込まないでよタッ君。二人じゃないとタイジョーブじゃないでしょ?」
「大事な人かぁ……」
「――この中に何人か俺達のことを見張っている人達がいる!」
「つまらぬって言うより粗末なモノね」
「でもまぁおめでとう」
「――ストップです」

「ねぇしおりんちゃん――好きだ」
第13話《Admission》

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。