本物のぼっち   作:orphan

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第4話

俺が部室に顔を出すと、やはり雪ノ下が読書に勤しんでいる。

結局雪ノ下の世界征服計画を聞いてからこっち、俺と雪ノ下の勝負は一向に遅々として進みを見せていない。

何故ならば、誰一人として奉仕部を訪ねる人間がいないからだ。俺がそうであったようにそもそも奉仕部などという部活を認知する人数そのものが少ないのか、存在そのものを知っていたとしてこんな所に相談しようなどと思わないのか。

どちらかという事は判然としないものの、兎も角あれから1週間。我々は既にある種のルーティンを築き上げていた。

つまり、雪ノ下が放課後一番に部室の鍵を開けて読書を始め、遅れてきた俺が雪ノ下の読了した本を借りて読む。ということである。

 

この本を借り始めた時には案の定ネチネチと嫌味を言われたが、以外にも貸し出しそのものが渋られる事は無く、以後俺は雪ノ下が読んだ後同じ物を読み続けている。

その間にいつのまにやら雪ノ下が今年度学校内会話回数ランキングトップに躍り出るような事が有ったが、口にしたが最後間違っても賞賛されないので黙っておいた。

元々教室で殆ど誰とも会話をしない俺にとって、例え「うっす」「本お借りします」「ありがとう」程度の会話であっても一週間も続けばこうなるのは自明の事だったのだ。

 

今日も今日とて読書クラブが開催されるものだと決め込んで、いつも通り雪ノ下から本を借りようとした時だった。

とんとん、と教室の扉がノックされた。

その音があまりにも弱々しかったので俺はてっきり風で揺れたものかと思ったのだが、雪ノ下は間を開けずに来訪者に声をかけた。

 

「どうぞ」

 

平塚先生との会話を聞いていてもそうだが、雪ノ下雪乃は相手が誰で有っても堂々たる態度を取る。

こうして名も知らぬ他人が何の前触れもなく訪れても変わらぬその態度は、俺が知る雪ノ下の美点の一つだろう。俺などはもう雪ノ下に促されて扉を開けようとする他人が今すぐ帰ることを祈らんばかりだというのに。

 

「し、失礼しまーす」

 

上ずった声と共に小さく開けられた扉からするりと入ってきたのは俺と同じクラスに在籍する女生徒だった。一番喧しいグループに所属する取り分けアホっぽい少女だったと記憶しているのだが。

相手の方も俺に見覚えが有ったのか忙しなく動く視線が、俺の顔まで辿り着くとひっと小さな悲鳴が上がった。

いやいや、流石に悲鳴を上げられるような覚えはないんだが。それにこういうことやられると結構傷付くのね。

 

「なんでヒッキーがここにいんの!?」

「なんでここにいちゃいけないの!?」

「真似すんなしっ!」

 

ヒッキーという安直な渾名はともかくとして、居ることを責められる程嫌われていたのだろうか。

一度も話したことのない相手に?

相手をよく観察してみる。

ふむ、なんてーかしばしばギャルとまではいかないもののユルそうな女子高生としてイメージされる女子高生像そのものの様な女子だ。短いスカートに胸元の開いたブラウスとそこから覗くネックレス。脱色され茶色になった毛髪となんとも言えない立ち姿。

唯一非凡な物があるとすれば顔の造形だが、それも同じ教室内に雪ノ下というぶっちぎりの逸品が存在する事を考えると見劣りしてしまう。

駄目だ。会話を交わした記憶が全くない。もっというなら俺は今年に入ってから教室で、相手をきちんと認識した上で女子と会話した記憶がない。

このまま彼女がここを訪ねた用件を聞いても良かったのだが、名前を知っておいた方が相談も円滑に運ぶと思った俺は仕方なしにこう尋ねた。

 

「すいません、それでどなたさまですか?」

 

「……」

 

「……」

 

気のせいかも知れないが絶句したのは来訪した女生徒だけではないようだ。雪ノ下の座っている方からも呆れたような視線を感じる。

あれ? あれれ? 何だこの空気。

首を捻る俺を他所に女生徒は動きを止めた。顎が下がりポカーンとだらしなく開かれた口は彼女の驚愕が決してポーズではない事を俺に知らしめたが、だからと言ってそれで俺が相手の名前を思い出す事もなかった。

 

「まあまあ、取り敢えず椅子にでもかけてもらって」

 

気不味い空気を打ち消そうと、教室の後ろに積み上げられた椅子の中から一脚取り出して勧めた。

 

「……」

 

窓際の雪ノ下。中心から僅かに廊下によった俺。そして俺と雪ノ下の中間から黒板に寄った位置に来訪者の椅子を置いた俺が定位置に戻っても、少女はまだ腰を下ろしていなかった。

俺が彼女の名前を覚えていないことがそんなにショックだったのだろうか。

 

「比企谷君、そんな事で誤魔化されるとでも思っているのかしら」

 

見かねた雪ノ下が俺を責める。

 

「すまん、言い方が悪かったな。俺と同じクラスだって事も三浦といつも一緒に居るってことも知ってるけども名前が分からない」

 

「由比ヶ浜結衣さんよ」

 

雪ノ下に名前を呼ばれた少女・由比ヶ浜結衣は壊れかけのロボットを連想させるぎこちない動きで雪ノ下を見つめて、ぎこちなく笑顔を浮かべた。

そのぎこちなさの意味するところについて考えを始めるよりも先に、その瞳から一筋の雫が落ちた。

 

この時、俺の頭を過ぎった言葉は「うおっ、この女泣きやがった」だった。

幸いなことにその一言は声として形を取ること無く終わったが、それは散々爆撃した人口密集地に核兵器を落とさなかったという程度の話だったようで。

 

「比企谷君、貴方一体彼女に何をしたの?」

 

てっきり雪ノ下から敵意を向けられると思っていた俺は、その疑問の声に困惑の色しかないことに肩透かしを食らったような気分になった。或いは俺が平常心を保っていればそれには大量の動揺が込められていることに気付いただろう。

しかし、この時既に俺も一杯一杯だったのである。

 

「わあ、待て待て。何で泣く!? 名前、そう名前知らなかっただけだぞ? お前の事を全く知らなかった訳ではなく。てか知ってたら知ってたでキモくないか? だって一回も話した事ないだろお前と」

 

「そうよ由比ヶ浜さん。その……クラスでどんな事をされているのか分からないけれど警察を呼べば、その男を一瞬で終わらせられるわ。安心しなさい」

 

雪ノ下が痛ましいものでも見るような目で由比ヶ浜を見て、そしておもむろにカバンから携帯電話を取り出した。サイドのボタンを押して点灯した画面に素早く雪ノ下の細い指が触れ、まもなく通話音が教室に響いた。

誓ってもいい。あれは110番にコールしている。

 

「待て待て待て待て。何で通報してる? 何の根拠が有って俺がこいつに!?」

 

「彼女は普段から貴方に性的な暴行を受けており、奉仕部に相談しに来たんでしょう。親にも打ち明けられないことでも、見知らぬ他人なら口に出来ることも有るわ。しかし来てみればそこには貴方の姿が。ギリギリの所で均衡を保ってきた精神が打ち崩された彼女は声もなく絶望の涙を流した。完璧な推理だわ。……もしもし」

 

「くそっ、正気とは思えん。おいっ由比ヶ浜、頼むからあいつを止めてくれ。俺は何もしてないよな!?」

 

出来れば揺さぶって、いや頭を引っ叩いて正気を取り戻させたい所だが、雪ノ下に睨まれた現状ではうっかり由比ヶ浜の肩に触れる事も出来ない。仕方なしに言葉で語りかける俺だったが、何が悪いのか由比ヶ浜の奇行が治まることはない。それどころか俺が身の潔白を示すためにどれだけ俺と由比ヶ浜の関係性が希薄なのか雪ノ下に語って聞かせる度に、心なしか由比ヶ浜の声は大きくなった。

 

「クラスで喋ったこと無い奴の名前なんて普通憶えないだろ? 雪ノ下は特別。葉山は何度か絡まれた事も有るし、他男子とも喋ったことない訳じゃないから名前は分かるけど、女子なんて三浦以外は一言も口聞いた事ないから。だからほらあいつ以外は全員一緒、苗字も分かんねえ。そもそも授業中なんかだと後ろ向いたりしないし、俺の座席が廊下側最前列で有る事を考えれば顔を知ってることすら割と奇跡的というか。そう顔もちょっと見覚えが有るなっていうかそんなもんだから」

 

「バカバカ、ヒッキーのバカ。そうじゃないもん。わーん」

 

こんな調子である。なんだ、俺には顔すらも覚えていて欲しくない的な事なんだろうか。クラスメイトの女子に蛇蝎の如く嫌われてることにも気付かないとは、もしかして俺って鈍感なんだろうか。

そうじゃないっていうのがどういう意味なのか。それを問い質すより先に教室の扉が凄まじい勢いで開かれた。

 

「ひーきーがーやーーーーーっ! 何をしてるっっ!!」

 

スパーンと音を立てて枠に当たった引き戸が元有った場所に戻るよりも速く、風の様に教室内に飛び込んできたのは平塚先生だった。

 

「先生!? ちょ、えっ、まっ。ぐほっ!!!」

 

白衣をはためかせながら由比ヶ浜に近寄っていた俺の所まで一直線に駆け寄ってくる先生は、その登場に驚いた俺が弁解の言葉を思いつくよりも先に俺に鋭いボディブローを叩き込んだ。

 

もうなんなんだ。痛みの余りそう口にすることも出来ない俺は見舞った2撃目によってあっさりと教室の床に沈んだのだった。

 

 

「比企谷、お前の事信じてたぞ」

 

「まず謝れよ」

 

「ああん!」

 

「ひいっ、何でも御座いません」

 

程なくして、というか由比ヶ浜が先生に殴られて崩折れる俺を見て泣き止み、詳しい説明は兎も角俺が由比ヶ浜に何かして泣いていたのではないと証言してからの一言目がこれだった。

白々しい台詞を吐く平塚先生だったが、誤解の上で俺を殴ったという事に対して後ろめたさの様な物を感じている様子は一切ない。俺の発言を黙殺する彼女に俺が感じたのは言いようもない理不尽さだけだった。

 

これが女性、いや大人というものなのか。狡すぎるぜ。

 

「それが大人の女というモノなのだよ、比企谷」

 

まるで俺の心の中を読んだかのようなドンピシャのタイミングで平塚先生はそういった。発言のタイミングは兎も角内容は胸を張って言えるような内容じゃないだろとか命が惜しくてとても突っ込めない。てかこの発言が経験に基づいて行われたものだとしたら、いつもこんな事をしてるんだろうか? 大人として、女として色々心配になってしまうが。

 

「雪ノ下から連絡が来た時は何事かと思ったぞ。後ろから由比ヶ浜の声も聞こえたしな」

 

平塚先生は奉仕部の顧問でありながら、部活中滅多に顔を見せない。俺の奉仕部への入部から一週間、こうして部室に顔を見せたのは俺をここに連行してきた日以来である。奉仕部の活動実態が果てしなく空虚なものである以上、顧問の役割もまた同様という事か。不思議に思った俺が雪ノ下に聞いた所、平塚先生は普段職員室か生徒会に顔を出しているのだと言っていた。部活動と生徒会の顧問の掛け持ち。なるほど、奉仕部に殆ど顔を見せないのも納得である。

 

それに加えて雪ノ下も普段先生と接触を持っている訳ではないらしい。部室の鍵の帯出も顧問教師の許可さえ出ていれば不在でも問題ないらしく、そうでなくとも奉仕部の活動中。つまり放課後の間に雪ノ下が教室を出て行く事も滅多にない以上、日に2回程度の接触しかない訳である。一週間只管読書に打ち込んでいた奉仕部に態々教師に報告するような事柄が有る訳も無く、それ以外の事について雪ノ下が平塚先生に相談するという絵も考えにくい。雪ノ下からのたまの接触が携帯電話での連絡でかつ、泣き声が聞こえたというなら平塚先生の驚きも一入だったに違いない。

 

事実平塚先生の登場は雪ノ下の電話からそう間を置かなかった。普段放任している割にきっちりと気にして貰えているらしい。

 

閑話休題。

俺が殴られたそもそもの原因である由比ヶ浜の涕泣。その原因と由比ヶ浜の来訪の理由が気になった俺は、平塚先生に気にしないよう伝えて自分の定位置に戻った。

 

手のつけられなかった由比ヶ浜も平塚先生の暴挙に呆気にとられてからすっかりと大人しくなっているし、そろそろ話が出来るだろう。

すっかり熱を失っていた椅子に腰掛けると俺は平塚先生を見やった。言外に司会進行役を頼んでいるのだ。

由比ヶ浜を泣かした張本人? である俺よりも、大人? な女性であるところの先生の方が話がスムーズになると睨んだのだ。

先生が居なかったら今頃その役目を負うのが自分だっただろう事を考えると、先生の拳2発分も料金分のように思えてくる。恐らく友達居ない歴16年の雪ノ下さんには到底不可能な作業であろうしな。

そもそも平塚先生を呼ぶ以外に一切由比ヶ浜に対する働きかけをしなかった所を見ると、案外さっきは雪ノ下の奴もテンパっていたのかもしれない。こいつの事だから女を泣かした事自体は幾度も有りそうだが、それをフォローする事など無かっただろうし。

 

「あー、由比ヶ浜。言いたくなかったら構わないんだが、比企谷に何かされたのか?」

 

由比ヶ浜の正面に椅子を置いてそこに座った先生は足を組み、胸元を探りながら話を切り出した。

そうじゃねえだろって!!! 何故俺が何かしたのが前提!?

さっき由比ヶ浜から俺は何もしてないって聞いたばっかりだろうが。そう突っ込みたかったが平塚先生と雪ノ下が一瞬俺の方に向けた眼差しには当然疑念が渦巻いている。酷いや先生。さっき信じてたぞって言ってくれたのに。

てか煙草を出すなよ、流れるような仕草で口に加えてジッポで火を着けようとすんな! おっと、不味い不味いじゃねえよ、一連の流れが格好良すぎるっつうの。

 

雪ノ下の制止すら間に挟まる余地のない平塚先生の所作を他所に、由比ヶ浜はうつむいてもじもじしながら口を開いた。

それはもう本当に言い難い何かが有ったかのように。

 

「あの、その。……特に何かが有った訳じゃないっていうか、私が勝手にそう思ってただけというか。……ヒッキーは悪くないんです」

 

教室での話し声とは似ても似つかぬ細々と小さい声で紡がれる言葉は、由比ヶ浜が途中何度も言葉を切って俺を見るせいで全く逆の意味での信憑性を産んでしまっている。

ぞぞぞっと教室内の空気が不穏な色を纏ったのに気がついたのか由比ヶ浜は慌ててこうも言った。

 

「本当なんです! 前からずっと言いたい事が有ったのに、その、……私が中々言い出せなかっただけで」

 

止めて! それ以上言葉を重ねないで! 俺の無実を確信する教室内唯一の人間である俺でも今のは『本当なんです! 前からずっと(止めてって)言いたい事が有ったのに、その、……(怖くって)私が中々言い出せなかっただけで』と聞こえたくらいだ。

もう、こうなったらその言いたい事とやらを言って貰おうか。そう思い口を開いた俺だったが、突如として総毛立った。雪ノ下の絶対零度の視線のせいである。

それ直死の魔眼だろと言いたくなるような、いやもうこれはバロールの魔眼とでも呼びたくなるような、見られているだけで小心者の俺が死にたくなるような、そんな眼だ。

蛇に睨まれた蛙ならぬ、雪ノ下に睨まれた比企谷である。ヒキガエルの渾名を持つ俺の面目躍如といったところだ。

 

ところが、である。そんな雪ノ下を笑って宥める者が有った。誰あろう平塚先生である。

由比ヶ浜の挙動に俺と雪ノ下とは違うものを見出したのか、平塚先生は何処か困ったような笑顔を浮かべて

 

「雪ノ下、どうやらそれは君の勘違いのようだぞ。しかし……そうか、そういえば君が」

 

状況を把握しきったらしい先生とは真逆に俺と雪ノ下は暫し見つめ合い、そして疑問符を頭の中に浮かべながら首を傾げた。

先生の発言は実に含みのあるものだった。まるで俺が知らない所で俺と由比ヶ浜の間に何かしら因縁があり、それを先生が知っている。俺にはそういった意味に取れた。

しかし、全く心当たりのない俺にとっては意味不明としか言えない。

何か思い当たるフシでもないかと由比ヶ浜の顔をマジマジと見ても、さっぱり何も思い出せない。

強いて言うなら

 

「可愛い」

 

前言撤回である。以下に同じ教室内に文句なしの美人である雪ノ下、そして今は平塚先生が居るからと言って由比ヶ浜自身の可愛さは些かも減じていない。それどころか好みの問題を無視すれば前者二人の美しさと肩を並べるほどの可愛さと言っても過言ではないのではないだろうか。しかも普段は教室の一角を占拠するトップカースト共の中で騒がしくしている由比ヶ浜が肩身も狭そうに、縮こまっていると俺の中の悪魔(という名の嗜虐心)が鎌首をもたげるというか(断じてセクハラ的な意味合いはない)。

 

「ヒッキー!? いいいいいきなり何言っちゃってんの? はあっ?」

「そう嫌がられると傷つくが、別に普段から言われ慣れてるだろお前なら。教室でしょっちゅう聞こえるぞ可愛い可愛いって言われてるのが。初めてまともに見たけど、ああ確かにお前可愛いな」

「ちょっ、えっ? な、ななな何言ってんのヒッキー!」

 

そうそう実際怒ってるか何なのか分かんないけど、こうやって顔を真っ赤にしながら狼狽えてる所を見てしまうと、こうね。漲ってくる(断じてセクハラry)というか滾ってくる(断じてry)というか。

 

「比企谷くんの癖に上から目線ね。もう少し身の程を弁えた発言をお願いしたいのだけど」

「可愛いものを可愛いと言う事に資格が必要か?」

「そういう意味じゃないの。貴方の口からそんな言葉が出ているのかと思うと気分が悪くなってくると言いたいのよ」

 

不細工だから黙っていろという事なんでしょうか。不細工の言論を封殺するのにこれほど強烈な言葉はない。

不細工を自認する俺はあっさりと白旗を挙げる。

べ、別に由比ヶ浜を褒めるのに飽きたとかじゃないんだからね。

 

「比企谷、私には何か言う事はないか?」

平塚先生が物欲しそうな顔でこちらを見ている。

「先生は美人かと思ってましたけど、格好いい美人さんですね」

「ふ、ふふふ。そうかそうか」

 

あんなに鮮やかに煙草を吸い出そうとする人が格好良くない訳がないのである。

満足そうに頷く平塚先生だったが、その向こうで由比ヶ浜がこちらを睨みつけているのに気がつく。狼狽モードを抜けて怒り始めでもしたのか。

とはいえ、もうその話は沢山だし、由比ヶ浜も普通に会話できる事が確認できたのでさっさと話を進めよう。放課後の時間は有限である。いつまでも俺と由比ヶ浜の接点にかかずらっても居られない。

由比ヶ浜がそのうち言い出すつもりでいるらしいので、それまで待てばいいというのもある。

 

「それでどうして奉仕部へ来たんだ?」

「むー、ヒッキーのバカ。いいもん。……先生、ここって生徒のお願いを叶えてくれるところなんですよね?」

 

由比ヶ浜の悪口はともかくとして、俺の人格矯正を請け負う位だから由比ヶ浜の言っていることはある程度正しい事だろう。俺が首を傾げたのはそれがある程度周知されている事についてである。

もしかして俺が知らないだけで、ここって知名度高い部活なのか? そうなってくると俺の世間離れも笑えないレベルになってきてしまうのだが。世間の流行り廃りについていけなくなるのは仕方ないとしても、由比ヶ浜みたいな言っちゃなんだがアホっぽい娘でも知ってる事を俺が知らないのは単純にショックだ。

 

「概ね合っているが、少し違うな」

「あくまで奉仕部は手助けをするだけ。願いが叶うかどうかは貴方次第よ」

 

平塚先生の言葉を引き継いで、冷たく突き放したところの有る雪ノ下が、その特徴を一層強く表して言う。

俺の知る限り初の奉仕部の活動である。今後、或いは今回から俺は彼女のやり方を参考に活動していく事になる。隙有らば貢献するつもりだが、今回は取り敢えず彼女の腕前を拝見させて貰うとしよう。

俺は居住まいを正して由比ヶ浜に向き直った。

 

「それで? 由比ヶ浜さん、貴方のお願いを聞かせて貰っても良いかしら」

 

単刀直入。世間話を挟んだり、丁寧な前説を挟むことも無く、由比ヶ浜にそう切り込む雪ノ下。由比ヶ浜に対する態度は正直女子同士のそれとは思えないが、かといって彼女を馬鹿にした風でもない。これはあくまで彼女にとってのルーティンという事なのだろうか。そもそも奉仕部という名前の割に自発的な奉仕活動ではなく、依頼を受けた上での援助活動に徹する所からして雪ノ下には大分ハードルが高そうである。相談を受付けている割に相談員が優しくも柔和でもなく高圧的な態度を取っているというのに、そんな所に相談などする人間がいるのだろうか。

 

そんなそもそも論的なところに引っかかりを覚える俺だったが、由比ヶ浜が依頼内容に踏み込まれた途端に気まずそうな顔をして俺の顔を見てきた事には気づけた。これがあれだろうか。クラスのボッチキャラと校内にその名の知れ渡った帰国子女かつ成績優秀な超美少女の信頼の違いだろうか。……確かに俺でも後者を選びそうな2択である。話題がなんであれ同姓の方が相談を持ちかけやすいだろうし、こんな所にまで相談に来る様な案件である。複雑な事情も絡むとなれば尚更だ。俺と雪ノ下の間では奉仕部内での活動を前提とした勝負が行われているが、新入部員としてはぐだぐだも言えない立場だ。

俺は財布がポケットの中に入っていることを確認してから立ち上がって言った。

 

「飲み物でも買ってくるけど、何を買ってくる? 先生もいらっしゃるなら先生の分も」

 

雪ノ下としても俺の行動を妥当と思ったのか、特に俺の行動に文句はないらしい。何の躊躇もなく

 

「私は『野菜生活100いちごヨーグルトミックス』でいいわ」

 

などと言ってきた。遠慮の無さまで彼女らしいとか、あって数日で思わされる辺り本当に雪ノ下は雪ノ下である。

結局由比ヶ浜のリクエストを聞き出した所で、元の用事に戻ると言った平塚先生と連れ立って教室を出るのであった。

 

奉仕部から自販機まではゆっくり歩いてざっと5分。往復で10分程度。これだけあれば最低限由比ヶ浜の相談について聞き出せる筈だ。戻って俺が案件に関わるかどうか雪ノ下の判断を聞いてという事になるだろうが、低くない可能性で今回俺はノータッチになるだろう。勝負の最初から相手にリードを許すーーそれも勝手も分からない勝負事でだーーというのも頭の痛い話だ。関与できなければ致し方ない事なのだが、とはいえ無為に過ごすのも……。取り敢えずは由比ヶ浜のお願いが何なのかこのお使いの間に推測してみるとしよう。

 

「比企谷」

 

隣を歩いている先生に呼びかけられる。

 

「中々やるじゃないか。あの場で即座にそんな申し出が出来るとは思わなかったぞ」

 

「普段は気を使うような状況になりませんから。それより先生、本当に良いんですか? 缶ジュース一本ですけどご馳走しますよ?」

 

「君は私を何だと思っているんだ? 教師が生徒から些細でも物品を受け取るのは不味いだろうが」

 

教室内では用事があるからと言って断られたが、ここでもまた断られてしまった。確かにそういう見方が存在するのも事実だが、だというならさっきの暴行も割と洒落になっていない。それ以前に

 

「そうですか? 結構受け取ってくれる先生居ますよ? 英語の田口先生とか」

 

英語の田口は中年の女性教師である。俺と特に繋がりが有るわけでもないが、購買で買いすぎたパンを偶々見かけた折に申し出たらあっさりと持って行かれた。何でも子供に上げるとかなんとか言っていたが、どうあれ教師が生徒から食品を受け取ったことには変わりがない。

 

「まあ自販機まで行ってからだと時間もかかりますんで、代わりにこんなのはいかがですか?」

 

ポケットから徐に取り出したるはビニールに包装されたお菓子。何百という層のパイ生地とその中に入れられたチョコによって独特の食感と味を齎すそれを、大袋から幾つか取り出してポケットに入れっぱなしにしていたのだ。間食にでもと思っていたが特に惜しいという事もない。どうせバッグにはまだ入っているのだし。

先生は既に断りを入れたにも関わらず尚食い下がる俺の熱意に負けたのか手のひらを上に向けた手を差し出してきた。

 

「どうぞお納めください」

 

「君という奴は本当に意外な奴だな。こんな奴だとは思っていなかったよ」

 

こんな奴というのがどんな奴かは知らないが、そんな事はそう珍しくもないだろう。誰だって直接の関わりを持たなければその人の本当の所は分からないし、俺に関してはその辺を推測させるような材料もないのだ。高校進学からこちら校内であまり人と親しそうにした事がないからだ。

 

「やれば出来る子なんですよ」

 

「なるほど、確かに。認識は改めておこう。まあだからといって君の奉仕部勤めは続けて貰うぞ」

 

「分かってます」

 

「それじゃあ比企谷これを受け取り給え」

 

お菓子を受け取ったのとは反対の手をすっと差し出した先生。握りしめられた手の下に俺の手を持って行くと、俺の手の上に先生の手が置かれた。その感触についてどうこう思うよりも先に薄い金属同士の擦れ合う音がして、俺の手のひらに硬貨が乗っているのが分かった。

 

「さっきの口止め料とでも思ってくれ。ではな」

 

そう言って平塚先生は白衣を翻して歩いて行った。

 

俺もまた平塚先生に背を向けて自販機のおいてある通路に向かった。念の為、いや気まぐれで、まあ理由は分からないが、先生から貰った小銭はそうと分かるよう財布の中で他の物とは違う場所に入れておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い」

 

部室に戻った俺に、開口一番そう言い放った雪ノ下は俺の手から野菜生活をひったくったばかりか、礼も言わない内にストローを刺して飲み始めていた。話は一段落していたらしい、部室内の由比ヶ浜は俺が出て行った時とは違い俺の存在に気付いても話を中断しなかった。雪ノ下の態度について一言物申したいが、言っても態度を改めるとはとても思えない。無駄な事はしないに限ると、俺は由比ヶ浜にリクエストの有った紅茶を差し出した。小銭入れから100円玉を取り出そうとする由比ヶ浜に丁重にお断りを入れ、俺は自分の椅子に座った。先生からお金を貰った事を口にしていいか判断出来ないし、事実と異なると俺が出しておくとも言えなかったが、ここで金を受け取るのは不味い。

 

「ありがとう」

 

と由比ヶ浜は言ったが、俺は反応に困ってしまった。それがお使いに対するものならば良いのだが、奢って貰った事に対してならお礼の宛先が間違っている。由比ヶ浜が何故か紅茶一本貰っただけとは思えない嬉しそうな顔を見せるから尚更である。

先生には今度、貰った分のお返しをして今日のについては俺の持ち出しという事にしておこう。そうして折り合いをつけた俺は、雪ノ下に相談がどうなったか尋ねた。

 

「どこを使うべきかと迷っているのよ」

 

全く要領を得ない返事をする雪ノ下に詳しい説明を求めようとした俺だったが、それよりも早く由比ヶ浜が近寄って来てモニョモニョとしながら言った。

 

「クッキー……をね焼こうかなって」

 

「由比ヶ浜さんは手作りクッキーを食べて欲しい人がいるそうなのだけど、自信がないから手伝って欲しいというのが彼女のお願いよ」

 

由比ヶ浜の補足に雪ノ下が語った。

 

「友達にこういう事してるの知られたら多分馬鹿にされるし、こういうマジっぽい雰囲気、友達とは合わないから」

 

それが奉仕部に依頼した理由か。落ち着きなく視線を動かす挙動不審な由比ヶ浜に俺は首を傾げる。

 

「好きな人にクッキーをあげるとかって鉄板な気がするんだが、それって俺が友達がいないからか?」

 

古今東西女子の関心ときたら色恋沙汰と金の話というのが世間と創作物における女性一般の理解だと思っていたのだが、こういうのは現実の女性には受け付けない話題だったのだろうか。

 

「うぇ、ええええええっ!? ち、ちが、違うよ! 別に好きな人にあげるって訳じゃ……おれ、お礼に。お世話になった人にお礼にあげるの!」

 

まあ、それなら分からなくもない。お世話になった『だけ』の他人に態々手間暇をかけてクッキーを贈ろうというのは確かに現代の、それも年若い女性の行いではないかもしれない。そんな事をしている暇が有るなら恋愛の1つでもしようとするのが普通という事か。

 

「どういうお世話になったのかは知らんが、それはまあ確かに変わってるかもな。普通手作りの品を送るなら好意の有る相手だろうし」

 

「……別に好意が無いって訳でもないんだけど」

 

「え?」

 

「それに! そのあたしみたいなのが手作りクッキーとかなに乙女ってんだよ感じだし」

 

小声が呟かれた言葉が何と言ったのか聞き返そうと思ったが、由比ヶ浜はそれに取り合わずブルーな雰囲気を漂わせながら顔を俯かせて、スカートの裾を握りしめ始めた。肩まで震わせて言っている辺り本当に自信がないらしい。自信の振る舞いがそう有るべきである姿から外れていないか。

昨今の少年少女は自らがこうあれかしと強く思ったり、それと現実とのギャップに悩んだりするらしい。らしいというのはそれが俺自身には何の覚えもないからなのだが、少なくとも目の前の少女由比ヶ浜結衣に関しては事実らしい。

勝手に自分で自分のイメージを作ってそこから逸脱するような行為に対して恐怖を感じる。全く身勝手というか理不尽な鬱陶しさを感じるレベルである。そんな物が周囲から望まれている訳でもあるまいに、彼女は自分が周囲からそう望まれていると勝手に思い込んでいるのだ。

 

「由美子とか真里とかにも聞いたんだけどさ、そんなの流行んないって言うし、私には似合わないっていうのは分かってる。……おかしいよね」

 

全く今日という今日まで名前も知らなかった由比ヶ浜の事だが、それだけは断言できる。彼女のそれは只の思い込みだ。

 

「そうね。確かに貴方のような派手に見える女の子がやりそうなことではないわね」

 

雪ノ下の言うことは間違っていない。由比ヶ浜がそういう事をしそうだとは確かに見えない。なんだか頭の中まで軽そうだと思わせる明るい茶髪。色気とはしたなさを勘違いしたとしか思えないあちこち出過ぎな格好。おまけに礼儀だとか恩義だとかそういうものを一切感じそうにない軽薄さを滲ませる話し方。これでそんな乙女チックな行動を期待する方がどうかしてる。いやまてDQNな彼氏辺りにそうしてる所なら簡単に想像できるが。

 

「でもまあおかしいって事もねえだろ。普通手作りクッキーなんぞ贈る相手としては世話になっただけの奴じゃお礼が過剰になるってだけの話で。お前はどっからどう見たって乙女なんだし乙女ってるのは何の問題もねえ」

 

しかしクッキー作りか。確かに何処で作るのか迷う所だ。今居る学校内にも凡そ製菓をするのに相応しい場所は有る。家庭科室だ。しかし彼処は授業などで使っていない時は施錠されている。料理部があればその鍵も開いているだろうが、肝心の許可が俺達にはない。ガスや刃物も使う事の有る家庭科室の使用許可は簡単には下りないだろう。加えて材料の問題も有る。基本的に調理実習に使う材料は生徒達の持ち寄りなので家庭科室には食品は置いていない筈だ。例外的に油などの保存が容易な物は多少生徒達の不備も想定して置いてあるかもしれないが、クッキーを作るには全く不十分だ。

 

材料は今から調達しても良い。許可も或いは申請するだけなら今日中に出来るだろう。しかし、今日中に家庭科室を使用出来るかは怪しい所だ。となると当然学校外に場所を求める事になるが、校外で製菓が出来る場所などそれぞれの家庭しかない。通学等の関係で移動手段が一致していない可能性。友人でもない人間を家に招く事への抵抗。そして移動の手間を考えると中々難しい問題かもしれない。特に俺の存在が多くの点でネックになりそうだ。

 

が、それも無視できる場所がある。

 

「俺んちならここからそう遠くもねえし良いんじゃねえか?」

 

「ヒッキー!?」

 

「比企谷君、貴方いつからそんな風に自分を勘違いしてしまったのかしら。貴方の顔は、いえ顔だけでなく物腰も知り合って間もない女性を自宅に連れ込めるほど上等なものではないわ」

 

「由比ヶ浜の依頼の為だけに家庭科室の使用許可が下りるとも思えないし、雪ノ下と由比ヶ浜の家の事はよく知らないが親がいるなら男を連れてくのは面倒な誤解を招きかねないだろ。その点俺の家なら両親共働きだから面倒もないし、妹もいる」

 

その妹が我が家の場合両親以上に面倒臭い奴なのだが、あいつもこいつら相手にちょっかいを出したりはすまい。被害に合うのが俺だけならいつもの事なので今更気にもならないしな。

 

「比企谷君、まさかとは思うけれど、その妹さんは貴方の想像上の存在に過ぎないのではないかしら。だとしたら貴方自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思うわ。いえ間違いないわ」

 

「態々言い直してまで断言する必要は有ったんですかねえ。てかまずそこ普通は嘘だとか何とか言っとけよ。いきなり妄想扱いって」

 

「貴方の妹さんが架空の存在だとするなら、貴方の人生上の奇跡も納得が行くもの。妹さんは妄想、お友達も妄想」

 

そんなに俺に友達が居るというのが信じがたいのか。自分に友達が居たことがないからって逆恨みまでするなんて雪ノ下も存外器の小さい女だ。俺ぐらい普通の人間ならむしろ友達の一人もいないとおかしいと思うのが普通だろうに。

 

俺は雪ノ下への反論もそこそこにポケットから携帯電話を取り出して通話履歴を呼び出した。表示された10件の履歴の中からデタラメにタッチして妹の電話番号を表示する。ここ数ヶ月通話した相手は妹だけなのでどれであろうと妹に繋がってしまうのである。呼び出し音がなり始めたのを確認してから雪ノ下に俺の携帯電話を差し出す。

 

「その妹が実在するか確かめてみろよ」

 

雪ノ下は怪訝な顔をして電話を中々受け取ろうとしなかったが、俺も負けじと手を引っめずにいると観念したのか携帯を受け取り耳に当てた。妹の方もとっくに学校は終わっているだろうし直に電話に出る筈だ。

思った通り携帯のマイクから妹の声が聞こえた。

 

「もしもし、お兄ちゃん? 珍しいねお兄ちゃんの方から電話を掛けて来るなんて。どうかしたの? また事故に遭ったなんて言うのは勘弁してよね」

 

「……」

 

俺の妹とは思えない騒々しい声に面食らったのか、雪ノ下が一瞬顔を引き攣らせる。俺が相手だと思っているからだが、第一声で縁起でもない事を言うのはこっちこそ勘弁して欲しい。ともあれこれで俺に妹が居るのは納得して貰えただろう。再び雪ノ下に手を差し出して携帯を寄越すよう示した。が、俺の携帯電話を雪ノ下は微動だにしない。電話を掛けてきておきながら何も言わない俺に妹が不審がって声を張り上げた。

 

「ちょっとお兄ちゃん! 悪巫山戯ならいい加減にして。こういう事して態々心配かけるなんて小町的にポイント低いよ!」

 

「そういう事なんで雪ノ下。悪いけど携帯返して貰えるか?」

 

「お兄ちゃん!? え? 雪ノ下さんてどういう事?」

 

「ちょっと待ってろ」

 

「……ええ……そうね、ごめんなさい比企谷君」

 

いつになく歯切れの悪い雪ノ下の様子は引っかかったが、それより妹の期限を損ねる方が俺には不味い。

 

「悪かったな。ちょっとお前の実存を確認させたい奴が居てな。別に悪戯したかった訳じゃないんだ、帰ったらクッキー焼くからそれで手を打ってくれ」

 

「……ふーん、まあそういう事なら特別に許してあげるけど。雪ノ下さんて誰?」

 

「部活の部長だ。お前今日まっすぐ家に帰るよな? 今から2人人を連れて行くから」

 

「お兄ちゃんが!? 人を連れてくる!?」

 

「別に今までなかった事じゃない。そういう訳なんで家に居てくれよ。じゃな」

 

「え? ちょっお兄ち」

 

人を連れて行くと言ってこれだけ驚かれると、雪ノ下と由比ヶ浜を家に連れて行ったらどうなるか分かったもんじゃないな。早まったかもしれん。後悔先に立たずである。

が、これで妹も家に居てくれるだろうし二人を連れて行くのに障害はなくなった訳だ。

 

「そういう訳なんで妹はちゃんと存在するし家に居るみたいだからな、ちゃっちゃと移動しようぜ」

 

何故か意気消沈している雪ノ下。と、由比ヶ浜を連れて俺は家路に着いたのだった。


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