やはり俺の青春ラブコメがゲームなのは間違っている。 作:Lチキ
傷物語見ました。うん、楽しかった。でも、3部構成物の物足りなさと次が早く見たい感が強いです。
やはり、1,2,3部といっぺんに見たいですね~
それはさておき、最新話です。お楽しみに~
西の森近くのセーフティーゾーン。
通った道のりも覚えられないほど必死に走り続け、周囲にモンスターがいなひらけた場所までたどり着いた。息もたえたえに両膝を地面につけると、勢いよく何かが口の中に突っ込まれる。
「ぐむっ!?」
見ると今先ほど俺を窮地から救った人物が俺の口に何かをツッコんでいた。
いきなりなにすんだと驚き目を見開く。が、それを味わってみるとここ最近よく飲んでいた冒険の必需品である事が分かった。この甘い青汁のような微妙な不快感のある甘苦さはポーション特有のものだ。
風前の灯だったHPはレッドゾーンからみるみる内にブルーゾーンに戻った。全速疾走した後の疲労した体にこの甘苦さは拷問であれど、今はそれより安堵感が心を満たす。
ここにきてようやく自分の命が助かったのだと実感できた。
多少の冷静さを取り戻すと自然と命の恩人である人物に目を向けた。
背丈はそんなにない。小町か下手をすればそれより低いくらい。
煙玉の強烈な悪臭を避けるためかフードをマスクの様に顔全体でかぶっている。そして、一陣の風と共にめくれ上がるフードの中にはまだ幼い少女の顔が現れる。
薄暗い森にまばらに指す陽の光に照らされたくすみのある金髪が揺れた。そんな少女の姿を見ると胸の高鳴りが早くなるのを感じる。
これは恋?死の恐怖による吊り橋効果的なあれで小町より年下であろう少女に惚れてしまったのか。それともただ、走った後だから動悸が激しいだけなのか。
仮に雪ノ下に聞かれたら速攻で訴えられそうなのだが。その上助けてもらった立場で言うのもはばかられる事だが。一般的平均より上と思われる整った顔立ちの可愛らしい少女なのに、鼠や猫を連想しそうな髭のペイントで一気に台無しとなっている。
口に出せば「助けてやったのに失礼な奴、これだから童貞は!?」と罵られること請け合いだ。
いや待て、誰が童貞だ。ど、童貞ちゃうわ!?
あ、この反応間違いなく童貞ですね分かります。ちなみにソースは俺。
どうでもいい話だ。そんな事よりまず目の前の少女にすることがあるだろ。そう、まずは告白しよう!
いや、なんでだ?
どうやらまだ正常な判断ができるほど俺の精神は回復していないようだが、とりあえずお礼を言うのが先だ。仮にも命を助けてもらった相手にやれセンスが悪いだのと難癖つけてるとかどこのアホだ。俺だけど。
とにかく、まずは最低限の礼をいい義理を通そう。
「ど、どこの誰だか知らんが悪いたすか――」
「このアホ!」
「どがぁ!?」
一体何が起きたのだろうか?正解は俺が少女に殴られたでした!
‥‥なんでだ?
※ ※ ※ ※
おっす、おら八幡。死にそうなところを間一髪通りすがりの少女に助けてもらったんだけど、なぜかいきなり頭をどつかれたぞ!意味が分からなくて、おらわくわくすっぞ!
と、まぁ俺がどのくらい困惑しているかは、なんとなく察してもらえただろうか。
某ラノベとかでは助けた女の子にラッキースケベなる公然猥褻を働いた上で、殴られるという傷害事件が発生することがしばしばだが現実の世界でそれが起こる事などそうはない。いや、ここはゲームの世界だけど今はそれはおいておく。
そもそも、俺の場合ラッキースケベどころか女の子を助けてすらいない。なのになぜ殴られたのかまったく心あたりがないのだ。しかし、目の前の少女から発する雰囲気と怒気から察するに何かを怒っている事は明白だった。
その何かは分からないがここは1つ、目上の人間として言っておかねばなるまい。
さっきもちょろっと触れたがラッキースケベやヒロインの暴力とは刑法に抵触する犯罪行為である。
女側からすれば裸を見たのだからそれくらい当然と思ってるかもしれないが、それは間違いだ。どんな絶世の美少女でも、どこかの国の貴族でも、裸を見たから殴る蹴るといった暴力行為を正当化する事はできない。
訴えれば勝てるだろうけど手を出した時点でアウトだ。
つまり、理由があっても暴力に訴える人間はこの資本主義の社会で生き抜く事はできない。目の前の少女が何で怒ってるかは分からないが若いうちから見知らぬ人に手を上げるようでは彼女の未来が危ぶまれる。
助けてもらった恩はあれどここは文句の1つでも言わねばなるまい。むしろ、助けてもらった恩があるからこれから先、同じ事を繰り返さないようにしっかりと注意せねばなるまい。
これぞ本当の教育的指導。どこかの教育者には俺の爪の垢を煎じて飲んでもらいたいものだ。教育的に考えてまじ聖職者。
さて、それじゃあいっちょう年上として人生の先輩として世の中ってもんを教えてやろう。
「おい、いきなりなに」
「実のリトルペネントに攻撃すれば仲間を呼び寄せるなんて常識だロ!何やってんダ!!」
「・・・え?」
え?
いや、初耳ですけど・・・?
あれ?確か俺が怒ろうとか考えてたはずなのになんで怒られてるんだろ?
‥‥まぁいいや。なんか怖いし黙っておこう。
「それ二!秘薬のクエストはドロップ率が低いのにソロで行くとかどんだけ時間かかると思ってんだヨ!ドロップ率3%以下だゾ!最低でも2人で行くのが当たり前だロ!!!」
いや、それも初耳だ。え?そういう常識があるの?マジで?
というか3%未満とかマジか・・・確かに1人じゃ効率が悪いな。
でも、別に好きで1人なわけじゃなく不可抗力というか、ぼっちというか・・・なんかすいません。
ぼっちですいませんとか悲しすぎる謝罪人生で2度目だよ。
「おれっちがいなかったら今頃死んでるところだゾ!」
あ、はい。それは本当にありがとうございます。おかげで助かりました。
そのついでと言ってはなんですが、見ず知らずの貴方になんでこんなお説教されてるのか理由を教えてはくれませんか?駄目ですか。そうですか。
つーかなんでさっきから敬語なんだろ俺?
怖いからですね。分かります。
「まったく、ほんとに何考えてんダ!」
「あ、はい。なんかすいません‥‥」
気が付けば少女を怒ろうとしていたのに逆に怒られてる情けない男がそこにいた。願わくばそれが俺じゃな事を祈ろう。
そうだな、でもこれだけは言っておこう。現実はくそったれだ。
しかしこんな訳の分からん状態でも普通に謝っちゃたな俺。
まぁ、自分が悪くないのに謝るのはぼっちが良くするコミニケーション方法だしな。何を隠そう中学2年生時代の俺が他者ともっとも多くしたコミニケーションだしな。
あれ?もしかしてくそったれなのは俺なのでは?
「まぁ、せっかく助けたんダ。今日の所はこの辺で許してやル。けどもうこんな真似はやめロ!そりゃあこんな状況じゃ自暴自棄になっても仕方ないかもだけど‥‥自殺なんてつまらん真似やめろよナ」
どこがこの辺なのか良くわからないが、じっくりたっぷりお説教を終えた少女は一変、哀愁を帯びた瞳でこちらを見つめそんな事を言ってくる。
‥‥
もしかして俺、自殺しようとした男として見らてないか?
ああ、それでなんか怒られてたのか(納得)
なんでそう思ったのか知らないが、目の前で自殺未遂なんてしようものならついお説教の1つでもするのが人情ってやつだろう。
ただの事故なのだが。
それでも、この少女は俺のあれをそういう風にとらえてしまったらしい。確かにこんな目をした男が、どこの常識かしらんが攻撃してはいけない感じのモンスターを攻撃した挙句に囲まれ殺されそうになっていあたら自殺を疑う気持ちも分かる。
ただ、死のうとしてる人間がいてもそれを助けようとする奴は少ない。いない訳じゃないけど、少ないのだ。
人命がかかっていない事でも、例えばイジメなんかでも、いじめられてる奴を助けようとする奴は少ないだろう。少なすぎてむしろいないと言っても過言じゃない。
だがそれは、別に変な事でもなんでもなく普通の事だ。
どこぞの上条さんは、目の前で困った人がいれば助けるのが普通の高校生と定義するが、それは間違い。
世間ではそういう奴をヒーローと呼ぶし、言った上条さん自身ヒーローに分類される。元ぼっちの通称白アスパラさんが保証している。最近ではただのロリコン、もしくはハーレム野郎に成り下がったけどな。
だがここで1つ考えてほしい。確かに人助けとは正しい行いだし、ヒーローって奴はかっこいい上に民衆から支持されるものだ。しかし、あくまで彼らは少数派であり。民主主義として考えれば彼らも目の前の彼女も普通ではない人間。奇人、変人に分類される。
顔のペイント、言葉の最後がカタカナ、1人称がおれっちと否定できない実証があるからこの考え方は正しいといっていいだろう。現にアニメ、漫画、ラノベのヒーローは大抵変人や変態だし。
普通を定義してる普通ではない高校生も、生い立ち(不幸体質)髪型(ウニ頭)非凡さ(魔術関係の事件遭遇率、ラッキースケベ&フラグ体質など)逆に聞くがどこが普通の高校生?
それでもまだお前達が普通とのたまうならまずふざけたその幻想をぶち殺す!
「それとダ。助けてやった分の料金はきっちりいただくから名前教えロ」
おいコラ。金取るのかよ。
いやでも、実際命助けてもらったしそれも仕方ないか。
「‥‥比企谷八幡っす」
「‥‥は?」
なんだその「何いてんだこいつ、キモっ!」みたいな反応は。聞いてきたのお前だろ、名乗っただけでこの反応とか俺の名前はそこまで酷いのか。いや、そんな事はない。むしろ俺の名前は日本全国で見る事があるほどメジャーなものだ。八幡宮とか八幡製鉄所とか・・・あとは、後はないな。少なくとも俺は知らん。
「‥‥ちょっと確認するけどベータテスターだよナ?」
「え、違うけど」
「‥‥‥‥いやいや、ニュービーがこんな序盤にここまで来れるはガ・・・・・・あれか、誰かベータテスターからここの事を聞いたとカ?」
「いや、ベータテスターの知り合いは1人いるけどデスゲームが始まった後は会ってないし。知り合いって言っても名前くらいしか知らんし・・・」
正確には奴の性癖も知りたくないが知っている。うん、本当にホモとかそんな情報いらんわ。
「じゃあ、なんでこんなとこいんだヨ?こんな入り組んで初心者なら1日かけても到底たどり着けない場所に・・・」
「始まりの街でクエスト情報をNPCから聞いてきただけだけど?」
「ハァ!?」
なにを驚いているのか分からないが、驚いたからってそんなに詰め寄ってこないでほしい。色々と近いから!
「始まりの街の情報って、あのただっぴろい街の裏の裏にある隠し通路みたいなところからしかいけないあの情報を!?街全体にローラーでもかけなきゃ絶対見つからないようなアレをか!?」
「お、おう」
相当驚いたのか語調が荒い。それに無意識なのか語尾をカタカナにする口調もなくなっている。というか、やっぱりあのしゃべり方わざとやってたのか
でもそこまで驚く事か?確かにかなり迷ったけど少なくともゲームとして作られてるんだからヒントはあったし。作った人間の癖のようなものを見つければ案外簡単に見つけられるレベルだ。
「と、とにかく一旦落ち着けよ。それに顔が近いから!」
「お、おう・・・・・・いや、おウ」
目と鼻の先にある少女の顔を遠ける。
これ以上は色々とまずいとお互いが思ったゆえの親切心だ。決して、照れたとかではない。
お互い顔が赤色に染まってる気がするが、ただの気のせいだ。