アイドルマスターシンデレラガールズ~花屋の少女のファン1号~   作:メルセデス

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「継続は力なり」…とはいいますが、その継続が難しかったりするのです。

なかなか文章を書き連ねると、見事なまでに満足いくものが出来上がらないものです。なかなか書くということは難しいです…。
その結果が、投稿期間の間隔が空きすぎているということです。

さて、私事ではありますが、数ヶ月前に東京に赴き、アイドルマスターのイベントである、プロデューサーミーティング1日目に現地参加して来ました。

東京も初めてではありましたが、盛り上がることが出来たこと、現地で765プロのアイドルの声優さんを見て、声を聞けたこと、大変満足しました。



第五話

今日は今日とて、始まる学校の日々。毎日、担当の教科の先生から出される課題を消化していくのは学生の本分だ。『遊びたい、部活がしたい』という欲はもちろんあると思うが、それとこれとは別問題だろう。もちろん理解力は人それぞれだし、どうしても解けない問題だってあるだろう。それはそれで良い、わからなければ先生に、先生に聞き辛いなら…答えがわかる友達、クラスメート…もしくは自分の親に聞いてもわかるかもしれない。基本的には知識の積み重ねだ。わからないことをそのままにしておけばその先で躓くことになる。いずれはわからないことだらけになり、課題も出来なくなり、やる気がなくなり授業にもついていけなくなり、テストの点数が低くなっていってしまう。それではマズイ。高校生ともなると、勉学は疎かに出来ないからだ。将来の進路が決まる…とは言い過ぎかもしれないが将来に関わってくるのは間違いないのだ。面倒なことかもしれないが、必ず自分のためになる。『過去にこうして置けば良かった』等後悔しても遅い。『こうした方が良いかな…』と思ったことを『やらなくても大丈夫か、なんとかなるか』と思い直しやらなかった場合、高確率で痛い目を見る。そして痛い目を見た後に『あぁ…やっぱりしとけば良かった』と思うのだ。意識改善をした方が良い、とまでは言わないが痛い目を見る前にやった方が恐らく損はしないと思う。話が逸れかけれてる気がするが、言いたいことは、学校から出された課題は全くやらないのではなく、少しでも考えて解答を出してみよう、ってことだ。

 

「近藤、また課題が出てないんだが…」

「いやー、やろうとは思ってたんですけど…寝ました!

すいませんでした!」

「今まで出した中で半分も出てないんだからな、気をつけろよー」

 

朝、近藤が課題を見せてくれるように頼んで来たのだ。

結果から言うと、断った。午後からの授業ではあるし、昼休みの時間があれば出来ない課題ではないと思ったからだ。だが、昼休みの時間は睡眠欲に負けてしまったらしい。そして先生から注意されているわけだ。

しかし、半分も出してないのか…まぁ、部活もしてるし忙しいのはわかるが…テストがある時期になると大変だと思うが。まだ高校の授業が始まってそこまで経ってないし挽回は可能だろう。まぁ、自分に非があるのは認めてるのだし、手遅れになるまでにやって欲しいものだ。

 

「よし、今日は課題やってくるぜ!わからなかったらその時は教えてくれよな!」

「基本は教科書に沿ってやれば大丈夫だとは思うが…わからなかったら教えるよ」

「頼むな。じゃあな芳乃!」

 

放課後、近藤の宣言を受け取り、部活へ行く姿を見送る。

今日は346プロの番組が何かあったような気がしなくもないが…まぁ、大丈夫だろう。

さて、俺は俺で考えていたことがある。先日、渋谷の母親会った件で、渋谷の手助けとして思いついたことがある。どうやら、女子は甘い物が好きだということだ。しかも、アイドルということは少なくとも人前で踊ったり歌ったりするのだから、結構ハードなレッスンをするはず。というわけで、糖分が摂取出来るお菓子を作ろうと思ったのだ。ただお菓子を作成するのも初めてだったら苦戦はしたかもしれないが…生憎初めてではないし、回数はそれなりにある。

最近は作っていなかったが、案外覚えているものでなんなく作れた。ここまでは良かった。ただ、問題は作り終えた後に気付いた。…どうやって渡せば良いんだ、これ。

学校内で渡すにも学校外で渡すにもどのタイミングで渡せば良いのか思いつかなかった。結局、そのまま放課後まで時間が流れてしまったわけだ。最後の手は考えてあるが、家に帰った後になり、家族の人と食べることになるだろう。別に家族の人と食べるのも良いが、島村さんのような同年代に近い女子もいるだろう。その人達と食べて貰いたい。そして、出来るなら感想が欲しいのだ。作った以上は美味しかったか、口に合わなかったか気になるしな。

意を決して立ち上がった…のは良いのだが目的の人物がいない。既にクラスから出て行った後なのか。なら、追い掛けないとな。

 

偶然にも学校の外に出ればすぐにその姿を見つけることが出来た。彼女の後ろ姿の特徴である、長い髪。他の人にも似たような後ろ姿はあるが、何故か分かりやすい。俺が言うのもなんだが、渋谷はスタイルが良い。学生服で整っている長い髪、スタイル。ここまで揃っていれば後ろからでも割とわかりやすい。

 

「渋谷」

 

俺が呼び掛けると後ろを振り返る渋谷。相変わらずの表情…と思ったが、俺の顔を認識した途端、不思議そうな顔をする。俺から渋谷に話し掛けることなんてそうはないからな。相変わらず、クラスの中では挨拶する程度だ。

 

「これから事務所に行くんだろ?レッスンとかするだろうから、その際に甘い物が欲しくなると思ってお菓子を作ってきた」

 

と言いつつ俺が取り出したのは菓子の入った袋。白い袋に赤のリボンで取り出し口を縛ってあるだけの簡単な物だ。

 

「…お菓子、作れるんだ」

「まぁ、前に作る機会があってな。最近は作ってなかったんだが…。味見はしてるから大丈夫だ…と思う」

 

言い切れないのが俺の意思の弱いところだ。他人が美味しいと思っても、自分が食べてみたらそこまで美味しさを感じてなかったって言うのはありえることだしな。渋谷は差し出した袋を受け取り、袋をじっと見ている。

 

「貰っとくよ。ありがとう」

「ついでに言うと、一人分には多すぎるから、島村さんや他の同年代の人にも食べて欲しい。感想が出来れば聞きたいからな」

「レッスンの合間に卯月達と食べさせて貰うよ。ところで…中身はなに?」

「そういや言ってなかったな。クッキーだ、バタークッキー。次作るなら、何か要望があったらそれに合わせて作るよ」

 

ちなみに、何故バタークッキーを作ったかの理由はない。

一番先に思いついたのがバタークッキーだったってだけだ。

 

「美味しくなかったら、作る機会なくなるけどね」

「…お手柔らかにお願いします」

 

微妙な笑顔で言うな。反応に困る。まぁ、本気で言ってはないだろうから嫌がってはないのだろう。それだけで今回は十分だ。さて、これから事務所に向かうのだから長話しては迷惑だろう。

 

「事務所に行くのに呼び止めて悪かったな。頑張れよ」

「うん、ありがとう。えっと…」

「…どうした?」

 

渋谷に背中を向けたまでは良かったが、何か言い掛けてる感じがある。…俺の方から言うことはないだろうが…。

そういえば、何か渋谷に聞きたい事があったような気はするが…思い出せない。

 

「ううん、何でもない。…じゃあね」

「ああ」

 

渋谷の方も特になかったのか、背を向けて行ってしまった。まぁ、大したことじゃなかったのだろう。思いついたのなら、言い淀むこともないだろうしな。

何にせよ、お菓子の感想を聞ける時が楽しみだ。次に何を作るのか楽しみにしながら、俺も帰路に着くとしよう。

 

 

 

 

 

「よし、課題終了ー」

本日分の課題を片付け、背伸びをすると、パキッと良い音が鳴った。時刻は午後6時30分。夜飯を作っても良いが、今日はそこまで腹の減りが早くないようだ。そういや、最近音楽プレイヤーの楽曲を整理していなかった気がする。聞きたい曲があるかも知れないし、CDを借りてくるついでに晩飯も買ってくるとしよう。

 

 

CDのレンタルショップを出る。結構CD借りたな…10枚いくかいかないかぐらいだ。その中には765プロ、346プロのCDも混ざっている。ほとんどは課題を片付ける時に流すBGMなのだが、出掛ける際にも聞くことがあるため割と歌自体は覚えることが多い。歌えるかどうかは別問題ではあるが…。さて、後は晩飯を買って帰るだけだがどうするか。どこで買って帰るかを決めなかったため、どうするかを考える。コンビニ弁当でも良いが、なんとなく味気ないような感じもするし…。と、思考しながら曲がり角を曲がった所で、見知った顔を見かける。相手も同じタイミングで気付いたところで手を振ってきた。

 

「こんばんは芳乃さん!」

 

笑顔で声を掛けて来てくれた。彼女の笑顔は眩しい。俺に向けているのが勿体無いな…本当。

 

「こんばんは島村さん。仕事帰りですか?」

「そうなんです。ダンスレッスンしてるんですけど、難しくて…。でも、楽しいです!」

「楽しいなら何よりです。でも、事務所に入って間もないのにダンスレッスンとは…やっぱりハードですね」

「えっと…それには理由があって…私達、ライブのバックダンサーをやることになったんです!」

「バックダンサー…それは凄いですね」

 

バックダンサー、ということはメインで踊るアイドルから、もしくはプロデューサーから島村さん達が抜擢されたのか…? そうでもなければ入って間もない状態でそんな大胆なことはしないよな。…? 私達ってことは…

 

「私達ってことは、島村さんの他にもバックダンサーをやる人が?」

「はい! 私と凛ちゃんともう一人、未央ちゃんと…なんですけど、凛ちゃんから聞いてないですか…?」

 

島村さんが三人の名前を言った所で、不思議そうに質問を返された。まぁ、俺が既に渋谷から聞いていてもおかしくないと思ったんだろうけど、残念ながら聞いていない。

 

「聞いてないですね。そんな毎日話すような仲でもないですし、言わなかったとしても不思議ではないです」

 

まぁ、言って貰ったところで気の利いた返事が出来たとは思えないが。それに、渋谷が俺に言ってくるとは…正直、考えにくい。仲の良い同性友達なら話すかもしれないが、異性で今年知り合った俺に話すとは思えない。教えてくれたとしても何かできるわけではないが、応援くらいはしないとな。

 

「応援くらいしか出来ませんけど、頑張ってください」

「ありがとうございます! 島村卯月頑張ります!!」

 

レッスン帰りなのに笑顔の絶えない彼女。本当に楽しくやっているのだろう。実際に島村さん達が出る日付がいつかはわからないが、そう遠くはないだろう。インターネットで調べれば日程くらいは大方わかるかな。

 

「島村さん、まだ時間ありますか?一つ、聞きたい事があって」

「大丈夫です! 何でしょうか?」

「今日、渋谷が持ってきたお菓子を食べたと思うんですけど、どうでした?」

 

明日とかにでも渋谷に聞く予定だったが…ここで島村さんに会ったのも良かったかもしれない。直に感想が聞ける事に悪いことはない。何を質問されるか、若干緊張気味だった島村さんの表情は、俺の言葉を認識した瞬間に、またも笑顔になる。

 

「凄く美味しかったです!最初は凛ちゃんが買ってきたのかと思ったんですけど、違うって言ってて、貰い物だって言ってたんですよ!」

「良かったです、久しぶりに作ったんで不安だったんですけど、安心しました」

「みんなから誰からの貰い物かって凛ちゃんに聞いたんですけど、教えてくれなくって………え?」

 

………島村さんの笑顔が固まる。

 

「えっと…芳乃さんが凛ちゃんにあげたんですか?」

「はい、今日の放課後に」

「…ちなみに、何のお菓子でしょう?」

「バタークッキーです」

「どこかのお店で買ったんですか…?」

「大変恐縮ながら、手作りです。久しぶりに作りましたけども」

「……えぇ〜〜〜〜〜!?」

 

街中で割と大きめの声を張り上げる島村さん。…とりあえず、周囲に人がいないのが助かった。不審にこっちを見てくる人はいなかった。

 

「芳乃君の手作りなんて…何か負けた気分です…」

「何にでしょう?」

「女の子としてです…。私、こんなに上手にお菓子が作れるか自信がないです…」

「練習すれば出来ますよ、最初からなんて上手くいかないですから」

 

レッスンも同じだ、練習して出来るようになるのと一緒だろう。…島村さんは喜んだり落ち込んだり、コロコロ表情が変わる。裏表がないのだから、きっと誰でも仲良くなれそうな気がする。そうだ!、と何かを思いついた島村さんが改めてこっちを見る。

 

「作りたい時は芳乃さんに教えて貰ってもいいですか?」

「俺に?」

「はい!ダメ…でしょうか?」

 

断る事はできるが、正直断り辛い。断ったら断ったで落ち込みそうだし、こっちもなんとなく接し辛くなりそうだ。

意識はしてやってないとは思うが、断られるかもしれないと思いながら問い掛けているこの状態を島村さんがやっているというのも、断り辛い。彼女もアイドルを目指す上で十分な容姿を持っていると思う…俺が言えたことじゃないけど。

 

「良いですよ。お菓子の作り方を人に教えたことはないですけど、それでもいいのなら」

 

断る理由もとくにないのも確かだ。普段から家は綺麗にしてるつもりだが…特に綺麗にしとかないとな。…って、俺の部屋に来るとは限らないのか。何を考えてるんだ俺は。

 

「はい!時間がある時に連絡します!」

 

そごまでして教えて貰いたいのか。連絡される前に、二人で作るとなると何が良いのか考えないといけないな。それとも、島村さんは作りたいお菓子でもあるのだろうか。

ま、これはその時に聞く形で良いだろう。

 

「これ、私のアドレスと電話番号です」

 

島村さんはスマホを操作し、アドレスと電話番号を表示させた画面で俺に手渡してきた。画面を見ながら登録し、メールを1通送信し、電話をワン切りする。間違えることなくメールも来たし、電話も鳴ったことを確認して、スマホを返すと、島村さんは俺の分を登録していく。

 

「えへへ、ありがとうございます。思いついた時に連絡しちゃいますね」

 

凄く嬉しそうだ。この分だと、電話がかかってきた際は割と物事を終わらせてからの方が良いかもしれない。まぁ、いつ連絡が来るかもわからないし、俺から電話することはほぼないとは思うのだが。アドレスや電話番号を登録してる友達にも、何か用がなければ連絡しないしな。

 

「了解です。すいません、長時間引き止めてしまって」

「いいえ、楽しかったですから。最後に、私から一つ、お願いしても良いですか?」

「…何でしょう?」

「私も凛ちゃんみたいに接して欲しいです!」

 

………ん?島村さんと渋谷で接し方が違った覚えはないんだが…何か違っただろうか。

 

「えっと、言葉遣いです…私の時はちょっと余所余所しさを感じるので」

 

島村さんの時は敬語っぽく話してるしな。年上っぽいのだが、どちらかと言うと同年齢に見えるしな…失礼な事だが。まぁ、本人がその方が良いって言うなら、普通に喋った方が良いか。

 

「改めてよろしくな、島村さん。…これで良いか?」

「はい!芳乃さん、これからもよろしくお願いしますね!」

 

彼女が真正面から向き合うため、俺も彼女には嘘は吐消そうにない。現状で、嘘を吐いてるわけではないけど…な。

 

 

 

 

 

結局、コンビニ弁当を買って帰り、弁当を食べた後にいつもの様にBGMを聞きながら課題を消化していると、LINEの通知音が聞こえた。BGMの音量より携帯の着信音や通知音を大きめにしておくことでお知らせに気づくようにしている。区切りが良いところまでチェックしないのだが、タイミング良くちょうどひと段落したため、携帯を手に取り確認する。

 

「ん?」

 

通知を確認すると、思った人とは違う人からメールがあった。というか、名前か表示されてないから登録してないアドレスだ。…迷惑メールか?まぁ、中身を見てからでも遅くはないか。

 

「…あ、そういやそうか」

 

結果から言うと、中学が一緒だった時の友人からのメールだった。高校に入学する前に携帯電話を紛失、そこまで登録数は多くもないアドレス帳が消えてしまったため、こちらから連絡することが出来なくなったのだ。アドレスや電話番号を覚えてる友人にはアドレスや電話番号を買い直した後に送ったのだが、全員は覚えきれていない。新しいアドレスを伝えた友人から教えて貰ったのだろう。簡単な返信文を送り、アドレス帳に再登録を行い携帯を元の位置に置く。大方、前に登録してた分は戻ったと思うが、まだ完全には修復出来ていない。何より、俺が過去にお菓子を作った相手のアドレスがまだ戻っていない。彼女とは、高校も別の高校に進学したため、連絡の取り用がない上にどこの学校かも知らないのだ。メールのやり取り自体は、彼女から送られてくることがほとんどであり、内容も日常の出来事を伝える事が多かったため、向こうからしたら無視されていると思われても反論出来ない。…もし、偶然にも会うことがあれば事情を説明して謝ろう。謝る機会があればの話だが。




さて、如何でしたでしょうか?

決して満足するものではなかったでしょうが読んで頂けたなら幸いです。

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