アイドルマスターシンデレラガールズ~花屋の少女のファン1号~   作:メルセデス

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お気に入りが50件ほどになっておりました、ありがとうございます。まだ始まったばかりでいつ終わるかも分かりませんが、よろしくお願いします。

うーむ、一カ月に一回更新が限界ですね…。明確なプロットを作ってるわけてばなく、完全に思い付きで作ってる感があるので、分かっていたことではあるのですが…。

それはそうとして、第四話です。相変わらずの文章ではありますが、見て頂ければ幸いです。


第四話

翌日。

授業が終わった放課後。

とある場所へと向かう。行きつけの店…と言ってもおかしくはないが、男の俺が行くには少々意外に思われるかもしれないお店だ、自分で言うのも何だが。クラスの全員もそうだが、友達でさえこの事を知っている人は少ない。

近藤辺り知られるとなんか面倒そうではあるしな、なんとなくだけど。

 

「あら、芳乃君。いらっしゃい」

 

と、店の前にいた女性に声をかけられる。たまたま店の前に出てたらしい。年齢を聞いたことはないが、若く見える方だ。

 

「どうも、お世話になってます」

 

実際、この店に寄るのは一度や二度ではない。本当に世話になってる。寄る回数も、月に最低二回、多い時は週に一度は通うくらいだ。まぁ、通い始めたのは一年前くらいからだが。 視線を店の中に向けると、見えるのは…多くの花。

 

「今日は…何か目的があってきたの?」

「そうですね…。母親のと、あと雑談を」

「…なるほど。じゃあ準備するから少し待っててね」

 

そう、芳乃和也は花屋に来たのです。…誰に語りかけてるわけてばないが、こういう風に言わなきゃ恥ずかしい。

自分のこととなると、無駄に恥ずかしくなる。他人を褒めたりするのはどうにでもなるんだがなぁ…。

 

話を戻そう。基本的に花は選んで貰っている。自分で選ばないこともないが、選んで貰った方が彩りが綺麗だ。

 

「そういえば、芳乃君も高校生だったかしら?」

「そうですよ。今年高校入学したばかりですけど、どうかしました?」

「ウチの娘も今年から高校生なのよ。部活も何もしてなかったけど、今年になって思ってもなかったことをやるようになってね」

「そうなんですか…」

 

思ってもなかったこととなると、部活ではなくアルバイト、ということもないだろう。高校生になったばかりの同級生がやる親の想像もつかないことってなんだろう…?

反応を見るに悪いことではないだろうが…。

 

「まぁ、娘にはまだ恥ずかしいから知り合いにも話をしたらダメだって言われたけどね」

「それだったら、僕も何をしようとしてるのか聞いてしまったらダメですね」

「あら?気になったの」

「それは気になりますよ。ここまで前振りされたら誰でも気になりますって」

 

さっきから考えてはいるが、全くわからない。正直、お手上げだ。…これ以上追求するのも負けた気がするし、辞めとこう。

 

「正直、当てるのは結構難しいとは思うけどね。やると決めたからには、きちんと筋を通す子だし、そこらへんは心配は…あ、帰ってきた」

 

花をほぼ選定し終わった時にちょうど話の元となった本人が帰って来たらしい。…ということは、この話もここで打ち止めだろう。知る機会もなくなるだろう。

 

「ただいま、お母さん」

 

…? 気のせいか、聞いたことのある声な気がするが。

と、同時に店の奥…家の方から犬が飛び出してきた。

…あ、昨日会った犬だ。そうだ、花屋で見たことあるって思ってたからついでに聞こうと思ってたんだ。 あれ、俺の足元に寄り添ってきた。

 

「ハナコ、芳乃君にも懐いてきたのね」

 

素直に懐いてくれるのは嬉しいことだ。ただ、今は少々焦っている。情報を整理すると、ハナコが花屋から出てきたということはこの家に住んでる、ということだ。そのハナコとは公園で昨日会っている。ハナコが単純に出歩いていたわけではなく、誰かに連れられていた。それは誰だったか。つまり…今、俺の後ろにいるのは………

 

「高校生の男子が一人で花屋にいるのって、初めて見たよ」

 

俺と同じ高校で、同じクラスで、最近何かと縁がある異性、渋谷凛がそこにいた。ちなみに、まだ後ろはまだ振り返ってない。どんな表情したら良いかわからない。

 

「あら、二人とも知り合い?」

 

渋谷の母親が俺達を交互に見ている。何だか不思議そうに見てるな、何か珍しいのだろうか。…そして何故だ、嫌な予感がする。

 

「…知ってるも何も…同じクラスだから」

「それにしたって、男の子の友達は珍しいじゃない?」

「最近、何かと縁があってね」

「友達ってことは否定しないのね…?」

「…お母さん…」

「あら、怖い怖い」

 

親子間で娘をからかう母親。一般的にあるかもしれないけども、渋谷さんや…俺越しに睨まないで。いや、表情見えないからわからないけど、睨んでる気がする。俺は睨まれてないと思うけど睨まれてる気分だ。

まぁ、実際聞かれたら困ることではある。友人、という定義がどこまでのものかにもよるのだが。俺自身、渋谷との現在の関係が友人かと聞かれると…どう答えるべきか。

 

「芳乃君、凛はクラスではどんな感じなの?」

「ちょっとお母さん!」

 

本人を目の前…じゃなくて真後ろにいる状況で話せと?

いやこれ、渋谷も恥ずかしいだろうけど、これは俺も辛い。昨日も、島村さんと渋谷を目の前にして似たようなこと言ったけどさ。ただ、ここで逃げても良いが、今度またこの店に来た時にどうせ同じ事を聞かれるなら今ここで話した方が良いのか…。

 

「特に変わったことはないと思います。異性の友人は知りませんけど、同性の友人は既にいるようですから。孤立してるということもない…と思います」

 

当たり障りのない答えで言ったつもりだが…どうだ?

あくまでクラスの中で渋谷を見ただけの感想だ。特に本人にも悪い内容ではないだろ、顔は見えないが。どんな表情してるのか、見てみたい気もしなくはないけど。

渋谷の母親が、なるほどね、と頷いている。

 

「クラスで凛と話したことってある?」

「いえ…朝の挨拶をされたことはありますけど、クラスの中で話したことは…」

「へぇ〜…なるほどね」

 

…渋谷の母親が凄く悪い笑顔だ。視線は自分の娘の方を向いている。…これは、マズいか、やってしまったのか。

娘に向けていた視線を、表情はそのままでこちらを向いた。

 

「芳乃君、私が知ってる中で、凛が同年代の男の子と会話するのって、初めてに近い…というか、初めてと言っても良いくらい見た覚えがないの」

 

十数年間育ててきた親が言うなら、その情報は間違いないのだろう。

 

「そんな凛が、朝の挨拶を自分から異性にするなんてよほど珍しいと思うのよ。愛想が良いとは言えないじゃない?

だから、男の子に限らず、印象を良く思ってない人もいるんじゃないかって思っててね」

 

………ノーコメント。ノーコメントで。

 

「今の芳乃君の話を聞く限り、クラスの中じゃなくて、放課後で話すきっかけがあったんでしょう。しかも今日も凛から芳乃君に話しかけるくらいだから、数回話す機会があったのね」

 

完全に墓穴を掘ったな、これ。目の前の人が嬉しそうだからまだ良いけど。

 

「芳乃君」

「………言いたいことはなんとなくわかりますが、なんでしょう?」

「凛の初めての異性の友達に一番近いわ。よろしくね」

 

選定し終わった花を俺に渡しながらそう言われた。

ですよねー、そういうことですよねー。自覚はなかったけど、そう思われても仕方ない。反対の立場だったら俺でも結論がそうなると思う。でもそんなはっきり言わなくても良いと思うのですが。しかもよろしくって。

そしてタイミングが良いのか悪いのか、店の奥で電話が鳴った。

 

「ごめんね芳乃君、ちょっと電話に出てくるから」

 

当然のように電話を取りに行く。そして残されたのは、同年齢の二人。近くにいるのに、まだお互いに顔も合わせてない上に、沈黙。体感時間なので正確な時間はわからないが、約一分過ぎた。………とりあえず、ここで俺がすることは…。

 

「あー…もっと上手い言い方すれば良かった、悪い」

 

謝罪。これ以外に、何を言えば良いかわからなかった。

言いながら振り返ると、無表情に近いながらも頬に赤みがあり、拗ねてる?ような感じが見受けられる。

渋谷は俺の言葉を聞いて、一つ息を吐いた。

 

「私の方こそ…ごめん。何だか迷惑かけちゃって…。

………それで…その…」

 

謝られてしまった。謝られても…渋谷には非はないんだが…というか、俺が困るからやめてくれ。

 

「どうかしたか?」

 

そして何か言いづらそうなことでもあるのか、言葉に詰まってる。俺に対して? 一体何を言われるのか…。

 

「…お母さんが言ってたけど、愛想がない、っていうのは自覚あるんだ。それで、誤解されたこともあるしね。芳乃もそう思う?」

 

自分の母親からそう評価されればそう思うのは仕方ないって思う。それに昔から自覚はあったんだろう。ただ、その現状を俺に肯定して欲しいのか否定して欲しいのかは知らないが、俺自身の意見としてなら決まっている。

 

「いや、思わない」

「………え?」

「思わない…というか、まだ知らない、と言った方が正しいかもしれないな。そこまで判断が出来るほど、俺はまだ渋谷を知らない。他の人は知らないけど、俺はそう判断するには早いと思ってる」

 

会ってまだ一ヶ月も過ぎてないのに、そんなマイナスの評価なんてよっぽどだろう。人それぞれかもしれないが。

…忘れていたが、ハナコは俺の足下にじっと座っている。

本当に懐かれたのかね…。

 

「笑ったり怒ったり、泣いたり楽しんだりすることが出来ないってわけじゃないんだ。表情の変化が読み取りにくいってだけだろ。渋谷の自然に出る表情は、愛想がないって印象は全くない」

 

それこそ、初めて会った時の子供に手を振る際に見せた表情だとか。先日、ハナコを返した時のお礼の際に出た表情たとか。あの自然な笑みを見て、愛想がない、とは俺は言えない。

 

「…そんなにはっきり言われたのは初めてだよ」

 

俺から視線を逸らし、自分の髪を手で弄る渋谷。まぁ、あんな風に正面から言われた渋谷の立場なら俺でも困る。

 

「普通は言わないだろ。俺は…まぁ、渋谷がアイドルになるかもしれない、なれる可能性に関わっている。そんな場面に出くわしたからな。自分の興味の有無だとか、やる前から向いてないからとか、頭ごなしに否定するんじゃなく、やってみてからでも良いんじゃないかって思った。

実際のプロデューサーから声が掛かるなんて、一生に一度しかないチャンスかもしれないからな」

 

渋谷にアイドルになって欲しかったわけじゃない。ただ、勿体無いな、そう思った。だからこそ、肯定的な意見しか言ってないしな。

 

「今日、その返事をしてきたよ」

 

本当に、1日で決めてきたのか。決断は早いらしい。

渋谷は俺に視線を合わせて、決断の言葉を発した。

 

「『アイドル、やってみる』って」

 

一度決めた以上、簡単に諦めたりしない、走り続ける。

そう、付け加えられたような気がした。

彼女は…決意している。決意をした目から、俺は視線を外せずにいた。綺麗だとか、それもあるが…明確な意思が伝わってくるような、そんな感じがした。

 

「じゃあ、今日は凛のために料理を作らなきゃね」

 

電話が終わったのか、渋谷のお母さんが店の奥から姿を見せた。…何か凄く笑顔だな。自分の子供の決意を喜んでいるのか。

 

「それに、思った以上に凛と芳乃君の仲も良好みたいだしね。もう、仲の良い友達だと思っても良いんじゃないかしら」

 

…違う。いや、それも含まれているのかもしれないが、それだけじゃない。まさかとは思うが…

 

「長電話じゃなかったんですか?」

「ううん、電話自体は早く終わって戻ろうとしたら、面白そうな話してるじゃない?芳乃君が凛の思ってることを即否定したところだったけど」

 

ほとんど聴いてるじゃないですか。いや、聞かれて困る話だったかと言われれば、そんなことはないですけどね。

 

「でも、芳乃君も凛がアイドルになるかどうかって話は知ってたみたいで、それを芳乃君に教えるってことは…凛も満更じゃ」

 

「ハナコ!行くよ!」

 

渋谷が愛犬の名を呼んで、店の外へと走り出した。ハナコも凛の後をついて行く。…ある意味、正しい選択か。

追求される前に、逃げるのは良い選択だ。帰って来た後はさすがにわからないが。

 

「あらら、逃げられちゃった」

 

意地の悪い笑顔で娘を見送る母親。楽しそうである。

 

「…俺も渋谷の立場だったら、逃げるかもしれませんね」

「まぁ、あながち間違ってもないと思うけどね。どう、ウチの凛は?」

「………ちなみに、どんな意味でですか?」

「どんな意味だと思う?」

「見当もつきませんね。ええ、全く」

「芳乃君にも逃げられちゃった、残念」

 

全然残念そうには見えない。同級生とかだったら腹が立つかもしれないが、お世話になってる人だからそんな気がしないのは正直助かった。

 

「ま、何にせよ…凛のこと、よろしくね」

 

意地の悪い笑顔ではない。微笑を浮かべ、俺の目を真っ直ぐ見てそう言った。茶化すつもりはないが、ここは真面目に答えなければならない、そう思った。

 

「よろしく、なんて言わないでください。渋谷には既にアイドルを一緒に目指す仲間がいます。その人達と協力出来れば大丈夫でしよう」

 

渋谷のあの目を見れば、そう簡単に辞めるとは思えない。

何より、島村さんの他にもアイドルを目指す仲間がいると思う。

 

「…そう?じゃあ、凛から芳乃君を頼って来たら、その時こそはよろしくね」

「そこまで言われたらさすがに嫌だとは言えないですよ…。まぁ、頼まれたら話くらいは聞きます。あくまで、頼まれたらですけど」

 

年頃の男子が積極的に同年齢の異性を積極的に助ける?

ないない、創作物語でもないしな。まぁ…頼まれたり、助けを求められたら、それを見捨てるほど心が冷徹な人間でもないつもりだ。渋谷がアイドルになった要因に関わっている可能性が高いから尚更だ。中途半端にやめられても、こっちとしても良い気はしない。

 

「…満点とは言えないけど、良い返事だったから良しとしようかしらね。それに、芳乃君は凛のファン第一号だしね」

「…いやいや、待ってください。それはおかしいでしょう?」

 

さすがにそれはおかしい。…おかしいよね? ファンになる要素どこにあるんですか。その前にクラスメートじゃ駄目なんですかね?

 

「どうして? 凛を応援してくれないの?」

「応援するかしないかで言えば、それはしますけど…」

「凛がアイドルになるのを一番に肯定したのは芳乃君でしょうし、応援もしてくれる。 だったら、芳乃君がファン第一号で異論はないでしょう?親公認よ?凛には私から説明しておくから」

 

あ、これ反論しても勝てないやつだ。あながち間違ってるとも言えない。厳密には島村さんが渋谷に対してアイドルになることを一番に肯定してるような気がしなくもないが、同じアイドル同士でファンとはとても言いにくい。

あの背丈が大きいプロデューサーも、プロデューサーであるからファンとしてカウントができない…となると、第一候補となるのは…俺になるのか?

 

「そこは本人にお任せします。本人が承諾したなら、俺も逃げれませんから」

 

そう返答して、渋谷の母親に背を向ける。これ以上何を言っても難しいため、後は渋谷に否定して貰うしかない。

渋谷、後は頼んだ。俺はこの場は逃げる。

 

「じゃあ、また来てね芳乃君」

「ええ。また来ます」

 

今後、渋谷の母親には気をつけよう。気をつけたところで無駄かもしれないが…まぁ、とりあえず帰ろう。

 

 

 

しかしまぁ…アイドル、か。

渋谷がアイドルになって、助けを頼まれるとしたらどんなことだろう。学校の授業が終わってから行くだろうから…拘束されるのは…時間か?

となると、学校の宿題やら成績が問題になってくるのか…。渋谷の成績は知らないが…不真面目ということはないと思うし、そこは問題がないとは思う。後は………正直わからない。まぁ…頼まれることや助けがいる時があるとは限らないのだし、考えても今はわからないのだから、とりあえず現状維持か。ま、今日買った花を飾ったりする時に思いつけばいいんだがな。

…渋谷、頑張れよ。直接は言えなかったが、心の中でそう思った。

 




これにて第四話終了です。渋谷凛の母親の性格は、実際どんな感じなのでしょうね、気になるところではあります。
いやしかし、この主人公と渋谷凛はどうなるんでしょうか…それは作者にもまだわかりません(笑)
恐らく次回の更新も来月になるとは思いますが、その際もよろしくお願い致します。

それでは〜

それはそうとして、まだ26話見てないんですよね…早く見たい…。


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