アイドルマスターシンデレラガールズ~花屋の少女のファン1号~   作:メルセデス

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非常にお待たせしました、第三話投稿です。
今まで以上に酷い出来ではありますが、読んで頂けると幸いです。


第三話

「ねぇ、聞いた? この辺、いま変質者がいるらしいよ」

 

攻略本を買って無事にゲームクリア出来て数日、クラスではそんな話が女子の中では話題になっていた。そしてその話を聞いたのが昨日。まぁ、先生からの帰りの知らせでもそんな話はなかったから本当にいるのかどうかも怪しい。

あくまでも噂レベルの可能性もあるから、そこまで気にしなくても大丈夫か。変質者と行っても俺には関係ないと思うしな。………まさか、男も狙ってるとかそんな風なことはないよな…?…ないよね?考えていたら気分が悪くなりそうだから辞めよう。

今日は今日とて、スーパーに行って食品の買い出しをしないといけない。朝、冷蔵庫を見たら見事に空だった。よって昼飯の弁当も作れなかったため、朝から水だけで腹を膨らませている。近藤から分けて貰っても良かった(実際に言われた)が、遠慮したため、流石に何か食べたい。スーパーで食材を買い込んだ後に適当におにぎりかパンか買って買い食いしながら帰るか。

 

 

スーパーを出た後、買物袋の一番上に置いていたメロンパンの封を開け、口に入れる。美味い、メロンパンを久しぶりに食べたが、腹が減ってたこともあって相当美味く感じる。これから昼飯時には事前に菓子パンを買って行くのも良いかもしれない。と、そんなことを考えていると桜の花びらが視界を横切った。横切った方向を見れば、それなりに敷地の大きい公園が見える。ちょうど俺が立っている場所が入口だ。公園の中には、子供とその母親であろう二人がいる。子供の遊んでいる楽しそうな笑顔。その姿を微笑んで見守っている母親の笑顔。母にも父にも遊んで貰った記憶はないが、その時には俺はあんなに笑顔だったのだろうか。幸せだったのだろうか。それを確かめる術は、俺の思い出せない部分の記憶にしかない。

過去の写真があって、それを見たなら確かめられるかもしれないが、それはあくまでも形だ。当時の記憶がどうとか曖昧にしか思い出すことしかできない。それで別に不満かあるわけではないが。

 

「ワンワン!」

 

子犬が俺の横を通り過ぎようと走って行く。ここは公園の入口だ、その先は………

 

「っと!」

 

最終的な結論に至る前に、先に進ませないように買い物袋を慌てて放し、犬を抱きかかえる。この先は道路だ、車なんて通り過ぎようものならどうなるかわかったものじゃない。まぁ、大丈夫だとは思うが何かがあってからじゃ遅いからな。しかしこの犬、抱き心地が良い。首輪もあるし、飼い犬で手入れもしっかりされてるな。と、顔をこっちに向けた。ただ吠える様子はなさそうだ…って、この犬どこかで見覚えがある。花屋の犬と似てる気がするが…。

 

「ハナコ!」

「ハナコちゃん!」

 

叫び声に近い女性の声が耳に入った。この犬の名前だろうかと思いながら声がした方向を向いて…

 

「渋谷?」

「…芳乃?」

「…えっと〜…」

 

見知った顔が一人と全く知らない女子が一人、こちらを見ていた。渋谷は私服、もう一人は制服だが、俺の知らない制服だ。なんだろ、同級生の感じがするけど、何故か違う気がする。とはい、年下でもないだろうし年上か?

…まぁ、こんなことは今考えても仕方ない。とりあえず、犬を飼主の元に返そう。渋谷達の方を向けて地面に降ろすと飼主の方に向かっていく。飼主は渋谷の方だったらしい。

 

「…ありがとう」

「別に良いよ。たまたま通りかかっただけだ」

 

彼女は飼い犬の頭を数回撫でた後、撫でているそのままの表情でこちらを向いた。…こう、正面からお礼を言われるのはやっばり気恥ずかしい。意図的に助けたわけじゃないし、俺じゃなくてもそうしただろう。未だに、人からお礼を言われることに慣れない。

 

「あ、あの…卵が…」

「卵?」

 

渋谷の隣にいる女子が俺の方を向いて深刻そうな顔で言った。卵…? あぁ、さっき買い物したやつか。

 

「あ…」

 

そういえば放した後のことを確認してなかったが、買い物袋を放した衝撃で卵パックが落ち、見事に割れていた。 まぁ、仕方ないか。そんなに高い物ではないし買い直せば良いか。

 

「弁償しようか?」

「いいよ、そんな高い物じゃない。もう一回買いに行けば良いだけの話だ。…それに、話の途中だったんじゃないか?」

 

高い物だったら流石に弁償して貰いたいけど、卵1パックなら別に大した額じゃない。それに、二人でいるってことは何か話の途中だったのかもしれない。いや、そうじゃない可能性もあるけど。

 

「あ、そうなんです。えっと…凛ちゃんのお知り合いの方ですか?」

「渋谷のクラスメートの芳乃和也です」

「あ、凛ちゃんのクラスメートの方だったんですね? 私は島村卯月です!よろしくお願いします!」

 

軽い自己紹介をしたら満面の笑みで挨拶を返されてしまった。なんだろう…こう…人を騙すようなことは出来なさそうな人だ。

 

「えっと…それじゃあ…芳乃さんに参考までにお聞きしたいんですけど…」

「あぁ、どうぞ」

「凛ちゃんはアイドルになれますよね?」

 

…はい? 渋谷がアイドル? とうの渋谷も溜息混じりの粋を吐いていた。若干頬が赤くなってる気がするが…。

とりあえず、すんなり終わりそうな話ではなさそうだ。

何にしても、どうしてそうなったかを知りたい。

 

「………唐突過ぎてついていけないので、状況を説明して欲しいんですが…」

「あ、すいません。あそこのベンチに座っているプロデューサーさんが、凛ちゃんをスカウトしようとしてて…」

 

島村さんが指差した方向を見るとスーツ姿の人がベンチに一人で座っている。身長が高いし身体つきが良さそうだな、喧嘩毎になったら勝てそうもない。

 

「それで凛ちゃんはまだ…その…どちらかと言うと否定的で、でも…私としては、もう一緒にアイドルを目指せる仲間だと思ってて…。それで、凛ちゃんの知り合いの芳乃さんに、どうなのかなって聞いてみようと思いまして…」

「ようするに、渋谷がアイドルになることについてどう思うかってこと…ですか」

「はい。少なくとも、今日初めて会った私よりは、凛ちゃんと触れ合った機会が多くて、私よりは凛ちゃんを知ってる人からしたら、どうなのかなって…」

「とは言っても…俺も渋谷とは数えるほどしか話したことはないですけど…。それでも良い、って言うならお答えしますが」

「私はお願いしたいです!」

 

よっぽど、第三者の意見というのが重要らしい。さて、言うことを考えながらも頭の本人に一応聞いとかないと。

 

「渋谷も、それで良いか?」

「私としても、アンタがどう考えてるかは気になる…かな。ちゃんと、答えてくれるんだよね?」

「こんな状況で嘘を言っても仕方ないだろ」

 

渋谷は俺の言葉に頷いた。…期待されてる?それとも単純に気になるだけか?

まぁ、どちらにせよ思ったことを言うだけだ。考えは…ある程度は纏まっている。ただ…本人の前で言うのは恥ずかしいが、仕方ないか。

 

「なれるさ。渋谷ならアイドルに」

「………は、はっきり言うんだね」

「嘘を言っても仕方ないって言ったろ。まぁ、渋谷に限らずなんだが、誰にでもアイドルなんて慣れる可能性はあるって俺は思う。346プロの城ヶ崎美嘉…っていうアイドルはそれこそ良い例だ」

「知ってます!えっと…カリスマギャルって呼ばれてる方ですね」

「そうです。彼女と765プロのメンバーのアイドルを比べてみても、特徴的には全く違うんです。そういった意味では、アイドルに決まった形なんてない。それこそ、島村さんや渋谷だって違います。それぞれ個性を活かしたアイドルになれると俺は思います」

 

個性なんて十人十色だ。ドッペルゲンガーだのいるかもしれないが、タイプが、似てる人間はいるだろうが全く同じ人なんていないだろう。

 

「ま、今のが俺の意見だ。後は渋谷本人がどうするかだ」

 

意見は述べた。後は本人次第だろう。本人にやる気がない状態で続けても仕方ない。それなりの心構えは必要だろう。そのためには、今ここで即決するのは難しいと思う。

 

「………とりあえず、一旦解散した方が良いんじゃないか? 今ここで決めることが出来る問題でもなさそうだし、落ち着いて考えた方が良いだろう」

「…そうだね。ごめん卯月、今すぐには決められない。

明日で良いかな? 1日、ゆっくり考えてみるよ」

「はい!大丈夫です!! プロデューサーさーん!!」

 

島村さんが向こうのベンチにいる大柄な男性を手を振って呼んでいる。男性も島村さんに近づくと、現状報告を島村さんから聞いている。…しかし改めて近くで見ると大きいな…身長は2メートルはありそうだ。

 

「わかりました。渋谷さんにも考える時間は必要でしょう」

 

男性が頷くと、渋谷の方に振り向く。…目つき怖っ。

 

「渋谷さん、最後に一言だけ、よろしいでしょうか?」

「…うん」

「……少しでも、君が夢中になれるなにかを探しているのなら……一度、踏みこんでみませんか?」

「そこにはきっと、今までと別の世界が広がっています」

 

…確かに渋谷は部活動に入っていない。そう言った意味では夢中になれるものがないのかもしれない。人の趣味など様々だ。それこそ、部活動ではなくとも夢中になれる何かがある人もいるだろう。だが、この男性は言い切った。

つまり、渋谷には今、夢中になれる何かがなく、探している途中だと確信しているようなものだ。 良く言えば、良く見ている。 悪く言えば、ストーカーか…?

 

「じゃあ、俺は帰るな」

 

話もひと段落ついたし、後は解散だろう。俺がこれ以上、ここに居る理由もないし帰るとしよう。

 

「芳乃さん、今日はありがとうございました!」

 

島村さんはお手本通りの笑顔で挨拶をしてくれる。眩しい。

 

「いや、大したことしてないですから。島村さんもアイドル頑張ってください。渋谷も、また明日な」

「うん」

 

渋谷にも軽く挨拶をして家の帰路へと歩いていく。プロデューサーと呼ばれていたあの男性にも頭を下げた。律儀にも礼を返して貰ったが、大したことはしてないので申し訳なかった気もする。

何にせよ、長い1日だった。帰って課題でもするか。

 

 

………結局、卵を買い忘れたのを家に帰る直前で思い出し、また買いに出たなんて言うまでもない。




どうでしょうか?不満等あるかもしれませんが、それは作者の力不足です。申し訳ございません。

感想等お待ちしております。

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