機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
デカイ武器に心惹かれるアルファるふぁです
メガビームランチャーとか、いいよね

大変お待たせしました戦闘回です!
ついにこのときが来ました!
奇っ怪ロボナガレボシの活躍をご覧ください



地を駆けるスピードスター

 

「聞こえるかブレイク、連邦のモビルスーツはジム改が1、ジムⅡが3だ」

「なんで新しい方が多いんだよ」

ウォルターが早口で伝えた情報に対して、ネクストは毒づいた

その間に、腕やら足やらに輪っかを付けていく

この輪っかこそが、今乗っている未知なる物体を動かす鍵なのだ

「連邦なりの事情があるんだろう」

ウォルターは淡々と答えた

無線機の向こうは何やら騒がしく、ウォルター以外の声も聞こえてきた

「・・・すまんが、頼む」

「ああ、的代わりにはなる」

「そうだな・・・すぐに向かう、持ちこたえてくれ」

「わかった」

ネクストが全ての機器を装着する

すると、暗いコクピットには360度周りの景色が写った

球体状のコクピットの中心へ、パイロットがゆっくりと浮かび上がった

種も仕掛けもない、この機体の機能の一つだ

「さて・・・」

ウォルターから聞いた情報では、ナガレボシが向いている方向の向こう側から連邦のモビルスーツが接近してきているらしい

ネクストの仕事は、ソイツらの足止めである

自分から言い出したこととはいえ、生半可に挑むことは許されない

死地に飛び込む、危険な行為なのだ

だが、ネクストはそれでもやりたいと思った

そして、そのための力もあった

「ナガレボシ、出る!」

ネクストが吠え、ナガレボシが大きく一歩を踏み出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイロン中尉の額から、冷や汗が一筋垂れた

頬を通り、顎から落ちたその汗は、彼の座るコクピットシートに染み込む

「何、何やってくれてんだッ!」

前方のジムⅡ三機に対し、絞り込むように唸る

恐怖と怒りがない交ぜになった感情が、脳味噌のなかでスパークしていた

そして、その感情が生まれた原因である目の前のジムⅡのパイロットが、ケイロンの神経を逆撫でする声で通信してきた

「やだなぁ先輩、ジオン残党に発砲しただけですよ」

「先手必勝って言うじゃないですか」

彼らはボンボンという人種だ

政府高官やらなんやらの、ドラ息子共だ

ケイロンの所属する基地には、そのドラ息子共が親のコネと七光りと財力でもって彼らが居座っている

隠す気のない厄介払いである

しかも正規の連邦軍の試験訓練をかなり優しくしたような感じで修了しているため、れっきとした軍人として扱われる

つまり兵器を暇潰しの遊び道具として使えるわけだ

「この野郎共が・・・!」

ケイロンは小さく呟いた

大声で怒鳴ろうものなら、彼らは親にケイロンのことをチクり、ケイロンに何かしら不利益なことをしてくるだろう

はた迷惑な事この上ない

連邦の腐敗ここに極まれりだ

彼らボンボンの集まりは、一部隊として名前を与えられている

クラウン隊だったか、王冠などという名前を付けられて、彼らはもっと調子に乗った

親の権力を自分のもののように振り回し、階級以上の態度をとっている

敵より嫌な味方だ

ケイロンはクラウン隊がとてもとても嫌いだった

こんな奴原が連邦に溢れているから少し前にエゥーゴなんていうものが誕生してしまったのだ

ジオン残党掃討のために出撃するクラウン隊の奴等のお目付け役なんか受けなきゃよかった

こんなことになるなら、他の適当なパイロットにパスしておけばよかった

「相手に降伏勧告を出し、あっちが無抵抗のまま大人しくしてくれれば弾の一発も無駄にせず終わるんだ!撃つのは向こうが撃った後、まだ確信に至っていない段階でぶっ放したらテロリストと変わらない!作戦の前に言ったはずだろ!?」

「ウダウダうっせえなぁ」

「確かにそうっすけどぉ、それがどうしたんですかー?」

クラウン隊のパイロットが、上官に使ってはいけないような言葉でケイロンに反論した

いや、最早反論とすらいえないようなものだった

「俺達は天下の地球連邦軍ですよ?一回や二回なら問題ないじゃないですか!」

「そうそう、誰も文句言えやしないって」

「俺達に逆らえる連中なんていやしないからなぁ」

おちゃらけたように話す連中に対し、ケイロンの怒りがさらに積もる

「テメエら・・・!」

果たしてコイツらを、生かしておいて良いのだろうか?

「いい加減に・・・」

「うお、なんだ?」

「どうした?」

「なんか・・・来るぞ!」

クラウン隊の三人が、口々に驚きの声を上げた

ケイロンはその声を聞き、レーダーを見た

その出自から、クラウン隊の方がケイロン達正規軍のものより良いモビルスーツに乗れる

だから、レーダーもクラウン隊のジムⅡの方が性能がいいはずだ

だから、ジム改のレーダーにソレが映るのには少々時間がかかった

「速い・・・ッ!」

それは、高速で移動していた

「スラスターでも使っているのか!」

ケイロンは歯噛みし、ジム改のシールドをソレの方向に向けた

「へ・・・へへ・・・来やがったな」

「基地に缶詰めで鬱憤が溜まってたんだ、相手してくれよな・・・!」

クラウン隊の連中も、各々の装備した武器をその方向へ向けた

そして、ケイロンは見る

「・・・なんだあれは・・・?」

もうもうと昇る巻き上げられた土煙

そして、

「なんなんだ・・・あれは!?」

とんでもなく高速で走ってくる、異形のモビルスーツに似た何かを

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?!?!?!?」

ネクストの望み通り走り出したナガレボシ

しかしその速さは尋常ではなかった

堅い地面に杭のように突き刺さる足

巻き上げられた土砂の量は、想像を絶するだろう

足音は最早、騒音などという生易しいものではない

ナガレボシの脚力は、ネクストの想像を遥かに越えていた

音速に匹敵する速さだった

目の前に見えてくるジムの部隊

「うわわわ止まれ止まれ止まれーッ!!?」

だが不幸にも、ネクストは止め方を知らなかった

ジムⅡがマシンガンをばら撒いてくる

ジム改がバズーカを撃ってくる

バズーカを避け、マシンガンを多少食らっても、ナガレボシはまだ進む

「衝突は・・・避けられないか!」

どうやら、ナガレボシは連邦の90ミリマシンガンでは損傷を受けないらしい

「どうせぶつかるなら・・・」

ネクストは拳を思いきり握った

フィンガーレスグローブが擦れ合い、ギチギチと音をたてる

連動して、ナガレボシも拳骨を作り上げた

六本の指から構成される握り拳は歪だったが、ネクストは多少の頼もしさを感じた

そして、肘を引き、シールドで防御を取ろうとする哀れなジムⅡにそのままの速さで突撃していった

「食らい、やがれ!!!」

ナガレボシの規格外のスピード、ナガレボシの規格外のパワー、ナガレボシの規格外のタフネス

それらが全て合わさった拳が、一撃が、角張った盾のど真ん中に突き込まれる

凄まじく乱暴な威力のパンチは、ジムⅡ一機を蹴られたボールのように弾き飛ばした

宙で一回転し、肩から地面に落ちて、地表を削りながら滑って減速する連邦のモビルスーツ

仲間と思わしき残り三機が、シールドごとぶん殴られたその味方の方を凝視していた

「はあ・・・はあ・・・なるほどな」

片手を振り抜いた姿勢のまま、ナガレボシが顔を上げる

顔にある眼のような二つの発光体を爛々と光らせて、もう一度拳を握った

「ィよっしゃあッ!俺が、相手だ!」

ネクストの声に呼応するかのように、ナガレボシの両目が強く光った

 


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