こんにちは、大規模な戦闘が始まると胸が高鳴るアルファるふぁです
血沸き肉踊ると言った方が正しいかな
今回は、いよいよ戦い・・・の前のお話
アイアンフィスト作戦本部として使われているテントは、夜風に吹かれてバタバタと音を立てていた
ここで寝たのがいつだったか、ネクストはもう覚えていない
思えば、ここに来てから本当に色んな事が起きた
時間の感覚が麻痺するくらいに
「作戦は簡単だ」
ウォルターは車イスに座りながら話始めた
「目下のアイアンフィストの脅威、連邦とツバイノワールを、なんとか八時間後にアイアンフィストに集めることに成功した」
「アイアンフィストに全部!?」
「すっごいことになるよな、それ・・・」
一同に同様が広がる
連邦とジオン残党を一ヶ所へ
アイアンフィストで、二つの大部隊がぶつかることになるのだ
彼らの故郷はただでは済むまい
「が、アイアンフィストは消えない」
だがその心配を感じ取ったように、ウォルターは説明を続けた
「人、物、ついでに建物や重要な施設なんかをアナハイムのミデアでもってぜーんぶ運び出す・・・殴り込みに来た連邦がここに来たときには、夜逃げ後の何もないポイントしか残らない」
「そして偶然巡り会わされた二勢力を、ドンパチしてるうちに私達が纏めて潰せばいいのね」
「その通りだ」
補足するように纏めたアウラの一言に、ウォルターは称賛を送った
腕が折れているので拍手は送れないが
「アイアンフィストの移転場所は選定中だ、追って伝える・・・だが、この作戦は少ない戦力で大乱戦に飛び込まなくてはいけないことを意味する」
ウォルターの声のトーンが下がった
特徴的なバリトンボイスが、その場に深刻な空気を作る
同時に、その声音には仲間達を気遣う思いが滲んでいた
「連邦の大部隊とジオン残党の大部隊が来て、戦争を起こす・・・そんな中に飛び込めば並大抵の腕では生き残れない」
悔しそうに歯を食い縛りながら、ウォルターは言葉を絞り出した
「情けないが、こんな状態では俺は戦えない・・・お前達に全てを託す」
アイアンフィストのパイロット達の顔を一人ずつ見つめて、ウォルターは最後に言った
「必ず勝って、必ず帰ってこい!」
「了解!」
「了解しました」
まず、付き合いの長い部下二人が即答した
「ええ、任せて」
次に、アウラが自身たっぷりに言う
そして、ネクストは目を閉じた
その場の視線がネクストに集まる
「俺には、正義だとか悪だとか、何が正しいとか悪いとかはわからない・・・だけど・・・」
男は瞼をゆっくりと開く
そこに宿る決意の光は、どんなものよりも輝いていた
「こんなに暖く生きてきた人達を苦しめてきたアイツらを許せない、だから・・・」
「ぜってーアイツら、ぶっ倒してやる・・・だろ?」
ネクストの言葉を遮るように、ウォルターがおどけて言う
それは、ネクストがアイアンフィストのために戦うと心から決意したときに、ウォルターに伝えた言葉だった
「・・・ああ!ぜってー勝つ!」
笑顔で頷き、ネクストは親指を立てた
「はいはいはい!それじゃ聞いてな」
ビーンが両手を振って場の雰囲気を変えた
ネクストに集中していた視線が、今度はビーンに向く
「アイアンフィストのほぼ全部は、さっき言った通り戦闘の被害が届かない所へ移される!君らはこの場所で潜み、ノコノコやって来た連邦とツバイノワールがゴチャゴチャやってるとこを漁夫の利する!いいね?」
乱暴な口調で素早く纏めたビーン
流れるようにペラペラと捲し立てられて、歴戦のパイロット達は呆けるばかりだった
だがビーンは、落ち着いた口調で更に言った
「君らもアイアンフィストの大切な一員だ、死ぬなよ、帰ってこいよ」
そして全員が見詰めるなかで、こう締めた
「それじゃ、解散!」
もうすぐ夜が明ける
暗闇は登り始めた日の光に切り裂かれ、少しずつ明るい空が現れてくる
その光に逆らうように飛び去る数機の航空機
ミデアは西へ飛んでいた
残ったのはもぬけの空となったいくつかの建物だけ
その向こうに、アイアンフィスト最後の戦力は待機している
グレックリーが固唾を飲み、レイゼンが深呼吸をし、アウラは飴を口に放り、ネクストは静かに目を瞑る
グフカスタムは新装備のガトリングシールドを持ち上げ、ドムトローペンはシュツルムファウストを掴み、ゲルググはビームマシンガンを起動させ、ナガレボシはひたすらに佇む
これから始まる最後の戦いに、全力の備えをしている
ここに集まるのは、地球連邦軍辺境基地の最終攻撃部隊と、ジオン残党ツバイノワールの残存全戦力である
双方とも、アイアンフィストを目の敵にしていた
だが、連邦とジオン残党が、一つの場所で偶然鉢合わせたらやることは一つだ
戦争である
ネクスト達は互いに潰し合う連邦とジオン残党の戦場へ飛び込み、双方を攻撃して共倒れを狙う
これで全てが終わる
アイアンフィストを脅かしていた全ての相手を、一挙に畳むチャンス
アイアンフィスト最大の戦いが始まろうとしていた
やがて空が完全に朝の色へと変わりかけてきた
そのとき、モビルスーツのレーダーは、数え切れない光点を示す
「来た・・・!」
誰かが言った
そして、こう続けた
「始まった!」
次回は恒例のアレです
戦闘は少し待っててね