機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
クロスボーンガンダムアニメ化を切望するアルファるふぁです
今回も戦闘ないよ・・・



輝く夜に

 

先ほどまで暮れかかっていた陽は最早完全に沈みきり、辺りには夜闇が広がっていた

ネクストは、隕石の破片に寄り掛かっていた

モビルスーツモドキが中から現れた巨大な隕石だ、アイアンフィストに直接的な被害が出なかったのが不思議なくらいだった

隕石を割ったザクはもうそこから動かされていて、この隕石の近くにはネクストとモビルスーツモドキしかいなかった

夜は静かなものだった

昼間はなかなかに騒がしかったアイアンフィストも、夜になれば眠るように静かになってしまった

ネクストは持ってきたカンテラを、逆の手に持った紙が照らされる位置に近付ける

あのモビルスーツモドキの材質の分析結果だ

あれの腕をゴリゴリ削った後に機械にかけて出てきたデータを書き連ねたものだったが、結果は芳しくない

「ガンダリウムでも、スチール合金でも、チタン合金でもない・・・」

ボソボソと紙の内容を朗読する

声に出しても出さなくても信じられない

モビルスーツが採用している装甲材はこの三つだ

特殊な例もあるにはあるが、あの妙な物体の材質がその三つではないということは、ますますモビルスーツから離れている証だ

極めつけは、

「・・・既存の物質データに、該当するものはなし」

あのモビルスーツモドキが全く未知の素材にて構成されているという事を示したその文章だ

つまり、地球どころかその周りを回る小惑星から採れるものでもないわけだ

「不気味だなあ・・・」

率直に呟く

正直、今までの常識を覆された気分だ

いや、自分は別にモビルスーツの専門家でもなんでもないのだが、それでもこのモビルスーツの意味不明さは異常だ

非現実の代物ならまだ笑い話にできる

なまじ現実に存在するから、拭いきれない何かを感じてしまう

「・・・何してんの?」

「おわっ」

突然背中から声をかけられ、思わず驚くネクスト

呆けた顔で振り向くと、女が一人、手を振りながら歩いて来る

リーア・カストレルだ

「部屋に入んないと風邪引くよ?」

隕石に寄り掛かるネクストを見て、リーアは心配そうに呟いた

「ああ、いや、気になることがあってな」

「あのガンダムみたいなののこと?」

「そう、それ」

ネクストが右手の人差し指でトリコロールの巨人を差す

自分がやった起動実験以外ではピクリとも動かないので、とりあえず生き物の類ではないのは確かだ

指と腕を降ろして、ネクスト・ブレイクは不思議そうな表情をした

「このモビルスーツモドキは・・・」

「モビルスーツモドキ?呼びにくくない?」

話の腰を凄まじい勢いでへし折られ、ネクストは閉口する

リーアはそれに構わず続けた

「ナガレボシ・・・なんてどうかな?」

「ナガレボシ?」

「そう、流星に乗ってやってきたから、ナガレボシ!」

瞬きを二回して、ポカーンと口を開けて、それからネクストはようやく反応を返した

「・・・いいじゃん」

「でしょ?」

「うん、悪くないセンスだ」

「でしょでしょ!?」

跳び跳ねるように嬉しがるリーアを尻目に、ネクストは再び正体不明のソレを見上げた

「なあ」

そして今度はリーアを見る

「何?」

「俺とコイツ、どっちのが先にここに来た?」

「ネクストの方だよ」

そっか、と呟いて、ネクストは微笑んだ

彼にとってこのアイアンフィストの後輩は、この不思議な物体だけというわけだ

もしかしたら自分の方が後輩になった可能性もあったのかと考えると、可笑しくなってくる

ふとリーアを見ると、キョトンとした表情をこていた

それもそうだ、変な質問をしてきた奴がいきなりニヤニヤし始めたのだから

「リーアは、どういう経緯でここへ?」

話題を変える

「君と同じ!」

「俺と?」

チンピラに追っ掛けられた挙げ句荷物落として行き倒れかけたネクストと同じような経緯なのなら、少し間抜けな気がしてくる

「バックパッカーしてたら水が全部無くなっちゃって死にかけた」

「で、拾われた?」

「うん、町長さんに」

町長

アイアンフィストの頭役だろう、そういえば顔を合わせてもいない

妙なのに構いっ切りで全く気付かなかったが、アイアンフィストの住人とまともに会話をしていない気がする

そのリーアを助けた町長をはじめとしたアイアンフィストの皆さんに、正式な引っ越しの挨拶回りをしておく必要がある

それもなるべく早く

「ここの住み心地はどうだ?」

「いいよ、結構ね」

迷い無く言ってのけたリーア

その自信満々の一言に、ネクストは挨拶回りを決意した

「ジオン残党は、どうだ?」

「私より先輩だけど、皆信頼しきってる・・・もう、ここの家族だよ」

分かりやすく言ってくれるリーア

その堂々とした言葉に、ネクストはウォルターを信頼することにした

「じゃあ、俺も、そんな風に・・・」

「うん、受け入れてもらえるよ、きっと」

「・・・ありがとう」

はっきりと言った、リーア

ネクストは、迷いを捨てることにした

住んでみよう、ここに

「俺・・・」

「うん?」

「ここに住むことにしたよ」

「そう!?じゃあ、よろしくね!」

荒野にポツンと生きることの厳しさはあるかもしれないが、それでもネクストはリーアを信じてみることにした

思えば、ここではまだまだ、やることがありそうだ

「こっちこそ、よろしく」

お互いに握手をしようときた時、ネクストは目線をリーアの顔から上へ逸らした

「えっ・・・あっ」

何事かと自分も空を見上げて、リーアは声をあげた

「流星群だー!」

「ああ」

「ネクスト、すごいよ!綺麗だよ!」

満点の星空に、流れる水のように同じ方向へ移動する無数の天体達

いくつもの流れ星が飛んでいくその姿を、どんな絵画にも勝る素晴らしき景色を、その目に焼き付けるネクスト

だが、またもナガレボシの方へ目を向けてしまう

苦笑して、彼は呟いた

「よろしくな」

ナガレボシはなにも答えず、ただそこに佇むだけだった

 


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