機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
ネオジオンの機体ではナイチンゲールが好きなアルファるふぁです
アクシズならクィンマンサです

今回はタイトル通り、ウォルターが頑張るお話です



ウォルター、猛る

 

閃光、ビームライフル

銃口から放たれた光線は空気を焼いた

しかし目標の旧ザクにはかすりもせず

もう一度ビームライフル

右へ傾いたからその先を狙って撃った

が、旧ザクはそれを左にかわした

右へ行くと見せかけて左へ

小癪なフェイントである

「えぇい、煩わしい!」

ザクⅢのパイロットが吐き捨てる

目の前の敵は旧式に乗った老いぼれのはず

それなのに、何故こうも手こずるか

また右手に握る銃を振り、相手へ向けて引き金を引く

瞬きより早く出現した光の矢は、やはりザクⅠには当たらない

敵は脚部ミサイルランチャーを外して、機体を軽くした

それもあり、ザクⅢは命中打を与えられない

相手の予測不可能なスラスターの動かし方には、流石のビームライフルも当たらぬのだ

他の仲間には手出し無用と言っておいた

この戦いは一対一の真剣勝負

有象無象がいては、むしろ邪魔になるだけだ

「これならどうだ!」

スカートアーマーを上げ、ビームキャノンを起動する

目標はオレンジ色のザクⅠ

ついでに頭部のメガ粒子砲もドライブ

三つの砲口が煌めき、光が迸る

爆発

「おぉ、やったか!」

感嘆の声を挙げた、直後装甲に衝撃が走る

ザクマシンガンである

相手はザククラッカーかなにかで爆発を起こし、目眩ましを試みたのだ

しかし旧ザクの攻撃ではガンダリウム製の装甲は破られない

「こやつめ、叩き潰してくれる!!」

まったく進まない戦況に苛立ち、ザクⅢはスカートアーマーからビームサーベルを引き抜いた

細長い光の刃が、柄から伸びる

仕掛けるのだ

 

 

 

 

爆発を注視する敵モビルスーツの頭を飛び越えて、背中側に回ってマシンガンをフルオート射撃

撃った弾の殆どは敵に直撃した

しかし効いた様子はない

「チッ、いい部材使ってやがる」

自分の武器にすら耐えられない自機の装甲を省みて、ウォルターは舌打ちした

相手は新型、こちらは旧式中の旧式

一体どれ程の性能差があるだろうか

考えても仕方ない

「いつもどおり、やるだけやってみるだけさ」

口角を吊り上げる

そう、いつも通りだ

どんな敵であろうと、いつもと変わらぬ

ザクⅠはヒートホークを取り出した

通常より二回りは大きいモビルスーツ用の斧だ

「さて・・・行くか」

これが、相手が取り囲んできて袋叩きなら勝ち目は恐らくなかった

だが、相手は慢心でもしたのか、単独での一騎討ちを要求してきた

ならやりようはある

敵モビルスーツはビームサーベルを引き抜き、こちらへ振り回してくる

斜め上からの降り下ろしを機体を屈めさせて避ける

ザクⅢのパイロットは、恐らく目を丸くしただろう

接近しての攻撃さえも避けられたのだから

だが、一年戦争のモビルスーツは、アクシズ製重モビルスーツとは違う

機体が軽いので動き方によっては近接攻撃もかわせる

そう何度もできる芸当でもないが

「ッアァッ!」

掛け声一つ

大振り一回

装甲に一文字

これは直撃ではない

ヒートホークは、慌てて後ずさりしたザクⅢによってカス当たりとなった

電熱により真っ赤になったヒートホークなら、ガンダリウムもなんとか溶断できる

ウォルターの勝ち目はここにある

しかし当たらなければどうということはない

ザクⅢの頭部が光った

「うおっ」

情けない声をあげ逃げる

ザクⅢには頭部にメガ粒子砲が搭載されている

出力は雀の涙ほどだが、ウォルターの旧ザクには充分に致命傷になるだろう

スラスターを噴射

地上を高速で動く

右へ、左へ

敵のビームライフルが機体に当たらず通りすぎる

相手は性能に頼りきった戦い方をしている

なら勝てる

ウォルターは仕掛けた

「アサルトコンボだ・・・!」

右手のマシンガンを撃つ

闇雲に撃っても、仮に相手が動かなくても、ザクマシンガンではガンダリウムを壊せない

ではビームライフルに当てるとどうなるか

「ビンゴォッ!!」

百二十ミリの口径の武器が、精密化された繊細な機械であるビームライフルを壊せないはずがない

上手い具合に当たったマシンガンの弾は、ザクⅢのビームライフルを砕いた

使えなくなった武器を投げ捨て、敵はビームサーベルを引き抜いた

その武器変更の瞬間の隙を見逃すウォルターではない

先程パージしたミサイルランチャーが、遠隔操作で発射される

ザクⅢは、そのスラスター出力で旧ザクにあっという間に接近していた

やはり速い

流石に性能差が出る速度勝負ではまったく勝ち目がない

このままでは、敵のビームサーベルに切断される

だがミサイルは発射された

直撃、爆発

ザクⅢにミサイルが当たる

ロックオンもされていない、カンで適当に発射した遠隔操作のミサイルランチャーだが、上手くいった

ザクⅢはダメージにより動きを止め、そして今はビームサーベルを当てるべく接近していた

重りになったザクマシンガンを放り捨て、ヒートホークを振り、頭部をはねる

空中へ躍るザクⅢの生首は、とても旧ザクと同じザクシリーズとは思えない

消えた頭部の変わりに、残りのザククラッカー三個全部を載せてやる

全速離脱

スラスターを吹かしてザクⅢから離れた

大爆発

砕ける装甲、跳ね飛ぶ燃えカス

モビルスーツの頭部の下は、大概コクピットの入っている胸部だ

いかに強力な装甲に包まれようと、装甲を剥がされて爆弾をコクピットの真上に置けば、どうにもならない

「モビルスーツの性能差は戦力の決定的差じゃない、らしいな」

倒れたザクⅢの残骸は、ピクリとも動かない

「こんな形で証明できるとは・・・な」

この一騎討ち、ウォルターの勝利である

 

 

 

 

 

「勝利の余韻はどうだ?ウォルター・コバック」

オープンチャンネルから、妖艶な女の声

敵の声だ

「マーヴェルか」

「覚悟はいいな」

恐らく、背後にはマーヴェル・クミクスの乗るズサがいる

性能差はもちろんのこと、パイロット能力も備わった相手だ

マシンガンを投げ捨て、ミサイルランチャーを外して、クラッカーを使いきった今、ウォルターの旧ザクが勝てる相手ではない

「・・・俺の負けか」

ウォルターは呟く

彼の視線の先には、アイアンフィストがある

彼が命を懸けて守ろうとした町がある

ネクスト達は間に合ってくれるだろうか、あそこに住む仲間達は大丈夫だろうか

息子は強く生きていけるだろうか

心配は、尽きない

光線が伸びる

オレンジに染められた旧ザクの胸部が、ビームライフルによって貫通した

 

 


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