機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
ガンダムの格闘シーンでは、νガンダムがサザビーをボコすところが好きなアルファるふぁです
気持ちの良い殴りっぷり

今回は、前回のアレの戦闘回です
さて、どんな戦いぶりを見せてくれるのでしょうか



ナガレボシ・マックスモード 前編

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

溢れ出る光を湛えながら、数秒前までナガレボシがいた地点に全く別の何かが立っている

それまでに起きた天変地異を鑑みると、むしろあまり驚くべきことではないのかもしれない

だが、それにしてもツバイノワールのパイロットは行動が早かった

様子見の目的でその変化を見届けた後、攻撃態勢に移ったのだから

 

 

 

 

 

ネクスト・ブレイクは目を開いた

本人には、その感覚だった

今まで眠っていた自分が、瞳を開いて目を覚ましたのだと、最初は思った

だが、彼が最初に見たものはナガレボシの内部ではなく外の風景で、彼の体感は全長二十メートルオーバーの巨人のそれだった

ナガレボシのコクピットというべき場所は全天周囲で、足下の地面を含めた360度を見渡せるので、視点に関しては違和感はない

だが、その他の感覚には、少し異常があった

握る手のひらは、柔らかい人のそれではなくなっている

どちらかと言えば、ナガレボシのそれと似ていた

握った感触も人肌とは程遠いものだった

だが、ネクストは、その握り拳に、かつてない力を感じた

そして一つの結論に至った

 

ナガレボシと自分とが、一体化している

 

触れる風の感覚も、踏み締める大地の感覚も、握るその手の感触だって、ナガレボシが感じているであろうものだ

コクピットにいるのなら、それは自分には届かないはず

だが、ネクストは、自分と愛機との境界線が消えたことに大して頓着しなかった

もっと大事なことが、目の前にある

ジオンのモビルスーツと、モビルアーマー

あれらを放っておけば、アイアンフィストや多くの人々にその火力が振るわれる

普通の、力無き人間達には、アレに立ち向かう術はない

ならば、だ

「俺が、その力になる!人々が理不尽に立ち向かう術に!」

右手と左手を曲げて、ボクシングに近いファイティングポーズをとる

ウォルターのものを見よう見まねした

 

 

 

「デヤァッ!」

掛け声一発

腹から気合いの声を出した、瞬間に四方八方からミサイルが飛んでくる

ズゴックか、ハイゴッグか、カプールか、もしかしたらモビルアーマーからのものもあるだろう

「トォッ!」

両足を踏みしめて、ジャンプ

先程までにナガレボシがいた地点に無数の爆発が起き、地面は派手に抉れた

そしてネクストは、一跳びにより地上千メートルにいた

そこから自由落下ついでに拳骨をチョップの形に変える

約十数秒後、その手刀は地面に着いた

「ゼェアッ!」

ハイゴッグを通過した上で、だが

上空から落っこちてきたナガレボシのチョップにより、ジオンの水陸両用モビルスーツハイゴッグは真っ二つになり、爆発四散

至近距離からの大爆発を振り払い、ナガレボシは走る

変化する前と比べて荒々しさは消えたが、速度は以前以上にある

そして、次の相手を見定めた

ズゴックである

自分に向かってくると踏んだか、ズゴックは両手のクローの中心部に備え付けられたビーム砲を撃った

二つの光が、間違いなくナガレボシを捉えた

直撃

ネクストの体に痛みが駆け巡る

だが耐えられないことは、全くない

メガ粒子を思い切り浴びた敵が速度を変えずに突き進んでくる

攻撃で仕留めたと思ったのだろう

この宇宙世紀にてビームを完全に耐えるモビルスーツなどそうそういない

なのでズゴックのパイロットの慢心もけして責めるほどではない

だが、ナガレボシは敵の常識を超えてきた

ずんぐりとした水陸両用機の前に立ち止まり、足を伸ばした

「デェッ!」

強烈な金属音が鳴り響く

そのキックはズゴックの装甲を貫き、内部にまで足首をめり込ませていた

刺さる右足を引き抜く

「ダァッ!」

左足による追撃の左回し蹴り

二機目の敵機が二つに分かれた

振り向くナガレボシ

飛び掛かるアッガイ

ヒートロッドを伸ばしてくるアッグガイ

キャノンを向けてくるジュアッグ

味方がやられている間に連携を組み立てていたのだろう、その動きには無駄がなかった

位置取りも同士討ちを避けた場所

まずアッガイが、片腕から伸ばした爪でナガレボシの腕を掴む

「ンンン!!」

ナガレボシはその爪を別の手で掴み、握り潰す

解放された左腕

それを後ろに引く

「ジャッ!」

掴む爪を引き寄せ、その勢いと共に左アッパーを叩き込む

アッガイは貫通され、倒された

アッガイのヒートロッドも、同様に引っ掴み、引っ張る

ビリビリとした刺激が手を痛め付ける

だが、それでも、ネクストは腕に力を込めた

「ダアァッ!」

まるで釣り上げられた小魚のように飛んでくるアッグガイ

その巨大なカメラアイへ、ナガレボシの片腕が延びた

「リャーッ!」

敵モビルスーツは、腕にシュシュのごとくまとわり着いた

実際には、ナガレボシの腕がアッグガイを貫通し、機体がグシャグシャになっただけであったが

アッグガイを振り払う間もなく、ナガレボシの背中に砲弾が三つ突き刺さる

衝撃が闘士を倒れさせる

否、ただ倒れるだけではない

倒れる前に、体が地に着く前に、両手の平を地面に突き立てている

そのまま回転

空中で回り、着地する

バク転のような方法で、ナガレボシが体勢を立て直した

ジュアッグはもう一度、片腕のキャノンを向けた

カプールとズゴックEもそれに便乗し、それぞれの射撃武器をナガレボシに向ける

だが闘士は怯まず

両拳を額にあて、振り下ろしつつ頭突きのモーション

「ジェィアッ!」

突き出した頭から、目映い閃光が迸る

ナガレボシの頭部から光線が撃たれた

避ける暇もなく、ジュアッグは胴体にその光線を食らった

ビームは正面から入り、背中から通り抜ける

一秒に満たない照射時間だったが、ジュアッグの腹には真っ赤に熱せられた空洞ができた

そこから黒い煙を吹きながら、またもツバイノワールの機体は倒れた

だが戦闘は終わらなかった

ズゴックEが頭部からミサイルを連射

両腕からビームも放ってくる

攻撃が飛んでくる方を向くナガレボシ

その両脇から、素早く移動したゴッグとカプールが襲いかかる

比較的新型で足の速いカプールが、瞬く間にナガレボシの左側へ攻撃を加えた

前面装甲を開いて、その中に収まったミサイルランチャーが起動する

放たれるミサイル

白煙を引いて迫る弾頭

だがネクストは冷静だった

まず一番早く到達するズゴックEの攻撃から捌く

飛んだ

ナガレボシは空中へ浮かんだ

いったいどんな原理を使っているかは不明であったが、ナガレボシは空を飛べる

そして、力強く変化した今の状態ならば、音速を容易く凌駕できる

ナガレボシが空気を切り裂く

追い付ききれない風が、ソニックブームとして舞い散る

空を旋回するナガレボシ

くるっと一回転

そのまま、凄まじい勢いで急降下する

「デヤァーッ!」

右足を伸ばす

すると、爪先から二の足の半ばまでに、白い光が渦を巻いた

重力と自らの推力による相乗効果

ナガレボシは、足首を鏃にした矢となった

敵に突撃したときの軌跡が、薄く残像を引いて残り、消えた

一瞬の猶予もなく、カプールは光を纏った飛び蹴りを食らう

今ここにいるモビルスーツの中で唯一ガンダリウムを部材に使っているカプールは、並大抵の攻撃には怯みもしない

装甲は二重構造になっていて、破壊するのが非常に難しい

アッガイやハイゴッグを撃破してのけた、今のナガレボシの格闘技であっても、一撃必殺は難しいだろう

それでも、カプールが食らった飛び蹴りは、その自慢のガードを一撃のもと通した

蹴りを打つ直前に足から出た閃光が、一種のビームサーベルのような役目を果たしたのか

はたまた、あの白いフラッシュの効果でナガレボシの能力が一時的にさらに上がったのか

その答えを、カプールのパイロットが知ることはない

ナガレボシはカプールの正面装甲から入り込み、背部装甲から飛び出した

キックのポーズを崩し、着地

その時、カプールは粉々になった

味方機の破片が降りしきる中で、ズゴックEとゴッグがナガレボシと対峙した

というと、まるで正々堂々と戦うつもりのように見えるが、彼らが行ったのはナガレボシとぶつかり合うことではない

着地した瞬間を狙っての集中砲火である

転ばないように地面に足をしっかり着けたところへの、メガ粒子砲とミサイルの嵐

それらのほとんどがナガレボシの体を叩く

「グォ・・・」

だが、ネクストはまだ耐えきる

痛覚を叩く痛みなど、歯を食い縛って我慢すれば終わる

今のナガレボシなら、この攻撃で怪我をすることはない

ならなんの問題はない

俺は負けない

「ンンンン・・・!」

ミサイルの爆炎の中で、ナガレボシは細長い棒状の物体を取り出した

メガ粒子砲に炙られながら、その物体から光の刃を生む

「エイィヤァッ!」

そしてそのビームサーベルを、はるか遠方の敵に振るう

斬撃の軌跡が、三日月のような光の塊となった

出現と同時に飛び立ったその斬撃は、ズゴックEをあっさりと両断した

それぞれの断面を晒しながら、モビルスーツは地に伏せた

ツバイノワール水陸両用機の最後の一機となったゴッグが、死なば諸共と突貫をかける

伸ばされたアームの先端のアイアンネイル

屈むようにしてそれを避け、ナガレボシは左アッパーを繰り出した

拳の八割が埋まり、ゴッグが天へ打ち上げられる

敵が落下する前に、闘士は掌を向けた

閃光一発

掌から撃たれたビームが、ゴッグを撃ち抜いた

花火が大空を照らす

赤い炎と爆風が、周囲に散った

その光景に背中を向けて、ナガレボシは拳を構えた

モビルスーツは倒した

残るは、モビルアーマー三機

 

 


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