機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
オデッサ作戦がどういう感じだったかイマイチ覚えていないアルファるふぁです
黒い三連星と戦ったんだっけ?あれ?

今回から怒濤の対ツバイノワール戦です!本当に長らくお待たせしました、戦闘です!



無数の一つ目

 

二機のデザート・ザクがマシンガンを前方に構えながらアイアンフィストを練り歩く

倉庫や家屋より遥かに高い位置に、赤く光るモノアイがあった

この二機はアイアンフィストの機体ではない

アイアンフィストと敵対しているツバイノワールのモビルスーツだ

全長十八メートルの鋼のサイクロプスに、住人達は半狂乱になって逃げ出す

その一団に、デザート・ザクはマシンガンを向けた

ザクのマシンガンの口径は百二十ミリ

人間など、かすっただけでも即死だ

モビルスーツのパイロットは躊躇いもなくそんなデカブツ銃を非戦闘員に向けた

彼らは正義の下で戦っている

立ちふさがるなら容赦などするつもりはないのだ

いつもの台詞を呟いて、引き金が引かれようとした

その時

 

倉庫の屋根を引き裂いて、何者かが突然出現した

 

トリコロールカラーに輪のような関節、細身の体に三角形の砲を背負った摩訶不思議な巨体

それはモビルスーツではなかった

だから、デザート・ザクのレーダーには写らなかった

だから、デザート・ザクのパイロットは対応が遅れた

六本の指が握り拳を作り上げ、腕が引かれて振り抜かれる

上手い具合に勢いと重量が乗ったパンチが、デザート・ザクの一体の頭部に打ち込まれた

殴り飛ばされて転倒する一機

それを見て、もう片方がヒートホークで斬りかかる

上から振り下ろされた高熱の刃

その柄を握る手を、ナガレボシは掴んだ

パワーで敵わないデザート・ザク

そのまま脚を払われて、放り投げられた

殴られた機体が立ち上がる

マシンガンの引き金が今度こそ引かれた

異形の機体はそれをジャンプして避ける

そして、ザクの上空に躍り出た

見上げるパイロットが最期に見たのは、ナガレボシの掌から迸る閃光であった

真後ろに倒れ込む同胞を見て、ツバイノワールのモビルスーツが勢いよく跳ね起きた

二機目のデザート・ザクが何かを投げた

モビルスーツ用の手榴弾、クラッカーだ

放物線を描いて飛んでいく

地面に落ちれば大爆発

アイアンフィストもただでは済まない

ナガレボシはダッシュでクラッカーに飛び付いた

両手で捕まえた爆発物を、そのまま敵へ投げ返す

猛スピードで叩き付けられたザククラッカーは、元の持ち主の胸部装甲で起爆した

膝から崩れ落ちるツバイノワールのモビルスーツ

その上半身から立ち上る煙に目もくれず、ナガレボシは辺りを見回した

「内部に潜り込んだのは、こいつらだけか・・・」

身体中に輪っかを取り付けた、ナガレボシのパイロット、ネクスト・ブレイクが安心したように呟く

「ん・・・あれは!?」

周囲の索敵を始めてから数秒、やや向こうに爆風が咲いた

視線の先、いくつもの光と爆発が瞬いている

「あっちはアウラの担当だった・・・くそ、寄って集って!」

ネクストは身体中に力を込めた

歯を食い縛り、意識を集中する

ふわりと、ナガレボシが浮かび上がった

「行くぞ、相棒!」

青空を滑るように、ネクストを乗せたナガレボシが飛んでいった

 

 

 

 

 

 

ザクキャノンの頭が弾け飛んだ

キャノンを装備した機体が、キャノンによる攻撃でダウンするという皮肉だ

頭だけでなく胸や腹も撃ち抜かれ、ザクキャノンは完全に沈黙した

「チィッ、次から次に!」

レバーとペダルを休みなく操り、アウラ・ドレインバーグスは愛機を巧みに操っていた

巧みに操らなくては、今にでも撃墜されるのだ

「フッ!そこッ!」

横から伸びるヒートロッドを間一髪で避け、攻撃してきた緑のグフにマゼラトップ砲を撃つ

だがグフは、左手のシールドでその砲撃を防いだ

盾を投げ捨ててヒートソードを抜き、グフがスラスターを噴射して突撃してくる

反対側からは、陸戦型ゲルググとドムキャノンがマシンガンを撃ちまくる

左肩のシールドでマシンガンを受け流し、アウラはマゼラトップ砲を敵のグフに投げた

大上段から敵の武器を切り捨てるヒートソード

だがそれが隙となった

「私の仲間のグフ乗りは・・・」

腰から二丁のザクマシンガンを取り外し、握る

「もっと動きが早かったわ!」

左手のマシンガンをゲルググとドムに、右手のマシンガンをグフに、それぞれ向ける

あまり大きな動きをしなかったゲルググは、スラスタージャンプであっさりと射線を避けた

ドムは避けきれなかったが、その重装甲でかすり傷で済ませた

だがグフの方は、大振りであるヒートソードを振った直後だ

超硬スチール合金に、大粒の銃弾が徹底的に突き刺さった

穴だらけのグフは無様に地面に横たわり、動かなくなった

「さあっ、次!」

ゲルググに両手のマシンガンを向けながら、ザクが走り出した

その気迫に、敵の動きが一瞬固まる

そこへ、アウラはトリガーを押し込んだ

マシンガンの弾幕が両肩の黒いモビルスーツ達に襲い掛かる

だが敵は高い機動力で弾幕を飛び越えた

別の機体は横滑りで避けながら砲弾を撃ってくる

砲撃はザクⅡの肩部シールドをもぎ取っていった

「チッ!」

もう一度マシンガンを撃とうとするアウラ

だが違和感が脳裏をよぎった

弾幕を飛び越えてこちらに向かってくるゲルググが、攻撃してこない

握ったマシンガンを上に向け、裕々とアウラの上を通り過ぎた

その直後、ザクのセンサーが大音量を吐き散らした

「何を・・・えっ?」

センサーの指示する方向、ゲルググとは反対の方を視認するアウラ

そこには、視界を埋め尽くす量のミサイルがあった

 

 

 

 

 

ドワッジが上下に分かれた

ごろんと落ちた胸から上が、大爆発で消えてなくなった

「マーヴェル・・・おのれ!」

かつての戦友の名前を忌々しく吐き捨てて、ウォルターはザクⅠのスラスターを吹かせる

先程からスラスターを使い続けて、推進材が残りわずかだ

だが、ウォルターは冷静に敵へ立ち向かった

ドダイに乗っかったハイザックがビームライフルを撃ってくる

ビームを右に通り過ぎさせ、クラッカーを投げつける

ドダイに転がったクラッカーが起爆し、ハイザックもろともドダイを粉砕する

落っこちていく足のないハイザックに、ウォルター機の背後からバズーカが撃ち込まれた

ウォルターの横から突っ込んでくるドムも、ヒートロッドを受けて電流を流し込まれた

「大尉、囲まれつつあります」

ドダイの群れにバズーカを幾度か撃ちながら、レイゼンが報告する

「チクショー!アイアンフィストはやらせねえぞ!」

動かなくなったドムを切り伏せて、グレックリーが吠える

「二人とも急ぐぞ!ツバイノワールを、アイアンフィストから追い払わなくては!」

マシンガンを連射しながら、ウォルターが言う

眼光はいつにも増して鋭くなっていた

「俺達の家を守るんだ!」

 

 

 

 

 

「どけえええええッ!」

ビームキャノンを抱えながら、ナガレボシは空を動き回っていた

その肩に、対空ミサイルが突き刺さる

ドップだ

ジオン公国の戦闘機が、ナガレボシを追い詰めている

大柄なナガレボシでは、ハチドリのように高速で動き回る戦闘機を捉えづらい

だが相手にとってそれは逆だ

大きなでくのぼうに攻撃を当て続けるだけなのだから

一条の光線をロールで回避して、もう一度ミサイル

別の機体もミサイルを撃つ

上空からやってきた味方もミサイルを放った

三機のドップのミサイルが、ナガレボシの体を打ち据えた

「ぐぁああああ!!」

身体中を爆発と爆煙に包まれて、ナガレボシが地に叩きつけられる

大地にヒビが入り、大量の土煙が舞い上がった

手を着いて立ち上がろうとするナガレボシに、ドップ部隊は追撃の急降下爆撃を食らわせた

機関砲の雨がナガレボシの装甲を激しく叩いた

「クソォ、まだまだ・・・」

機首を返して向こうへ行く敵戦闘機に、ナガレボシがビームを撃とうとした

だがネクストは異様な光景を見た

「あれは・・・ッ!?」

今まさに無数のミサイルを前にしている、アウラのザクⅡ

そのミサイルの一部にたまたま巻き込まれるドムキャノン

上空から降りてくる、両肩の黒いズサ

ズサのモノアイが、妖しく輝いた

 


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