機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
W系ガンダムは尖りすぎててそこまで好きになれないアルファるふぁです
そういう意味ではUC系は好き

今回は、ジオン残党メインとなります



事情

千切ったパンを口に放り込み、ネクストは聞いた

「つまり、アンタ等は地球に住んでいたいって

ことなんだよな」

「その通りだ」

「胡散くっせぇなぁ」

言いながらネクストはカップに入ったスープを一気に飲み干す

若干細めた目には、厳つい雰囲気のウォルターがいた

レストランらしき店内のカウンター席に隣同士で座っている二人

出されたサラダにフォークを突き立て、ネクストはウォルターに再び絡んだ

「ジオンなら『おのれ連邦!我が身朽ちるまで叩き潰してくれるわァ!』なんて息巻くもんだと思ってたんだが」

「そういう連中はな、連邦に叩かれまくって虫の息だ」

「宇宙には?」

「うじゃうじゃ」

他人事のように呟かれたその言葉に、思わずネクストの頬が緩む

地球圏を揺るがしかねない連中をそんな風に笑い話の一欠片にしてしまうウォルターに、ネクストは若干の好感を抱いた

「ここはな、自然環境が厳しいんだ・・・野菜は実らない、家畜はすぐ病気になる、井戸もない」

「キツいな」

「だから連邦もここに不法滞在者が沢山いてもほぼ無視している」

ウォルターも、湯気の消えたスープを啜る

「人なんか住めっこないと、そう考えてたんだ」

「あんたらは、金かなんかでそれを覆したのか」

レストランの窓の外を眺めながら、ネクストは呟いた

無数のビニールハウスや屋根付きの大きな家畜小屋、貯水タンクも大きなアンテナもある

並大抵の金では用意できない代物ばかりだ

「・・・そんなところさ」

ウォルターは苦笑しながら続けた

「0079末期、無様に逃げてる時にとりあえず沢山ちょろまかした・・・当時はかなり混乱してたからな、苦労はしたが莫大な額を用意できた」

「ジオンの仲間の金なんだろ?」

「ここの人達を蔑ろにしていた連邦から強奪したものが殆どだ」

スープを飲み干し、カップをテーブルに置き、ウォルターは目を閉じながら話す

眉間には皺があった

心地よくない話なのは、明白だった

「殆ど・・・か」

「俺らは用心棒兼男手として住まわせてもらう、彼らは人手と大量の金を手に入れる・・・それが、俺達燃え尽きジオン残党がこのアイアンフィストで交わした盟約だ」

「そこまでして地球にいたかったのか」

「ザビ家やらジオニズムやらアナハイムやらニュータイプやら、とにかく宇宙は・・・とりわけ地球圏は色んなものを抱えすぎてる」

遠くを見るような目でグラスの水を眺め、それからウォルターはフォークを置いた

声のトーンも、下がってきている

「ジオンが連邦にケンカ吹っ掛けて、残党がそれを引き継ぎ、連邦はとにかくそれらを叩き、様々な奴が美味い汁を吸い続け、スペースノイドやアースノイドの一般人は不安に押し潰され、兵隊達は戦い続ける・・・疲れちまったんだよ俺達は、クタクタに・・・」

彼の目が見ているものはグラスの水か、それともそこに映る情けない台詞を吐く己自身か

ネクストには判別できなかった

だが、そんなウォルターを見ていると、ネクストの口も、滑り始める

「俺も・・・」

「ん・・・?」

「俺も、ジオンと連邦の戦闘で・・・両親と記憶とその他諸々を失った、らしい・・・破片が脳味噌に突き刺さって・・・」

驚いたウォルターは、沈痛な面持ちでネクストを見つめる

「・・・気の毒にな」

「らしい、なんだ」

「無くしたんだな」

「ああ、破片を取り出したときにな・・・ここにいるアンタ達を恨むつもりはないさ、その時以前の俺はその時死んだんだよ」

目を細めて、一呼吸置き、自らに言い聞かせるように言う

弱った

これでは自己紹介だ

「今の俺は、ネクスト・ブレイクなんだ・・・」

折角の食事の席が、空気が完全に凍りついてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、根無し草の君にここの連中を何人か紹介しておこう」

「根無し草とか言うな」

ウォルターの軽口にネクストが口をとんがらせて抗議した

図星なので強くは言えないのだが

「で、アイアンフィストの愉快な仲間達はどこだ?」

レストランから出て、ウォルターとネクストはブラブラとアイアンフィストの通りを歩いていた

ウォルターがアイアンフィストを案内したいと言い出したからだ

ネクストにはありがたい話だった

追い剥ぎもどきに襲撃されて一文無しになったネクストは、ここを拠点にしておく必要があった

金も荷物もない彼には、この荒野をさ迷うことも自殺行為だ

よって、ある程度ここで旅の支度やら何やらをしなければならない

「ああ、電話で呼び出したからもうすぐ来る頃・・・あれだ」

ウォルターが駆け寄ってくる人影に指を指した

どうやら、男が二人に女が一人いるようだった

「悪いな、急に呼び出して」

「大尉のお呼びなら、すぐにでも」

「後でなんか奢れよ!」

「・・・新顔の顔を見たかっただけ」

ウォルターの謝罪に三者三様の返事をして、その三人はネクストに向き直った

「俺はグレックリー・ベンって言うんだ、いつもは物運びとかやってる」

「いつもは?」

「いつもじゃないときは、グフに乗ってるぞ!」

ひっくり返りそうになった

ネクストの顔が驚愕に染まる

「あ、ああ、よろしく・・・そ、そちらの二人は?どなただ?」

まさか後の二人もと考え、自己紹介を促す

「レイゼン・ハウゼンだ、パソコン関係の仕事をしてる」

レイゼンは一拍置いてから続けた

「ドムによる火力支援が戦闘による役割だ」

「マジかよ・・・」

困ったような目で、最後の一人を見た

見た目はネクストよりも若いように見える少女だが、そんなものに騙されはしなかった

「・・・アウラ・ドレインバーグス」

「名前だけじゃダメだぞ」

「わかったよ、うっさい」

アウラと名乗った少女に、ウォルターは一言注意した

渋々ながらもアウラはそれに従う

「農場で野菜とか鶏とかを世話してるわ・・・乗ってるのは、ザクよ」

ネクストは口を開けて呆然とした

まさかとは思ったが、これ程とは考えてなかった

「オイオイオイモビルスーツ多すぎだろ!連邦の基地でも襲うつもりか!?」

「言っただろう、俺達は用心棒も兼ねてるって・・・」

「にしてもモビルスーツ三機は多くないか!?」

ネクストの抗議の声

しかし、それをレイゼンがとんでもない一言で否定する

「いや、五機だ」

「え?」

「ザクⅠ、ザクⅡJ、グフカスタム、ドムトローペン、陸戦型ゲルググ・・・アイアンフィストの保有するモビルスーツは以上の五機だ」

「ええええーッ!?」

なんということだろう

こんなのがそこらのジオン残党と同じ行為をすれば、とてつもないことになる

「安心しろ、自衛目的にしか使わないから!」

「じゃないと、ホント、困るぜ・・・」

グレックリーのフォローも、ネクストには虚しくとしか響かない

ホントは己は騙されていて、今まさにジオン残党に勧誘されているのではないかと不安になってきた

とんだ厄介なとこに厄介者として居着くことになったもんだと、ネクストは頭を抱えた

「・・・んんん?」

しかしあることを思い出した

「あの隕石はどうなってる?」

「それなら、これから行く」

ニヤつきながらウォルターは、足早にその場を離れようとした

「あ、待てよ!」

ネクストは、それをとりあえず追い掛けていった

「お前らも来い!」

ウォルターの一言に、三人も着いてきた 

そんなジオン連中をチラリと見て、ネクストはため息を吐いた

「俺、大丈夫かな」

 

 


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