機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
ガンダムUCではマリーダ・クルスがお気に入りのアルファるふぁです
マリーダさんの台詞、性格も、もちろん容姿も、まるっと含めて大好きです
アイス奢って一緒に町中歩きたい



強敵、そして増援

 

振り抜かれるビームサーベル

地面に落ちる右腕

ナガレボシの片腕を、敵のモビルスーツは切断してのけた

「あ」

ナガレボシでは、勝てない

敵のジムクゥエルは、それを確信させた

圧倒的な強さを持つナガレボシよりも、強い

ナガレボシのビームサーベルは、敵のビームサーベルを切断する

それは普通、デメリットにはならない

敵はビームサーベルを防御に使えなくなるし、どんなビームサーベルをも防ぐことができるだろう

だが、目の前のパイロットはそのメリットをデメリットに変えた

例え切断されても刃は刃

刃を折られたビームサーベルは、振り抜いたまま刃を折られたまま、ナガレボシの懐に入り込むのだ

ガードの姿勢のままビームサーベルを構えていてはすぐに攻撃には移れない

なまじ受け止めるのではなく必ず切断するからこうなってしまう

だが普通、そのままサーベルを振り回してナガレボシにダメージを負わせることはできるだろうか

果たしてそこまでナガレボシは隙だらけだろうか

答えは否だ

普通なら斬りかかった後、刃を切られたサーベルを見て一旦離れるだろう

が、このジムクゥエルのパイロットは違った

判断力、胆力、経験、思考速度、そして実行するための技術

全てが怪物的なまでに高い

そんな相手に、勝てるのだろうか

「あああ!うわぁああッ!?」

無理だ、と思った

勝てる訳がない

負ける

死ぬ

「ああ・・・!」

目前のジムクゥエルが、ビームサーベルを腰だめに構えた

とどめを刺すつもりだ

歯がかちかちと鳴る

体がぶるぶる震える

恐怖が脳を支配する

閃光の刃が煌めいた

あぁ、これで終わりか

 

「ボサッとすんなーっ!!」

 

ネクストの目がいっぱいに見開かれた

ハッと我に返り、体に力を込める

ナガレボシが足下を思い切り蹴った

勢い付いたハイジャンプに、ジムのサーベルが空を切る

「今の声は・・・まさか!」

地面にヒビを入れながら着地する

ネクストは今の声の主を知っていた

可憐な少女の声だ

「アウラ!」

ジムクゥエルの横から、不意打ちのように高速の砲弾が飛んでくる

それに気付き、ジムは盾で受け止めた

ジムクゥエルは一瞬爆風に飲まれた

砲弾が飛んできた方向を向けば、一機のザクⅡがブースターを全開に吹かしながら戦場へ突き進んでくるのが見えた

その手にはマゼラトップ砲が持たされていた

「ウォルター、指示」

「あぁ、わかった!」

アウラ・ドレインバーグスがマゼラトップ砲を乱れ撃ちながら、ウォルターを急かした

この場の味方で指揮能力があるのが彼だからだ

アウラ機の撃った砲弾が、グフカスタムにマシンガンを撃っていたジムの頭部を吹き飛ばす

その隙に、ウォルターは指示を飛ばした

「私とベンとハウゼンで、あのジムクゥエルを抑える・・・アウラは残りの雑魚三機を片付けろ!」

腹からの重い声を聞き、三人がそれぞれ飛んでいく

ウォルターがブースターを起動したとき、ネクストが慌てて聞いた

「俺はどうすりゃいい?」

「遊撃だ」

「好きにしろってことか」

ナガレボシが背中に左手を回す

ビームキャノンに触れると、それはナガレボシの左脇に抱えられた

コクピットで、ネクストの目が細まる

「了解、アウラを援護する!」

空中へと浮かび上がり、ナガレボシはビームキャノンをジム改へ向けた

 

 

 

 

 

不味いな

まずそう感じた

ザク一機の増援に、引っ掻き回されている

いや、引っ掻き回されているのは戦闘開始からずっとだ

旧式相手にこちらは二機落とされ、数的優位は最早無い

未確認機を倒して戦意を削ごうとするも、増援に阻まれてしまった

完全に流れは向こうにある

そして、アイアンフィストは数的優位にモノを言わせ、ブルースを止めに来ていた

一対三

ザクⅠとグフカスタムとドムトローペンの三機種だ

単機ずつなら腕も性能もブルースのジムクゥエルが上回る

だが、三機だ

正直単機でもなかなか手こずりそうなのに、三機

攻撃をかわし続けるので精一杯だ

左から来るマシンガンを盾で防御して右からのシュツルムファウストを避けつつ正面からのヒートロッドを切り払う

バルカンでグフの足を止めつつ、ドムへジムライフルを向けた

引き金を引く前に横へ滑られ、直撃コースは逃した

精々肩部装甲を削ったくらいか

背後からの接近

旧ザクだ

レーダーを確認していなかったら危なかった

シールドでやけに大きいヒートホークを受け止める

「いい腕だ、敵にするには惜しいほどだな」

突然、通信機から聞き慣れぬ声が聞こえた

男の声だ

状況的に考えて、目の前のザクとの接触回線だろう

ブルースは無視してシールドを押し込んだ

だがザクは離れず、逆にジムクゥエルのシールドを空いている手で抑えにかかってきた

「貴官が、ブルース・ウェイン大尉か」

「だからどうした」

接触回線をしつこく続けるザクのパイロットに、ブルースが返答をした

殺し合っている敵と話す趣味はないが、言葉に言葉を返すのは最低限の礼節だ

話をすぐ切り上げるつもりで、二人は会話する

「いや、俺達は単に平和に暮らしたくてね、もう手を出すのはやめてくれないか」

「何故攻撃するかは言ったハズだぞ」

「そうか・・・ならッ!」

ザクがシールドから離れた

旧ザクのどこからそんな速さが出てくるかわからないが、あのザクⅠはジムクゥエルとの距離を素早く離した

気が付けば、その両脇にはドムとグフ

二機ともが、バズーカをこちらへ向けていた

迷いなくブースターで空へ上がる

一瞬前にいた地点を、いくつもの榴弾が通り過ぎていく

数が多い

旧ザクも、脚部のロケットポッドをバラ撒いているのだ

先程まで話していた相手のこの態度、あのパイロットは相当の曲者に違いあるまい

ジムライフルを三機の頭上に撃ち込む

敵は散開してしまった

やはり当たらない

「面倒だな」

そう呟くと、ブルースはペダルを踏み込んだ

一進一退の攻防が続いた

 

 

 

 

 

 

ジム改のシールドが粉々になら

あまりの披ダメージは、防具を粉砕して余りあるものだった

「チッ・・・残弾ゼロ」

アウラのザクがマゼラトップ砲を放り捨てる

地面をごろごろ転がっていく長距離キャノンを捨て置いて、腰から二丁のマシンガンを引き抜く

「お次はこれよ」

両方両手に握り締め、銃口を敵へ向けた

ジムスナイパーⅡが、武器交換の一瞬を狙った

ビームスナイパーライフルを向ける

「させっかよ!!」

その胸部を、白色の光線が貫く

狙撃しようとして逆に狙撃を受けてしまったジムは、仰向けに倒れて爆散した

「ファイア!」

続いてザクⅡがマシンガンを撃ちまくる

頭部とシールドを失った機体では防ぎようも避けようもなく、ジム改が一機あっさりと砕け散った

「足手まといにはなってないわね」

「こんなの屁でもねえや!」

「調子に乗らないで」

「へいへい・・・っと!」

ナガレボシが空中へ飛んできたミサイルを避ける

残ったジム改が装備しているのは、携行型のミサイルランチャーだった

空をくるくると回りながら、飛んでくる弾頭をいなす

「・・・アサルトコンボ、スタート」

アウラがレバーとペダルに力を込めた

「一気に決める・・・!」

瞬間、ザクが弾かれたように突撃を開始する

両手のマシンガンを乱射するアウラ

それに対応するように、ジム改はシールドをそちらへ向けた

二丁分のザクマシンガンの弾丸が、真っ赤な盾に弾かれる

だが抜けない

弾はシールドを削りこそすれ、壊せてはいない

いずれ突撃するザクとジムのシールドがぶつかり、止められてしまうだろう

それは非常に良くない

「りゃッ!」

だからネクストは、左手で作ったピストルの人指し指を、勢いよく折り曲げた

ジム改のシールドへ、ビームキャノンが撃ち込まれる

盾は高熱により溶断され、真っ二つとなり使い物にならなくなった

よろけるジム

それを見逃すバカはいない

アウラは二丁のマシンガンを躊躇なく投げ捨て、腰にマウントしたヒートホークを取り出した

その数二本

両手に一本ずつ持ち、大きく振りかぶる

超高熱に熱せられた斧の刃は、なんの防御も持たない哀れなジムの装甲へ食い込んだ

左手の斧が敵モビルスーツの右肩から左脇腹に切れ跡を残した

そして、そのまま右手も振る

ジム改の上下半身は、荒々しい切断面を晒しながら別れた

モビルスーツの爆発からブースト移動で逃れて、アウラが言う

「撃破完了」

「へっ、楽勝だぜ」

「落ち着いてて」

「へーいへい!」

 





さすがアウラちゃんですね

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