機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
格闘武器ではヒートホークが好きなアルファるふぁです
武骨で素敵
と言うわけで、第二話です、どうぞ!



運命の邂逅

それは、一機の奇妙なモビルスーツだった

いや、よく見るとモビルスーツであるかすら疑わしい

各関節は輪状

それぞれ六本の手の指

曲線が多い生物的なディテール

背中には、三角形の何かがぶら下がっている

ただただ歪な、とにかく歪な、人型の巨大な何か

だが、それを見ていた一人がある単語を口にする

「ガ・・・ガンダム?」

その色は、白を基調としたトリコロール

その頭には、二つの眼と二本のツノ

言われてみれば確かに、ガンダムに見えなくも、なかった

不思議だった

こんなただただ奇妙すぎる機体なのに、数個の要素だけで『ガンダムっぽく』見える

そしてそれすらも、この何かの不可思議さを加速させていた

「あああいた!探したんだからね!」

「ん、え?」

呼び掛けられた男は振り向いた

そう言えば、自分は看病してもらった身の上なのに家人を無視して隕石見物に出てきたのだった

ここにいるこの女性は、ダッシュで出てきた自分を心配して探しに来てくれたらしい

何だか申し訳ない気持ちになった

「って何じゃありゃあっ!」

一方その女性は、男の心など露知らず、今気付いたガンダムモドキに大いにビックリしていた

「何じゃありゃ、って・・・」

思わず苦笑する

「って君、ジュンじゃん!ジュンイチ・ヤマカワ!」

すると女性は、男を指差して名前を呼び始めた

どうやら、男・・・ジュンイチ・ヤマカワと知り合いらしい

ヤマカワの方には全く記憶がないが

「え?なんで俺の名前を?」

「覚えてない?リーア・カストレル!ハイスクールの同級生!」

ハイスクール、と聞いて、ヤマカワの顔が少し暗くなる

ああそれか、といった風情の、表情だった

「そ、それは・・・うん・・・ええと」

「え!?」

「覚えてないって、言うか・・・」

申し訳なさそうな表情でヤマカワが謝ると、今度はリーアの顔が暗くなった

「えー!そんなぁー・・・」

「ご、ごめんな、なんか」

がっくりと肩を落とし、リーアがため息をつく

それを見て、ヤマカワはさらに顔を暗くするのだった

「おい、カストレル」

リーアの後ろから男の声がした

少し威圧的な、それでいて落ち着いた感じのバリトンボイス

ヤマカワは無意識的にその声の主へ視線を移した

「彼は?」

「あっ、ウォルコバじゃん!じゃああのゼロロクは誰が乗ってるの?」

その瞬間、バックパッカーの顔がひきつった

「一つ、名前を変な風に略すな・・・一つ、MSは型番じゃなくてペットネームで呼べ・・・一つ、質問に答えろ」

その精悍な顔立ちの男は、薄汚れた旧ジオン公国軍人の制服を着用していたのだ

しかもかなり着崩していたのだ

「それと、ザクに乗ってるのはアウラだ」

かつて地球連邦とジオン公国が全面戦争を行った頃からもう十数年、コスプレイヤーなんてのはいないわけでもない

戦争の本質を知らず、娯楽としてその内の要素を楽しむ者もいないわけではない

しかし、ヤマカワの知るコスプレイヤーとは、あんな風に衣装を汚したり着崩したりするような連中ではない

むしろ逆に、シワも汚れも付かないよう大切にして、イベント事用のスーツのごとく扱うような連中だと思う

が、この男は違った

「アンタ、ジオンの人か・・・?」

先程までリーアの方に顔を向けていたその男は、ヤマカワを見た

そして重々しく口を開いた

「・・・人の事情を聞くなら、そっちから名乗るのが筋だと思うんだがね?」

「あ、ああ、俺の名前は・・・」

チラリ、とリーアの方を見て、ジュンイチは口を開いた

「ネクスト・ブレイク・・・だ」

リーア・カストレルの顔は驚愕と悔恨に歪んだ

「えぇぇ!!別人!?私の勘違い!?」

「あぁ・・・そうじゃないんだ」

頭を抱えて天を仰いだリーアに対し、申し訳なさそうにネクストは呟く

「俺、昔の記憶無いんだ」

「へ?どういう意味?」

「止せ、今はいい」

間抜けな顔で続きを促すリーアを片手で制し、ジオン軍人と思わしき男が喋りだした

「ようこそネクスト・ブレイク、俺はウォルター・コバック」

ウォルターは両手を広げ微笑むと、言った

「ようこそ、『アイアンフィスト』へ・・・歓迎する」

「ど、どうも」

いきなりのドラマチックな奇行に、ネクストはまたも顔をひきつらせた

「ここは、まぁ、見ての通りジオンの残党が集まってる場所だ・・・だけど安心してほしい、俺達はもうジオンを捨ててる」

「は?そりゃどういうことだ?」

いきなりの爆弾発言に、ネクストの顔相は三度ひきつる

ひきつりすぎて翌日筋肉痛にならないか心配になってきた

「それは今はどうだっていい、つまり他の連中みたいにテロとかする気は更々無いってことだ・・・着いてこいよ」

頭をかきながら、ウォルターはただそう言った

先までの微笑みは無くなり、今やただ無表情だった

「カストレル」

「あっ、はい」

「そろそろベン達も腹が減ってる頃だろう、飯を作ってきてやってほしい」

ウォルターはリーアに仕事を頼んだ

「わかった!」

若干笑むと、リーアは二人とは別の方向へ走っていった

どうやら、二人がジオンがどうとか言い出した時から話に付いてこれなくなったらしい

その空気から解放されたのだから、さぞかし嬉しいのだろうか

だが、振り向き様にネクストを見た彼女の目は、悲しそうだった

「さて、行こう」

「どこへ?」

「飯だ」

リーアを見送り、二人は軽い問答をした

強引すぎる食事の誘いだった

腹は減っていたので誘いは受けるが

 

 


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