機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
女性キャラではクーデリア・藍那・バーンスタインとベル・ドゥガチが好きなアルファるふぁです
というか他はほぼひどいのしかいない

今回は戦闘後の休息がメインです



息継ぎ

 

アイアンフィストに戻った時には、どの機体も様々な所を損傷しているのがわかった

無理もない、性能差がある敵を十数機も相手したのだ

こちら側で大破したのが一つもないのが、不幸中の幸いか

ナガレボシの各部も、実体弾の連続被弾でヒビが走っていた

トリコロールの装甲が、へこんで焦げて抉れている

コイツばかりはほっておけば大丈夫だが、それでもネクストは愛機の無惨な姿に落ち込んだ

「へっへっへ・・・それにしても、また痛め付けられたもんだ」

「笑ってないで手伝って」

「すいません」

ナガレボシを見上げながら独り言を言っていると、アウラがネクストを捕まえた

戦闘直後のモビルスーツ格納庫で何をするでもなく突っ立っていられる余裕はない

なのでネクストは、戦いの疲れを癒す間も無く修理の手伝いをやらされることになった

 

 

 

 

 

 

ザクⅡのすぐ近くで、ネクストはやはり機体を眺めていた

ジオンの名機ザクⅡは、後に連邦の機体の設計思想にも影響を与えているという話を聞いた

そんな優れた機体が、今目の前にいるのだ

「これが・・・MS-06・・・」

生身でザクを目の前にして、ネクストは現在の自分の置かれている状況を鑑みた

連邦の部隊とチャンバラをナガレボシでやっていたので、あまり実感がなかったのだ

「やっぱ俺、戦争やってんだよなぁ・・・」

肩を落としてため息をつき、ネクストは持っていた部品を掲げた

「アウラーっ!持ってきたぞーっ!」

腹から出た声は、格納庫の冷たい壁に反響して消えた

聞こえてくる言葉の残り香は、ネクストの耳を浅く叩く

室内のやまびこが無くなったとき、凛とした声がザクから聞こえた

「そこで待ってて!」

「お、おう」

言われた通りに棒立ちしながら待っていると、コクピットからのそのそとアウラが降りてきた

薄手のTシャツと作業服のズボンというだらしない格好だった

整備をしていたせいだろう、身体中に付いた黒いススやらオイルやらが女の子らしさを消し去っていた

「ありがと」

「あぁ、これでいいよな?」

「ん」

無造作に突き出された手に小型の電子機器らしきものを手渡す

軽く手のひらに置くと、アウラはそれを奪うような乱暴さで受け取った

またザクに向かっていく背中に、ネクストは声をかけた

「あともうすぐで晩飯だって、リーアが言ってたぞ!」

休憩してから続きをやれ

ネクストはそう言外に伝えた

直接的には言わないが、アウラがザクを直しているときに倒れては問題だからだ

仕事に全力投球なのはいいが、鋭気を養うのは大切だ

だがアウラの背はずんずん遠ざかっていった

食い物作戦では引っ掛からないようだ

「だぁめだ、こりゃあ」

ネクストは肩をすくめた

 

 

 

 

 

クタクタになるくらい手伝いをしてから、ネクストはモビルスーツ格納庫から離れた

荒野の土を小砂利と一緒に踏みながら歩く

ネクストに手伝える段階の整備は終わったので、暇になってしまった

やることもないので辺りを見回すと、炊き出しの煙が瓦礫の向こう側に見えた

「おっ、やってるやってる」

「ああ、楽しみだな」

予想外の相槌に、ネクストはのけぞりつつ隣を見た

見知らぬ男が立っていた

煙草を吸っているその男は、その場に屈んだ

「悪い、驚かせたかな」

「ああ、いや・・・始めて見る顔なもんだから、ついな」

ネクストが頬をかきながら男に苦笑いを向ける

実際にネクストが見たアイアンフィストの人間は、全体から見て少ない

顔を合わせた数ともなると、それこそ一握りになってくる

「そうか・・・俺はビーン・ゴーンバッドだ」

ビーンは煙草を口から離してネクストの方を向いた

しゃがんでいるので見上げる形になっている

「ネクスト・ブレイク、最近越してきたばかりなんだ!よろしくな」

「ああ、ウォルターから聞いてるよ」

ネクストの自己紹介に、ビーンは軽く返した

その何気ない一言に、ネクストは驚く

「あいつ、顔広いんだな」

「ここじゃ彼を知らない人はいないくらいだ」

「へえ・・・あっ」

噂をすればなんとやら

話題に出てきたウォルターが、立ち上る湯気の方へゆっくり歩いているのが見えた

ポットや皿を始め、食器を山のように抱えている

「ウォルターだ」

「手伝いに行くか」

「そうだな」

新しく会った男の提案に答え、ネクストはウォルターの方へ走っていった

 

 

 

 

 

 

カゴ一杯の食器を持ち上げ、ウォルター・コバックはリーア・ケストレルのいる炊き出し場に向かっている

全住人の分の食器が足りないとの連絡を受けたためだ

共用の倉庫は無事だったので、そこから皿やスプーンをいくつか引っ張り出した

「・・・遅かったか?」

遠くへ視線を投げながら、ウォルターは呟いた

食器が埃まみれだったから一度水洗いしたとはいえ、食器を倉庫から出すのに以外と手間取った

もう既に炊き出しは始まっていた

「おーい、ウォルター!」

声をかけられ振り向くと、見知った顔が二つ、こちらに走り寄ってきていた

ネクスト・ブレイクとビーン・ゴーンバッドである

二人ともウォルターの親友とも言うべき男だ

「重そうだな、その鍋貸してみろ」

ビーンがウォルターの荷物に手を出した

大量の食器を運ぶウォルターを見かねたのだろう

「町長代理にそんな仕事は・・・」

「えっ、町長代理?」

ウォルターは困惑した

戦闘関連はウォルターが請け負っているが、アイアンフィストのその他の事柄はビーンが管轄している

むしろウォルターがビーンを手伝うべきなのだ

「良いから貸せって、疲れてんだろ?」

呆けた声を出したネクストを無視し、町長代理が鍋をいくつか持った

「・・・すまんな」

「気にするな、ほらネクストも持ってくれ」

「あ、ああ」

ネクストがまた呆けた声を出すと、ウォルターが頬を緩めた

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイアンフィストにまたも連邦のモビルスーツが襲来したのは、その五時間後だった





町長代理の名前は豆腐からとりました
ビーン→豆
ゴーンバッド→gone bad→腐る・腐った
二つを繋げてビーン・ゴーンバッド=豆腐というわけです
揚げ豆腐食べたい

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