機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
強いけどあんまり作られていない量産機にときめくアルファるふぁです
陸戦型ガンダムとかVガンダムとかウィンダムとかアヘッドとか

今回は戦闘回!できるだけガッツリ行きましたので、良かったらお楽しみください



激突

 

「構えろ!」

モビルスーツ擬き、その後ろにいるジオン残党部隊を睨み付け、ケイロンは仲間に指示を出した

いくつかの機体が遠距離武器を向ける

ジムスナイパーⅡは、旧式ながらも凄まじい強さを持つモビルスーツである

あまりに機体性能を底上げしたので、かの名機ファースト・ガンダムを上回るスペックを持つ

そしてこの機体最大の特徴が、専用装備のビームスナイパーライフルだ

「ターゲット、ロック!」

味方のジムスナイパーがビームライフルを構える

近代のモビルスーツ戦において一般的な装備となったビームライフルであるが、その威力のために普及したのだ

ザクだろうがグフだろうが、当たれば一撃

一たまりもない

ここで確実に勝負を決めるため、基地所属戦隊は虎の子を投入したのだ

「撃てーッ!」

ジムが一斉にビームを放つ

延びていくピンク色は、一つ一つがあらゆるものを焼く高熱の光線だ

ビームは一ヶ所に集中した

集中砲火だ

どんな機体であろうと、撃破は確実だ

誰もが光線に貫かれる白いモビルスーツ擬きを想像した

 

 

 

 

ただ、一人を除いて

「来た!」

ナガレボシの両肩、リング状になったその部分に白い光が現れる

その光は、リング上を回り始めた

ナガレボシの両肩が光輝いた瞬間、その体にビームが伸びる

その先端が機体を焼く寸前、消えた

コンクリートの壁に水をぶち撒けた時のように、不可視の壁にビームが無力化されたのだ

「Iフィールドか、それは?」

「よくわかんねえけど、これでビームは怖くなくなったぞ!」

ウォルターの疑問に、ネクストは笑顔で返した

「そうか・・・なら、思い切り暴れられるな」

ナガレボシの後ろに立ち、ザクⅠは迫り来るジムⅡとネモの混成部隊を見る

ジムⅡが何機か突出していた

「援護しろ」

腰からヒートホークを抜き出すと、ウォルターは突撃していった

「了解ィッ!」

「了、解!」

グレックリーがバズーカを、レイゼンがシュツルムファウストを撃つ

火力の高い武器に、ジムⅡが足を止める

構えたシールドの上で榴弾が弾け、足下に爆風が爆ぜる

数機のジムが攻撃を無事耐え抜いた直後のことだった

「足を止めるのは素人のやることだ」

マシンガンを乱射しながら、一つ眼の戦鬼が駆け抜ける

ウォルター機がジムⅡを横側から蜂の巣にする

正面にシールドを向けていたので、ザクマシンガンを防ぐことはできなかった

そしてそれは、他の機体も同様であった

「敵に背中は絶対に見せるな」

背中から大型のヒートホークが叩き込まれる

高熱を放つ巨大な刃は、ジムⅡの装甲を溶かし、楽々とコクピットを砕いた

「そして」

そのまま脚部のロケットポッドを空にする

近くにいたジムⅡが、またも背中側から直撃を受けた

次々と突き刺さるロケットが、ジムⅡのランドセルで無慈悲に爆発する

近場のジムⅡ最後の一機がマシンガンを向けてきたが、ウォルターは追撃せずにスラスターで後退した

綺麗な弧を描いて飛んでいく旧ザク

ジムⅡの撃つマシンガンは一発も当たらない

「足下には気を付けるんだな」

突如、マシンガンを乱射していたジムⅡの足下から、閃光が迸った

パイロットはそれが、ザクⅠが手持ちのクラッカーを全て己の足下に放ったからというのを気付けなかった

一機目が風穴から火花を飛ばし、二機目が切断面から溶けた内部機器を晒し、三機目がロケットの衝撃に倒れ、四機目が下半身を失った直後

グリプス戦役において活躍したジムⅡ四機は、一年戦争開始時点からロートル扱いされていたザクⅠに、全滅させられた

モビルスーツ四機分の爆発を横目に、ウォルターはナガレボシが後ろへ降り立った

「わかったな、ブレイク?」

「お、おう・・・」

あまりの早業に、ネクストは呆気に取られていた

確かに凄腕だろうとは思っていたが、ここまでとは考えなかった

「今のは、モビルスーツの火力を最大限使用し敵を素早く撃破する戦法だ・・・俺達はアサルトコンボと呼んでいる」

マシンガンをリロードしつつ、ウォルターは説明を続ける

その間にも、ナガレボシのバリアがビームを防ぎ、グフのバズーカが敵を足止めし、ドムのマシンガンがシールドを削いでいる

それら全てを尻目に、ザクⅠがマシンガンを撃つ

「使えば見ての通りスッカラカンだが、成功させれば敵が一気に減る、見ろ」

「ん?おっ!?」

ウォルターがマシンガンを一旦降ろし、ザクの人指し指で敵部隊を示した

その方向には、比較的新しい機体の部隊があった

だが、彼らは来たときには九機いたはずだ

「旧ザクでジムⅡをあんなに!?」

「それだけこの戦法が有効だというわけさ」

「そうか・・・」

確かに一気に火力やら何やらを集中するというのはわかりやすく強力だろう

だがそれで性能差のある敵を次々倒せるものだろうか

「お前、強いんだな」

「お喋りは終わりだ、来るぞ!」

「へっ?」

ネクストが呆けた声を出しながら向き直る

ビームライフルを無効化していたナガレボシに、バズーカが向けられていた

 

 

 

 

 

 

いくつもの光の矢がモビルスーツ擬きへ向かっていく

だがそれらは、命中することなく敵の目の前で消滅してしまった

何回か当てるものの、ビームスナイパーライフルはダメージを与えない

「クソ、無茶苦茶だぞアイツ!」

ケイロンの仲間が思わず叫んだ

全くもって同感だった

「クラウン隊機、四機がやられた!」

「いつの間に!?あの白いのは動いてないんだぞ!」

「違う、ザクだ!」

耳を疑ったケイロンは、機体の頭部を横に振った

視界に、ジムⅡから離れるザクⅠが写る

今度は目を疑った

「クラウン隊は案山子にもなれねえのか・・・いや、まさか?」

まさか、あのモビルスーツ擬き以外も化け物だというのではなかろうか

たった四機で出てきたのは、自信の現れではなかろうか

そんな連中を、いま全力で叩かねばどうなるか、ケイロンはわかっているつもりだった

「ジム改前に出ろ!バズーカを垂れ流せ!」

「了解!」

「了解!」

太筒を背負ったジム改が二機、シールドを前に向けつつジムスナイパーⅡの前方へ躍り出る

その二機は指示通り、バズーカを敵に向けて乱射した

噴煙を引いて飛んでいく榴弾は、モビルスーツ擬きに直撃した

面白いようにかっ飛んでいく白い敵を見て、ケイロンは確信と恐怖を覚えた

「強力な実弾武器なら通る・・・!」

だが、その強力な実弾武器であるバズーカでも、粉々に粉砕することはできなかった

無様に転がっているのは、つまり原型を留めているということ

一撃では倒せないのだ

骨が折れる

「遮蔽物はいなくなった、スナイパーは攻撃を再開だ!」

クラウン隊に夢中になっているドムトローペンにビームライフルを向け、引き金を引く

だが直前にそれを感付いたか、アイススケートのような動きで避けられた

ホバー移動だ

ビームは空を切る

「チィッ!」

他の機体もビームスナイパーライフルを撃つが、当たってはいないようだ

「どいつもこいつもエースか!」

「クラウン隊は何やってんだ、足止めもできねえのか!?」

「落ち着け、もう一度撃つんだ!」

パニックになりかける仲間を叱咤しながら、ケイロンはトリガーを引いた

だがビームは狙いを定めたはずのザクを貫かない

上手いことスラスターで避けられている

「ぐわぁっ!」

悲鳴に振り向くと、ジム改の片割れがマシンガンを食らっていた

120ミリのザクマシンガンが装甲を食い破る

シールドに守られていない片腕をやられたようだ、被弾したジムはバズーカを取り落とした

「ホントにエースだぜ・・・」

見れば、先ほどまで寝ていたモビルスーツ擬きが起き上がろうとしている

囲んで追い詰めていると思ったら、まるで追い詰められているのはこちらのようになっている

ケイロンは歯軋りをした

「散々だぜ・・・」

味方が愚痴と一緒に武器を撃った

無論、避けられてしまった

 


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