機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
シャア・アズナブルの機体ではナイチンゲールが好きなアルファるふぁです
サザビーよりゴツくて強そう

今回は予告どおり、元ジオン残党でありながら地球辺境の大集落アイアンフィストのために身を粉にして闘う男、ウォルター・コバックの過去回想になります



ウォルター・コバックの記憶

 

俺の名前はウォルター・コバック

サイド3の9バンチコロニーで生まれた

生年月日はUC0059九月九日

一年戦争の年に二十歳を迎えた

 

 

 

 

母親が熱烈なザビ信奉者で、気の弱い父の反対を押し切り、俺の進路をジオン兵にしようとした

当時青臭いガキだった俺は、何も考えず、何も知らず、連邦に憎悪を向けていた

なのでオフクロの目論見は成功し、俺は晴れてジオン軍の所属となったのだ

数々のテストを努力してパスした俺は、ジオン公国の戦闘役職で最も誉れあると言われるモビルスーツパイロットとなった

今思い出すと、どうしてあの程度の操縦試験に手こずったのかわからない

俺の初実戦は、コロニー落としで有名なルウム戦役だ

パイロットの中でもビリッケツだった俺は、ザクⅡではなくザクⅠを押し付けられてしまった

だがやはり死に物狂いで立ち向かったが、弾が当たらず撃墜数はナシ

何もできなかった

 

そして気が付けば、コロニーが地球に落下していたのが見えた

作戦内容をロクに聞かなかったから、その作戦がコロニーを地球に叩き込むためのオペレーションとはその時初めて知った

正直ゾッとしたよ

コロニーに住むスペースノイドのために戦っているはずの自分達が、そのコロニーを酷いことに使っていたのだから

俺の頭は一気に冷えた

あとはよく覚えていない

コロニーが落ちた前後で、俺がセイバーフィッシュを薙ぎ払いながらサラミスとコロンブスを真っ二つにしたなんて話を同僚のマーヴェルがしていたが、よく覚えていない

恐らく、ジオン熱にうかされていた頭が冷えて、うまく操縦できるようになったのかもしれない

だが、あのコロニー落としのショックはデカかった

あの瞬間から、俺の人生観は変わったように思う

 

 

 

 

乗ってた旧ザクを地上仕様にして、俺は地球へ降りた

俺の活躍を見ていたマーヴェルも一緒だ

地球ではさまざまな事を見て、学んだ

大自然や大山脈、一面に広がる海原、人間のことなど嘲笑うように不安定な天気、色んな動物

なるほど、連邦の高官どもが手放したがらないわけだ

俺にとって地球は、カルチャーショックの宝箱だった

マーヴェルはこの地球を独占する地球高官への憎悪を募らせていたが、俺は地球の素晴らしさを体感していた

だが連邦の反撃にあったジオンは、地球からそそくさと逃げ出した

俺はザクを置いて宇宙に逃げ出し、マーヴェルは地上に残って抵抗することを決めた

だが頭でわかっていても、感情はそうでなかった

俺は宇宙へ撤退するのに消極的だった

もっと、もっと地球のことを知りたかったからだ

あの青い水の星に、俺は牽かれてしまっていた

 

 

 

 

 

陥落したア・バオア・クーからゲルググで逃げ出した俺は、終戦に反対するタイプの部隊に合流した

その部隊は何を思ったのか地球に降下し、地上のジオン残党と合流するつもりであった

こんなテロリスト共と一緒にいられるか

俺は彼らから金品を根こそぎ盗み、アナハイムへ転がり込んだ

あの頃のアナハイムは、生粋のジオン派メカニックも多数いたので、楽に匿ってもらった

だが連邦によるジオン残党の撲滅運動が目立ってくると、アナハイムは俺を追い出さざるを得なくなった

だが俺は契約をした

彼らの顧客になる契約だ

これが後々生きてくる事になるが、それは置いておく

乗ってきたゲルググを売り払い、俺は本当に地球に降りた

 

 

 

 

 

降りた先のジオン残党からも金を巻き上げて、俺は地球をブラブラしていた

何回かジオン残党や連邦基地を空き巣したり強盗したりしていると、気が付けば一人旅ではなくなっていた

グフカスタムのパイロットとドムトローペンのパイロット、彼らが機体と共にジオン残党の人間が俺に着いてきていた

彼らもまた、ジオンの思想に懐疑的になっていた者達だった

俺らは旅を続けた

歩き続け、歩き続け、気付けば小さな集落に辿り着いていた

そこには俺のザクⅠがいた

その集落はモビルスーツの残骸から電気を賄って生活していた

見るも無惨な俺の愛機と、見るも無惨な集落の人間

人々は飢え、痩せ細り、その集落が消えるのは時間の問題だった

俺はまたも契約をした

この集落を助ける代わりに、この集落の住民として心から受け入れること

それが俺の新たな契約だ

 

アナハイムから様々な物を買って、集落は生まれ変わった

その功績を認められ、俺は集落から妻をもらった

共に旅をしていたパイロット二人も、安定した生活を満喫していた

アナハイム経由でモビルスーツを修理して、もしものための防衛戦力にしたりもした

だがUC0084に変化が起きた

デラーズフリートが暴れまわりやがったので、ティターンズなんてモンが生まれ、いよいよ地球は混沌とし始めた

地上では絶えず小規模な残党狩りが行われた

 

そして、一人の少女が俺の集落に流れ着く

ザクⅡに乗ってやって来た彼女は、ひどく錯乱していた

どこかの残党組織の奴の娘か誰かだろう、どうやってここまでこれたのか知らなかったが、その動かし方は素人のものではなかった

だが先に述べた通り、彼女は混乱していた

裏切りにあったか、仲間に売られたか、よほど凄まじい連邦の攻撃にあったのだろう

足が壊れたザクを降りた彼女は、心配して近寄っていった俺の妻をピストルで撃った

人を信頼できなくなっていたのだろう

だが心身含めた疲労のせいで、弾丸は急所を外れた

いや、疲労のお陰か

身重になった俺の妻には、身体中急所みたいなもんだったが

 

俺の妻の出産が始まった

だが人出が足りない

強引な男手では、胎児を傷付ける

だから女手が必要だった

俺はあの少女を頼ってみることにした

自分のやらかしたことを理解して正気に戻った彼女は、ザクに寄りかかって泣いていた

それに、俺は一言だけ言った

「アンタの力が必要だ」

産屋に走っていった彼女は、それはそれは活躍したそうだ

なにせ急激に弱った俺の妻の最期の言葉を、柔らかく抱いた俺の息子と共に一字一句聞いてくれたのだから

 

息子ができた

娘代わりができた

仲間ができた

家ができた

住み処ができた

この地球で、俺は色んなものを手に入れた

だから俺はこの地を、アイアンフィストを、守っていこうと思う

そうだ、新しい仲間もできた

どうやら、もっと色んなものを手に入れることができそうだ

 





モビルスーツナイチンゲールの由来は、偉人のフローレンス・ナイチンゲールではなく、
民間伝承において死を告げる鳥と言われるサヨナキドリの英名からとられているそうです
このサヨナキドリは愛を告げる鳥という伝承もあるため、ある意味シャアらしいですね

次回はアイアンフィスト二度目の戦闘になります
ウォルターも活躍しますよ!

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