ペンギンのおもちゃ箱   作:ペンギン3

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ずっと前の投稿した、”夏の避暑地へ行きましょう 中”の全面カットしたお風呂シーンを投下。
超健全な、R-15くらいのお話です。
久々に筆が止まらなくなったのは、まぁ、多少はね?(にっこり)


没ネタ アリスと早苗のお風呂事情

「えへへ、いっぱい濡れちゃいました」

 

「このままじゃあ、風邪を引いてしまいそうね」

 

 湖から帰ってお風呂を沸かしている間、私と早苗は肩を寄せ合いながら話し合っていた。

 段々と体が冷えてきて、自分でもビックリするくらいに冷たくなってきたから。

 だから、肩を寄せ合いながら話をしていたのだ。

 

「あ、そうですアリスさん」

 

 ふと、会話の最中に、早苗はこんな事を口にした。

 更に肩を寄せてきながら。

 

「片方が入ってる間に、もう一人が待ってたら風邪引いちゃいますよ。

 この際、一緒にお風呂に入りませんか?」

 

「一緒に?」

 

「はいっ」

 

 ワクワク、とでも音が聞こえてきそうなくらい、目を輝かせて。

 尻尾と耳を幻視させるくらいに、キラキラとした目で。

 早苗は私を見ていた。

 

 そして、私も考えてみる。

 早苗の言っていた事を、その内容を。

 検討して、推測して、そして出した結論は……。

 

「一理、あるわね」

 

 特に問題などない、早苗の言う通りだということであった。

 

 

 

「ア~リスさんとおっふーろ、ア~リスさんとおっふーろ」

 

「その怪しげな歌は、どうにかならないのかしら」

 

「なりません!

 これはピクミンと一緒くらいの愛の歌なのですから!」

 

「……あぁ、そう」

 

 妙なテンションの早苗。

 即興で珍妙な歌を歌ってる。

 しかも私の言葉は、右から左に受け流している。

 

 その様子に、はぁ、と溜息を吐きつつ、私は横目で早苗を見る。

 正確には、早苗の胸を、だけれど。

 ……でかい。

 

「さ、アリスさん、どうぞ!」

 

 私が余計なことを考えている内に、早苗が風呂場の扉を開いた。

 湧き出ている湯気が、私達を包まれる。

 冷えた体とお風呂の熱さのギャップで、体がブルりと震えてしまう。

 このままでは風邪をひいてしまうと感じて、私は足早にお風呂場へと入っていく。

 中は、冷えた体にはとても熱く感じた。

 

「さ、アリスさん、シャワーで簡単に体を温めましょう」

 

「早苗から先にすればいいわ。

 私はそこまで図々しくないの」

 

「何をおっしゃいますか。

 アリスさんはお客さん、お客さんを優先するのは当然の事です」

 

 そう言って、早苗は強引に私を木製のバスチェアへと座らせる。

 そして早苗は、私の頭から足まで、隅々へとシャワーを浴びせていくのだ。

 何だか所々がくすぐったい。

 水圧でサラっと撫でられているようで、ちょっと身悶えしてしまう。

 

「アリスさん、動かないでください」

 

「なら、もう少しシャワーを弱めなさい」

 

「もうちょっと我慢してくださいね」

 

 私の訴えも虚しく、早苗は鼻歌なんて歌いながら私にシャワーを浴びせ続ける。

 ……こそばゆいけど、確かにお湯は気持ち良い。

 だから私も黙って、早苗の行為を受け続ける。

 次はやり返してやろうと決意しながら。

 

「アリスさーん、気持ちいいですかー」

 

「はいはい、気持ちいいわよ」

 

「ぶぅ、なんか投げやりです」

 

 そうね、と心の中で呟く。

 声に出さなかったのは、別に他意があったわけではない。

 ただ面倒くさかっただけ。

 早苗はそんな私が面白くないのか、シャワーの向きを徐ろに変えて……。

 

「ひぅっ」

 

 私の胸に、水圧を強めて掛けてきたのだ。

 普通にセクハラである。

 

「――早苗」

 

 この娘は、懲りるということを知らないのだろうか。

 あれだけ私に恥ずかしめの暴虐を与えたというに。

 少々の苛立ちと共に、早苗の足を踵で軽く蹴る。

 ひゃっ、と驚いた声が、後ろから聞こえてきた。

 

「だって、アリスさんが……」

 

 そして次に聞こえてきたのは、何処か言い訳じみた言葉。

 拗ねたような、けれども甘えているような声だった。

 そのせいか、一瞬抱いた苛立ちも溶けていってしまって。

 

「はぁ、私も悪かったわよ」

 

 ちょっとだけ、素直になれた。

 あまり非を認めるようなことはしたくないけれど、それでも私にも悪いところはあったから。

 もうちょっと、早苗の話に付き合ってあげようと思ったのだ。

 

「私も、ごめんなさい」

 

「良いわよ、別に」

 

 これでお互い様なんだから、と静かに告げる。

 早苗も、はいと小さく答えを返してくれて。

 そうして私達はまた、さっきの続きを始めるのだ。

 

「私とアリスさん、今日はこんなのばっかりですね」

 

「会えて嬉しいから、思わずはしゃいじゃってるのね」

 

「アリスさんも、私に会えてテンションとか上がったりするんですか?」

 

「じゃなきゃ来ないわよ」

 

「……えへ、何だか照れちゃいますね」

 

 そう言いながら早苗は、丁寧に私の髪にシャンプーをし始める。

 傷つけないように、優しく撫でつけるように。

 

「くすぐったいわね、他人にされるのって」

 

「嫌ですか?」

 

「ん、気持ちいいわ」

 

 そう言うと、早苗の手付きが更に優しくなった。

 まるで壊れ物を扱うかのようで、早苗の気遣いが嬉しく感じる。

 

「あとで私も、早苗にやってあげるわ」

 

「はい、ぜひぜひ!

 こちらからお願いしちゃいたいくらいです!」

 

 ノリ良くだけれど、優しく丁寧。

 おかげで気分は、ほんのりお姫様になった気分である。

 

「ふふ、アリスさんの髪はサラサラですね」

 

「それなりに大事に扱っているもの。

 そうそう無体な手入れはしてないわ」

 

 場合によっては、これが人形を作るための商売道具になる時があるのだから。

 だから手入れは怠らないし、何よりこれは女として大切な儀式とも思っている。

 今は早苗が丁寧に洗ってくれてるから、早苗に全部任せてしまっているけれど。

 

「ん、落ち着くわね」

 

「アリスさんにそう言って貰えると、私もすごく嬉しいです!」

 

 その言葉と共に、早苗は更に丁寧に私の髪をシャンプーで解いていく。

 まるで撫でられているかの様な心地で、何時もとは立場が逆転したかの様。

 早苗が私の頭を優しく撫でて、私がそんな早苗に寄り添っている。

 あべこべね、と少し笑ってしまうのは致し方ないだろう。

 

「どうしたんですか、アリスさん?」

 

「ううん、今ね、早苗に甘えてるって、そう感じただけよ」

 

 フフ、と声を漏らしてしまい、それでも構わずに早苗の方に頭を傾ける。

 良いな、これ、と思ってしまった。

 暖かい、早苗の柔らかなお腹の感触がして、何げなしにグリグリと頭を押し付けてしまう。

 まるで犬だ、と思うがやめられない。

 心地よくて、つい泡だらけの頭を早苗に擦りつけてしまった。

 流石に暴れすぎたと感じで、ごめんなさいという一言と共に頭を離せば……。

 

「もぅ、アリスさんったら!

 そんな嬉しい事されたら……こうです!」

 

 ギュッと、背中に何かが押し当てられた。

 柔らかくて、弾力があって、ちょっと先っぽが硬いもの。

 ……言わずもがなな、アレである。

 

「さ、早苗!?」

 

「ふふっふー、あんな事しちゃうアリスさんには、お返ししなきゃダメなんです!!」

 

「ひゃっ!?」

 

 もにゅもにゅ、ぐにゅぐにゅ、そんな擬音が背中から聞こえる。

 変わる形は変幻自在、感じる暖かさと柔らかさは一定以上。

 そのまま背中が溺れてしまうなんて、妙な感想すら浮かんでくる。

 あと、すごく密着してるから、早苗の匂いをすごく近くで感じてしまうのだ。

 意味も分からずに動悸が早まったり、キュンと胸がしてしまう。

 ――色々な意味で、このままだと不味い気がして私は抵抗を開始する。

 以下、その一部始終である。

 

 

 

「ちょっと、離れなさい!」

 

「もうちょっと、もうちょっとだけアリスさんを堪能させてください!」

 

「ふ、巫山戯るのも大概にして!

 それに当たってるわ、早苗!!」

 

「当たってる……?

 もしかして、私の胸の事ですか?

 アリスさん、もしかして恥ずかしいので?」

 

「違うわよ、むしろ邪魔よ」

 

「ひ、酷いです!」

 

「大きすぎるのも考えものって、そう気が付きなさい」

 

「でも、私の胸は大きくなる事があっても小さくなる事はないのです。

 だから、私の胸をアリスさんに好きになってもらうしか……」

 

「ちょっと、何で強く押し付けてきてるの!」

 

「アリスさんに私の胸を好きになってもらう為です。

 むしろこの胸はアリスさんの胸だと思ってください!」

 

「思えるわけ無いでしょう!

 こんな大きいもの、私のと思えるわけがないわ!」

 

「私とアリスさんは一心同体です!」

 

「訳の分からない事を口走らないで!」

 

「ひゃんっ!?

 あ、アリスさんのエッチ。

 直に揉んでくるなんて……」

 

「邪魔だから退かそうとしたのよ」

 

「アリスさん……揉んでくれるなら、優しくお願いします」

 

「何で嬉しそうなのよ!」

 

「アリスさんなら、良いかなぁって」

 

「良くないわ、即座に離れなさい」

 

「気持ちよくないですか?」

 

「……別に、そんな事ないわ」

 

「一瞬返事に詰まりました!

 アリスさんは嘘つきです!!」

 

「嘘はついてないわ。

 ただ、柔らかいと思っただけだもの」

 

「それが気持ちいいって事だと思います!」

 

「……早苗の変態」

 

「アリスさんに変態呼ばわりされるなら、不肖東風谷早苗、変態になります!」

 

「違うわ、そうじゃない!

 そういう反応は求めてないわ!」

 

「アリスさん、もっと揉んでくれて良いんですよ?」

 

「それも違う!

 お調子者、そろそろ正気に戻りなさい!!」

 

「今が正気じゃないなら、私は一生正気から戻れなくていいです!」

 

「怒るわよ?」

 

「あ、アリスさんから胸を触ってくれて……て、痛いです痛いです!!

 揉むなら優しくって、さっき言ったじゃないですか!」

 

「違うわ、早苗。

 あなたが小さくなる事はないって言ったの。

 だから私がしてるのは、早苗の胸を小さくする作業よ」

 

「ひんっ!?

 あ、アリスさんごめんなさい、調子に乗りました、許してください、痛い、痛いです!!!」

 

「気持ち良くはないのね」

 

「私を気持ち良くしたいなら、アリスさんの綺麗な手で撫でて下さい。

 鷲掴みで力を入れないでください!!」

 

「ごめんなさい早苗、私いまになって早苗の胸を揉みたくなったの」

 

「ひゃああ!!!

 ちょっと、アリスさん!!

 強いです!! 優しくってっ、言ったじゃ、ひゃん! ない、ですかぁ!」

 

「……反省、したかしら?」

 

「ひぅ……はい、しました、ごめんなさい。

 あ、でも……」

 

「でも?」

 

「アリスさんに揉まれたからか、胸が熱くて痛いけど、何かジンジンしてて、それが気持ちいい感じがって、アリスさん?

 どうしてこめかみを抑えてるんですか?」

 

「返す言葉が見つからないからよ」

 

「あ、もしかしてこれが愛の力ですか!?」」

 

「あなたは三歩歩いたら忘れるタチなのかしら……」

 

「アリスさんの言葉なら、三十年経っても覚えてる自信があります!」

 

「それはそれで、タチが悪いわね……」

 

 

 

 などと、いう事になってしまっていた。

 早苗も、そして私も、ちょっとおふざけが過ぎたのだろう。

 その結果、反省したであろう早苗は、とっても慎重に、そして丁寧に私の体を洗ってくれたのだ。

 壊れ物を扱う様に、けれども的確にタオルで擦ってくれて、それがまた心地よくて……。

 だからさっきの事は許して、私も早苗をキチンと洗ってあげようと決意する。

 なので後少しの間だけ、目を閉じて他の人に体を洗われる快感に身を委ねた。

 ……こういうのだったら、素直に気持ちが良いって言えるのに、なんて思ってしまったが、わざわざ口に出すのは憚られたから、胸に秘めておいたけれど。

 

 

「そういう訳で、今度は私の番ね」

 

「はい、アリスさん!

 優しくお願いします、本当に!」

 

「分かってるわよ、早苗がやってくれた分だけお礼はするつもりだもの」

 

「……お礼参りですか?」

 

「違うわよ」

 

 若干警戒気味の早苗を安心させる様に撫でながら、手にシャンプーを纏わりつかせていく。

 私もやり返すという名目で、遣り過ぎていたから。

 気遣うように髪にシャンプーを馴染ませながら、私は早苗へと話しかける。

 何気ない話をする様に、けれども明け透けに。

 

「ねぇ、胸、もしかしてまだ痛い?」

 

 世間話をする体で、そっと話しかける。

 すると帰ってきた反応は、当然の如く勢いの強いもの。

 ぶぅ、と拗ねたこれが返ってくるのは、ある意味で当然の帰結か。

 

「優しくって言ったのに、アリスさん酷いです」

 

「ごめんなさいね、痛いって分かってたのに、ちょっと意地悪が過ぎたわ」

 

「本当ですよぉ、もぅ」

 

 でも、痛いのと混じって気持ちいいのも残ってます、などという不穏な呟きを聞き流して、私は無言で早苗の髪を洗い続ける。

 そうしている間に、会話は何時の間にか途切れていた。

 けれど、この場に気まずさは存在しない。

 会話なんてなくても、早苗となら気まずくないし、そもそもそうでなければお風呂なんて入ろうとは思わない。

 なのでここにあるのは、気安く安心できる空気だけ。

 聞こえてくる早苗の鼻歌が、楽しげなので私も少し気分が浮いてくる。

 

「早苗、シャワーで流すから、目を瞑りなさい」

 

「はい、アリスさんオッケーです、お願いします!」

 

 早苗の言葉に従って、私はそっとシャワーで早苗の頭の泡を流していく。

 擽ったそうに身震いする早苗の体が、ちょっと可愛く感じられた。

 だから何だという話ではあるが、シャワーのお湯でアテられた背中の赤さが、絶妙に色っぽかったのがいけないのだろう。

 

「はい、終わりよ」

 

「ありがとうございます!

 アリスさんも丁寧に洗ってくれて、何だかすごく良い気分でした」

 

「そう感じてくれただけでも、私としては嬉しいものね。

 けど、まだ早苗の体が残ってるわ。

 そこも洗うから、まだゆっくりしてなさい」

 

「はい……えへへ、アリスさんに体を洗ってもらえるなんて、何だか嬉しいですね」

 

「変な事で喜ぶのね」

 

「ダメですか?」

 

「いいえ、光栄かもね」

 

 そんな会話を交わしながら、私は手を石鹸で泡立てていく。

 一定量、泡に満ちたらそのまま、私は早苗の背中に私の手を這わせた。

 ビクッと、早苗の体が震えたのは、いきなりでビックリしたからか。

 

「ごめんなさい、一声掛けるべきだったわね」

 

「い、いえ、そんな事よりもアリスさん」

 

「何?」

 

「……もしかして、いま私の背中を洗っているのはアリスさんの手ですか?」

 

「その通りよ」

 

 何をと思い尋ね返せば、早苗は動揺気味にこんな事を言う。

 

「だって、私はタオルで洗いましたよ!」

 

「仕方ないわよ、私はタオルだと洗い慣れてないから。

 手の方が、力加減がハッキリと分かるの」

 

 だから、不安がらなくても良いわ、と早苗に告げて。

 そのままにゅるにゅると泡で、早苗の背中を擦っていく。

 泡で滑らない様に、しっかりとした手付きで早苗の背中を洗い、そして泡立てていく。

 幸いな事に早苗の肌は滑らかで、とてもしっかり泡が立ってくれるので洗うのに苦労しない。

 

「ひゃうぅ!? あぅ、アリスさん、手は直接的すぎます!」

 

「情けない声上げないで。

 早苗はしっかりと肌の手入れしてて、洗いやすいから何ら問題ないわ」

 

「そ、そういう事じゃなくて、触られたら何かジンジンしちゃうんです!」

 

「そう? でも我慢なさい、しっかり洗ってあげるから」

 

「……アリスさんに触られてるから、ジンジンしちゃうんですよぉ」

 

「何か言った?」

 

「アリスさんのエッチって、言ってました」

 

「馬鹿なこと言わない。

 手がむず痒いかもしれないけれど耐えて」

 

 早苗の抗議を黙殺し、ゴシゴシと彼女の体を洗っていく。

 背中、肩、腕、手。

 一つ一つ、指の間まで綺麗にし、泡を染み込ませるように塗ったくっていく。

 そして後ろを全て洗い終えると、早苗に次の行動を告げる。

 

「こっちを向きなさい。

 今度は前を洗うわ」

 

「……え?」

 

 少し間があって、何故だか呆然とした早苗がゆっくりとこちらに振り向いた。

 なのでそれに乗じて、早苗の体そのものを、両手でこちらに向けさせる。

 相変わらず忌々しい程に大きなモノがそこにあるが、それも早苗の一部であるからして、当然扱いというものは決まっている。

 少し怯えた表情の早苗に、私は優しくこう告げた。

 

「大丈夫、優しくするわ」

 

 耳元で、囁く。

 その瞬間、ビクンッと早苗の体が震える。

 湯冷めしてきてるのかもしれない。

 そう思えば、早く洗って一緒のお風呂に入るのが吉であろう。

 なので、早速私は早苗の、まずは目の前にある西瓜モドキを退治しようとしたのだが。

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

 けれど、洗おうとした直前で、早苗に待ったを掛けられた。

 何? と顔を見上げれば、そこには顔を真っ赤に上気させて、口をパクパクさせている早苗の姿が。

 

「何か不安な事でも?」

 

「えっと、そうじゃないです。

 そうじゃないですけど……その、えっと」

 

 言い出そうとしているけれど、中々に口が開けない様子で、えっとを繰り返す早苗。

 そんな彼女に、落ち着きなさいと声を掛けて、早苗が軽く深呼吸をし始める奇行を眺めながら、ジッとその行動が終わるのを待って。

 そんな行動を何回か繰り返して、ようやく落ち着いた早苗は、それでも若干震える口調で、こう告げたのだ。

 

「アリスさんに、その、前まで洗われるなんて、すごく……恥ずかしいんです」

 

 手を膝にギュッと握ったまま置いて、早苗はそんな可愛らしい事を訴えてきた。

 早苗の顔は、全ての血液がそこに殺到しているのではという程に赤く、冗談抜きで羞恥に悶えている様子で。

 直接、私に触れられるというのが、何よりも恥ずかしくて仕方の無いことなのだろうと察せざるを得なかった。

 

「さっきはあんなに積極的だったのにね」

 

「それはアリスさんにしてあげてたからです!

 私がされるなんて、そんなの……」

 

 エッチです、と小さく呟いて。

 胸を手で隠して、うぅ、と私をジッと見つめてくる。

 さながら小動物が追い詰められた情景を思い描かせられるので、それほどに思いつめてしまっているという事なのだろう。

 なので、私はどうするかを考えて……。

 

「ここまで来たら、最後まで洗わせなさいな」

 

 ジッと見つめ返す形で、私は早苗の事を見つめ返していた。

 信じて、と目で訴えたのだ。

 でも、と漏らす早苗に、大丈夫だから、と答えて――そして。

 

「……アリスさんがそう言ってくれるなら、分かりました、お願いします」

 

 観念した様に、早苗が私に降伏を申し出てきたのであった。

 早苗が私の体を全部洗ってくれたのだから、今度はしっかりと私が早苗の体を洗いたいという気持ちが、キチンと通じた様で安心しながら、手の泡をクチュクチュと泡立てて。

 ん、と小さく頷くと、私はそのまま真っ先に早苗の目立つ、一番目に付くものを先に片付けることにする。

 もうここを洗われてしまえば、恥ずかしがる所なんて数える程しかないのだから。

 

「ごめんなさい、早苗。

 じゃあ、行くわよ」

 

「ど、どんと来てください……」

 

 尻すぼみする早苗の言葉を合図に、そっと早苗の胸に手を触れさせる。

 触った瞬間、早苗の背中がピンッと伸びたが、極力気にせずにそのまま洗い始める。

 ビクッと早苗が震えているのを感じたが、それは最初の一回だけで、それ以降は驚いた様に震える事はなかった。

 

 ムニュっとした、重い感覚。

 私が洗われていた番の時に、背中で感じた圧力が、今は手の中に感じる。

 弾力と柔らかさが混ざり合った感触、それに何とも言えない気持ちになりながら、無言でひたすらに私は手を動かし続けた。

 

「ひぅ!? あ、りすさん、は、早く……」

 

「早苗のが大きくて、中々洗いきれないのよ。

 もう少し掛かるわ」

 

「そ、そんな……。

 このままじゃ、私――」

 

 意識的に早苗の声を聞かなかった事にして、胸の下の方と合間の手を侵入させる。

 小さく早苗の悲鳴が聞こえるが、全部が全部気のせいなのだろう。

 丁寧に、けれど素早く、早苗の胸全体を洗っていき、手が胸の中心を最後に洗おうとしたところで……。

 

「!?」

 

「っーーーー!!!」

 

 ……手が、何かに引っ掛かった。

 さっきまでは普通だった、私の背中に当てられた時には無かった感覚。

 ――何かが、立っていたのだ。

 

「ち、違うんですアリスさん!

 そんなつもりでアリスさんに洗ってもらってたんじゃっ!!」

 

「……何のことかしら?」

 

 気付かないふりをして、そのままニュルっと洗ってしまう。

 

「――――っ」

 

 立っていた部分に触れてしまった時、早苗が何かを咬み殺すかの様に奥歯を噛んでいた。

 ……が、私は何も気が付いてないので、そのままおへそに手を伸ばす。

 

「ごめんなさい、ちょっとだけおへそをクリクリするわ」

 

「え、ちょっと待ってくだ――」

 

 早苗の静止を聞かずに、そのまま指を早苗のおへそを優しく撫でさせる。

 柔らかくて、吸い付けられる様な魅力があるが、深入りせずに浅くクリクリと撫でるだけに留まった。

 けれど、それでも早苗には刺激が強かったのか、ビクゥッと過剰気味に背筋を震わせて……。

 

「こんっ、なの、始めて……です。

 他の人に、おへそクリクリ、されて弄られちゃうのもっ、胸を……揉まれるのもッ」

 

 独り言の様に、そんな私にとってとんでもない事を口走ったのだ。

 

「人聞きの悪い事を言わないで頂戴。

 私はただ、洗ってるだけよ。

 おへそを弄るとか胸を揉むとか、そういうのではないわ」

 

「うぅ……」

 

 至極冷静に返答すると、早苗はもう言葉を返してこなかった。

 故に私は、急ぎ足気味見早苗の太ももや他の箇所にも手を這わせて。

 言葉なく、時折ビクンと反応する早苗の体だけが、この時の私と早苗のコミュニケーションであった。

 

「こんなの、気持ちよすぎます……」

 

 早苗が何か独り言を呟いていたが、全くもって何も一言も聞こえなかった事を、私の心に明記しておくものとする。

 

 

 

 

 

「はぁ…………、はぁ…………、おわ、り、ました、か?」

 

「そうね、お疲れ様、早苗」

 

「あ、ありがと、ございまし、た」

 

 息切れ気味に、早苗が返事をしてくれる。

 何れ程恥ずかしかったというのかは分からないが、流石に顔を赤くし過ぎである。

 これでは、まるで私がイケナイ事をしてしまったかの様ではないか。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい……」

 

 何とかといった風に答えて、早苗は揺ら揺らとした足取りで、湯船へと向かっていく。

 そこでようやく、自分の体が少し冷えてきているのに気が付いた。

 

「私も入って良いかしら?」

 

「ど、どうぞ」

 

 赤い顔のまま、早苗は少し落ち着いてきたのか、今度ははっきりとした呂律で返答した。

 なので、私も遠慮することなく、そのまま私も湯船入り。

 広さ的に、二人で入っても十分な広さがあるやや大きめな湯船で、私としては大変に助かったと感じている。

 もし狭かったら、それこそすし詰めかどちらか待ち惚けかの二択だから。

 

「フフ、暖かいわね、早苗」

 

「はい、アリスさん」

 

 空いている距離は、体育座りした人一人分。

 手を伸ばせば届く距離で、けれど今の距離感が良いかと私達はそのままで居て。

 

 ……そうして、思い出したかの様にまた訪れた静寂。

 その場に響いているのは、ポツン、ポツンと滴り落ちるシャワーの水滴。

 間を持たせるように鳴り響いているそれに耳を傾けている事およそ一分、早苗が、ぼそりと呟いた。

 

「……恥ずかしかった、です」

 

 それは告白、ちょっと恨みの籠った、ジト目に乗せての言葉。

 

「ごめんなさい、もしかして気持ち悪かった?」

 

「いえ、そんな事は全然。

 でも、アリスさんに触られてるって考えると、急に頭がフットーしちゃって、上手にモノが言えなくなっちゃいました」

 

 それと、今のは言い方が狡いです、と先程と同様の視線のまま、私の事を早苗は凝視する。

 その目が、何か言いたいことはありますか? とあからさまに語っていた。

 けれど、その睨みつけている頬はとても赤くて、そこに早苗の気持ちが諸々に詰まっている気がして。

 

「今は、フットーしてない?」

 

「アリスさんの顔を見たら、顔が熱くなるだけです」

 

「そう、ごめんなさいね」

 

「謝るなら、責任を取ってください!」

 

「そうね、分かったわ」

 

「出来ないなんて言わせま……え?」

 

 言葉を途中で途切れさせた早苗は、目をパチパチしてこちらを見ていた。

 そんな彼女に、私はあのね、と声を掛ける。

 

「だから早苗、ちょっと後ろを向きなさい」

 

「え、どうしてですか?」

 

「どうしても、よ」

 

 意味が分からないと早苗は首を傾げ、けれどもゆっくりと湯船の中を周り、私に背中を向ける。

 何なのだろう、と早苗の気持ちが聞こえてきそうな、ちょっと警戒気味の背中。

 そこに、そっと手を触れる。

 既視感のある、ビクッとした震え方をしたが、大丈夫よと声を掛けると気が抜けた様に背中が丸くなった。

 恥ずかしかったと言っていた早苗、けれど恥ずかしがらせた私の言葉を聞いてくれるのだから、この娘は素直にも程がある。

 彼女の言い分曰く、アリスさんだけとの事だが、今この時だけは感謝する事にしよう。

 だってそうじゃないと、私は行動に移れないのだから。

 湯気で茹だっている頭でそんな事を考えながら、私はそっと早苗の背中を抱きしめた。

 

「っうぇ!? あ、アリスさん! またですか、またなんですか!!」

 

「良いから、静かに、落ち着いて」

 

 大げさに騒ぐ早苗に、手をお腹に回しながら、耳元で囁く。

 うぅ、とうめき声が聞こえてきたが、最終的に何時もこうです、とボヤいた声を境に早苗は沈黙した。

 ありがとう、と軽く返事をすると、訪れたのは静寂。

 相も変わらず聞こえるのは水滴の音と、もう一つ。

 

「ねぇ、聞こえるかしら、早苗」

 

「はい、聞こえてきます、感じていますよ……アリスさん」

 

 内から、高鳴る音が、響いている。

 トクン、トクン、と鳴くように。

 暖かくて柔らかだけれど、激しくも感じるリズム。

 それを直接、早苗の背中に押し当てた。

 静かにしてれば聞こえてきて、こうして直に触れ合うことでまるで繋がったかの様に、早苗に私を響かせている鼓動の音を、子守唄の様に私は聞かせるのだ。

 

「私のしたい事、分かる?」

 

「……はい」

 

 静かにそれだけ会話して、私達は口を閉ざして。

 その代わりに、私の胸の音が一定の周期で、早苗に音を届けている。

 そこから読み取れるモノも、理解出来るものもない。

 ただ、そこにあるのは……、

 

「安心、出来る?」

 

「はい、アリスさん」

 

「落ち着ける?」

 

「はい、とっても」

 

 そう、なら良かったと呟いて、ギュッと早苗を抱きしめる力を強める。

 苦しいとも痛いとも言ってないから、多分大丈夫。

 なので目を閉じて、視覚から触覚の、感じる世界へと意識を馳せた。

 

 ――トクンと聞こえる私の心拍、ドキドキ鳴ってる早苗の鼓動。

 ――今この時、それだけで世界が構成されていて、それがとっても気持ちいい。

 

 安定して聞こえるその音が、とっても心を落ち着かせてくれる。

 お湯だけじゃない、早苗の体温も私を優しい気持ちにしてくれる。

 私と早苗、二つの音が交じり合って、感じあえる一体感が生まれていた。

 

「もう、大丈夫?

 頭、フットーしない?」

 

「はぃ、大丈夫ですぅ、アリスさん」

 

 どこか蕩けた声で、早苗が返事をする。

 その声に、そ、良かったとだけ返事をして、私はフゥと溜息を軽く付いた。

 嫌な気持ちからでなくて、胸に溜まった気持ちが息に乗って少し溢れただけ。

 そんな私に、早苗はちょっと小さな声で、こんな提案をしたのだ。

 

「あの」

 

「何?」

 

「……もうちょっと、このままで良いですか?」

 

 私の返事は、一つしかなかった。

 だって、気持ちいいもの、仕方ないわ。

 

 

 

 

 

 結果、お風呂を上がったのが十分後だった事を、記憶のメモ帳に明記しておく。

 私も早苗も、全身が真っ赤だった事は、ある意味で当然の結果。

 けど、そこには確かに笑顔があったのであった。














(なお、タイトルは、”友人レ○プ!野獣とかしたALC”にしようか迷いましたが、ありえなさすぎたので放棄。そもそも、早苗さんノリノリでしたから、無理矢理じゃないですしね! 二人は幸せな入浴をして終了です)

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