[念動力・風よけ]
[念動力・熱光学迷彩]
陽と薫は雲の下ぎりぎりを、姿を隠しながら高速移動していた。
「にーちゃん、もっとスピード上げようぜ」
薫は陽の周りをぐるぐる回りながら、文句を言っていた。
Lv7の念動力を使用するものが二人いれば、体力と精神力の続く限り、際限なくスピードを上げることができる。
現状ですら、時速200㎞近く出ている。
その気になれば、いとも簡単に音速を超えることができる。
「これ以上速くすると、到着した時の衝撃波で皆本さんが吹っ飛ぶよ」
瞬間移動で移動することも考えたが、薫一人で来るよう要求されている以上、念動力以外のものを感知されるのはまずい。
最悪の場合、人質の命にすらかかわる可能性がある。
「ついた。」
陽は空中で停止し、森の中にある開けた廃校を指さす。
「いいかい薫ここからは別行動だ。」
詳細な作戦を指示する。
といっても、薫の念動力任せのなんのひねりもない作戦である。
現状、この山の中には薫と陽を除き、3人の超能力者が潜んでいる。
うち二人は、皆本と同じ廃校ないにいるが、最後の一人は、近くの採石場から廃校に向かっている。
「皆本さんの方は、超主夫力を発揮しているようだし・・・。」
何やら洗濯をしている皆本さんを発見。
「じゃあこっちは頼んだよ」
薫の方には、何人か援軍も向っているようだし。
「こっちは任せろ」
時速500㎞で採石場に向かう。
数秒後、採石場に足から突っ込む。
着地の衝撃で、クレーターが発生し同時に無数の石つぶてが、相手に降り注ぐ。
ついでに、踏み砕いた大きな岩塊を超能力で持ち上げて投げつける。
[念動力 石礫]
術後のわずかな静寂。
目標の位置に砂煙が立ち込める。
「・・・くっ!」
数m程後方へ瞬間移動する。
その瞬間、先ほどまでいた位置に無数の刀傷が生まれる。
「脱獄したと言う話は聞いてないけど」
姿の見えない相手に問いかける。
「・・・身代わりが投獄されている」
感情の希薄な声とともに、砂埃が晴れ相手の姿が現れる。
以前銀行強盗を行い、陽に逮捕された弥生が立っていた。
「・・・今度は死んでもらう」
弥生は構えていた刀を陽に向かい振り下ろす。
先ほどと同じように、瞬間移動を用いて攻撃を回避する。
彼女の攻撃は、斬撃の瞬間移動能力である。
間合いは関係なく、刀を振り下ろした瞬間斬られる。
しかし、前回とは徹底的に異なる点がある。
一振りで数回分の斬撃が現れる。
「あれからずいぶん修行したみたいだね。」
数回の攻撃を躱しながら、能力を考察する。
前回の戦闘では、人質がいる状況で迅速な行動を求められたためごり押したが、今回はその必要がないため攻撃を躱していく。
[武装召喚 浅打]
手元に特徴の少ない刀を呼び寄せる。
刀を腰に差しながら、弥生の攻撃を躱し続ける。
陽が回避した彼女の攻撃は、陽のやや後方の地面か、後方に位置する崖に対して斬撃を行っていた。
そして。もっとも弥生との距離が近い部分から、複数の刀傷だ広がっている。
間合いが、無いに等しい以上、こちらも遠距離での攻撃を行うか、一気に接近し相手の優位を消す必要がある。
しかし、陽は近づかず、攻撃もせずに弥生の、攻撃を待つ。
弥生は、引き続き刀を振り下ろす。
現れるであろう斬撃に対して、陽は切先を弥生に向ける