第44話 夢幻で
皆さんは転生という言葉もしくは現象をご存じだろうか?
とある書物によると、死後に別の存在として生まれ変わること。肉体・記憶・人格などの同一性が保たれないことから復活と区別される。などとある。
などとありふれた天プレを思い出した。
(いや前に一回やってるな・・・。)
陽は数年前に実際に体験した転生を思い出していた。
(しかし、本当に真っ白な空間だな)
白い空間360度どの角度を見渡しても上下左右丸ごと白い。
明るいはずなのに影すら投影されない。
(この空間も随分と久しぶりだ、記憶どおりならこのあと神様が現れるはずなんだが死んだ記憶はない)
死ななくてもこの空間にこれるのかなどと考えていると異変が起きる。
視界の片隅に黒い点が現れる。
声を出す余裕もなく辺りを見回す。
しかし、黒い点は見当たらず黒い点はそこだけに存在している。
手が届かないほど遠くにあるのか・・・それだとしたらあまりにも巨大なのではないだろうか・・・。
時間が経つごとに少しずつ大きくなる。
先ほどまでは、小指の先ほどの大きさだった点は今や拳ほどの大きさの点になっている。
その瞬間、今までにない違和感を感じ足先を見る。
なかった。
ナカッタ。
無かった。
理解に数秒かかった。
足先が存在しなかった。
痛みは無い。
感覚も無い。
感覚が無くなる感覚を感じた。
消滅現象は進行していく。
しかし、消滅現象が足首にに達したころ、更なる不可思議な現象が襲いかかる。
消失していた足先が復活する。
復活した足先は自身の意思で動かすことが出来る。
繋がっていない筈だが感覚は復活している。
消滅と同じ速度で復活している。
踵が消滅しても、立っていられる事で何か超常的な接続があるらしい。
一安心して、辺りを見渡す。
相変わらず黒い点は成長を続けてる。
その後も成長を続け消滅現象がへその辺りに達する頃には、空間を半分ほど多い尽くしていた。
(消滅現象と同じペースで黒い点が成長しているのか・・・。)
そのまま、ただただ消滅現象を傍観することしか出来なかった。
消滅が首を超え、黒い点が成長し今や元の白い空間が拳台の点となっていた。
消滅が恐らく目の辺りを迎える。
触れてみるがあるべき場所に目がない。
しかし見えている。
どうやら、体内であるべき場所に入ると見えなくなるようだ。
しばらくすると目が復活する。
(危うく目に指を入れるところだった。)
消滅現象が頭頂部に達し再び復活するころ、空間が黒く塗りつぶされ白は消滅した。
黒一色の空間で自身だけでは見ることが出来た。
辺りを見ました瞬間、かつて味わったように落下している感覚を味わいながら意識を失った。