絶対可憐チルドレン-転生者の人生-   作:雅蓮

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第33話 誘惑する者で (3)

エスパー犯罪者収容所 地下特殊監房

 

ヴー! ヴー! ヴー!

 

警報音が、監房内に鳴り響き緊急事態を告げている。

 

しかし、局長は先ほどの兵部の答えについて問いただし、強化アクリルに罅がはいるほど殴りつけている。

 

「何事です!?」

 

皆本が、係員に確認している。

 

「脱走です!! 上で受刑者が2人暴れているらしくて・・・」

 

係員が、慌てながら告げる。

 

それを聞いて、局長がさらに兵部を問いただす。

 

「これも貴様の差し金か!? 兵部少佐!!」

 

罅の入った強化アクリルガラス越しにクスクスと笑いながら兵部が答える。

 

「さあね? 知っていることはいくつかあるけど、教える気はないね。」

 

完全になめている兵部。

 

「なら、教える気にしてやるよ!」

 

[瞬間移動の応用 物質透過]

 

強化アクリルを透過して兵部の服を掴む。

 

「へぇ、数十の層からなるこの強化アクリルをこうも簡単に透過するなんて、さすが(キング)だね。」

 

服ごと引っぱり、腕輪を変化させた鋼糸で兵部を縛り上げる、陽。

 

兵部を拘束する陽の後ろで、局長が係員に確認を取っていた。

 

「特務エスパーに応援の要請は!?」

 

「しました! ザ・チルドレンが間もなく到着するそうです!」

 

「「あの子たちが!?」」

 

チルドレンが出動すると聞いて驚愕する、皆本と局長。

 

「陽クン! いったん少佐は、置いておいてチルドレンの援護だ!」

 

兵部を縛り上げる、陽に局長が指示を出す。

 

「了解です!」

 

指示を聞いたが拘束は解くことなく、鋼糸の発生源の腕輪を外しアクリルの中に埋める。

 

「大人しく待っててください。」

 

そう言い残すと、局長の後を追う陽。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上では、超度5と超度6の念動力能力者が暴れていた・・・。

 

地上で、チルドレンと合流した陽たちは、超度5の方をチルドレン、超度6の方を陽が取り押さえることにした。

 

 

 

 

 

「へへへ! 普通人じゃ俺は止められないぜ!」

 

最近の若者風の見た目の男は、高笑いしながら通路を歩いていた。

 

どこで手に入れたのか、チルドレンと同型のECCM付リミッターを装着していた。

 

「僕は、特務エスパーです。 警告しますECCMを外して大人しく投降しなさい! さもなくば実力であなたを排除します。」

 

お決まりのセリフを読み上げる。

 

しかし、犯人はおびえる様子無く・・・。

 

「へっ! ただの餓鬼かよ! 小僧、怪我する前にさっさと帰りな!」

 

男は脅すように、辺りの瓦礫を吹き飛ばす。

 

しかし、当然のごとく一切怯えることのない陽。

 

「もう一度警告します。 ECCMを外して大人しく投降しなさい。」

 

「けっ! なめてんじゃねーよ!!」

 

激昂した様子で、辺りの瓦礫を浮かべる男。

 

十分持ち上げたところで、陽とその後ろの警備員たちに向かって投げつける。

 

[操弦術 獅糸乱舞]

 

腕輪を目に見えないほど細く、しかし頑丈な数百本の糸に変化させ、瓦礫を細切れにし叩き落とす。

 

何が起こったのか理解できない男は、次々と瓦礫を投げつけるが、そのたびに粉々に切り刻まれる。

 

「てめー! なにもんだ!?」

 

「特務エスパーです。 超度6と言ってもこの程度か・・・。」

 

男が油断した一瞬で、瞬間移動する。

 

「やっぱり、チルドレンと同型のリミッターか。 どこで手に入れたのか?」

 

男は、口をパクパクさせながら大人しく膝をつき投降した。

 

いつの間にか、横にいて、気が付かない間に、リミッターを外されていた、のちに犯人はそう語っていた。

 

 

 

 

 

 

一仕事終えて、チルドレンの援護のため、そちらに瞬間移動する。

 

辺りを見渡たすと、瓦礫が散乱し壁には対ESP用に強固に作られたはずの壁に円形の穴が開いていた。

 

(超度5程度じゃ、あれは無理だな・・・じゃあ誰が?)

 

「わ・・・わかってる! コントロール・・・」

 

薫が、兵部に教えられながら、円形の穴をあけていた。

 

やばい! そう考えた陽は、すぐさま兵部との間に割って入る。

 

「薫! ちょっとごめんね!」

 

陽は、謝ると自らのリミッターを薫の腕に瞬間移動させる。

 

急激に超度が下がったことで、薫は浮いていた状態から重力に沿って落下する。

 

薫を受け止める陽。

 

「なにすんだよ、にーちゃん!」

 

抗議する薫だが・・・。

 

「脱走犯も降参してるし、これ以上やると壁が壊れて大変なことになるからね。」

 

しかし、陽が受け止めると、兵部がやってきた。

 

「なぜ君は、彼女たちにその技を教えない?」

 

拘束されていたはずの兵部が、疑問を陽にぶつける。

 

「それは・・・」

 

陽が答えようとすると・・・。

 

「それは、薫たちがまだ、自分の能力を完全に制御できていないからだよ。」

 

皆本が割り込んで説明する。

 

その手には、拳銃が握られ常に兵部に向けられていた。

 

「いまはまだああいう事を続けると、負荷が多すぎてオーバーヒートを・・・」

 

皆本が話している途中で、お姫様抱っこの形で、陽が抱えていた薫の体の力が抜ける。

 

「葵! みんなを連れて飛べ!!」

 

慌てて指示を出す陽。

 

葵と陽で、周辺の人間ごと、少し離れた位置に瞬間移動すると、薫が念動力を完全開放した。

 

自身の付けていたリミッターと、陽が付けたリミッターを、押しのけ強大な念動力が薫の意思を離れて暴走する。

 

薫自身も気絶していてそれどころではない。

 

周囲に無秩序に放たれる念動力が、大気を切り裂き、大地を割り始める。

 

「ああああ・・・言わんこっちゃない!!」

 

皆本が呟くと・・・。

 

「なるほど・・・これはまずいな。」

 

兵部が瞬間移動で現れる。

 

以前のように、脳の血管の損傷など、治療すれば治る暴走と違い、ただ制御を離れているだけなので止めようがない。

 

陽も飛んでくる瓦礫を粉々に砕いている。

 

意識のない念動力では、薫自身に瓦礫が当たることも考え目につく大きな破片はことごとく粉々にしていた。

 

「・・・こういうのはどうかな?」

 

兵部が、提案してくる。

 

 

 

 

 

 

 

地下特殊監房。

 

先ほどまで兵部が幽閉されていた監房の中で、薫の暴走が収まるのをまっていた。

 

陽は、自分だけでいいといったが、全員ついて来てしまった。

 

内部での念動力の暴走で、強化アクリルに罅が入り、周囲のESPを吸収する液体は大きく波立っていた。

 

兵部が使っていた、家具が飛び交い、とても危険な状態になっていた。

 

しばらくして、薫の暴走が収まると、陽は皆本の指示で医療班と局長を呼びに行った。

 

陽が監房を出て、しばらくすると暴走の余波で浮いていた家具が落下しそのうちの一つが皆本を直撃する。

 

「最後までガードしてよ、貴方ここでも超能力が使えるんでしょ!?」

 

超能力が使えない紫穂が皆本の容体目視で確認ながら兵部に言う。

 

「使えるけどかなり疲れる彼と違ってね。 それにそもそも僕にECMや能力測定が効かないのはこの傷のせいでね。」

 

そういって、額にかかった髪をどかすと、銃で撃たれたような傷が額にあった。

 

「彼は僕に傷を負わせた連中の仲間でもあるんだ。 それくらいの不親切は大目に見てほしいな。」

 

「一体、何が・・・!!」

 

傷を見て困惑す紫穂と葵だが、昔話だから知らなくていいと、兵部は真相を語らなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

数日後 

 

バベルは、兵部が特殊監房から脱走したと知らせを受けた・・・。




すいません、予約日時が1日ずてましたTT

ずれていることに先ほど気が付きました・・・。

毎日投降がこんなところで途絶えるとは・・・。

しかし、身体的にも毎日更新が辛くなってきた今日この頃です。

よってちょっと、当初の予定から外れてしまいますが、完結まで続けるため止む無く更新間隔を変更させていただきます。

以降は、月・水・金に投稿と日曜投降できたらするという。

変則週3投稿に変更させていただきます。

納得のほどよろしくお願いします。

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