絶対可憐チルドレン-転生者の人生-   作:雅蓮

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第32話 誘惑する者で (2)

「伊号のじーさんとは、古い知り合いでね。 奴の手の内はよく知ってる。 あいつはしょせんイルカだからね。 演算能力は高いけどそれだけなのさ。 本気になればあんな予知今すぐにでもくつがえせる。」

 

白髪学生服の少年は、微笑しながらそう告げる。

 

「ど・・・どうやって!?」

 

皆本は、不審に思いながらも、少年に答えを問う。

 

「簡単だよ、その銃で今すぐあの子たちを・・・」

 

少年が、言い切る前に乱入者に遮られる。

 

「皆本さんから、離れろ!!」

 

出入り口の扉の奥から、斬撃だけが二人の間を切り裂く。

 

白髪の少年が一歩後ろに下がると、斬撃を飛ばした陽は皆本の前に瞬間移動する。

 

「皆本さん気を付けて、この人高超度エスパーです。」

 

距離を取った、少年に刀を構えながら、皆本に注意を促す。

 

ジリジリト距離を詰めていると・・・。

 

「まさか、気づかれるとはね。 気配は極力消していたはずなんだけど。」

 

クスクスと笑いながら、陽を見つめる少年。

 

「あたりの情報が、整理され過ぎてるんだよ! 並の接触感応能力者じゃ騙されるかもしれないけど、森林火災の森でもそうだ! いったいバベルに何の用だ!」

 

念動力で強化した脚力で距離を詰め、少年に切りかかる陽。

 

「やめろ! 陽!!」

 

一瞬遅れて、皆本が止めるが・・・。

 

陽の刀が、少年の体をすり抜けると、すーっと姿を消す。

 

「面白いね君達・・・!!」

 

ただ、少年の声だけが射撃場にこだまする・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犯罪エスパー収容施設

 

「その少年、この人物に間違いないんだネ!?」

 

局長が、白髪の少年の写真を見せながら聞く。

 

間違いなく、先日あった少年だった・・・。

 

「ええ! 誰なんですか!? ここ、犯罪エスパーの収容施設じゃないですか! まさかここに・・・!?」

 

皆本が局長に質問する。

 

犯罪者の収容施設でこの話が出るということは、白髪の少年もここにいると考えた方がいい、そうすると彼も犯罪者なのだろうか・・・。

 

「そのはずだ・・・!! 理論はナ!! ここは地下500m、彼のためだけに造られた特殊監房でネ」

 

目的の、地下施設に到着する。

 

「また何か!? 監視は24時間続けてますし、計器とモニターにはなんら異常はありません!! 彼が外に出たはずはないんです。」

 

監視していたバベルの職員が、局長に告げる。

 

それと同時に、巨大な扉が開き始める。

 

中には、新型ECMが数台、ほかにもESPを阻害する素材などがふんだんに使われていた・・・。

 

「な、なんですか、この厳重な警戒は!?」

 

皆本が、あまりの厳重な警備に驚愕する。

 

「奴の名は、兵部京介。 エスパー犯罪史上最悪の人物だヨ・・・!!」

 

局長は、牢獄に歩を進めながら説明する。

 

念波を吸収する特殊な液体を満たしたプールの中心に兵部の牢獄はあった。

 

念波を通し難い特殊な強化アクリルで覆われ、内部はどこでも見渡すことができる。

 

牢獄の前まで、歩み進んだ局長と皆本に投獄されている兵部が話しかける。

 

「桐壺クン。 20年ぶりかな・・・? 変わらず若々しいね・・・!!」

 

「今年80になるあんたほどじゃないヨ、少佐。」

 

局長が言う。

 

「は・・・80!?」

 

皆本が、驚きの声を上げる。

 

どう見ても、高校生程度の年齢で多く見積もっても大学生程度だろう・・・。

 

その少年の、実年齢が80才だったのだ・・・。

 

「彼は老化遺伝子をコントロールして廊下を免れているのだ。 超能力でナ!!」

 

横になっていた、ソファーから起きると・・・。

 

「いやだなあ。ここで超能力が使えるはずがないじゃないか。 ただの特異体質だよ。 君と違って僕は寄る年に勝てそうもないね。」

 

クスクスと笑いながら答える、兵部。

 

局長は、彼が今までに何度も、記録を残さずにここを出ていること、新型ECMも役に立っていないなど説明する。

 

 

「念動能力、精神感応、瞬間移動・・・彼は様々な能力を兼ね備えた陽クンと同タイプの複合能力者でネ、だがその超度も種類も我々には正確には不明、ここ10年はおとなしかったあんたが・・・あの子たちに何の用だ・・・!?」

 

局長が、兵部に問う。

 

「興味があるのさ。 可愛い子たちだからね。 将来僕の花嫁にしたい・・・っていたらどうする。」

 

「怒ります!」

 

局長の背後から、陽が答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ? にーちゃんは?」

 

最近同居を始めた陽が、不意に消えたことに気づき、葵と紫穂に聞く薫。

 

「さあ? コンビニでも行ってるんちゃう?」

 

ゲームをしながら葵が答える。

 

「そうかもな! てか皆本と局長は出張だって?」

 

あまり気にせず、薫が聞く。

 

「晩御飯、出前とってくれって。」

 

葵が伝言を伝える。

 

「私、ピザがいい!!」

 

 

 

 

 

続く。


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