「伊号のじーさんとは、古い知り合いでね。 奴の手の内はよく知ってる。 あいつはしょせんイルカだからね。 演算能力は高いけどそれだけなのさ。 本気になればあんな予知今すぐにでもくつがえせる。」
白髪学生服の少年は、微笑しながらそう告げる。
「ど・・・どうやって!?」
皆本は、不審に思いながらも、少年に答えを問う。
「簡単だよ、その銃で今すぐあの子たちを・・・」
少年が、言い切る前に乱入者に遮られる。
「皆本さんから、離れろ!!」
出入り口の扉の奥から、斬撃だけが二人の間を切り裂く。
白髪の少年が一歩後ろに下がると、斬撃を飛ばした陽は皆本の前に瞬間移動する。
「皆本さん気を付けて、この人高超度エスパーです。」
距離を取った、少年に刀を構えながら、皆本に注意を促す。
ジリジリト距離を詰めていると・・・。
「まさか、気づかれるとはね。 気配は極力消していたはずなんだけど。」
クスクスと笑いながら、陽を見つめる少年。
「あたりの情報が、整理され過ぎてるんだよ! 並の接触感応能力者じゃ騙されるかもしれないけど、森林火災の森でもそうだ! いったいバベルに何の用だ!」
念動力で強化した脚力で距離を詰め、少年に切りかかる陽。
「やめろ! 陽!!」
一瞬遅れて、皆本が止めるが・・・。
陽の刀が、少年の体をすり抜けると、すーっと姿を消す。
「面白いね君達・・・!!」
ただ、少年の声だけが射撃場にこだまする・・・。
犯罪エスパー収容施設
「その少年、この人物に間違いないんだネ!?」
局長が、白髪の少年の写真を見せながら聞く。
間違いなく、先日あった少年だった・・・。
「ええ! 誰なんですか!? ここ、犯罪エスパーの収容施設じゃないですか! まさかここに・・・!?」
皆本が局長に質問する。
犯罪者の収容施設でこの話が出るということは、白髪の少年もここにいると考えた方がいい、そうすると彼も犯罪者なのだろうか・・・。
「そのはずだ・・・!! 理論はナ!! ここは地下500m、彼のためだけに造られた特殊監房でネ」
目的の、地下施設に到着する。
「また何か!? 監視は24時間続けてますし、計器とモニターにはなんら異常はありません!! 彼が外に出たはずはないんです。」
監視していたバベルの職員が、局長に告げる。
それと同時に、巨大な扉が開き始める。
中には、新型ECMが数台、ほかにもESPを阻害する素材などがふんだんに使われていた・・・。
「な、なんですか、この厳重な警戒は!?」
皆本が、あまりの厳重な警備に驚愕する。
「奴の名は、兵部京介。 エスパー犯罪史上最悪の人物だヨ・・・!!」
局長は、牢獄に歩を進めながら説明する。
念波を吸収する特殊な液体を満たしたプールの中心に兵部の牢獄はあった。
念波を通し難い特殊な強化アクリルで覆われ、内部はどこでも見渡すことができる。
牢獄の前まで、歩み進んだ局長と皆本に投獄されている兵部が話しかける。
「桐壺クン。 20年ぶりかな・・・? 変わらず若々しいね・・・!!」
「今年80になるあんたほどじゃないヨ、少佐。」
局長が言う。
「は・・・80!?」
皆本が、驚きの声を上げる。
どう見ても、高校生程度の年齢で多く見積もっても大学生程度だろう・・・。
その少年の、実年齢が80才だったのだ・・・。
「彼は老化遺伝子をコントロールして廊下を免れているのだ。 超能力でナ!!」
横になっていた、ソファーから起きると・・・。
「いやだなあ。ここで超能力が使えるはずがないじゃないか。 ただの特異体質だよ。 君と違って僕は寄る年に勝てそうもないね。」
クスクスと笑いながら答える、兵部。
局長は、彼が今までに何度も、記録を残さずにここを出ていること、新型ECMも役に立っていないなど説明する。
「念動能力、精神感応、瞬間移動・・・彼は様々な能力を兼ね備えた陽クンと同タイプの複合能力者でネ、だがその超度も種類も我々には正確には不明、ここ10年はおとなしかったあんたが・・・あの子たちに何の用だ・・・!?」
局長が、兵部に問う。
「興味があるのさ。 可愛い子たちだからね。 将来僕の花嫁にしたい・・・っていたらどうする。」
「怒ります!」
局長の背後から、陽が答える。
「アレ? にーちゃんは?」
最近同居を始めた陽が、不意に消えたことに気づき、葵と紫穂に聞く薫。
「さあ? コンビニでも行ってるんちゃう?」
ゲームをしながら葵が答える。
「そうかもな! てか皆本と局長は出張だって?」
あまり気にせず、薫が聞く。
「晩御飯、出前とってくれって。」
葵が伝言を伝える。
「私、ピザがいい!!」
続く。