床一面に広がる赤い血。
脈々と流れでて、犯人達の足元を通り超えて広がっていく。
犯人の一人が、死亡を確認する。
「へっ! 死んでるぜ!」
しかし、止まらない出血・・・。
その血を見て、犯人の一人が呟いた・・・。
「いくらなんでも血が多すぎねーか?」
犯人達が、あたりを見回す、すると・・・。
「ボクシンデナイヨ」
血の気と生気を失った少年の体が声を発する。
ひっ!と悲鳴を上げる犯人達を無視して、陽の遺体は話し続ける。
「ミテヨコンナニチガ」
廊下中に、広がっていた血に波紋が広がり、壁を血を這い上がっていく。
「やべぇぞ! 逃げろ!!」
犯人達が悲鳴を上げながら、逃げようとすると・・・。
「ニゲラレナイヨ」
血が犯人達の、靴を掴む。
転倒した犯人達が、血によって地面に縫い付けられる。
壁を伝って、天井まで達した血液が犯人達に滴り落ち、服に染みを作るとその染みから、目や口が浮かび上がる。
「「「「ゼッタイニニガサナイヨコウカイシテネ」」」」
複数の口からまったく同時に発せられる声に、犯人達は失禁し失神した。
「ちょうど悪夢を見てるころかな?」
苦笑しながら犯人達を、見下ろす陽。
犯人達の足首には、陽お手製の鋼糸が巻きつけられていた。
陽は、犯人達と接触した瞬間服の中に隠した鋼糸を瞬間移動させて足首に巻き付け、
そこから幻覚能力を使用して途中までは都合のいい夢を、途中から悪夢を見せていた。
犯人達は、何所からかが夢か気づくことなく、陽が解除するまで悪夢にうなされ続ける事だろう。
犯人達を鋼糸で捕縛すると、残りの犯人達がいるであろう金庫へ向かう陽。
金庫に近づくと、入り口付近に2人の見たりが立っていた。
壁に触れて接触感応を発動すると、残りの犯人は3人、残りの一人は金庫の中に入っていったようだ。
(先に入口の見張りを始末するか・・・。)
陽は、天井に設置された蛍光灯を破壊すると、すぐさま近づき右側の男の後頭部を強打し気絶させる。
しかし、左側にいた男が反撃を仕掛けてきた。
「死ね!」
隠し持っていた警棒のようなもので陽の頭部を狙い撃つ。
陽は、鋼糸を超能力で空中に固定し受け止める。
「特務エスパーか! なかなか超度が高いようだがこれを作動させたらどうかな?」
ニヤッと笑うと男はポケットに手を入れる。
するとカチッという音と共に超能力の力が落ちる。
「ECMか!」
陽が声を上げながら男との距離を取る。
「ちょっとくらい超度が高くても使えなければただの餓鬼だぜ!」
高笑いしながら殴りかかってくる男。
右と左のコブシが次々と陽に迫るが、紙一重で躱していく。
「ちょこちょこと避けやがって!!」
怒声を上げながら、念動力で陽を壁に叩きつける男。
「大人を甘く見るからだぜ!」
捨て台詞を吐きながら、もう一人の男の様子を見に行こうとする男。
「この程度で、勝った気になるとは・・・大人って言ってもこの程度か」
へこんだ壁の奥から、男をあざ笑う声。
男が振り返ると、居るはずの少年の姿が消えていた。
「ECCMが無いとでも思ってたの?」
上から声がするので、天井を見る男・・・。
「なんだと?」
頭の上に浮かぶ少年を見て、驚愕の表情を浮かべる
「このリミッター、一時的にECCMにもなるすぐれものなんだよね」
腕輪型リミッターを指さしながら陽は、男の顔面に蹴りを入れ意識を刈り取った・・・。
倒れた男二人を鋼糸で縛り上げると、鋼糸はなくなってしまった・・・。
少し軽くなった腕を回し、閉ざされた金庫の扉を眺める。
[発火能力 閻熱]
手を触れた部分から、金属の扉が融解していく・・・。
中では、異変に気が付いて人質の男の首筋に刀の刃を当てる金髪の女性・・・・。
「・・・特務エスパー」
短く感情の籠っていない声で呟く女性。
黒一色のスーツ姿で佇んでいた。
「貴女で最後だ。」
溶けた金属の穴を潜りながら陽は言った・・・。