沖縄県某所 政府所有無人島
「なんでこんな無人島に・・・。」
三日月型の無人島、そして海・・・。
薫たちは泳ぐ気まんまんの様だ。
「ひゃっほーー!!」
「うわっーー!!」
「きれー!!」
海を前にテンションが上がっていくチルドレン。
葵の「えいっ!」の一言で、陽と皆本ごと海上に瞬間移動する。
そのまま重力に従って、海に落ちる。
「なんで僕まで・・・。」
「薫ちゃんアレやってアレ!!」
「おーしっ!!」
紫穂の要求に、薫が答える。
「サイコ・・・水切り低空飛行ー!!」
陽は、引きずられている皆本を救出して浜辺まで移動する。
「ありがとう陽、助かったよ。」
眼鏡を拭きながら、皆本は陽に礼を言う。
そんな二人に、薫たちが近づいてきた。
「ねー、にーちゃんアレやってよ、昔海でやったやつ」
「あーあれね、まあいいよ」
陽は少し水深が深くなっている所に、手を翳し。
[流体操作 水天体]
重力を無効化し、水圧を一定に保った海水の球体を空中に浮かばせる。
リミッターがあっても、昔より大きな球体を作り出す。
「すごいで、陽はん!!」
「すごーい陽さん」
陽は、二人を持ち上げると海水球の中に入れる。
「よし、じゃあ回すぞ」
海水球を自転させる。
しばらく、海水球で遊んだあと、陽たちは沖に出ることにした。
人工的に大波を作って、サーフィンもどきで遊んだり。
水の柱を作って、ひたすら上っては落ちるを繰り替えしたりしていると
薫が1匹の、イルカを発見した・・・。
「皆本ー見て見て!!」
「イルカやで! イルカ!」
葵が瞬間移動で、皆本の近くに移動する。
局長が一歩前に出て、話始める。
「紹介しよう! 太平洋戦争中の実験で生まれたただ1頭のエスパー・ドルフィン! 伊-九号中尉だ!!」
『階級ハ無用ダ、桐壷クン! 戦争ハモウ終ワッタノダ!』
(頭の中に直接響くような声、精神感応か)
『ヨロシク諸君! 伊号トヨンデクレタマエ!』
「これじゃ食えない!!」
「食う気やったんかい!!」
局長が話を再開する。
「彼が予知した悲劇を未然に食い止める、それが今回の任務だ。」
「悲劇? どんな予知なんですか?」
『・・・・・』
「ほら皆本クン! お話していただきたいなら魚をさしあげて!」
魚をもらった伊号は話始めた。
『ソレハ、私自身ノ死ダ! コレガ・・・ソノいめーじダ!』
脳内に、伊号が銃で撃たれるイメージが流れる。
「銃で撃たれる!? そういう予知のようですね? それでこんな無人島に・・・?」
「うむ。 チルドレンが警備すれば銃は不要。 我々がここにいることは極秘。銃撃などありえんはずだ。」
「ヘリのパイロットは大丈夫やろな?」
葵が心配する。
「出発前に視たわ。心配いらない。」
紫穂が答える。
「着陸するまで、目的地は知られなかったからネ! ここを知っているのは柏木クンだけだヨ。」
局長が続ける・・・。
「どーです、中尉!! 今度こそ未来は変えられます!!」
『運命二対シテ万全ナドアリエンヨ、桐壷クン。』
『ソレニ、私ハモウ十分長ク生キタ・・・散ッテ行ッタ戦友タチノ元へ行クノモ悪クナイ。 ESP動物実験制限条約ノタメ、モハヤ任務ニモツケズ・・・野生ノいるかノ群レニモナジメズ、私ニハ居場所モナイノダ。』
伊号の頭にスイカが直撃する。
「あきらめんな!! じじい!! それじゃ何のための超能力か、わかんねーじゃんかよ!! あたしらは戦うからな!!」
「せや! 局長も言うてたで! 超能力には人を幸せにするためにあるて!」
「寿命で死ぬならともかく。 殺されるなんて許すわけにはいかないわ。」
「あきらめないでください伊号さん。 僕たちが新たな希望になります。」
陽たち四人がいう。
「その通りだ!! 皆本、ESPリミッター解除!! ここからはフルパワーだ!!」
「了解!! ザ・チルドレン・・・解禁!!」
「運命なんか変わるに決まってんだろ!? あたしたちがいるんだから!!」
『・・・・』
夕食後・・・。
「片づけもしないで!!」
食器を片づけながら皆本。
「寝かせてやりたまえ、皆本。 このコたちだけが頼りなんだからネ!」
薫たち三人は眠っていた。
陽は、眠る前にあたりを確認すると、空高く上がっていった。
「それに、伊号中尉の予知はこれまでに3千件以上・・・あらゆる努力にかかわらず、そのすべてが実現してしまっているのだ。 今回だけは成功するなど、ムシのいいことは考えん方がいい。 今夜だけでもいい夢を・・・。」
「・・・局長。 僕は信じていますよ。 このコたちが、未来を変える力を!!」
『ダレカガ・・・ソウ言ッテクレルノヲ待ッテイタ。 君ニナラ託セルダロウ・・・。 私ノ死ナド、実ハドウデモイイノダ。 本当ハ・・・モウヒトツ重大ナ予知ガアル。 デキレバソレハ防ギタイ。』
改まった様子で伊号が話しかけてくる。
「!? 何のことですか?」
『見タマエ!!』
上空で監視していた陽は、異様な気配を感じ地面まで瞬間移動した。
『安心シタマエ、彼ニハモウ一ツノ予知ヲ伝エテイルダケダ。 彼ノ記憶ニハぷろてくとヲカケテアルガ君ニナラ外セルダロウ。』
「何のことですか?」
伊号の発言がいまいち呑み込めない陽。
『君ハコノ世界ニオイテトテモ異質ナ存在ノ様ダ、モシクハ君ノ力ヲ借リレバ災厄ヲ防グコトガデキルカモシレンガ、君ガ代ワリノ災厄トナルカモシレナイ。』
次の瞬間、皆本が目覚めると伊号の陽への会話が途切れる。
その後、伊号は何事もなかったかのように夜の海を泳ぎ続けた。