トンネル内の要救助者の中にエスパーの胎児を妊娠している人がいて、その子供の、念波で葵の瞬間移動が、封じられてしまったらしい。
「陽、お前ならいけるか?」
「行ってみます。」
瞬間移動する陽、しかし・・。
「予想外に念波が強いです、瞬間移動自体は可能ですが、お母さんと赤ちゃんにどんな影響が出るか・・・。」
座標や演算に少しでも狂いが発生すれば、終わりだ。
陽からの連絡に皆本は返答する。
「救出に急いでも半日かかる、それまで待てるか?」
「私たちはともかく、赤ちゃんが・・・!! こんな力を出し続けていたら1時間ももたない!!」
「・・・母体は? 一時間もつか?」
紫穂に皆本が問う。
「それは大丈夫だと・・・!! 赤ちゃんを見捨てる気!? このコが死ねがテレポートできるようになるから!!」
皆本の考えに気が付いた紫穂。
「な!?」
「皆本はん!?」
驚愕する葵と薫。
「落ち着け!! そうは言っていない!! 何か手を考えるから、心配しないで待ってろ!! いいな!?」
考え込んでいた薫が、行動を起こす。
大きな力が、トンネルの外に向けられる、何かを持ち上げているようだ・・・。
「おい、まさか・・・!!」
驚いている皆本に、薫が話し始めた。
「さすがに岩が、ちょっと硬くて重いからさ、ミサイルに手伝ってもらう!! 撃ったら念力離すから、エンジンかけて!!」
「いかん!! やめさせろ、皆本!! 失敗したら土砂に潰されるぞ!! あの子たちを万にひとつ失うわけには!!」
「ESPリミッターを使うとヘリが落ちる!! 陽、葵、紫穂、薫を止めろ!! 命令だ!!」
局長と皆本の声がトンネル内に響き渡る。
その瞬間、音声のわずかな振動で、天井の上部が崩れ落ちる。
(まさか!!)
陽は、崩れ落ちた天井を透視する、すると、少し視ただけでは気づけないような力の集中を発見した。
(このままじゃ10分持たないな。)
陽は冷静に判断すると、内側から少しずつ、力を加え力を拡散させる。
(もって30分って所かな・・・? このトンネルが崩れたら、僕と薫じゃ抑えきれないかな)
そのことに気が付いていないた薫たちは、会話を続ける。
「止めるな!! あたしを信じろ!!」
豪語する薫。
「アホ! この赤ちゃんは、ウチの後輩たで! 邪魔なんかせーへん!」
「うん。 全員助かるにはそれしかないもの。 お母さんも同じ気持ちよ」
妊婦さんを囲みながら、葵と紫穂がいう。
「すいません、皆本さん局長、止めたいんですけど、この空洞あと30分持たないと思うんで薫の作戦に乗ります。」
「局長も皆本も、あたしたちをガキ扱いすんな!! こーゆーちっちゃい命を守るのが特務エスパーじゃないのか!?」
「薫! ミサイルの制御と移動に集中して、僕が防御を担当する。」
「了解にーちゃん。 行けぇぇぇぇ!!」
ミサイルが、発射され壁に直撃する。
トンネル内に、爆風が吹き乱れ、衝撃波が空洞内を乱反射する。
念動力 接触感応 応用技 [慣性操作 一方通行]
前世でみたアニメを参考に作った技、自らに、害をなすあらゆる物の、ベクトルを反転させる技。
流石にこんな規模で展開したことは、無かったが成功したようで何より。
荒れ狂う、トンネル内とは裏腹に、陽たちの周りは静寂に満ちていた。
(ふう成功してよかった、この技使ってる間は、ほかの能力使えないんだよね・・・。)
高度な、演算を必要とするため、他の能力に手が出せないのが現状だった。
その後、薫が全員をまとめて安全地帯まで移動させた。
「もう大丈夫!! 怖いものは何もないよ。 あたしたちもっと強くなってみんなのこと守るから・・・だから安心して生まれておいで。」
「ごめん薫・・・。 僕が大丈夫じゃないや・・・。」
能力の使い過ぎで意識が反転する・・・。
(一方通行は無理があったか・・・。)
脳内で反省しながら意識を手放す。
数時間後、病院で目を覚ました後、皆本さんに説教をされたのは言うまでもない。