Fate/kaleid and hero   作:MZMA

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お久しぶり、という程でも無いですねハイ。

これからは1週間にだいたい1話くらいのペースで更新できたら良いなと思っています。

今回も、英雄王が、キャラ崩壊です


日常の中の異変

「ギル、良いか? 学校ではずっと霊体化してろよ?」

 

穂群原学園高等部の校門をくぐりながら士郎は見えずとも隣にいるだろうギルガメッシュにそう釘をさす。

 

『うむ! 問題はない。だが、士郎よ気をつけろよ? 我と話す時にいちいち声に出していると、端から見れば虚空に向かって話しかける変なやつになってしまうぞ?』

 

『…こうか?』

 

『それで良い』

 

士郎は経験上、セイバーという霊体化の出来ない特殊なサーヴァントとしか契約していないのでいまいち念話について理解していなかった。

 

『しかし、こんな物で本当に出来るのか?』

 

現在、士郎の左手首には梵字がびっしりと彫られた金のリングが嵌っている。ギルが誤解したお詫びという事で渡してきた物だ。

本当にあの英雄王と同じ人間なのかと疑いたくなる。性別とあいまって最早詐欺だ。

 

『出来るぞ。その宝具は宿主から魔力を吸収、貯蓄するだけの能力だがときおみの娘とのリンクも切れた今、あのこゆーけっかいを発動するだけの魔力はしろうにはあるまい?』

 

『まあ、そうだけどさ…。そういう事なら有難く受け取っておくよ』

 

士郎とギルガメッシュは1度は死んだ(・・・)。肉体はあの聖杯の中で滅び、今此処に存在するのは士郎の魂と、ギルガメッシュの魂だ。故に受肉した筈の英雄王もサーヴァントとして限界しているのである。

 

『我が直々に宝具を下賜してやったのだ。無くすでないぞ? ただでさえ数が大幅に減ったのだ。なくしたら我、泣くぞ! 泣いちゃうぞ⁉︎』

 

『無くさないさ。また、1から魔術回路を鍛えなおさなきゃいけないのはちょっと気が遠くなるけどな…』

 

だからーーーといってはなんだが、士郎の魔術回路は未だ開いていない。肉体はあくまでもこの世界の衛宮士郎の物なのだ。いくら魂が、記憶が様々な武器の構成を覚えていても魔術回路が未熟な為にそれを行使する事は出来ない。

 

『それは、がんばれとしか言う事が出来ぬな…。だが、はーどが未熟なだけで、そふとは元の世界のしろうとは変わらん。比較的すぐに元の実力を取り戻せるだろう。経験は体に染みついているのだからな』

 

『よくそんな言葉知ってるな?』

 

『当然だ。我は唯一にしてぜったいの王なのだぞ?』

 

えっへん、と胸を張るギルが幻視出来る自分に士郎は苦笑する。

 

『な、なんで笑うのだ⁉︎ 我を笑うなど、ばんしにあたいするぞ! これは、くりーむぱんの刑だな』

 

『なんだよそれ』

 

『くりーむぱんの刑とは、我にくりーむぱんを献上するという物だ! がっこーとやらが終わればしろう、こんびにに行くぞ!』

 

『コンビニので良いのか? 帰りなら街のパン屋も開いてると思うんだけど……あ』

 

士郎は自分の口がうっかり滑った事を理解した。

 

『ぱんや? 何だそれは。くりーむぱんがたくさんあるのか⁉︎』

 

『はぁ、いらん事を言ってしまった…』

 

パン屋のパンは往々にしてコンビニのそれよりも高額だ。士郎は自分の財布からどんどんお金が減る事に涙が出てきた。

 

『ギルには黄金律があるんだから自分で買えるだろ…』

 

『自分で買ったら刑にならんではないか』

 

『なんでさ』

 

士郎は溜息をつくことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。友人である柳洞一成からの昼食の誘いを断り、士郎は1人、学校の屋上へと来ていた。

 

「それで、どうしたってんだよギル。念話じゃあダメなのか?」

 

そう。士郎が屋上に来た理由とは他でもない、あの唯我独尊を地で行くかの英雄王に呼び出されたからに他ならない。

士郎の声に反応するように黄金の魔力粒子が舞い、ギルガメッシュが実体化する。

 

「遅いぞ、しろう。我が呼び出したのだから疾く駆けつけよ」

 

「……………………」

 

「ん? どうしたのだ?」

 

「……なんで、ウチの初等部の制服着てんだよお前⁉︎」

 

そう。ギルガメッシュが着ている服は、今朝の王族が来ているような金銀宝石をあしらった高そうなものでは無く、士郎の来ている高等部の制服と同色の、薄茶色をした初等部の制服だった。ご丁寧に帽子まで被っている。

 

「ん? コレか? この此処では我の姿は目立ちすぎるからな。違和感の無い服にと思ったのだがよくわからなくてな」

 

どうやら、実体化した時にこの町で違和感の無い服を選びたかったらしいのだが、よくわからずとりあえず自分の見た目と同じ様な年齢の少女が着ている服を選んだらしい。

だが、外見年齢としても違和感が無くマッチしすぎている為、士郎もなんとも言えずにポリポリと頬をかく。

 

「なんだ? これではダメだったのか?」

 

ギルガメッシュが士郎の微妙な反応を見て、上目遣いでそう尋ねる。

 

「っ! いや、大丈夫だ問題無い」

 

「とうしたのだ? 顔が赤いぞ?」

 

「いや、なんでもない。その制服、よく似合ってるぞ」

 

いくら幼くとも、神が創ったかのように整った美しい少女にそんな反応をされては士郎が思わずドキリとするのは仕方の無い事なのだろう。断じて士郎はロから始まりンで終わる特殊な嗜好を持った人間では無いのだ。……多分。

 

「そうか、そうか。似合っているか。なら褒めよ!」

 

ギルガメッシュは嬉しそうに顔を綻ばせるとずいっと頭を士郎に突き出す。

撫でろ、という事なのだろう。

 

「はいはい」

 

ポンポンと頭を軽く撫でてやると猫の様に目を細め、ふにゃりと顔が惚ける。気のせいだろうか、髪の毛と同色の猫耳と尻尾が見える気がする。

 

士郎の手が頭から離れると僅かに残念そうにするが、ホレと渡されたクリームパンーー士郎が購買で買ってきた物だーーを渡されると再び笑顔になる所からしてやはり、精神年齢もそれ相応なのだろう。薄々気がついてはいたが。

屋上のフェンスを背もたれにして士郎が座り、おにぎりを食べ始めると、さも当然であるかのようにその脚の中にすっぽりと収まり、クリームパンを食べ始める。

もしも、他の生徒に見つかったら即座に生活指導の教師が飛んでくるだろう。その為、士郎としては学校は勿論の事、自室以外では基本的に霊体化していて欲しいのだが、言ったところで聞きはしないだろう。

 

「それで、服はいいんだけど結局どうしたんだよ?」

 

食事にひと段落つくと、士郎は今日、屋上に呼び出された原因を知るべく、ギルガメッシュに問いかける。

コホンと咳払いをするといつに無く真面目な表情でビシリと眼下にある、とある1点を指差す。

 

「校庭がどうしたって?」

 

ギルガメッシュが指差す先は穂群原学園高等部の中央。陸上部三人娘や他の生徒たちが駆けずり回っている校庭だった。

 

「嫌な気配がする」

 

「嫌な気配? 何もないじゃないか」

 

士郎は校庭の中央を眺めてもなにも感じずに顔を顰める。あるいは、魔術回路が開いていたのなら気づけたのかもしれないが、今の士郎は分類上、魔術の知識だけしか持たない一般人なのだ。

 

「むむ。わからんか……。この町に同じ様なのが此処を含めて6つ程あるのだが…」

 

「そうなのか? まあ、ギルが言うのならそうなんだろうけど今の俺には何も分からないぞ。とりあえずは帰ったら魔術回路を開くつもりだけど」

 

切嗣のヤツ、まだあの屋敷持ってるのかなぁ…などと呟きながら頭の中で予定を組み上げる士郎を一暼するとギルガメッシュもまた、自らの思考に埋没する。

 

(しろうは気づいてはいないが、確かにこれはさーばんとの気配…。それも、知った様なのが幾つかあるな…。だが、しろうが魔術師として行動できる様になるまでは様子見だな…)

 

「よし、しろう! むつかしい事は今は無しだ! 取り敢えず、当面の目的はーーー」

 

「目的は?」

 

士郎は真剣そのものの顔をしているギルガメッシュに、視線を戻す。

 

「ぱん屋のくりーむぱんだな!」

 

「は?」

 

「しろうはまだ、使えぬのだし下手に動くと危ないからな。取り敢えずは今朝の刑の執行だ」

 

「いや、まて! クリームパンはもう渡しただろ⁉︎」

 

「1つで良いなどと誰が言ったのだ?」

 

ニタリと、蛇の様に笑う金髪赤眼の幼女。

ああ、やはりあのギルガメッシュに相違ないのだな、と士郎は財布の中からお金が羽を生やして飛んでいく幻想を幻視する。

 

「は、ははは…………なんでさ…」

 

何かを悟った様なかおをした士郎の口からは乾いた笑い声しか出てこなかった。

 

 





士郎の固有結界や、魔術回路うんぬんが解決しましたね!
流石ロリギル様! 王の財宝とかなんでもありますから(グフフフフ

何処かおかしな点があったら教えてください。

猫耳ロリギルは一回書いてみたかった。

番外編とかで、『俺のペットが猫耳ロリギルなわけが無い』とかやってみたい(≧∇≦)

それでは!

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