「あれから一年、早いわねぇ」
サイラに向けてヨミはそう言った
「人は生きていく程に体感時間は短くなる様に感じますから」
「それもそうよねぇ、サイラ。刹那の残したデーターベースでこの浮遊大陸の役に立つ物はまだあるかしら?」
「特にこれと言った物は既に無いです。それに風力発電に従来より使用する電力が少なくなった製品が一般化すれば10年以内には化石燃料などを使わずに自給自足出来る様になります」
「それは分かってるわよ。問題と言うと
手に持つ資料を見ながら呟く
「現状、浮遊大陸になって残ってる気候は多様過ぎる。雪原に砂漠、また渓谷とか人が住みにくい土地も存在してる。もし幽幻種が結界を通り抜けてそこに隠れ、戦力を貯められて一気に来られたら対処が厳しくなるから、隠れてる所に行って環境に問題ない様な訓練をする事よねぇ」
そして次のページを見たヨミは口にする
「291階も作るのってキツいわよ。それに私は建築のノウハウとかないのに・・・」
「そこは能力のある人に頼るしかないです。それに
とある場所に私は立っていた。結界は3日間部下が耐えてくれる、本来は体を休めるのだが月に一度、部下と交代した後、必ず来ている
そこにあるのは背の低い草や花、そしてたった一つだけある墓石。刹那のだ
私は膝をつき、墓石に書かれた文字を指で撫でる
自分が確実に死ぬことに理解しながら、その行動をしたもう一人の世界を救った人
そして私を助けると言い、私の好意を受け止め、必ず戻ると約束してそれを果たせなかった。だけど
「刹那、私ね。時々思ってしまうの。貴方が突然戻って来て、みんなに怒られて、そして笑って、泣いて、愛し合って過ごせる生活がくるんじゃないかって。」
刹那なら不可能を可能にしてきた
まだ本当に終わった訳じゃない。
「私、かんばるから。託してくれた人達の思いを、願いを、犠牲を、貴方を死を無駄にしないから。」
立ち上がって、ゆっくりと静かに立ち去る。
「全部終わったら、貴方を助けて結婚させてやるんだから」
振り返り、満面の笑みを浮かべた
「タイムマシーンねぇ、本当に何でもありよね。刹那は」
一人だけの部屋に椅子にもたれ掛かり、紙に出力した設計図を見てそう言うヨミ
「でもこれを使わなかったのって、やっぱり危険だと理解していたからでしょうね。」
タイムマシーン、使いようによっては本当に世界を滅ばし得る道具、それと同時に世界を救う事も可能な道具
「でも全てが終わってから、か」
刹那がハロに残した遺言、簡単に言えば、幽幻種に備えろにヴェーダ内に使えるデータあるから使ってくれ。そして死んですまなかった。
その後タイムマシンの設計図を発見し、話し合った結果。全部終わってからの方が楽と言う結果になった
タイムマシンの設計図を置き、別の紙を手にもつ
「ミクヴァウスの眼、アマリリスを理想にしてに作るとエネルギー源は太陽炉のツインドライヴしか無いわね」
「新しく作るとして、高重力でのみ生産可能。なんで最初の作った時にそれぽっい物は無かった筈なんだけど・・・」
刹那がおかしいだけと諦め、作業を始める
一年前、刹那が命と引き換えにあの幽幻種を結界外へ押し出した。それと同時に核の光が帝都を包み込んだ
光は収まり、残っていたのはセラの影と僅かな幽幻種。その後は刹那が言う原作通りの状態、凪さんはセラを殴り、いいんちょさんとシィーさんも凪さんを追いかけて
全てが終わって、戦闘が終わった時。私は何も出来なかったと
そして体を直されても、刹那が死んだと言う事を受けいれ切れなかった。
紗砂やツァリ、ヨミも受け入れたくない。だけど紗砂は結界を自分の体の様に分かる、だから刹那が結界外へ出たことも、戻って来ていない事も。
そんな時に赤ハロが近づき、口をパカッとあけて映像を再生し始めた。それが刹那が残した遺言だった
『これが再生されているって事は、つまり俺が死んだか長期間意識が戻ってない状態だな』
自分の事なのに関係がないように言葉を発する刹那
『まあ多分死んでるか。とまあ、死んでしまいごめんなさい。死因が変じゃなきゃいいんだが』
苦笑いしながら呟いた
『ともかく、ヴェーダの中に結構使える技術とかあるから使ってくれヨミさんなら問題ないだろう。』
『ツァリ、元からそのつもりだろうが紗砂を守ってくれ。』
『サイラ、死んでしまってすまん。だが君は生きて千年後の世界を見てくれ。俺やこの世界の人達の、命と引き換えに守ってきた世界を。そこには、きっと美しい物があるはずだから』
『ヨミさん、拾ってくれてありがとうございましま。多分貴方の場所じゃなかったらこんなに物を作れなかった思います。ダブルオーライザーやクアンタを作るのに手一杯だと思います』
『最後に紗砂、約束を果たせなくてすまん。泣くな、悲しむな、とは言わない。だが最後まで 貫いて行ってくれ。どんな事があっても投げ出さない様にな。』
それが最後のだったのか映像は消えてハロの口が閉じた。
「戻って、戻ってくるって言ったじゃない・・・!!」
紗砂はその場に座込み、弱々しく叫んぶ
「まったく、こんな物を残すなら生き残る方法を少しでも考えればいいもを。」
ツァリは、声では何ともないが顔を見れば涙が溢れだしていた
「・・・サイラは大丈夫なの?」
隣に居るヨミに聞かれた。彼女の声もいつもに比べて元気が無いのが
「ハッキリ言って、大丈夫ではないです。ですけど刹那に生きて美しい物を見てくれ。そう言われたんです、なら生きてみよかなって」
どうにか苦笑いで答える
刹那の言った通りに美しい物を、刹那が残したいと思った世界を見届ける。それで私の命を終えよう。
でも何か、また刹那に会える。そんな気がする
時間列的に最後のは最初じゃないかって?
この順番で思い付いたから書いた、後悔も反省もしていない