モンスターハンター 二刀を持つハンター   作:ひかみんとかカズトとか色んな名前

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サブタイに意味はありません((

オオナズチを見つけてしまった三人。どうするのか…?



第五章・逃走する者、対峙する者

クエストの目的であるイャンクック亜種。

それを軽々と叩き落とし、踏みつけている古龍、オオナズチ。

予想外すぎる相手にカイルは内心舌打ちしていた。

 

「カイルん、アレって…?」

「…古龍、オオナズチ。奴の最大の特徴は今見えたように、姿を消すことが出来る霞龍。…俺もそれぐらいしか情報がない…」

 

伏せながら、小さくボソボソを会話を交わす。だが、カイル自身も古龍自体と戦ったのはそう多くない上、オオナズチと戦うための準備は全くしていない。

 

「……逃げ、だな…二人とも、退くぞ。」

 

カイルはそのまま姿勢を低くし、こそこそとエリア3から7へ退避した。

確かにエリア4へ行けば早くベースキャンプに着くことは出来る。だが、全く経験がない古龍な上に下位ハンターを二人も連れている状態で危うい手は打てなかった。

オオナズチが発している古龍独特の雰囲気に、姉妹二人も流石に恐怖を覚えたのか、普段の好奇心を見せることなくカイルの意見に頷き、彼に続いて撤退した。

 

 

 

 

「…でも、おかしいですね。古龍探索隊…でしたっけ?あの気球の人達がいるなら…」

「…さっきも言ったろう。奴は姿を消せる。それ故、発見報告が極端に少ないんだよ。」

 

エリア7を進み、5へと向かう途中、マリアが疑問に思ったことを呟く。が、カイルがあっさりと答え、マリアは納得した表情になった。

 

そして何事もなくエリア5へたどり着き、そのままエリア1、2と降りていこうとした時だった。

 

カイルは何かを感じ、その場で止まり空を見上げた。姉妹もそれにつられて見上げる。そこには…

偶然なのか、それとも先ほどすでに見つかっていたのか

オオナズチがエリア5に降りてこようとしているところだった。今三人がいるのはエリア5の中心部分。逃げるなら急がなければならない。

 

「マリア!エリカ!急ぐぞ!」

「は、はい!」

「うん!」

 

カイルはそう叫び、降りてくるオオナズチに硬直していた二人を我に返らせ逃げさせる。

今アレとやりあえば間違いなく死ぬ。姉妹二人はとにかくその恐怖を誤魔化すように夢中でエリアを駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!!」

「はひっ、はひっ…!」

 

エリア5から1、2ととにかく走りきり、ベースキャンプへ辿り着いた姉妹。だが、逃げるのに夢中になっていたためそこで気づく。

 

「はひ…あれ!?カイルんは!?」

「えっ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

二人が走っていくのを確認した後、カイルは一人、オオナズチと対峙していた。

オオナズチは彼を見るや、その出っ張った目をギョロギョロと動かせ様子を見ているようだった。

 

「…流石、と言ったところか…」

「ギュルルル………」

 

腐っても古龍、威圧感は並みのものではない。それにこちらは準備が足らなさすぎることに加え、一人な上にオオナズチはまだ様子見ということ。

圧倒的にカイルは不利な状況だった。

 

 

そしてついに、オオナズチは彼を敵と判断したのか応戦体制へと移った。

先ほどまでとは違う、一気に重くなる威圧感にカイルは負けじと太刀ー白猿薙ーを抜き放ち構えた。

オオナズチも一筋縄ではいかないと判断したのか、下手な行動は取らず、カイルを睨んだまま警戒を崩さない。

 

「……」

「…ギョロロ……」

 

エリア5に、ただ風の音だけ静かに流れる。

と、先に動いたのはオオナズチだった。何も特徴のない、四本脚を生かした体制の低い突進。

だが、それほど勢いはないため、カイルは素早く横に回り込み、横っ腹を切り裂いた。

 

ぶにょんとした、独特の皮の感触。確かに斬撃の手応えはあるもののあまりにもその手応えが他のと違いすぎるため、どれだけダメージがあるのか、今の部位は効果的なのか、全くわからなかった。

もう一撃、と振ろうとしたカイルの視界に、オオナズチの顔が見えた。体の向きは変わってないが、こちらを見る顔が。

反射的にカイルは横に飛び回避する。そこに、何かが瞬間的に伸びたのが見えた。だが、オオナズチはそれほど大きな動きはしていない。つまり…

 

「舌、か…」

「ギュルル…」

 

そう、オオナズチは体を動かすことなく顔だけをカイルの方に向け、舌で不意打ちを狙ったのだろう。失敗したオオナズチは奇襲をかけようと自身の能力である、姿を消す力で消えた。

 

「…………」

 

姿を消したオオナズチは見えない。が、独特の空気、音、風や風景の僅かな乱れからカイルはどこに動いているかを感じ取る。

 

「ギョロロ!!」

「甘い!!」

 

斜め後ろから姿を現し、奇襲のパンチを振るうオオナズチ。だが既に“見えて”いたカイルはそのパンチを受け流し、頭へ体重を乗せた縦切りを叩き込んだ。

 

「ギュルッ…!」

「チッ…!」

 

半ばカウンター気味の攻撃で、かなり手応えはあった。だがそれでもオオナズチは軽く怯んだだけで大打撃という訳ではないようだった。

その様子に舌打ちし、カイルは距離を取る。

 

「…どう来る…」

 

警戒するカイルに、オオナズチは体を起こし彼に向けて口から何かを吐き出した。

カイルはオオナズチが体を起こす時点ですでに動き、その吐き出された何かを避けた。それは着弾すると毒々しい空気と雰囲気をその場に立ち上らせた。

 

「毒も持っているのか…」

 

しかもその毒はその場に残っており、まるで罠のように設置されたそれはかなり嫌らしいものであった。

カイルはその毒から距離を置き、オオナズチを見る…が。

 

「…何…ッ!」

 

オオナズチは、カイルが設置された毒を見たほんの僅かな隙に姿を消していた。

しかも完全に不意を突かれたため、先ほどのように集中して探していれば逆に先手を打たれてしまうだろう。

 

「………!!」

「ギョロロ!」

 

警戒するカイル。だが、それを嘲笑うかのようにオオナズチは姿を現し、毒ブレスを吐く。

カイルはその毒を回避しオオナズチを確認するが、再び姿を消され警戒するハメに。

 

「…姑息な手を…?」

 

その時、カイルは一個目の毒の範囲が広がっていることに気づく。

まるで、風に扇がれているような---

 

「(…!!しまった!)」

 

オオナズチはカイルの死角に姿を現し、自身の翼で風を送り毒でカイルを囲むようにしていた。

それに気づいたカイルは息を止め、毒の包囲網を突破する。が…

そうされてオオナズチが何もしない訳もなく、追撃するように毒を動かした。

 

「(…クッ…少し吸い込ん…ッ!?)」

 

逃げきれなかったカイルは僅かに毒を吸い込んでしまう。が、それだけで体からみるみる力が抜けていく感覚に襲われる。

 

「…グッ…」

 

オオナズチは遂に捕らえたとカイルめがけて突進し始めた。カイルは無理矢理体を動かしエリア1へと逃げようとするが速度に差がありすぎた。

ギリギリでカイルは回避するも引っかけられてしまい、力なくゴロゴロと転がり、壁にぶつかる。

 

「カハッ…くっ、そが…!」

 

今回の目的はイャンクック亜種、そのため解毒薬なんてものはない。衰弱した今の状態で逃げることなど不可能に近かった。

オオナズチは再び押し潰さんと走る体制をとる。その眼前に、拳大の物が投げられた。

 

カイルはそれが何かいち早く理解し、目を背けた。その瞬間にそれは爆ぜ、辺りに光を撒き散らす。

 

 

「ギュロロロ!?」

 

投げ込まれた物は閃光玉だった。その効果で目を灼かれたオオナズチは、見当違いの方へ突進していく。

 

「カイルん!」

「エリカ…!?お前…何故…」

 

窮地に陥ったカイルを助けたのは、先ほど逃がしたエリカだった。

力なく無理矢理体を起こそうとするカイルに、一足早く助けにきたエリカは念のためオオナズチへペイントボールをぶつけ、それから彼に肩を貸しすぐにエリア1を通りベースキャンプへと急いだ。

その後すぐにマリアも合流し、二人でカイルを支えてベースキャンプへと向かった。

 

「ギュロロロ…!」

 

獲物を見失ったオオナズチは、エリア5で高々と、しかし悔しそうに吼えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…大丈夫?カイルん…」

「…かなり体力を持ってかれている感じはするな…」

 

ベースキャンプにて。

備え付けられたベッドに力なく横たわるカイル。オオナズチの毒はかなり強い部類なようで、僅かだけでもこれなのに直撃してしまえば下手すれば死ぬだろう。

カイルが僅かで済んだのはある意味経験のお陰とも思われる。

 

「…マリアは…?」

「エリア2に解毒草とアオキノコ探しに行ったよ。さっきペイントボールつけておいたから、多分大丈夫だと思う。」

「…不用心だな、奴は古龍だぞ。」

 

そう、オオナズチはどのエリアに向かうかわかっていない。故に、ペイントボールがついていようと姿が消えるという能力もあるため、迂闊に動くのは危険だった。

 

「…うん。でも…こんなに弱ってたらマリア姉は放っておけないよ…私も…」

「……やれやれ…今回はその好意に甘えるとするか…。」

 

エリカの純粋な心配する眼差しを向けられ、カイルは呆れつつも自分の体のことを考え、頼ることにした。

 

「…戻りました。一応、ありましたが…数は少なかったので、期待はしないでください。」

 

解毒草とアオキノコを数個ずつ持ったマリアがエリア2から戻る。が、その眼差しはエリカと同じ心配そうな視線を持っていた。

 

「エリカ、調合書いくつかあったわね?取ってきて頂戴。」

「うん。」

 

マリアはすぐに解毒薬を作るために調合の準備に取りかかる。エリカもすぐさま指示通りに動き、マリアの手伝いをした。

体が弱り、頼らざるを得ないカイルは、何か複雑な心境でベッドの上で休んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「……これで…良いかしら…!」

「や、やっと一個…!」

 

数個の失敗の後、漸く解毒薬が一つ完成しマリアはすぐにカイルの元へ行く。

 

「カイルさん、これを…」

「…悪い。」

 

マリアに助け起こしつつ、渡された解毒薬を一気に飲み干す。

薬独特の味に顔を顰めるが、体を蝕む毒が消えていく感覚はわかった。

 

「……今回ばかりは、俺の不注意だな…」

「敵が敵でしたし、仕方ありません。」

「そーそ。私たちじゃまともに戦えなかったもん。」

 

カイルが彼女達を逃がすために残った判断は、一歩間違えれば死ぬ所だった。ある意味、効き目があるかないかを全く恐れる事なく閃光玉を投げ入れたエリカに感謝すべきだと、カイルは内心思っていた。

 

「…とりあえず、今日はこのまま休もう。次にここから離脱するぞ。」

「わかりました。」

「了解っ。」

 

毒により体が弱ってしまったカイルは勿論、姉妹二人も想定外のモンスターとの遭遇に心身共に疲れてしまっていたのだろう。

三人揃ってぐっすりと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、体調が万全になった三人はすぐさまドンドルマに戻る支度をし始めた。

密林の様子は相変わらず異様な雰囲気を持ち、イャンクック亜種は狩れたのかの確認はしていない。だが、オオナズチが居座ってる状態ではとてもじゃないがクエストを達成することはかなり難しい。故に一度戻ることにしたのだ。

 

「急ぐぞ、このことに関しては早くギルドに言わないとな。」

「準備おっけーだよ!」

「私も、大丈夫です。」

 

支度が終わり、三人はすぐに竜車へ乗り込みドンドルマを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜車に揺られること数日。

 

密林から出るときもオオナズチを見ることなく安全にドンドルマについた三人。

ささっと荷物を竜車から下ろし、三人はすぐにカウンターへ向かった。

 

 

 

「あ、カイル君!無事だった!?」

 

カウンターで迎えてくれたのは、エヴリネ…ではなく、彼女の先輩。カイル達をみるや慌てた様子でカイルに尋ねた。

 

「問題はないです。ただ、クエスト目標であるイャンクック亜種の生死は確認してません。」

「それはいいよ!君たちが密林に出発した日に、オオナズチがテロス密林に向かってる可能性があったのに、エヴリネったら…」

 

慌てて言った後、彼女は睨むようにエヴリネの方に視線を送る。

カイルもやっぱりか。と言わんばかりの呆れた視線を、罰としてなのか忙しく動かされているエヴリネに送っていた。

 

「…一応、対峙するハメにはなりました。少々手こずりましたが、大丈夫です。彼女達もそれなりにやってくれたので。」

 

そういって親指で姉妹を指すカイル。直接ではないものの、カイルが自分達を褒めたということに驚きを隠せず、姉妹は彼の方を見ていた。

 

「…実際、お前等がいなけりゃ下手すれば彼処で俺は死んでてもおかしくなかったんだ。命を救ったのなら、それぐらい言ってもいいだろ。」

 

驚いたまま固まる二人にさらっとそう告げ、エヴリネの先輩に向き直る。

 

「ふふ、でもカイル君が素直に褒めることって珍しいよね?」

「…そこに触れるより、もっと大事なことがあるかと。」

「そうね。とりあえずテロス密林にはしばらく近寄れないわ。何せ相手は古龍…離れるのを待つか誰か、限定されたハンターが撃退しに行くか、でしょうね。」

 

彼女からの説明を黙ってきくカイル。姉妹も黙って聞き、如何に古龍が恐ろしいモンスターかよく理解したようだった。

 

「…まぁ、今回はカイル君ご一行が無事に戻って来たから良しとしましょうか。とりあえずクエストは破棄(リタイア)として処理しておくわ。」

「頼みます。では。」

「ええ、ゆっくり休んで頂戴。」

 

カイルは二人を連れ、自宅へと戻るために酒場を出て行った。

先輩は彼らを見送った後、今回の原因の一つ、エヴリネの扱きに向かったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




無事、オオナズチの驚異から逃げられた三人でした。カイルが苦戦するシーンは地味に少なかったりするので貴重だったりする(

戦闘中の文が短い気がしてしまう…辛い。


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