モンスターハンター 二刀を持つハンター 作:ひかみんとかカズトとか色んな名前
さくさくっと書いていきたいです。
比較的大きな体に黄色っぽい皮膚、おおきく出っ張った牙。鳥竜種特有の体つき。
そしてなにより、自分がボスだと言わんばかりに大きいトサカ。
今回のターゲットであるドスゲネポスがエリア7へと乱入してきたのである。
「来たぞ、油断するなよ。」
カイルがそう注意しつつ白猿薙をしまう。姉妹二人にドスゲネポスを狩らせるためである。
マリアは弓を組み立てていつでも撃てるように構え、エリカはすぐ動けるようにガンランスは畳んであるものの、いつでもいけると言わんばかりに真剣な表情だった。
「オォッオッオオォッ!」
まるで戦闘開始のゴングのように、ドスゲネポスは頭を高く上げ遠吠えをすると、三人に向かって駆け出す。
「ギャオワァッ!」
そしてその勢いのまま、三人の方へ飛びかかってきた。
それをエリカが大きな盾で防ぐ。
体重、勢い等が乗った攻撃に少し後ずさるものの、ドスゲネポスの飛びかかりを受け止めた。
そこにマリアが横から矢を放ち牽制。
ドスゲネポスの注意が僅かに逸れ、その隙にエリカが無理矢理押し返しドスゲネポスを転ばせた。
「うりゃあぁぁ!」
そして体制が整っていないドスゲネポスへとアイアンガンランスを叩きつける。
切れる部分を押しつけたわけではないためほぼ打撃攻撃ではあるが、エリカの狙いはそこではなかった。
「うりゃうりゃあ!」
そこから連続の砲撃を行ったのである。
これがガンランスの備わった機能、砲撃である。
射程は短く、切れ味も消耗するもののモンスターの肉質を無視してダメージを与えられる。ただし、ガンランスの種類によって装填数、砲撃の種類が違うなどの注意点がある。
エリカが2、3回砲撃し終わると、ドスゲネポスが立ち上がりバックジャンプで距離をとった。
その間に、エリカはガンランスを地面に叩きつけて空薬莢を排出する。
ガンランスのリロードである。が、それが間違いであった。
「…あっ!?」
そう、僅かなその隙にゲネポス達四匹がエリカを取り囲んでいたのだ。
しかもその間にドスゲネポスはマリアへと接近していく。
「くそ、どけ!」
エリカはガンランスを振るうも、焦りを含んでいるのと、ゲネポスの狙いはあくまで足止めであるため、中々当たらない。
それどころか少し背を見せただけでそこを狙わんとばかりにゲネポスが牙を剥く。
エリカはゲネポスの処理で手一杯となってしまった。
「くっ…!」
一方のマリアも、ドスゲネポスに迫られ防戦一方だった。
距離を取るため矢を振るいつつ下がるもドスゲネポスの足は並みの早さでは振り切れず、しつこくマリアに付きまとう。
エリカを救わなければならないのだが、麻痺毒を含む牙、鋭く尖った爪をさっきから間一髪でかわしてるので精一杯といったところであった。
「このままじゃ…あっ!」
ドスゲネポスに集中しすぎたせいか、足を砂にとられ転んでしまう。
「コオォォ…!」
「ひっ…!」
尻餅をついたマリアに迫るドスゲネポス。ゆっくりと、確実に牙を向けるーーー
「とっとと、どけ。」
ドスゲネポスはよほど夢中になっていたのか、それともカイルの動きが早すぎたのか。いつの間にかいたカイルが、ドスゲネポスの横っ面をシルバーソルレギンスの裏で蹴っ飛ばしたのだ。
「今の内にエリカを助けてこい。早くしろ。」
「あ…は、はい!」
カイルにそう指示され、少し放心状態だったマリアは急いでエリカの方へ向かう。
いきなり顔面を蹴られ怯んだドスゲネポスはいったん距離を離していた。
それを確認しつつ、カイルはハイフロストエッジを抜く。
太刀は威力やそれなりに連撃が出来るものの、攻めに特化しているため小回りが中々効かない、ガード不可などのデメリットがある。
が、片手剣は威力こそ低いものの、機動力が高いために太刀が苦手な部分をカバー出来る。
ドスゲネポスが動き回るモンスターであるため、カイルは機動力重視の片手剣を選択したのだ。
「すこしだけ遊んでやる…まぁ、掠り傷さえつけば良い方だろ。」
「ギャオッ!」
「エリカ!」
エリカの元へ駆けつけたマリアは、彼女の背中に噛みつこうとしたゲネポスの脳天を撃ち抜く。
それに気づいたエリカが武器をたたみつつ、撃ち抜かれたゲネポスを盾で殴りとばしながら包囲網から脱出した。
「怪我はない!?」
「だいじょーぶ!ありがとね!」
それだけ伝え合うと、残った三匹のゲネポスと向かい合う。
まず一匹が突撃してきたのを冷静にエリカがくい止め、マリアが射抜く。
遅れた二匹目がマリアに接近するも、彼女が下がると同時にガンランスを振るいながら突っ込んできたエリカに対応出来ずにザックリと貫かれた。
三匹目もその隙をとエリカに飛びかかったが、マリアの矢で胴を撃たれ、ふらついたところをエリカの砲撃で吹き飛ばされた。
「よっし!」
「エリカ!急ぐわよ!」
「もっちろん!」
二人は武器をたたむと、ドスゲネポスの方へ急いだ。
「グルルルル…!!」
「…そんなもんか、まぁお前ではこの程度か。」
ドスゲネポスはというと、カイルに良いようにあしらわれていた。
カイルのシルバーソルは多少砂を被ってるものの傷一つなく銀色に輝いている。それに対し、ドスゲネポスは顔面の蹴撃痕、体のところどころに出来た切り傷と殴打痕があった。
「カイルさん!」
「…遅いな。もう奴を大分痛めつけたぞ。」
「こっちは砂漠初めてなんだよ…?」
「まぁ、そういうことにしといてやろう。」
そこに姉妹二人が合流、カイルが遅いと言ったことに不満を漏らすエリカだが、ドスゲネポスを前に言い合いの暇はなかった。
「…後はお前等でやってみろ。」
「えっ…で、でも…」
「言っただろう、この狩りで決めると。」
マリアがその言葉に思わずカイルの方をみる。その隙をとドスゲネポスが飛びかかろうとしたが、カイルの殺気を込めた睨みをみて行動を中断、威嚇をしていた。
「……わかりました。」
「マリア姉!!」
「エリカ、カイルさんはわざわざチャンスをくれてるの。それに応えなきゃいけないの。…私だって、怖い…でも、村の人のために…下がれない!」
マリアはそう決意を表し、弓を組み立て構える。
「……う~…!わかったよ!私もやるよ!!」
半ばヤケクソだと言わんばかりにガンランスを構えるエリカ。
二人はカイルの前へ出て、ドスゲネポスと対峙する。
ドスゲネポスからすれば、先ほどから痛めつけていたカイルがまるで俺の相手じゃないと言いながら、格下をぶつけてきたと思っているのだろう。
それに、さっきから良いようにされていたため、目が血走り口からは荒い呼吸が漏れていた。
「…怒ってるわね…注意して、エリカ。」
「わかってる。」
ドスゲネポスと姉妹二人の睨み合いが続く…。と、先に動いたのはドスゲネポスだった。
少し走ったと思うと、マリアに向かって大きくジャンプして飛びかかったのだ。
マリアは横に転がってかわし、その着地に向けて矢を引く。
その着地の隙をエリカも逃すはずなく、ドスゲネポスの胴へ突きを繰り出す。
勿論ドスゲネポスもやられっぱなしではない。胴へ攻撃してきたエリカへと爪と牙を向けた。
そこに、マリアの矢が胴へと突き刺さる。エリカはそれで怯むだろうと油断し、攻撃の構えを取っていた、が…
「グオオォ!!」
「えっ…!」
ドスゲネポスはマリアの矢を無理矢理無視し、エリカへと噛みついたのだ。
エリカは慌てて盾を向けるも、爪に盾を弾かれ、バランスを崩してしまった。そして…
「ガフゥッ!!!」
「うぎっ…あぁぁぁ!!」
「エリカ!!」
エリカ自身も無理矢理体を捻って避けようとしたが間に合わず、麻痺毒を含んだ牙が胴付近を掠めてしまう。
それだけで、エリカは全身を弛緩させ、悲鳴を上げながらばたりと倒れてしまう。
ドスゲネポスは漸く捕まえたと言わんばかりにエリカへ近寄り、喰らおうと口を開けた。
が…
「…!!」
「くっ…!」
そうはさせないと、決死の覚悟と言わんばかりにマリアが矢で喉を狙ったのだ。わざと接近して。
ドスゲネポスはそのままマリアに噛みつくことも出来ただろうが、万が一のことを考えたのだろう。バックジャンプして回避していた。
だが、そう来たのならとマリアはドスゲネポスの目前に拳大の物を投げつける。
それは、ドスゲネポスの前で爆ぜ、大量かつ強烈な光を撒いた。
「ギャアァァァ!!?」
ドスゲネポスは強烈な光に目を灼かれ、その場で悶えた。
閃光玉。
起爆すると辺りに一時的に目が見えなくなるほどの強烈な光を撒くアイテムである。ハンターも目を庇わなければ目を灼かれてしまうほどである。
目が見えるモンスターにはかなり有効であり、ハンターによく使われるアイテムの一つである。
「エリカ!エリカ!!しっかりして!!」
「ん、う…ごめん…」
ドスゲネポスが悶えてる最中に、マリアがエリカに近寄り助けていた。
幸い、直撃ではなかったために麻痺の効果は薄かったらしく、エリカはすぐに体を動かした。
「まだ違和感ある?」
「ん…ちょっとだけ…」
そう聞いたマリアは、ドスゲネポスへまた何かを投げつけた。
それは、ドスゲネポスに当たるとへばりつき、強烈な匂いを辺りに撒いた。
これはペイントボールといい、モンスターがどこへ逃げたかわかりやすくするためのアイテムである。
ペイントボールがついたことがわかると、マリアはエリカに肩を貸しながら一時撤退を計る。
「グオオッ…ギャオォ!」
しかし、目の痛みから回復したドスゲネポスが逃げようとする姉妹二人を追う。
もう一回と閃光玉を取り出したマリアの前に、別方向から物が投げ込まれる。
マリアはそれが何かわかると、すぐにその物から目を逸らす。
そして、爆ぜると同時にまた強烈な光を撒き散らした。
「ギャアァァァ!!?」
「退くなら急げ。恐らくさっきより短い時間で復帰するはずだ。」
「え、あ、はい!」
そう、今の閃光玉はカイルが投げ込んだ物であった。
カイルはすぐに姉妹二人に手を貸し、エリア3へと引き上げた。
「…どうだ?」
「ん…うん、大丈夫。ありがとカイルん。」
エリア3の壁際にて、麻痺毒によって弛緩してしまったエリカの体をカイルがうまくほぐしていた。
そのカイルのマッサージもかなり経験したものなのだろう、効き目抜群なようだった。
「…油断しすぎだ。気をつけろといったはずだろう。」
「うぅ、あそこで怯むと思って…」
「これは…狩りは遊びじゃない。自分の思うとおりに事が進むと考えて動くならハンターはやめろ。」
「…ッ!!」
そう言い放ちながら立ち上がるカイルに、キッと怒りの眼差しを向けるエリカ。
それに怯むことなく、むしろ更に威圧するかのようにカイルは続ける。
「ただ死にたいのなら話は別だ、だが…死ぬ理由にハンターを使うな。そうして他人を含むハンターとしての誇りを汚すなら…俺はお前等をやめさせる。」
「死にたい訳じゃない!ただ私達は、村のために…」
「なら先ほどのような自分勝手な思考を止めろ。常に傲るな、油断するな…狩りの世界は甘くない。常に命が狙われてると思え。そう出来ない奴の末路は、死だ。」
「………。」
カイルは冷たくそう言い放つ。マリアは理解し、エリカも意味はわかっているものの、納得はしていなかった。
「…不満があるなら後回しにしろ。匂いが近くなってきた。」
そう言われた二人は、先ほどドスゲネポスにつけた匂いを辿る。
確かに、妙に近くなってきているような感じがした。
「エリカ、武器を研いでおけ。マリアも落ち着いて状況を見渡せ。さっきみたいに、アイテムも駆使すればうまくいく…勿論、ビンも忘れるな?」
「…わかった。」
「わかりました!」
エリカはすぐに砥石を取り出し、ガンランスの切れ味を回復させるべき研ぎ始め、マリアも弓を組み立て、赤い液体の入ったビンをセットする。
弓にのみ搭載されたビン機能は、各種ビンを弓にセットするだけで矢にその効果を付与する事が出来る。
例えば、今セットした赤いビンは強撃ビン。これは、単純に矢の威力を上昇させるシンプルな物である。それ以外にも、毒、麻痺など色々な物がある。
「グルルゥゥ…!!!」
エリカが研ぎ終わり、マリアもビンの装填を終え待機。少し間をおいて、エリア7の方からドスゲネポスが追ってきた。相変わらず目は血走り、荒く呼吸をしていた。
もはや逃がす気はないらしく、確実にここで三人を狩るつもりなのだろう。
「…どうくる…?」
エリカは、ドスゲネポスの出方を伺っていた。さっきは運がよかっただけと割り切り、安全策を選んだようである。
エリカが動かないとみるや、ドスゲネポスはマリアに狙いを定めた。
「…!」
マリアは向かってくるドスゲネポスへ矢を放つ。が、それを見切っていたと言わんばかりに跳躍した。
しかしマリアはそれすらも読んでいた。
一発目はフェイク、二発目で矢を三本束ね、落ちてくるドスゲネポスの胴を射抜いた。
空中で胴を射抜かれ、バランスを崩したドスゲネポスは誰もいない場所へ落下し倒れた。
「うりゃあぁぁぁ!!!」
そしてそこにエリカが走って接近、倒れたドスゲネポスへガンランスを叩きつける。そして、ガンランスの砲口を倒れてもがくドスゲネポスへ向け、どっしりと構えた。
すると、砲口が一気に熱を持ち始め、その溜まった熱と共に衝撃をぶちかました。
ガンランス特有の機能であり、最大の武器、竜撃砲。
放ったあとは一定時間の冷却が必要になるものの、その威力は折り紙付き。まさにハイリスクハイリターンな機能である。
竜撃砲を放ったエリカは反動で大きく下がりつつ、ガンランスは冷却を開始した。
そして、漸く体制を整えたドスゲネポスが起き上がり、ふらふらとエリア7へ向かい始めた。
「エリカ!逃がさないで!!」
「勿論!!」
マリアが弓で執拗に射抜き、エリカが接近しつつ突きを繰り出す。
それでも尚、無理矢理ドスゲネポスは逃走を続け、エリア7へと逃げていった。
「くっそ、後少し…」
「エリカ。」
「何!もうすぐだしそれに急がなきゃ休まれて回復しちゃうよ!」
「だからこそ、だ。慌てて追いかけて向こうの待ち伏せでも食らったらどうする。」
「う…。」
焦るエリカにブレーキをかけ、冷静に注意するカイル。確かにモンスターは、食事をとる、休息するなどをすればみるみるうちに傷が、体力がいやされるほど強靱な体を持っている。
だが、カイルは続ける。
「それにだ…いくら眠るとはいえ、眠り始めて即傷が治りましたとはいかないからな。ゆっくりでいい、マリアと足並みを揃えろ。」
そう言われ、エリカはドスゲネポスに気を取られすっかり姉の事を忘れていたことに気づいた。
「酷い妹ね…お仕置きでも考えておこうかしら…」
「ま、マリア姉ぇ~!」
「冗談はそれまでにしておけ、さっさと行くぞ。」
エリア7に入ると、隅っこで眠るドスゲネポスの姿があった。護衛としてのゲネポスもおらず、とにかく体を休めたかったのだろう。
なるべく起こさないようにこそこそと近寄っていき、エリカが横に、マリアは正面に構え矢を放った。
「グキャアァァァァ!!?」
その矢は、正確に左目へと突き刺さりドスゲネポスは突然の痛みに悲鳴じみた鳴き声をあげた。
そしてすぐに起きあがったドスゲネポスに追撃するように、横からエリカがガンランスで突き、砲撃する。
ドスゲネポスはまず近くで攻撃しているエリカを追い払おうと牙を向けた。
だが、エリカは牙どころか顔面に向けて盾を振るい、殴り飛ばしたのである。
思わぬ行動に怯み、隙をさらすドスゲネポス。そこを見逃さずにマリアが顔面に向けて矢を放った。そしてそれはドスゲネポスの口内へ吸い込まれるように入っていき、喉を貫いた。
「クォ、オォォォ…」
最後にか細く悲鳴を残し、ドスゲネポスは倒れた。
警戒する姉妹二人をよそに、カイルはスタスタとドスゲネポスに近寄り、生死を確かめる。
「…うん、反応はない。クエスト達成だ。」
その言葉を聞いた二人は、狩ったという実感が沸かなかった。
本当に自分達が狩ったのか?
彼女達は未だに警戒すら解いていなかった。
「剥ぎ取るなら早くしろ。俺は待たんぞ。」
そう言い残し、カイルはエリア3へ…ベースキャンプへと向かってゆっくりと歩きはじめる。
二人は慌てて武器をたたみ、すぐに剥ぎ取り始めた。
自分達で、初めての場所で、初めての素材。
素材を手にしたとき、漸く実感が沸いてきたらしく、二人で笑っていた。
「……やれやれ、終わったとはいえ緩みすぎだな。」
その二人を離れたところから見て、呆れたようにつぶやくカイル。
だが同時に、少し羨ましくもあった。
「……キース。俺は少し、やり方を変えてみる……見守っていてくれ…」
誰の名前だろうか、カイルはそう呟くとベースキャンプへと歩みを再開した。
狩猟依頼
ドスゲネポスを狩れ!
クエストクリア。
ドス系とはいえ、大型モンスターとの狩りって一話で収まるのかしら((
たぶん今後色んな大型が出るだろうけど、その時は何話かにわけるかな…?