モンスターハンター 二刀を持つハンター   作:ひかみんとかカズトとか色んな名前

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なんやかんやしてたら投稿遅れてしもうた




第十三章・隠していた真実

数日後。

セクメーア砂漠からドンドルマへと帰った四人は荷物もすぐに下ろし、酒場へと向かった。

 

酒場は数日前と比べると落ち着いてはいるが、未だにピリピリとしていた。

四人はその酒場の中を通り、エヴリネがいるカウンターを目指す。

 

「エヴリネ嬢。」

「んぇ?……あっ!帰ってきたのね!?」

 

当の本人はここ最近忙しいのか、カウンターで寝ぼけていた。エドワードが声をかけないと気付かないぐらいに。

 

「マリアちゃんにエリカちゃん!それと……カイル…。」

「…“あいつ”はいなかった。ただの誤報だったようだ。」

「待ってればその情報の真偽確認出来たのにねー?」

「……。」

 

相当嫌みったらしくカイルへ言うエヴリネに対し、カイルも黙って俯く。

今回ばかりは自分に非があると自覚してるのか、無駄に反論することなく反省しているようだった。

 

「はぁ、とはいえつい最近またコロっと状況変わっちゃってね。」

「何?」

「何?じゃないわよ。あのディアブロスとイビルジョーが砂漠から撤退したの!!」

 

バンバンとカウンターを叩きながら怒鳴るエヴリネ。彼女の言葉はまだ止まらない。

 

「あんなに暴れ回っていたのにいきなり砂漠から二体の姿が消えてるって報告が入ったから何でと思ったけどそうよね貴方よねカイル!!?」

「…そうだな。」

「なんでそんなに冷静なのよ…こっちは後始末やら何やらで大変よ全く…」

 

思い切りまくし立てた後はぁぁ…と深くため息をつきながら頭を抱えるエヴリネに、カイルは相変わらず静かに返すだけであった。

 

「…して、エヴリネ嬢。その後の砂漠は?」

「んんー?あの二体…というより主にイビルジョーね。そいつが荒らし回り過ぎたからしばらくは砂漠で過度な狩りは厳禁でしょうね…。」

「まぁそうなるよなぁ…。」

「それと、エドワードさん。貴方にイビルジョーの監視任務来てますよ。」

「ぅげ…!」

 

エヴリネから告げられた内容に明らかに嫌そうな表情を浮かべるエドワード。それもそのはず、あの凶悪なイビルジョーの監視任務…ヤバくない訳がない。

 

「…他のギルドナイトは?」

「砂漠やら別件で出払ってますよ。ですから貴方にこの任務が来たみたいですよ。」

「うへー…やるしかねぇかぁ…ほんじゃ、俺はここで失礼するぜ。」

 

がっくりと肩を落としながらも、気合いを入れ直しつつエドワードは短く別れを告げ、駆け足で去っていった。

マリアとエリカは軽く会釈し、カイルは相変わらず黙ったままであった。

 

「ほーら。いつまでも落ち込んでないで、少しお話してあげたらどう?」

「…ああ。…」

 

そんな様子のカイルに、エヴリネは軽く声をかける。だが短く返しはしたがまだ黙りを続けるカイルに呆れたのか、エヴリネは彼を無視し姉妹の方を向いた。

 

「…悪いけど、こいつ家まで連れてってくれる?多分私じゃ無理だし。」

「え、あ、はい。」

「っエヴリネ…!」

「反省でも何でも、家でしなさいな。そこだと邪魔になるわよ。」

 

彼女にしては珍しく冷たくあしらうと、すぐに仕事の方へと意識を戻した。

姉妹は未だに俯くカイルを引っ張るように家へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「だだいま戻りましたよー。」

「たっだいまー!」

「…」

 

家につき、三者三様の声をあげる。が、そこでカイルが妙な変化に気づく。

 

「…ジャスミン?……というより、これはしばらく何もしてないな。」

 

そう、ジャスミンが迎えに来ないどころか部屋が薄く埃被っており、どことなく散らばったままであった。

とカイルが声を出した次の瞬間、奥から何やら迫る音が。

 

「…ぅにゃぁぁぁぁぁ!ご主人ーーー!!」

「止まれ。」

「ン゙ニャッ」

 

服も顔もぐしゃぐしゃなジャスミンが奥から駆け寄り、カイルに突撃してきたのである。…心配していたので当然ではあるが、カイルはしれっとそれを止めた。

 

「…この部屋の状況を見るに、相当心配したんだな、悪かったな…」

「んにゃ…ほんとですニャ!…確かにお気持ちはわかならくもないですニャ。でも、万が一貴方が死んでしまったら…」

「……悪い。少し頭を冷やしてくる。…部屋を片付けておいてやってくれ。」

 

カイルはいつもの雰囲気はどこへやら、がっくりと肩を落としたまま外へと歩いていった。

姉妹は追いかけようか悩んだが、追いかけたところでどうしようもないと判断したのかその場で止まったままだった。

 

「ニャッ。すぐに部屋を整えますニャ。ここ数日サボってた分、ささっと済ませますニャ!」

 

カイル達が無事とわかったジャスミンは、すぐに仕事の格好を整え、家の掃除にとりかかった。

 

「…ジャスミン、手伝うよ。」

「ニャッ!?ととととんでもないニャ!」

「させてください。…でないとなんだか落ち着かなくて。」

「……わかりましたニャ。」

 

ジャスミンは客人にお手伝いしてもらうのは、と思い慌てて遠慮しようとした。だが、彼女達もまた自分と同じように、カイルに何も出来ない無力さが辛いのだと、それを少しでも誤魔化したいのだろうと察したのかすぐに受け入れた。

 

 

 

 

「ふぅ…カイルんまだかなぁ。」

 

暫くして。

大分綺麗になった家内を見渡しつつエリカが呟く。頭を冷やすと出て行ったきり音沙汰がないのである。

 

「にゃ…おそらく親友殿の所でしょうにゃ。」

「お墓、ということですか?」

「うにゃ!?たぶんですがにゃ…聞いたんですかにゃ?」

 

カイルの親友が既に亡くなっている事を知っていたマリアに驚くジャスミンだったが、すぐに聞き返す。

 

「うん。帰る前の砂漠のベースキャンプでね。」

「…お墓の場所はわかりますか?」

「にゃあ…私にも教えられてないのですにゃ…エヴリネ様なら多分わかると思いますにゃ。」

「エヴリネさんが…?」

「にゃ。…そのことを聞きに行きたいなら家のことはお任せあれだにゃ。」

 

ジャスミンの言葉に首を傾げるマリアに、アイルーの彼は頷きつつ、胸を叩きながらそう言った。

姉妹もお互いを見て、ジャスミンに頷く。

 

「わかりましたにゃ。では後はお任せあれにゃっ。」

「わかった!行ってくるねっ!」

「あっ、待ちなさいエリカ!…では私も失礼しますね!」

 

待ちきれず飛び出したエリカを追うようにマリアも家を飛び出していくのを、ジャスミンは静かに見送った。

 

 

 

 

 

 

 

「…んΣぅおわぁ!?」

「エヴリネさん!!!はぁ、はぁ…!」

「え、エリカ…慌てすぎ…!」

 

酒場にて。

カウンターで仕事に集中していたエヴリネはふと視線を上げ、飛び込んできた姉妹に驚いていた。彼女達も息が切れていたが。

 

「…エヴリネさん、単刀直入に聞きます。…カイルさんの親友のお墓はどこにありますか?」

「…!」

 

周囲へ配慮しつつ、回りに聞こえないように小さな声でエヴリネに尋ねるマリア。それを聞いたエヴリネは、表情を真剣なものへ変える。

 

「…ふーん…あいつそこまで教えたのか…ちょっと意外かなぁ。」

「意外…ですか?」

「だって私があいつと馴染むのにも数ヶ月…半年?はかかったはずだからねぇ…それだけあいつも真剣に貴女達と向き合ってるってことかな。」

「そもそも…なんでジャスミンが知らなくてエヴリネさんが知ってるの?」

 

ちょっと嫉妬が混ざったような、そんな表情で語るエヴリネに、エリカが疑問に思ったことを口にした。

 

「…その親友とカイル、私の三人でパーティーだったからよ。」

「…え…?」

「驚くのも無理はないわ。…でも、この先を話すには場がよくないわね…少し待ってて頂戴。」

 

突然の衝撃的な告白に、二人は固まる。エヴリネはそこからを語るために時間を作るべくカウンターの奥へと消えた。

 

 

「お待たせ。行きましょうか。」

「あ、はい。」

 

カウンター付近で待っていた姉妹二人に、エヴリネはいつもの格好で花を持って小走りで駆け寄った。

エヴリネに案内されるように、姉妹もついて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

酒場からかなり離れた場所。

歩いてくると距離はそこそこある場所に、ひっそりと立てられた墓がいくつかあった。

 

「…こんなところが…」

「ドンドルマの華やかさからは想像出来ないでしょ。ここは知ってるハンターも一握りの小さな墓地よ。っと、いたわね。」

 

マリアの呟きに答えつつ、エヴリネは見慣れた後ろ姿を見つける。

一つの墓の前に静かに立つ青年、カイル。

彼は目の前の墓に何かすることもなく、ただ黙ってそれを見下ろしていた。

 

「カイル。」

「…!エヴリネ…それにマリアにエリカまで…?」

「そーよ。彼女達にキースの事言ったんなら、お墓だって教えてあげなさいな。…これから先、パーティーとしてやってくんでしょ?」

 

エヴリネはカイルにそう言いつつ、自分が持っていた花を墓へ添える。

 

「そちらのお墓に刻まれた名前が、カイルさん達の…」

「…キース・リトルトン。カイルの親友であり師であり、私達の大事なパーティーメンバーだった太刀使い。」

「だがそいつは、一頭のモンスターによって殺された。エヴリネも、そのモンスターにハンターとして生きる道を潰されたんだ。…エヴリネ。」

「ええ。」

 

カイルがエヴリネとそう説明し彼女を呼ぶと、エヴリネは彼の意図を察したように自身の左腕の袖を一気に捲る。

 

「…!」

「うわっ…」

 

エヴリネの左腕には、痛々しく刻まれたモンスターの爪痕が残されていた。

気付かれないように、悟られないように普段から気を配っていたのか、その左腕は微弱ながらも震えていた。

 

「…わりと無難に動くのが奇跡ってレベルだからね…この傷のせいで、私はボウガンを捨てたの。」

「そして俺はキースの太刀を引き継いだ。だが片手は二人が俺の為に選んだ武器。どちらも捨てる訳にはいかなかった。」

「まぁ一般ハンターだったら当然ダメだったかもだけど、その時その二刀流で結果を残してはいたからね…だからそれを許されたの。」

「そうだったのかぁ…」

「……。」

 

カイルとエヴリネの説明にエリカは深く頷くが、マリアは何かが引っかかってるようで考える素振りをしていた。

 

「どったのマリアちゃん。」

「あ、いや…馬鹿にする訳ではないのですが…二刀流を許可した理由が本当にその時の結果だけなのかなって…。」

「…ほー…鋭いわねマリアちゃん。」

 

そんなマリアにエヴリネが尋ねると、マリアは他に理由があるのではないか、私達の知らないことがあるのではないかと。

その発言にエヴリネは関心していた。

 

「それはねー…」

「それ以降はまた今度だな。」

「あら、話した方がいいんじゃないかしら?」

「…俺個人だけの判断ならともかく下手に教えればこいつらが、俺の過去を漁ったり力を悪用しようとする阿呆共に付きまとわれる事にもなりかねないだろう。」

「それは過保護なんじゃ…まぁ、情報を餌に頑張ってみなってのもありかもねぇ。」

「そんな有益な物ではないと思うがな…。」

 

エヴリネが話そうとした事を遮りつつ、やれやれといった感じに呆れた様子のカイルはゆったりと墓場を後にすべく歩き出した。

 

「素直に簡単には教えない、教えてほしければ強くなれって言えばいいのにねぇ。」

「でも、彼なりに判断してくれたことならいいのではないでしょうか…?私達もまだ未熟ですし…」

「どうだろねぇ。まぁ私からも教えられないかな、変に教えると怒られそうだし。…ほら、追いかけないとおいてかれちゃうわよ?」

「あ、カイルさん!」

「待ってよー!」

 

姉妹はエヴリネと話した後、彼女に指摘され思い出したようにカイルの後を追った。

エヴリネはその後ろ姿を羨ましそうに見送り、キースの墓へ向き直る。

 

「…キース。私はどうしたらいいかな…。」

 

静かに、ぼそりと、自身の左腕の傷跡を撫でながらエヴリネが呟く。誰にも聞かれることなく、彼女もそのまま墓を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イビルジョーその他諸々編はここまでとなります。

次回からはまた普通に狩りになる…予定…



なるといいなぁ…()

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