モンスターハンター 二刀を持つハンター   作:ひかみんとかカズトとか色んな名前

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お待たせしました。

ここから少しの間はお話が動くため、まとめて書いて流れを整理しつつ進めておりました。

でもバラバラに投稿しちゃう()


第十一章・新たな狩り場、忍び寄る不穏

どんよりと空を覆う灰色の雲。

不気味な雰囲気が漂い、高い湿気をもつフィールド、沼地。

正式名称は、クルプティオス湿地帯。

 

 

前回のダイミョウザザミ狩りから数週間。何回か砂漠や密林のクエストをこなしたカイル達三人は、新たな狩り場に足を運んでいた。

 

「うぅ、不気味だしベタベタするぅ…」

「だろうな、沼地はかなり湿気がある。…というかエリカ、お前その防具ならまだ快適な方だろ。」

 

そう、あのダイミョウザザミの後にも密林に出現した個体もいたため、それを狩ったことによりエリカはザザミ一式を作成、そちらに切り替えていた。

ザザミ一式はよりガードを固くしてくれる防具であり、ランスやガンランスと相性がいい。

カイルの勧めもあり、エリカはフルフルからそちらに切り替えたということである。だが…

 

「…慣れない。」

 

そう。

フルフルは全身を隠すものだったのに対し、ザザミはスカートに脛当て…つまり太ももが晒されている状態である。

今まで隠れていたのが露出しているのがどうも慣れない様子だった。

 

「そのくらい我慢しろ。これから先、防具を変えることは多々ある…そうとは言ってられないぞ。」

 

カイルはシルバーソル、マリアはフルフル一式といつも通りだが、カイルはもう慣れているのか気候なんて関係ないと動き回り、マリアは少し蒸すのか、時折手で気休め程度に風を送っていた。

 

「でも、ここ何が採れるんだろう?」

「そうだな…貴重な虫とかもそうだが、一番はライトクリスタルといった鉱物だろうな。」

 

エリカにそう伝えつつ、カイルは自分の背負ってきた武器、飛竜刀【楓】と雷神剣インドラの状態を確認していた。

 

「ライトクリスタル…」

「まぁ、希少なものだからそうほいほいとは出てこないがな。とりあえず今回はあくまでフィールド把握だからな、じっくり回るぞ。…準備は出来たか?」

「あ、うん。大丈夫。」

「私も大丈夫です。」

「ん。じゃあ行くぞ。」

 

カイルの確認に姉妹が返事し、エリア1へと三人は走って行った。

 

 

 

 

 

 

エリア1にはアプノトスの親子がのんびりとしているだけであり、特に危害を加えてくるモンスターもいないようだった。

三人はそのまま進み、エリア2へと踏み込む。

 

エリア2は中央に水が小川のように流れており、その奥には洞窟であるエリア3と外のエリア4へと続く道がある。

エリア内には小さな虫…とはいえ虫の中では大きい部類のランゴスタやカンタロスがウロウロとしていた。

 

「…エリア1と2は小型のモンスターもいないんですか?」

「エリア1はともかく、エリア2は違うな。」

 

エリア2を探索する中、マリアがカイルに問う。彼もまたすぐに返答する。

 

「エリア2には鳥竜種であるイーオス、それと甲殻種のガミザミがいることがある。それと野生のメラルーやアイルーも時折いるな。」

「イーオス…毒を吐く鳥竜種で、他のと比べるとだいぶタフな部類だと…」

「そうだ。鳥竜種の中ではかなりタフな上に毒もある。他のランポスやゲネポスらと同じ感覚で戦えばキツいことになるだろうな。まぁだからこそ念のために解毒薬を持たせたんだ。」

 

二人にそう教え、さぁ次のエリアへ…

そう移動しようとした時、何かを考えているのか俯いているエリカがカイルの視界に入り、声をかけるべく彼は彼女に近づく。

 

「おい。」

「わっ…な、なに?」

「何もクソもない。狩り場で何で棒立ちしている。」

 

声をかけられ漸くカイルが近づいていたことに気づくエリカ。

そう、仮に周りにモンスターがいないといえど狩り場は狩り場。いつどこからモンスターがくるかわからないのだ。

 

「いや、ゲネポスって聞いてちょっとね…」

「…まだ引きずっているのか。」

「あーうん…砂漠が気になって…」

 

前に砂漠に襲来した凶悪なモンスター、イビルジョー。確かに未だに報告が少ないというのはおかしい話である…カイルがギルドに気を回せと遠回しに言っているのもあるかもしれないが。

 

「今はこっちの狩りに集中しろ。フィールド把握とはいえ油断は禁物だ。」

「あいさーっ。」

 

カイルにそう言われ、すぐさま切り替えるエリカ。まず沼地にある洞窟内からの探索となり、三人はホットドリンクを飲み、突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ…思ってたより冷えますね…。」

 

入って少しして、マリアがそう呟く。

雪山や夜の砂漠には劣るだろうが、それでも体に悪影響を及ぼしかねない寒さが洞窟内を満たしていた。

 

「ここの洞窟は貴重な鉱物の他に、メラルー達やガミザミ、それに天井にショウグンキザミやフルフルもいるときがある。常に上には警戒しておけ。」

 

そういわれ、天井を見る二人。

確かに密林の洞窟や砂漠の洞窟と比べると低く、モンスター達にとって丁度良い高さに天井があるため奇襲にはもってこいであった。

 

「…まぁ上にいない場合はフルフルは下にいるが、ショウグンキザミは更に下に隠れている時もある。…まぁ、狭い空間だから安全な場所はほとんどないと覚えておけばいい。」

 

うんうんと頷く二人。

その後採掘が出来る割れ目を見つけたため、姉妹二人はピッケルを振るい、カイルは隙ありと彼女達に近寄ろうとしたメラルー達を追い払っていた。

 

三つのエリアが存在する洞窟内はどこも寒いが、希少な鉱石が存在するため潜るハンターも多い。

特に、エリア9では灰水晶、白水晶の原石を採掘することが出来る。だがとても重い上に脆く、持ち帰るのにかなり慎重さや集中力がいる。

姉妹は原石が採れる場所が綺麗だと驚いていたが、カイルに必要ないとばっさり切られ渋々次のエリアへと移動した。

 

 

 

 

「ん…いるな。」

 

エリア7へ入ろうとしたとき、中を確認したカイルが物陰に隠れつつ呟く。

比較的小さめではあるが、毒々しさを感じかつこの洞窟内では目立つ赤い外見、イーオスであった。

エリアの中央付近に二匹、そこから離れたところに一匹おり、まだ三人には気づいていない。

 

「俺が二匹やる。二人は右の一匹に集中しろ。」

「えっ、でも…」

「さっき言ったことを忘れたか?」

「…イーオスのタフさを実感しろと言うことですか?」

 

カイルの指示に困惑したエリカだが、彼の発言の意図を読んだマリアの言葉に納得したように頷いた。

カイルもまたそうだと頷く。

 

「よし、かかれ。」

 

カイルの言葉と同時に三人同時に飛び出し、カイルは二匹を引くように、姉妹二人は一匹の方へと駆ける。

三人が飛び出したことで彼らの存在に漸く気づいたイーオス達は威嚇に鳴き始める。

 

「黙れ。」

 

カイルは接近しきる前に片方のイーオスの口内目掛けて片手剣(雷神剣インドラ)を投擲。迂闊に鳴いていたイーオスの口の中へと吸い込まれるように突き刺さり、絶命した。

 

もう一匹のイーオスはいきなり味方の命を真横で奪われ動揺した様子だったが、すぐに警戒心を全開にしてカイルと向き直る。

カイルはもう一つの得物、飛竜刀【楓】を抜き放ち迫る。イーオスは牽制か、ため込む動きの後に口から紫の液体を吐き出した。

イーオス最大の特徴、毒である。

カイルは難なくかわすが、毒が着弾した地面はシュワシュワと嫌な音をたてていた。

 

カイルはそのまま毒を吐いて硬直しているイーオスに接近、胴に向かって太刀を振るう。

 

鋭い刃はイーオスの皮を容易く切り裂き、追撃の火属性が肉を灼く。

イーオスは切り裂いた瞬間こそ悲鳴を上げたが、火には特に反応することなくカイルの方へと牙を向ける。

 

「ふん。」

 

それを太刀であっさりと受け流し、隙だらけとなったイーオスの首へと刃を振るう。

だがやはりタフなだけあり、イーオスは二度切られただけでは力尽きずにもう一度牙を向ける。

 

「しつこい。」

 

だがそれも虚しく、最後の力とわかるとカイルは無情にもイーオスの横っ面を盾で殴り飛ばし、倒れたところに刃を首へと突き立て絶命させた。

 

 

雷神剣インドラを回収し飛竜刀【楓】を納めたカイルが姉妹の方を見ると、既に指定された一匹を狩り交代で剥ぎ取っている最中であった。

 

「ほー…手こずるかと思ったが。」

 

初めての鳥竜種に加え毒を吐き、タフな体を持つイーオスを二人掛かりとはいえ難なく狩れている。

そんな姉妹に関心しつつ、自身も剥ぎ取るべく腰のナイフに手をかけた。

 

 

 

「あれ、カイルんも剥ぎ取るんだね。」

 

一匹剥ぎ取り終えたエリカが、カイルが狩ったイーオスの元へと近づき、彼へと話しかける。

 

「イーオスの素材が少し減っていたからな、補充にな。」

「ずっと置いておくの?」

「いや、不必要なら売ったりするし、古くなれば廃棄する輩もいるだろう。今回は新しい狩り場のついでに補充したってだけさ。」

「あの…」

 

そうエリカに説明するカイル。と、そこに剥ぎ取り終え、話してる間に採掘まで行ったのかピッケルを持ったマリアが歩いてくる。

 

「一度ベースキャンプに戻りませんか?思ったより素材が豊富で…」

「…思ったより欲張りなんだな。」

「いっ、いいじゃないですか…!」

 

カイルの指摘にむすっとしたマリアであった。

 

 

 

 

ベースキャンプに一度戻り荷物を整理してから、次はエリア5の方へと向かう。

エリア5ではモスやブルファンゴといったモンスターが数匹いるだけであったが、下手に気に障らせないようにエリア5を回った。

 

 

 

 

「エリア6だが…っ」

 

エリア6のことを教えながら踏み込もうとしたカイルが何かを察知し、岩影へと隠れる。

姉妹も慌てて続くように隠れ、エリア内を見渡す。

 

「…カイルん?」

「黙ってろ。」

 

だが特に目立つ物はおらず、不審に思ったエリカはカイルへ視線を向けるが、彼は“地面”へ視線を向けたまま動こうとしなかった。

 

「…まさか地中に?」

「可能性がある。…下手に動くなよ。」

 

カイルの警戒態勢に、姉妹も先ほどまでとは違う真剣さでエリア内を警戒していた。

 

すると、立ち止まって数分。その何かが地面を裂いて現れた。

 

青い体に細い四本脚、それらに加え恐らく飛竜の頭骨を背負っており、何より目を引くのは腕に当たる部分。

盾蟹ダイミョウザザミと比べればか細くあっさりと折れそうに見えるが、それは“守る”ための鋏ではなく、“攻撃”に特化するために無駄を切り捨てた凶悪な鎌。

ダイミョウザザミと対をなす鎌蟹ショウグンギザミであった。

 

「あれは…?」

「さっき言ったショウグンギザミだ。…攻めることに特化した甲殻種で、ダイミョウザザミと比べるととにかく早い。その上、殺傷力を高めた鎌である鋏を振り回してくる。…ダイミョウザザミより手強く危険なモンスターだ。」

 

岩影に隠れつつ、カイルは姉妹にそう教える。

カイル自身に狩る気はないらしく、武器を構える素振りはない。

 

「仕方ない、今日はここで切り上げるぞ。」

「…そうだね。」

「了解です。」

 

ショウグンキザミどころか、大型モンスターと対峙するだけの準備がまともに出来てない今、無理に沼地を走り回るのは得策ではないとカイルは判断し、姉妹もそれに反論することなくベースキャンプへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅん…」

 

ベースキャンプにて。

ドンドルマに戻るべく荷物整理をしていたマリアは静かに唸っていた。

 

「…マリア」

「…あ、はい?」

「鉱石と睨めっこするのは構わんが、程ほどにしてくれないか。」

 

そう、マリアは自分が採ってきた鉱石を全部睨むように見比べていた。どうやらどれが一番大きく、どれだけ利用出来る部分があるのかを見ている、が。

エリカどころかカイルもそれに関してはそれほど詳しくないため、マリアがそれを見てもわかることはないだろう。

そう判断したカイルが帰るように促した。ということだった。

 

「あぁ、すみません…やはり大きい方を優先すべきなのでしょうか…?」

「知らん。…それで悩むくらいならさっさと持って帰って親方辺りに頼む方が早いぞ。」

「…うぅん、そうですね…」

 

あからさまに石ころなものを徹底的に省き、希少価値が高めな物を選んで荷物にまとめるマリア。

カイルはマリアに手を貸し、エリカは既に適当に整理し積んでいたので、竜車内でくつろいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして竜車で揺られること数日、ドンドルマに着いた三人。

マリアはテキパキと、ぐっすりと寝ていたエリカが欠伸をしながら荷物を降ろす中、カイルはクルプティオス湿地帯にショウグンキザミが出現したことを報告しにカウンターへ向かっていた。

 

 

 

「よい、しょっと…あれ?エリカ、カイルさんは?」

「ん?まだ戻ってきてないぞ?」

 

荷物を降ろし終えた二人は、未だに戻らないカイルを不思議に思っていた。とそこに…

 

「おや、君達は…」

「…あら!えっと、エドワードさん!」

「お髭さん!」

「覚えてく…お髭さんって君…」

 

ギルドナイトの格好にもみあげとくっついた髭がダンディーなエドワードが通りがかったのだ。

エドワードは覚えてもらって嬉しい半分、エリカの呼び方に困惑半分といった感じであった。

 

「お久しぶりですかね…?お仕事帰りですか?」

「まぁそんなとこだなぁ、いきなり呼び出し食らって戻ってきたとこだ。…君達はどこか行ったのかい?素材を見た感じ…これは沼地かな?」

「そうです、クルプティオス湿地帯に連れて行ってもらいまして。」

「でも、ショウグンキザミがいたから中断して戻ってきたんだ。」

「ショウグンキザミか…というかカイルは?」

「それが…まだカウンターから戻ってきてなくて…」

「何…?まさか。」

 

エドワードは沼地の話を切り出した時はニコニコとした笑顔であったが、ショウグンキザミとカイルの話題が出た瞬間表情を変え、酒場の方を見た。

 

「…!待ってくださいエドワードさん、何があったんですか…?カイルさんが戻らないのも何か理由があるんですか!?」

 

何も言わず戻ろうとしたエドワードを引き留め、問いつめるマリア。

エリカもまたエドワードに迫る。

 

「…お嬢ちゃん達、恐らくカイルがカウンターから戻らない理由はな、もう狩りと呼べるレベルじゃない。命の奪い合い…“殺し合い”のレベルになることが起こるかもだからだ。…俺が戻らされたのも多分それが理由だ。」

 

周囲を見渡し、出来る限り漏れないように小さな声で話し始めるエドワード。

それは、彼女達二人に対し試しているようにも見えた。

その真剣さに姉妹二人も冷や汗を感じつつ、彼女達なりの覚悟をもって話を聞く体制であった。

 

「…伊達にあいつが連れ回してる訳じゃねぇみてぇだな。ついてきな。」

 

姉妹の覚悟に、エドワードは二人の荷物を持ち、彼女達を連れて酒場へと向かった。

 

 

 

 




さて、この章から数話は沼地探索編と見せかけたカイルとエヴリネの裏に迫るお話となります。

何故カイルは二刀流なのか、エヴリネに対しては普通(?)に喋るのか。
エヴリネは何故カイルの面倒をよく見ようとするのか、何故カイルに積極的に絡みに行くのか。
それが簡単にでも伝わればいいかな、と思います。

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