転生したら狩人×狩人 作:楯樰
敷地内に出てくる魔物などを軽く追い払いながら、程なくしてゾルディックの屋敷に着いた私達。
お父さんとお母さん二人に守られながら、びくびくとしていたビスケ達二人は今は息も絶え絶えで肩で息をするほど疲れている様子である。
両親二人がビスケ達に手をとられているので、私は一人魔物を蹴散らしていた。
……結構大きいサイズの犬?の魔獣が出てきたけれど、あれは原作に出てくるミケの血縁とかじゃなかろうか? …違うかな?
ま、いっか。
「ささ、二人ともへばってないで。もうちょっとだから頑張って!」
「うぇー……」
「も、もう…嫌……」
ばてている二人を元気付けているお母さんだが、それは結構酷いと思う。
二人とも念使えないんだから。
早く覚えさせた方がいいのかなぁ…? と私は考えつつお父さんと一緒に、屋敷の周辺を見ながら二人とお母さんを待つ。
「広いなぁ……」
「そうだねぇー」
うちとは大違いである。
……まぁ当たり前か。
しばらくして家族5人で表玄関らしき扉の前に立つとひとりでに扉が開く。
「皆様、お待ちしておりました……当主様自らお会いになるそうです。さ、奥へどうぞ。……あ、手荷物の方はこちらで預からせて頂きますのでそこのメイドにお渡しください」
中からは執事らしき人とメイドさんが出てきた。
おぉ、メイドだ。
結構若い。
……あ、勿論由緒正しい格好をしている。
メイドさんに荷物を預け、執事さんについてく。
後ろでお父さんと並んで歩いているお母さんの手を握って着いて来ているビスケとラディは、始めて見る高そうな壺や絵画を珍しそうにして、キョロキョロと視線をさまよわせている。
で、その様子を苦笑いしながら見つめるお母さんとお父さん。
……仲いいなぁ。
と、私は後ろの様子を見るのを止め前を歩く執事さんの背中を見ようとして……
「――このヤローッ!」
前からいい年したお兄さんが念の篭ったとび蹴りしながら突っ込んできた。
すかさず私は廻をし腕を前にクロスさせ防御する。
金属を殴りつけた様な音をたて止まったお兄さんは跳びはねて音も無く廊下に着地した。
まぁ、このお兄さんは彼な訳で。
「やっぱり防がれるのか……」
そして私は
「……お久しぶり、ゼノ君」
十年前、会ったきりの友人、ゼノ=ゾルディックと再会した。
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「はぁ……で、なんで今の今まで連絡無かったんだ?」
「いや、弟妹の事とか色々と……ね?」
……絶対言えない。二人可愛さに忘れてたとか絶対言えない。
ゾルディック家の廊下でゼノと遭遇した後、ゼノの私室と思われる中華っぽい部屋に通されていた。
私以外は普通に客室に案内されていたから命の危険とかはなさそうだ。
いや、お父さんとお母さんいる時点で初めから危険なんて無いようなものなのだけれど。
つまりだ。
……逆に言うと私は現在ピンチである。畳らしき物が敷かれたこの部屋で正座をしつつゼノによる尋問を、私は甘んじて受けていた。
そして今ではゼノの愚痴を聞いている。
「……ふん。ま、仕方無かったんならいいけどさ。
ただ一つくらい連絡入れてくれたって良かったじゃないか。……俺から連絡しようと思っても連絡先知らないし。それに住所すら教えてもらってないないから、直接会いに行く訳にも行かないしな…」
うわぁ……暗殺一家の当主凹んでる。
ヤバイ。罪悪感がハンパ無い。
「いや……私も色々と忙しかったから……ごめん」
うぅ……マジで御免よ…ゼノ。
ただ、そろそろ話題転換させた方がいいかなぁ。
今のまま空気悪い状態なのも困るし。
「……とりあえず、さ。此処十年なにがあったか互いに情報交換しよ?」
「はぁ…? ……そうだな、そうするか……じゃ、まずお前かr「ゼノからどうぞ?」……はぁ。わかったよ。それじゃ話す…」
ゼノの言葉を遮り、私は彼から話をさせる。
だって私の事なんて、修行して弟妹の護衛して世話して……くらいしかして無いから聞いても面白く無いだろうしね。
「……で、最近は婚約者が出来たかな」
「はい? ……婚約者が出来た?」
うわ、マジか。
……しばらく話を聞いていると最近の出来事になってきた。
そこまでの話の内容としては、ゼノが念を覚えたり、当主になったり、その事を私に伝えたかった等を聞いた。
いや、私に知らせたかった云々は暗に言っていなかったが、態度に表れていた。
くぅ~…うい奴め。
それで、今ゼノは少し気恥ずかしそうに婚約者が出来た話を頬を掻きながらしている。
……うん。ゼノはクーデレだ。
私はニヤニヤとしそうになるのを抑えて、ゼノに相手の……婚約者の事を訊く。
「それで……その相手は?」
「あぁ、同業者の娘。
嫁入りだから相手側からとやかく言われる事は無いと思うから良いんだが、ただ……」
「ただ?」
……歳が十歳も離れているとかじゃないよな?
「…どう彼女と接したらいいか判らなくてだな……どうしたらいいと思う?」
あー…良かった、違ったみたいだ。
どうしたらいい……か。
「笑えば……いいと思うよ?」
「……はい?」
いや、冗談で言ってるんじゃなく、私の予想では多分ゼノは緊張して相手の前では冷たく接してそうだ。
なので私は掻い摘んで理由をゼノに話す。
「あー…なるほどな、確かにそうかもしれん。今度試してみる事にするよ……で、そっちの方はどうなんだ? あの後200階クラスでフロアマスターになったって言うのを風の噂で聞いたんだけども。ってそうだ! お前あの時から念使えたのか!」
「あーあ! ちょっと待って……順を追って説明するから。じゃ、まずは別れた後のことから……」
こうして私はゼノと別れた後の事を説明していき、私が転生者だということは伏せて、念は両親から教えてもらった事、帰ったら家族が増えていてビックリしてしまったことなどを話した。
……ただ、私より両親の方が強いという事が発覚して呆れられたり、弟妹可愛さにゼノ事を忘れていた事がバレて怒られたりしたのは、余談としてしておこうと思う。