転生したら狩人×狩人 作:楯樰
九月三十日
私は少し汚れている名刺を見ながら電話を掛けていた。
「うーん……出るかな……」
プルルルル…
コール音3回。
4回目が鳴ろうとしたところで電話が繋がる。
『こちらゾルディック家使用人室。暗殺の御依頼なら現在受けt「あ、違うんです。私、カトリアって言います」……あぁ、ゼノ様の御友人。私、ゼノ様の専属の執事をさせてもらっておりますので話はよくよく聞かされております……十年経っても連絡来ないと。して、何の御用でしょうか?』
電話が繋がったのは使用人室のようだった。
十年間音沙汰無しは拙かったか。悪い事しちゃったかな?
……というか当主になったのか、ホントに悪い事してるわ、私。
『……御用件は?』
「あ、御免なさい。えっとですね、近いうちに家族で訪問しようと思っていまして。何時頃伺ってもいいのかなぁ……と思った次第でして」
『……はい? 御家族で、ですか?』
「そうです」
『そう、ですか……分かりました。今現在ゼノ様達は長期の依頼に出ておりまして、帰ってくるのは一ヶ月ほど後になりますが……よろしいですか?』
「一ヵ月後……了解です。じゃ、一ヵ月後家族で訪問しますのでよろしく伝えといてください」
『……わかりました。それではまた、一ヵ月後に』
ガチャ
私は向こうの電話が切れるのを確認して受話器を置く。
これでアポイントは取れた。
あとは一ヵ月後を待つだけだ。
十月三十日。
前の世界では段々と冷え込んできたと感じるだろうこの季節に、私は生まれた。
今日は私の十五歳の誕生日である。
そして今は家族全員とククルーマウンテン行きのバスに乗っている。
「……十五年かー…早いもんだなぁ~…」
「姉ちゃん、オッサンくさい……」
「もーうるさいなぁー。馬鹿ラディの癖に」
私が少し呟くと弟のラディストがすかさずツッコんで来る。
ラディストは父さん似の黒い髪を短めに切っていて、イケメンになりつつある。
あと、なんか最近生意気でお姉ちゃんとしてはちょっと悲しい。
「なっ! 馬鹿じゃないし! 姉ちゃんこそ学校行って無いくせによくそんな事言えるな!」
「ラディ。リア姉さん学校行って無くても私達に勉強教えられるほど頭良いのに……何つまらない意地はってんのさ(……確かにおっさん臭いけどね)」
「うぐぅ……」
で、妹のビスケットはそんな双子の兄をなだめる。
うーむ。仲良い事は良い事だ。
あ、あとビスケ。聞こえないように言ったつもりか知らないけど聞こえてるからね?
……いや、わざとか?
「はいはい、静かにしなさい二人とも。カトリアがおっさん臭いのは今に始まった事じゃ無いでしょう?」
「「…はーい」」
……お母さんは今も若々しい。
この前幾つになったか訊いたら40だって。
やべーよ。まだ二十代後半にしか見えん。
今、空気になって外の景色を眺めている父さんは母さんと同い年で、童顔から少し大人の雰囲気を帯びて少しかっこよさが増している。ま、普段の行動が未だに若々しいけども。
ちなみに私は少しくすんだ金髪にウェーブがかかった髪型で、お父さん譲りの黒目。それからお母さんみたく将来に期待が持てる胸のサイズをしている。
別に毎日揉んだからということは決して無い。マジで。
ああいうのは、他の人のを揉むのが一番いいのだ。
自分が持っていても肩が凝るばかりでいい事なんて一つも無いんだから。
『……次のククルーマウンテンは暗殺一家、ゾルディックの私有地であり……』
っと、ガイドさん曰くそろそろ着くっぽい。
そろそろ降りる準備をしますかー。
「うぉーでけー!」
「………(開いた口がふさがらない)」
上から順にラディスト、ビスケット。
それぞれ1から7と数字が書かれている大きな扉を見て思い思いに驚いている。
まぁ当然か。
私は五歳になる前来た事あるから別段と思うところは無い。
懐かしいなーって事ぐらいかな。
「いやー懐かしいわねー……前来たのは十年くらい前?」
「そうだなー……前はカトリアが四の扉まで開けたんだっけ?」
両親二人はうんうんと頷きながら感慨に耽ってる。
でもちょっと待て二人とも!
「え……リア姉この扉開けたの?!」
「あっちの小さいほうの扉じゃなくて!?」
ほらぁ…今それ言ったらこうなるでしょうが。
「はぁ……そうだよ。多分二人も開けれると思うけど?」
「「はい!?」」
そうだ。多分4の扉くらいは行くだろう。
なんせ今ではいつも使う箸ですら合計二百キロくらいなんだから。
軽いなーと思っていたら、いつの間にか重くなっていたっていう不思議。
私はまだ見ぬ両親の発じゃないかと考える。
「ちょ、バスの中でも聞いたけど! …ホントに姉ちゃんの友達って暗殺一家なの!?」
「そだよ」
「あはは……」
ラディは何処か目が虚ろで乾いた笑いを漏らしている。
……信じてなかったのか弟よ。
「じゃ、まずはビスケから開けてごらん」
「う、うん…」
父さんは固まっていたビスケットに声をかける。
ビスケは恐る恐る扉に近寄って遠慮がちに押す。
重いものを引きずる音がする。
結果……4の扉まで開けた。
「うそっ…!」
「うーん。4までかー…。あ、そのまま中に入っといで」
「じゃ、次はラディね」
「う、ん…………ビスケにも出来たんだから僕にも出来る!」
ラディは扉まで近づくと、ビスケみたいに恐る恐るではなく力一杯押す。
そしてラディも自分の力に驚きながら、同じように4の扉を開けて入っていった。
「はぁ……次、私行くね。……二人とも後であの二人に説明したほうがいいよ?」
「うん、そうね。後でしとく」
「あはは……」
私は念無しに
……やっぱり恐いね。うちの家族。
それからは遠くの方に見える大きな屋敷を目指しながら弟と妹の二人に、お父さんがハンターだという事、あの扉を開けれた理由を話しつつ、えっちらおっちら家族仲良く歩いていった。