転生したら狩人×狩人 作:楯樰
みんな大好き!
……かは分からないが格闘家達にとっては腕試し、プロハンター達にとっては良い金儲けの場所。
此処、天空闘技場。
『天空』と名がつくだけに雲をつき抜けるほど高いこの塔、二百階以上の高さがある。
そして現在そのデカイ建物の下で長い行列に並びながら塔を見上げていた。
すごいよなぁ~……どうやって建てたんだろうか。
――見上げながら並んでいると後ろから声がかかった。
「……うん? なんですか?」
「お嬢さん、アンタの番だ。 早くしてくれ」
「あ、ホントですね。すみません……」
私は謝りつつ受付で登録を済ます。
それから声の主の顔を見てみるとコレはまた私より四歳ほど年上そうな銀髪の男の子が……。
「ほー…えらくしっかりしてるんだな。お嬢さんは何歳だ?」
「五歳ですが……って知ってました? レディに歳を聞くのはダメなんですよ?」
「ぷは!」
少年はつぼに入ったのか腹を抱えて笑い出す。
コイツ……!
ひとしきり笑った後、少年は受付を済まして私のほうに来る。
「あんた、ホントは何歳だよ……! 五歳児はそんな捻くれて無いぞ?!」
また笑う。
イラッとくるなぁ……
「いいですよーだ。……試合の時覚えてなよ?」
「へぇ言うじゃねぇか。ま、すぐに片がつくと思うけどな?」
少年は笑うのを止め目を細めながら調子づく。
……私の事、舐めてかかってら。
「いいよ、じゃあ試合のときにやろう。……お互い頑張ろうね?」
私は最後、ぶりっ子をしながら手を差し出す。
そして少年は毒気を抜かれたように呆気に取られた表情をしていた。
「お、おう! ……泣いても後悔すんなよ?!」
そして私と少年はこんな感じに握手をして分かれた。
それから私は選手控え室に行き、出番を待つ。
周りからは何であんな小さい子がなんて声が聞こえるけどとりあえず気にしない方向で。
それからしばらく待っていると呼ばれる。
審査会場に行くと相手が居た。
どうやら相手はムキムキの自分の肉体に自信を持っている選手のようだ。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
相手は身体に似合わず私の事を心配してくれる。
やさしいなこの人。
……気絶で許してあげるか。
「大丈夫ですよ。審判、始めてください」
審判からの説明が入る。
そして『初めッ』という掛け声とともに相手の背後にまわり、首に手を当てて気絶させる。
……この間僅か0.3秒。
私は元の位置に戻ると呆気にとられている審判に声をかけて正気に戻させる。
「か、カトリア選手ッ! ご、ご五十階へどうぞ」
……どもり過ぎだろ審判さん。
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初めての試合から一ヶ月経った。
その間は百五十階から百九十階までを行ったりきたり。
おかげでポケットマネーが五億くらい手に入った。
さて今日もがっぽり稼ごうかと思っていると、今居る階の受付から二百階にあがらないと向上心が無いものとして除名するといわれたので、無理を言ってあと一回受けたら上がると言う条件で最後一回、百九十階レベルで受けさせてもらった。
で、最後の試合の相手というのが、
「あー!」
「よっ! 久しぶりだな、お嬢さん?」
……イケメンになるであろう、あの銀髪だった。
審判が『ゼノ』って名前らしい少年と私に確認をとりながら始めの合図をする。
私は自然体でありながらゼノ少年に話しかける。
うん? ゼノってどっかで聞いたことあるぞ?
「上がってこれたんだ……意外だわー」
「お前なぁ……観てなかったのか、俺の試合」
「だって上がってこないって思ってたから……ね! 」
ゼノは私と同じように背後に回って首に手刀を入れてこようとするが後ろに手を回してガードする。
ゼノからは、へぇーと感心したようなそんな声が漏れた。
「……で、ゼノは観てたの? 私の試合……!」
私はガードからゼノの手首を持ち場外へ向かって彼を投げつつ訊く。
「あぁ、観てたぞ。悪かったな馬鹿にして……化け物みたいに強いって噂が立つくらいだったからな……!」
「うん? あー気にして無いよ?」
ゼノは空中で体勢を変えながらリング内に音も無く着地し、私に向かってくる。
――……ほぅー、中々やるではないかゼノ君。
……というかそんなに有名だったのか私。
私はゼノの脳天ぶち抜くつもりで左の拳を振るう。
「実感無いんだけどなぁ~と」
「は、何言ってんだか!」
彼は軽々と避け私のボディー狙って殴りかかってくる。
左手のパンチの勢いと足のステップで一回転してかわし、空いていた右腕をがら空きの彼の背中に叩きつける。
彼はそのまま避けて……ってあれ?
「ぐはっ!」
避けずにもろ喰らってそのまま床に叩きつけられた。
あ、ステージが窪んだ。
「おーい、ゼノ君ー」
「………」
……無反応。
「しんぱーん、カウントー」
「はっ!? 1、2、3……」
審判のカウントはそのまま続き、
「ゼロ! ……試合終了! 勝者、カトリア選手ッ!」
……歓声が響いた。
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百階台、最後の試合が終わった後。
私はゼノの部屋に見舞いに行っていた。
「おーい、ゼノ君ー。入るぞー…って何やってんの?」
「うん? お前か。見ての通り筋トレだが?」
……何処に指一本で針の上に逆立ちしつつ腕立てをやる奴がいるんだよ!
「はぁ……とりあえず降りなよ」
「後一回。…5000と……で、何の用?」
針から降りたゼノはベッドの上に座ってくつろぐ。
「いや、怪我して無いかなって思ったから来たんだけど……元気じゃん」
「あ? その事……別に怪我はして無いな。うん」
「……やっぱり。なんで続けなかったの?」
やっぱりこいつ、わざと負けたな?
「いや、そんな凄むなよ。多分あのままやってたら俺負けてたし、それにお前なんか隠して戦ってたみたいだったからな」
“二百階までが目標だったし”とゼノは付け加える。
あーなるほど。いい判断だ。
「それで今日中に百九十階台をクリアしたって訳ねぇ…」
「そういう事。……という訳で俺は家に帰るんだけど……お前はどうすんの?」
二百階か……上がってもいいかな?
……ヒソカという名の変態はまだ生まれて無いだろうしね。
「あー…上に行くけど?」
「そっか。じゃ、コレ渡しとく……お前のこと気に入った。暇な時にでも遊びに来いよ!
ちょっと俺の家変わってるけど…歓迎するぜ?」
「そう? まぁ、ありがたく貰っとく」
私は彼がポケットから出した名刺みたいなのを貰って自分のポケットにしまう。
その様子を見て彼は立ち上がって近くに纏めてあった荷物らしき鞄を背負って扉に向かっていく。
「じゃあ俺、帰るから。また今度な」
「うん、またね」
“あ、そうそう”と彼は立ち止まって、私のほうを振り向いて言う。
「……俺達って友達になるのか?」
「うん? そうじゃない? 私はそうかなって思ってるけど?」
「ふーん。そっか、そうだな! じゃあなカトリア!」
私の言葉を聞いたゼノは何処か嬉しそうにして帰っていった。
この後、ゼノから貰った名刺を見て彼がゼノ=ゾルディック……遠くない未来でのゾルディック当主その人だという事に気づいて驚いたのは忘れてもいい記憶だと思う。