転生したら狩人×狩人   作:楯樰

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微笑みって本来威嚇を隠すために生まれたってエロい人が言ってた。

 

――私の攻撃を軌道をずらすように受け流す。

 

規則的に。時に変則的に。

 

……連続して行われる私からの攻撃を彼女は予断なく確実に後方に流し、攻撃の隙を突こうとしてくる。

ジンが攻撃的な戦闘スタイルならば――この子は防御的戦闘スタイルだろう。

実際攻撃的な性格ではないし、戦うことを本来嫌ってる。

 

その性格は彼女の開発した『発』が物語っている。

 

彼女は放出系。放出系の念能力者らしく、強化と操作にもそこそこの適性がある。

開発した『発』は「自分が『纏』の状態で、攻撃された箇所を『硬』にする」というもの。

自分の身に危険がある攻撃が行われた場合、自動的に『硬』で防いでくれるというものだ。

 

私の教えた『激』は高速で『硬』をしている箇所を変えるということ。

 

つまり彼女に攻撃するのは必然的に『攻防力100の箇所に攻撃を当てに行くような愚行』を選ぶ事となる。

まさしく『激』は彼女の『発』のためにある応用技と言えた。

 

ただ、弱点として一つ。

 

「――っきゃぁ!!」

「ふっふっふ……捕まえたぁ……」

「ひっ……!」

 

……被弾箇所が増えれば必然的に攻防力が下がる上にオーラの消費も増える。

私の髪のように面による攻撃に対して、おまけに身体を拘束できる人間にはどうしても弱い。

彼女――ミトちゃんはあっさりと私に捕まり雁字搦めに、口と手足を縛られた。

 

「ンン――ッ!!」

「ぐっへっへーどうしてくれよっかなぁ……!」

 

……ミトちゃんはこの後私に擽られ、悶絶して気絶。

 

「カトリアさんのバカぁ……!」

「ごめん、ミトちゃん。……でもだからってジンの急所を蹴り上げるのはよくないと思うの」

「――ッ――っっ!!」

 

案の定、目覚めたミトちゃんは涙目激昂。

八つ当たりに男限定の急所を蹴られたジンは泣いていい。

なんなら胸も貸してやる。

……元男で痛みがわかる私が治してあげるから。

 

 

――と、まぁ朝のミトちゃんとの組手でつい触手○○○的な意味で魔が差してしまった私。

それから、私にかなわないからという理由の元、八つ当たりとして色々な意味で死にかけた哀れなジン。

そんな可哀想な彼に胸を貸してやり、せめて安らかに泣かせてやろうと思ったら遠慮なく揉まれてしまい、思わず1割の力で殴ってしまったが、私は悪くない。

 

……いや、まさか初めて首が取れた状態から死者蘇生をする事に――ゲフンゲフン。

 

そんなひと騒ぎがあった今日。

 

「じゃ、午後は休みにしよっか」

「はい」

「えー修行しないのかよー」

「ジン、休息も大事だっていったでしょ? 大人しく師匠の言うこと聞いときなさい」

「ちぇ……」

 

機嫌を治したミトちゃんは素直に言うこと聞いてくれるので嬉しい限りだが、ぶーぶーとジンは不満そうだ。

いや、ジンのためなんだけどね? 覚えてないだろうけど一回死んでるんだからね?

……もしものことがあったら不味いから休ませようと思ってるのに。

あ、いや、うん。ミトちゃんとジンにとっては何もなかったね。

記憶には御座いませんだもんね。

血しぶきの雨なんてグロい映像はなかった。

 

「……でも、急に休むといっても何して過ごすんですか?」

「いやぁ、ま、そーなんだよねー……実は無計画だったり」

「えー……無計画かよぉ……なら修行でもいいじゃんかー」

 

ジンの言う通り前言撤回して修行っていう手もあるけど……あ、そうだ。

 

「ちょっと心源流の道場行ってみよっか? そろそろ常識的な念能力者の姿を見るべきだろうし」

「「――はい?」」

 

……そろそろ自分たちがどの辺にいるか知った方がいいよね。

 

 

二人を連れて《テレポーテーション》で心源流道場前まで跳ぶ。

 

「入るよ、二人とも」

 

門を潜り抜け、見上げていた二人の手を引いて中に入る。

二人に見えないようにハンターライセンスを見せて、受付の女性に名前を告げて入らせてもらう。

 

「え、顔パスですか?」

「まぁね」

「……」

 

私がハンターであることはバラしてない……なんだか言い出せないものでして。

道場の広間では丁度、道生達が思い思いにグループを作り雑談しながら休憩をしていた。

 

「あ? 誰だ、あの子連れの母親は」

「いや、よく見ろ。全然似てないぞ?」

「……あぁ、ほんとだ。確かに似てない」

「……でも何たってウチに?」

「さぁ?」

 

ちらほらと私たちの話が聞こえるが無視だ。

ただ、視線のきつい人たちに睨まれてかミトちゃんは少し私の後ろに隠れた。

対してジンは堂々たる態度で……の割には私に手をつながれて嬉しそうなお子ちゃまにしか見えないのは何故だろう?

 

……ちょっと居心地の悪い空気の中、私たちは彼らの視線から抜け出して奥に進み扉に手をかける。

妹と弟曰く、念能力者とそれ以外の者たちを区切るためにあるこの扉は、『纏』で纏ってるオーラに反応して開けれるようになっているらしい。

なるほど。実に簡単だ。

 

――そして扉を開いてすぐ。

飛んできた人間を受け止め、その場で衝撃の緩和のために回転させ、地面に降ろす。

 

「や、ラディスト」

「え、あ……姉ちゃん」

「……来ちゃった!」

「来ちゃった! じゃないよ、まったくもう…!」

 

稽古相手を投げてきた我が弟のラディスト=クルーガー。

会っていきなりため息を吐かれた件について。

 

……お姉ちゃんちょっと寂しい……!

 

-------------------------

 

「……おいリア姉。俺、仮にも師範代なんだけどさ」

「そんな怒らないでよ、もう……」

 

ラディストに別室に連れ込まれて身勝手すぎだと怒られた。

 

連れ込まれてってとこだけ聞くと私とラディが――――あー実の姉を殴るんだー!

 

ふぅ……まぁ、私と違って立場とかあるし仕方ない。

でも此処くらいしか普通の念能力者に伝手があるとこないんだもん。

念能力者で知り合いといえば暗殺者でしょ? ハンター協会の会長でしょ? あとは……最近念の指導を受けたらしい刀鍛冶の御影くんくらいだ。結果どいつもこいつも際物ばっかり。

 

「ラディ、お願い!」

「はぁ……わかってるんならいいよ。……見学も許す」

「やった! じゃ、此処の念能力者戦わせてももらってもいい?」

「見学って言った……はぁ。うん、もういいよ」

 

ラディストは「やれやれ」と額を押さえて言う。

呆れた視線で見られてお姉ちゃん辛い。……でも悔しい、感じちゃ…!

 

……ゴホン。

 

許可降りたーと道場に続く扉を開きながら言うと、男性と言い争っていたらしいジンがこっちに振り向く。

 

「どうしたの、ジン?」

「あ? てめぇが此奴の師匠だって?」

「……そうだけど? ちょっと待ってて、ジンと今話してるから後で」

 

一応突っかかってきた男性のおかげで状況把握。

でももしかしたらがあるのでジンに聞く。

 

「それで?」

「お前の師匠なんて大したことない、っていってケンカ売ってきた」

「……ふーん、なるほど。じゃそっち、何か弁明は?」

「実際大したことねーだろ? 事実『纏』すらしてねーみたいだし。知ってたか嬢ちゃん、念能力者なら普通『纏』使って日常生活してるもんだぜ?」

 

あーなんだろう。久々にお嬢さん扱いされた。

ケタケタと何がおかしいのか一人で笑っているけれど、ほかの人は全然笑ってない。

私の予想通りだったけど……なるほど、典型的な空気読めない人だった。

 

「ちなみにさ、さっきまで貴方いたっけ? ……おーいちょっと聞きたいんだけど、この人さっきまでいましたー?」

「い、いえ……今日は遅れてきたみたいで……」

 

丁度近くにいた、さっきラディストに投げられた青年に聞く。

顔が青ざめてるのは……あぁ、うん。知ってるもんね。いつもより多く回されたものね。

 

「ちなみにさ、貴方、私の名前聞いてないのよね? じゃ、名のっとくね。……カトリア=クルーガー。貴方たちの師匠の姉よ。……ラディストーこの人で試してもいいー?」

「なっ……!?」

 

「――……はぁ……良いけど、殺すなよ姉ちゃん」

 

後ろに来ていたラディストに驚いたのか、それとも変わりようのない事実と現実に血の気が失せたのか。

にっこりと、私はこちらに向いた彼に微笑んだ。

 

 

える、しってるか。ほほえみってほんらいこうげきてきなものらしいぜ。

 

 

 


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