転生したら狩人×狩人   作:楯樰

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妹は言わずもがな、意外と弟の猫耳が似合っている件。

実家に帰った次の日の朝。

弟達を呼び出し、《箱庭(バビロニア)》の中にしまっていた今は亡き父と母の体と残された手紙を見せた。案の定というか二人は泣いて、それから呆れた。声を揃えて『あの二人だから仕方無いか』と呟くのも忘れずに。

 

 

ちなみに遺体の処理については、特に手紙に書いて居なかったためそのまま《箱庭》の中にしまっておくことした。

もう二度と会えないと言うわけでは無いために、葬儀を粛々として悲しめないため。……もしやってたら葬儀を取り仕切る人におかしな目で見られる事は必須だった。

なんせ死者の眠りの言葉を受けている途中で笑いそうになってしまう自分が容易に想像できる。

 

両親が死んだ事はネテロ会長、ゾルディック家当主である我が友人ゼノ君にも伝えた。

しかし、“心中お察しします~うんたらかんたら~”的な反応であったため、思わずふき出してしまい、私の品性を疑われる事件も勃発。

理由は話せないため“あの二人なら生き返る”とだけ言っておいた。

まぁ、勿論疑うわけで。信じた理由が「私の親だから」なのが少し気にくわない。……まぁ、それしか信じられる要素が無い私にも問題があると思うけど。

……ちなみにだけど、死体遺棄じゃない。ハンター協会会長に頼んで死亡扱いにして貰ったから問題なし。

 

 

で、そんな徒然も無い事考えてる私は……

 

「ん、リンさんおかわり」

「分かりました、カトリアさん」

「……はぁ。人の嫁を使うな、このおバカ。……リンもついでやるな」

「え、でも……それだとお腹減らしてるカトリアさんは……」

「あ、いや……すまんな、うん。ついでやってくれ」

 

……嫁の泣きそうな顔に弱いゼノと、そのお嫁さんのリンさんを家に招いて昼食の最中だ。

あぁ、リンさん可愛い人だよ。

ホント、ゼノには勿体無いなぁ……。

 

「……リンさん泣かしたら怒るからね」

「お前のせいだろうが!」

「ビスケがだけど」

「お前じゃないのかよ!」「私が!?」

 

お茶碗を受け取りつつ目の前に座るゼノに凄んでいると、ゼノと私の隣に居る妹が叫んだ。

……あぁもうゼノのやつ。つば飛んできたじゃん。

顔を拭きつつ、ビスケの顔についてたご飯粒をつまんでゼノの顔に向かって飛ばす。

案の定、箸で摘んで止められた……あ、食べた。

 

「……で、ビスケ。お前は私に文句があると申すのか?」

「別にそんなことはないけど。……でも今のはお姉ちゃんが「こんな可愛いリンさんを泣かしてもいいと?」駄目」

「……じゃあ泣かそうとしたゼノは?」

「ギルティ……!!」

……良い感じにビスケが怒ってくれた。

「おいお前。妹を誘導して俺を貶めようとするんじゃ無い……食事中だっつうのに」

「言いつつ、ゼノさんも飛んできてる箸掴むんですね……おい、ビスケ止めとけ。コップは危ない」

 

中身の無いコップを振り上げ投げつけようとした腕を、弟が諌めた。

……ビスケのヤツさらりと周してるし。

 

「……ちっ! 寿命が伸びた事を有り難く思うことだナァ!」

「……お前一回本気でヤルか?」

 

ジョ○ョ的な“何か”を体の隣にだすビスケに、同じくして背後から龍のようなオーラを発するゼノ。

 

「――いい加減にしなさい!」

「「はいぃ!!」」

 

食事時の小さな喧嘩は、啖呵切ったリンさんによって鎮められた。

 

 

そんな中、黙々と食事を済ませた私は、

 

「……カトリアさん、あとでお話しましょう?」

「…………はい」

 

逃げる前に猫のように襟首を掴まれていた。

……ゴメンなさい、だって二人を弄るのたのs――にゃぁあ……。

 

-------------------------

 

両親の死や色々と伝えるために招いていたゾルディック夫妻は家に帰った。

私と言えば、十二歳になったシルバ君に会えなかったのが残念だった。

なんでも私に会うのが嫌で、行かないと駄々を捏ねたらしい。……駄々を捏ねる事は珍しい出来事だったそうだ。

私の自慢のお胸で窒息させてやろうと思ったのに……あぁ、残念。

 

「姉ちゃん」

「……何かな弟」

「その耳は」

「……何も言うな。一年間コレで過ごせってリンさんに言われたんだんよチクショウ」

「は、ははは……」

「なにそれ可愛い」

 

二人が欠けた、一家団欒の時間を過ごしている私はぴくぴくと頭に生やした猫の耳で答える。

ビスケの目が危ないです。ほんのり貞操の危機を感じる。

にしても、どうやらビスケちゃんは羨ましい様子。生やす。

 

「分かった? それをつけると言う屈辱的な何かが」

「そんな猫の耳生やしてドヤ顔で……ぷっ」

「……え」

 

呆けているのがビスケット。ビスケのほうを見て吹きだしそうになっているのがラディスト。

……猫耳のビスケットは可愛いのぉ。

 

「な、なぁあああああ!」

「はっはっは!」

 

色々とおかしな事で笑う私達一家。

本来ならば超常の出来事である事ですら話の種にする私達は、やはり何処か狂っているのだろうと頭の隅で思う。

 

……といっても今更過ぎてシリアスになんてなぁ、と思う自分も居るわけだけど。

 

「リア姉! 治して!」

「よっし、私に一撃当てれたら治してあげる」

「うわぁ……」

「というわけでラディストも……ほいっ」

「俺も!? ……あ、生えてる……」

 

ポン、と音がなる事も無く、頭にもう一対の耳が生えた弟と妹を足元から《箱庭》送りに。

浮遊感に驚きの声を上げながら二人とも落ちて行った。

 

……さぁて、ちょっくら修行しますかね。

 

-------------------------

 

《箱庭》の中に入り、すぐさま目の前に迫る不可視の豪腕。

まずはビスケだった。

 

彼女の念能力は三つのモードがある。

一つが本来の能力たる《魔法美容師(マジカルエステ)》のクッキィちゃん。

二つ目が、そのクッキィちゃんを身に纏い、自分を会った事のある人間に姿を変える《美之模範者(ビューティーモデル)》。

三つ目が自分の能力の名前を知る人間以外には見えない念獣で、触った対象の細胞を弄れる能力を使える《幽波紋(スタンド)・クレイジー・ビスケット》。

治癒の性能を極限にまで対象に与えて自壊させるのもよし。

普通に殴りつけて壊すもよし。

……まぁ、言ってしまえばクレイジー・ダイヤモンドの再現なだけだ。

いや、ある程度弄れる事と自分の体もなおせる(・・・・)事で少しばかり違うか。

 

……とは言え、

「――当たらなければどうと言う事は無い、ってね」

「えっ……!」

迫る豪腕は私の体を透過し、振り抜ける。

 

……能力の改造でネタに走った私には弱点が分かる。

その原作のビスケットの姿をした、それの腕の第二関節より下に直接当たらなければ良い訳だから。そのため念で具現化した身体に当たっても意味が無い。

「だからこうして腕を掴めると…!」

「ちょっとなんで!?」

「いや、凝したら分かるんじゃ無い?」

「はっ! 念の具現化?!」

ビスケットから見えるのは恐らく念の塊。

そして本体の私は横から殴る。

「がッ…!」

「というわけで! ……ビスケットは脱落っと」

脇腹からのクリーンヒット。

空気が漏れ出て少し浮き上がる彼女の身体に、延髄に向けてのかかと落としで意識を刈り取る。

肉親にコレは無いだろう、と誰かが言いそうな気がするけど、コレが私達一家なのだ。仕方無い。

 

「おっと、……奇襲? 失敗失敗」

「あぁ、クソ!」

突如として背中に生えた腕はラディストの回し蹴りを払う。

ビスケットがやられた瞬間を狙ってきたようだけど甘い。

「ホンット! 人間の範疇超えてるよ、この姉は!」

「て、照れるぜ…!」

「褒めて無い!」

「あ、うん。ふざけてみただけ。……猫耳、似合ってるよ?」

「ガァあああああ!」

おう、こわいこわい。本心言っただけなのに。

顔が真っ赤だ。照れてるからか、怒っているかは……まぁどっちともという事にしとこう。

でも残念ながら怒るのは得策じゃない。

 

「……せやっ!」

「ぶっ!」

 

死角から正拳で一突き。

顔面に入り、ラディストの美顔が痛みで歪む。

「これでも気絶してないのか。頑強になったなぁ……ラディストも」

「う゛っさ……い! ふぅッ!」

『廻』をしたのか顔の腫れはすぐさま引き元の美青年に戻る。

それでも口の中を切ったようで、血の混じった唾を吐いた。

 

「うーん……次は脳を揺らすか……」

「おっそろしいこと考えるよ。……でもありがとう、おかげで少し冷静なれたから」

「……なら早く、」

「俺のためにやってくれたんだろうし、ちゃんとお礼は言うよ」

 

ニコリと女殺しの笑みが炸裂。

くっ……無自覚ながらイケメンレベル高すぎ。

あーやばい。顔が赤いかも。

 

「……姉ちゃん?」

「うるさい! さっさと掛かってこい!」

「じゃ、遠慮なく…!」

 

そういって放ってきた蹴りは防御が甘かったせいか、私の身体が少し左側に浮く。

「これ、一撃にはいる?」

「はいんない!」

大きく一息吐いて、一回心持ちを整える。

少し思考がすっきりした。

「……ふぅ。ちょっと本気出すか」

「お、お手柔らかに…………しまったなぁ」

ボソッと言った言葉から察するにコイツ自覚してやってたか。

地面を一度に四回蹴り、一気に加速し近づく。

 

「や、やっぱはえー…」

「あらどうも。じゃ、気絶コース――行ってみようか?」

 

鳩尾へのアッパーカット。

そのまま上へ振りぬき、ラディストの身体は浮き上がり白目をむく。

呼吸困難確実の一撃に加え、拳を抉りこみつつ内蔵に直接ダメージ加えたから気絶は確定。

内臓破裂は必至だったが、治しつつ殴ったためならなかった。

「……ほか骨折、傷諸々と異常なし」

同じく寝息をたてるビスケットも異常なし。

まぁ二人とも善戦した事だし、猫耳は止めてあげよう。

 

……私はそのままだけど。

 

私に猫耳を生やさせたままにするリンさん。……あの人、実は天然の念能力者だ。

針を使うその筋の家の出身らしく、針を刺した相手に一つ命令出来るんだとか。

……だからなのか、暗殺一家として名高いゾルディックに嫁入りしたらしい。

 

「……やっぱりそうなるのかなぁ」

ゼノの一番孫はお婆ちゃん子か、と考えが飛躍して声がでた。

傍らで眠る二人の頭を膝の上に置く。

二人を撫でながら、これからの事を考えつつまどろんだ。

 

――……あ、そういえば。

 

「二人とも。お墓の前で戦闘しちゃって……ごめんなさい」

後ろ手に見える念で出来た二つのお墓に一つ、手を合わせて頭を下げる。

……うん、居ないと思うけど……ゴメンなさい。

 


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