転生したら狩人×狩人 作:楯樰
1961年4月7日。
晴れ晴れとした天気のこの日。
……私は不老化して以来行動を共にしているビスケと近くの森の奥、古代の遺跡があると噂される街に来ていた。
此処へ来た主な理由としては、此処しばらく修行漬けで限界が近かったビスケの息抜きと、ハンターとしての仕事の最低限の仕事をこなすためこの街にやってきた訳である。
先程、屋台で買ったねぎまのような串を食べながら見てまわったが、街は活気に溢れ、私の第二の故郷であるジャポンとは違うものの観光としてはそこそこに楽しめた。
ちなみに私のハンターとしての主な仕事は未だ決まってない。
強いて言うならば悦楽ハンター……とでも言った所かな。
内容は一般常識内で自分が赴く侭に動く事。
傍から見ればハンターらしくないと思われたりするかもしれないけど、ハンターなんてそんなもんだろうとか思ったり。
……ほら、ジン=フリークスなんてゲーム作ったり遺跡の発掘したり分野問わずで将来するっぽいし。
自分で言うのもなんだけど、駄目人間になりそうだとか言われそうでちょっと嫌な仕事名だったり。
まぁ、そんな事よりも……
「うわぁ……リア姉ー、これ可愛いと思わない?」
「あー、はいはい可愛いよー」
「むっ、お姉ちゃん酷くない? それに一応女の子なんだからちょっと位興味持ちなよ……もったいない!」
「だーかーらー! 私の服の趣味と全然違うでしょうが! 私は着物が好きなの! 異論は認めん!」
「……!?」
「~~!!」
ゴシックドレスをひらひらと自分の胸に当てながら訊いて来る妹。
正直私の服の趣味とはかけ離れているので可愛いとしかいいようが無い。
……妹の買い物に付き合うのホント大変なんだけど。
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「ふぅー…買った買った♪」
「はぁ……私の事ぜったい荷物運びにしか考えて無いでしょ?」
「そんなことないよー…って痛い痛い! アイアンクローしないで! マジ洒落になんないからぁ!」
……ふんぬ。
「め、メキっていったぁー! わ、私が悪かったですぅー!」
まったく……分かればよろしい。
ふぉおおお、と頭を抑えながら唸っているビスケットの頭蓋骨の形を治し、再び森の中を進む。
通称迷いの森。
現地では人が入ってくる事を拒む神霊が住む森だとか。そして森の奥には神霊を祭る神殿がある、と。
だが来て見ればなんのその。
その実態は、昔森の中で住んでいた先住民族が念によって作り上げた自然の迷路だった。
ついでに言うと今向かっている遺跡もその民族が作り上げたピラミッドだという話らしい。
情報元はその民族から追い出された女の人の曾孫。
その人自身が年老いてもう自分では確かめる事が出来ないと言う事で、ハンター協会に依頼投稿されたものである。
ただこの依頼。十年近く前からあって、誰一人としてこの依頼を受け、帰ってきた人間はいない。
依頼者も既に死んでおり、ハンター協会が「お手上げ」とした内容だったりする。
そしてこの依頼を勧めてきたのがあのエロジジイ、もといネテロ会長。
あの臨・廻・剛を齢82歳で修めちゃった私より人外なお人で、笑わせる事に、最近若返ってきてる、セクハラが増えたと協会の方に遊びに行った時秘書が愚痴ってた。
そして最近では修行にばかり打ち込み、書類整理とかを完全に副会長と秘書に押し付けているんだと。
副会長はこの前、会長仕事しろ! とぐでんぐでんに酔った時言ってた。
ちなみ言うとにまだパリストンっていう『ハハッ!』って笑ってそうな
多分あの二人が苦労している原因は私にあるのでちょっと気まずかったり。
ともかく未だ元気な、いや元気すぎる会長から勧められた依頼だ。
どんな事があるかわからない。
久々に円を20キロほど飛ばしてみてるけど、白骨死体らしき形状の物体が10体位反応するし。……ちょっとこの依頼ヤバイかもしれない。
「いたた……リア姉。さっきから円してるみたいだけどなんか見つかった?」
「ん~? 白骨死体が10体……今もう一つ見つかって11体位見つかった」
「うげ。結構難易度高いんじゃないの、今回」
「……かもねぇ」
せっかく休みが取れたと思ったのに……クスン、と泣き真似を始めたビスケは置いといて、円を50キロ程まで広げる。
……おお、あったあった。
「あったよビスケ。ここから42キロ地点のあたりに人工物が」
「なんでそこまで円が広げれるかな…? もうほんっと規格外。なに、ウチの姉は何になろうとしてるの?」
「――神か悪魔?」
……主に能力的な意味で。
「もぉーやだ、この姉」
自分で言うのもなんだけど、今に始まった事じゃないし気にしたら負けだと思う。
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『ザシュ、ザシュ』という音と共に、ピラミッドの入り口らしき所を塞いでいる蔦を斬桐舞で切り裂く。
「ふっ……また詰まらぬ物を斬ってしまった……」
「なにやってんの…?」
「石川五右衛門ごっこ」
「いや、誰よソレ」
むぅ。妹が冷たい。
とりあえず刀についた植物独特の緑色の汁を拭い落として鞘にしまう。
……さて、何があるんだろうか?
結果、見つかったのは二十冊ほどの念能力者が書いたと思われる手記とこぶし大の黒い石。磁性も無いし、何故か《神眼》でも分からなかった。
「……なんだろ」
「リア姉、それ宝石? 宝石なら私に……」
「いや、違う。宝石だったら分かるし、私」
「ちぇー」
この石、ホントなんだろうか。
念をレジストする能力でも備わっているんだろうか? 《神眼》が効かなかったって事を考えるとありうる。
後で弄ってみよう。
ちなみに手記については色々と『発』の考察について書いてあった。
その内の一冊だけは誰にも知られないようにしないといけない。
日本語で書かれていたこれを書いたのは、おそらく私や私の両親ディライト・クルーガーやレミリア・クルーガーと似た境遇の人物。
妹の手前言えないが、あの遺跡はまだ探索しきれていない。後で来るつもりだ。
私と同類の人間が住んでいた遺跡を何も知らないビスケと探すのは少々危険すぎる。
まぁ今はともかく、
「とりあえず依頼、完了ー!」
「……何処かで遊んで帰ろう?」
「残念、今日の夜から修行再開ね」
「ウソダドンドコドーン!」
残念! ビスケ の 休暇 は 此処で終わってしまった!
……まぁちょっと遊んで帰りましたけどね。