転生したら狩人×狩人 作:楯樰
ザバン市地下試験会場。
今年のハンター試験は受験者は542人。
内、念が使えるのは四人。
私達三人と眼鏡を掛けた青年だ。
大分
キルア君の時のような場合は私達以外殲滅しよう……手っ取り早いしね。
会長なら分かってくれるだろうし。
うし、どんと来い!
「……コレより一次試験を始めます!」
この狭い空間の中で一つだけ、ポツンと設置された扉から試験官らしき人が出てくる。
私から見ての第一印象は人懐っこそうな印象だ。
「まずはこちらへ来てください! そこで試験を行います!」
言い切るなり試験官は歩き出し、受験生はモーゼの海割りのように道をあけ、試験官は何も無い壁の前に立ち、壁を押す。
すると押した所から亀裂が入り壁のように見えていた大きな扉が開き、下へと続く階段が現れた。
「……さぁどうぞ、この下にあるフロアで行います」
私達は試験官に続いて階段を降りていく。
降りた先にあったのはリングだった。
そして審査員と思わしき男性が二百人近く。
記憶に間違いがなければ、あの天空闘技場の一階と同じ造りだ。
なるほど。コレは……
「コレから皆さんには一人相手を見つけてもらい戦ってもらいます。そして勝った人が次の二次試験に進める…」
単純明快、戦闘力と対戦者を見極める能力のテストね…。
「…ちなみに対戦者の取り合いは禁止です。話し合いで決めて下さい。そして無理やり相手を試験に誘う事も禁止しています。試合内容も相手と話合いで」
おまけに自分に有利な状況へ動かす能力も試される、と。
うーん。これは弟達とやるのは得策じゃないか。
「制限時間はコレから二時間。それまでに勝負をつけてください」
制限時間二時間。
うん、此処で全員気絶させても上がれるわけか。
ちょっと派手な事させてもらおう。
「二人とも、剛しときなさい……」
「はい?」
「え、まさか……!」
戸惑う二人。
そんな事は気にせず私は円でこの会場を包みこむようにオーラを伸ばす。
試験官の人がこちらを見ている気がするがそれも気にしない。
今から使うのは本邦初公開、私の開発した応用技……
念の応用技。
私が両親二人から教えて貰ったのは臨・廻・剛の三つ。
常日頃から臨や廻、剛をしている私だが、同時に何か新しい応用技ができないものかと考えた。
そして出来たのが三つの応用技の内の一つ。廻をつかった応用技だ。
普通の纏の状態で廻の応用で纏っているオーラを回転させる。
そうすることで某忍者漫画の螺旋丸のように、もしくは銃弾のように硬のみで行う攻撃よりも格段に威力が上がる。
そして変化系でオーラに切断力を付与、もしくは具現化系でオーラをダイヤ粒子のようにして、ダイヤモンドカッターの如く抉るようにしてやれば、さらに攻撃力を持つ。
本来防御用の技術である廻を、攻撃用に少しベクトルを変えたものが旋という認識でいい。
家族四人そろった時に見せたら、両親からは『その技術を広めるかどうかは自分で考えなさい』と言われた。
強化系や変化系能力者が習得すれば、今まで以上に他系統に対して優位性を持てる。
そして特質よりの人間は少ない。
犯罪者が増えるor強くなるのは目に見えてわかる。
よって他系統に有利な技術を考えるまではお蔵入りになっていた。
まぁ、他にも応用技作っているんだけどね。
今回するのは、円で広範囲に伸ばしたオーラを風に変化させ、竜巻の如く受験者にぶつけようって事だ。
ちなみに殺傷力は無いのでご安心を。
……吹き飛んだ時に骨の二、三本折れたらごめんね。
結果……使えませんでした。
隣に居た二人に剛で取り押さえられて、「試験官攻撃したことになったら失格になるよ!」と思い出させてくれたおかげだ。
何故気づかなかった私……。
地味に、他の受験者から「なにやってんだよ……」と呆れた視線を受けた事が、一番ダメージを受けた。
試験官の人はなんだか安堵して息を吐いている。
いや、なんか……すみません。
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私の一次試験は、あきらかに武闘派らしき男の人に声を掛けて、単純な戦闘試合にして軽い凸ピン一発で勝負をつけた。
二人はというと、ビスケットは私と同じように武闘派の男の人に声を掛けて、軽い正拳突きで合格し、ラディストは中々相手が見つからず少し時間が掛かったが、無事合格。
周りが私達に戦々恐々とし始めたのは仕方ない事と、あきらめた。
……そして続く二次試験は、高校入試レベルの筆記試験になったので、勝ちあがってきた脳筋のほとんどが脱落。
そして続く三次試験は危険いっぱい・仕掛けいっぱいの迷路を抜けるというものだった。
これは三人仲良く円を使いつつゴールした。
迷路を抜けたのは、私と弟達、あと眼鏡青年が残った。
そして既に念能力者四人になってしまったため試験は予定よりも早く終了。
結局の所、合格者は私達3人と1人となった。
で、最後眼鏡が私の連絡先をしつこく聞いてきたので、軽く念を当て気絶させ私は逃げた。
はぁ……仮にも念能力者なのに私の念くらったくらいで気絶するなんて軟弱すぎる。
と、私は呆れながらハンター証を持って説明会場を後にしようとするが、
「少し待てカトリアちゃん」
「……なんですか会長…」
…じじいに呼び止められました。
「とりあえず合格おめでとう、と言っておこうかの」
「一応ありがとう御座いますと言っときましょう」
「……つれないのぉ」
仕方が無い。ビスケ達と一緒に帰れそうだったのを邪魔されて不機嫌なのだ。
くそー! ご飯一緒に食べる約束してたのにー!
――呼びとめられた私が案内されたのは会長の仕事部屋らしき場所。机の上には書類が20㎝くらいの高さまで積んであり、仕事してなさそうである。もしかしたらこの量が毎日の事なのかもしれないけども。
「……で、何の用なんです? こんな所に連れてきて」
「いや、ちょーとだけ相談があってなぁ……」
「始めに言っときますけど書類整理みたいな事は手伝いませんからね?」
「うぐ…」
図星かい。
「ま、まぁ書類の事は置いとくとして。儂が相談したい事と言うのはだな……実力のあるハンターの中から何人かを選抜、もしくは育て上げたい」
――ちょっと興味深いな。その話。
「……それで?」
「儂としてはソレをおぬし等に手伝って貰いたいんじゃが……どうじゃろう?」
「……私達っていうと両親も含めて?」
「そうじゃ」
うーん……私の一存では決めにくい。
私だけなら手伝って上げても構わないけど……両親もとなると厳しいかもしれない。
「……私だけっていうのは駄目なんで?」
「そりゃあ構わんが……私的に言うとお前さんの両親にも手伝ってもらいたいの」
あー……なるほど。
「実の所、あの時の応用技について知りたいんですね?」
「なんというか…バレるの早いのう。師匠に敬意を全然しめさんあの馬鹿弟子二人に名前だけ聞いたんじゃが……全然教えてくれんかったよ…」
やっぱりまだこの人は習得して無いわけか。
ここまで残念そうにされると可哀相な気がしてきた。
教えて上げても……いいかな?
「臨と廻、お前と父親がやっていた剛。誰かに知れ、悪用されても対処できるよう儂にも「教えて上げてもいいですよ?」…は?」
急な事で会長、目が点になってる。
あー…どうしよ。
「おーい、かいちょー」
「……ホントだな? 絶対だぞ!?」
「はい。ただかわりに頼み事したときは聞いてくださいね」
「…うむ、出来る範囲でならやってやる!」
……。
言質、ゲットだぜっ!