転生したら狩人×狩人 作:楯樰
私が目を覚ましたのは天空闘技場近くの総合病院だった。
目を覚ましたのが二日前。
会長と私の試合があったのが四日前。
最後の《百式観音・三乃拳》をくらって二日も眠っていたのだ。
「……林檎いる?」
「うん、食べる」
今はお母さんが見舞いに来てくれていて、私の世話をしてくれている。
聞いたところ全治三ヶ月の全身打撲に全身の骨にヒビ。
うん、一人で着替えとかまず無理。
絶賛全盛期なう、であるネテロ会長の攻撃を受けて治療に三ヶ月は、結果としてはいい結果が残せたと思う。
最後にしていたのが剛じゃなく廻や臨だけだったらもっと酷い事になっていた……舐めてかかってたのは私のほうかも。
何で一発しか入れなかった、私。
はぁ……。
ま、初めから負け戦だと思ってやってたから負けても仕方ないっちゃ仕方ない。
……そして私が寝ている間に“お父さんがネテロ会長を手合せを行った”と今見舞いに来てくれたお母さんから聞いた。お母さんだけなのは、ビスケやラディはお父さんの方にお見舞いに行ったからだ。
お父さんの容態と言えば、発の行使でオーラを枯渇しかかったらしい。
彼らの、ウチのお母さんしかギャラリーの居ない試合は、辛くもお父さんの勝利だった。
何故ならお父さんの能力《一抹ならぬ引力/インフィニット・グラビティ》による単純な肉弾戦と化したからである。
能力の詳細は、簡単にまとめると円の出せる範囲内で引力を発生させたり重力を操る能力だと説明を受けた。
発生させた引力や重力はオーラにすら干渉し、具現化させられたあの千手観音ですら動く事が出来ず、会長の最高のアドバンテージである《百式観音》を封じ、私より俄然精度の高い剛と堅、鍛えた肉体と技同士ぶつかり合い、ぎりぎりのところで勝ったと聞いた。
というかお父さん、どんだけ重力大きくしたんですか。
多分百式観音が動かなくなるレベルって何千万トンとかのレベルだと思う。
あと何でウチの箸や小物が百キロや二百キロといった重さだったのかようやっと謎が解けたので、能力を知ったとき少しすっきりした。
ちなみにネテロ会長は、やはり私との戦いで内臓をやったらしいのだが、お母さんの《完全治癒/オールリカバリー》によって私と戦う前のダメージの無い状態に戻したらしい。
お父さんにやってないのは『ちょっと痛い思いしておいたほうがいいのよ』とお仕置きしたいが為だと……ただ何処か堪えている様子だったので本心としては治してあげたいのだと思う。
それでも、無茶をするって言い出したお父さんが悪いんだし、それに一歩間違えば私じゃなくお母さんも巻き込まれそうになったから、反省しろって言うのも本心だと思うけど。
お母さんの《完全治癒》は対象の記録しておいた時間の状態に、記憶以外戻すというもの。なので修行の後使ったりすると、時間が巻き戻るわけだから修行をした意味が無い。
あと死人には使えないとか色々誓約があるそうだが割愛。
で、結局の所使うのは、もっぱら実戦の後とか治せないような怪我をしたときくらいだ。
――私は今回ネテロ会長に対して浅はかな考えだったのを戒めるため、してもらっていない……自力で治すつもりでいる。
とりあえず話を総合すると……ウチの両親マジパナイ。
でもそんなチートで半端無い二人だけど、
「……林檎剥いたけど、自分で食べれる?」
「無理かも……お母さん食べさせて」
「はいはい♪」
…優しい事には変わりない。
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さて私が目を覚まして一週間。
今では骨も完全に治って試合前よりも元気かもしれない。
全治三ヶ月? ……廻が使える私に抜かりはなかった!
と、おふざけもさておき、今は私の主治医である先生に体を見てもらっている。
ボーイッシュな感じの女の先生だ。
第一印象は男女問わず好かれそうって感じ。
「うん、むくみも見当たらないしレントゲンにもひびは見当たらない…………完治してるね。まったく君といい、君のお父さんといい何でこうも医者泣かせなんだろうね……」
「ははは……」
――まさか、念能力者だからなんですーなんて言える訳無いよね!
「……ま、いいさ。元気な事には変わりない…もう退院してもいいよ。ただし、一週間は様子を見て無茶な事はしない事。わかった?」
「はい。じゃ、今日でもう帰ります……ありがとうございました」
「うん、もう来る事が無いようにね。身体は大事にしないとだめだよ?」
「はーい。それでは失礼しまーす」
私は深く礼をして診察室を出る。
ふぅー……一週間何もする事がなくて暇だった。
実は剛をして四時間くらいボーっとしてたら直ったなんていえるわけが無い。
じゃあ一週間何してたか?
読書したり怪我人をいいことにビスケやラディに抱きついたりしてました。
はっはっは、笑いたければ笑うがいいさ。
あの二人が可愛すぎるのが悪い。
恨むなら自分を恨むのだなぁ!(おい
と、心の中でセルフツッコミをしながら、私は院内の出口に向かって廊下を歩く。
着替えとかの荷物はずっと前から私が完治している事知っていた両親に先に持って出てもらっている。
忘れ物は無いはz「おぉ、お嬢ちゃん。ちょっと相談があるんじゃがー……いいかの?」
……。
「うわーこの人セクハラですぅー(棒)」
「そんな棒読みで人聞きの悪い事言うんじゃないわ!」
ゴスッ
「いだい、なぐら゛れだ……」
「はぁ……お前さん、わしの事嫌いじゃろ?」
「なにを当たり前な事を。試合したくないオーラ出してたのに試合させられて……なにが『お嬢さんと出来ないんなら試合せんもん、わし』って。駄々っ子ですかっ! それに最後はっちゃけて私に必殺技っぽいの放ってくるし……私じゃなかったら死んでましたっての」
「ちょっと気になってなぁ……いや、百式観音使ったのはスマンかった。それでなんじゃがお詫びとしてハンターライセンスを……」
「しつこい!」
「むぅ……」
と、こんな風に病院の廊下の真ん中で馬鹿やっている相手って言うのが、ご存知ネテロ会長である。
この人、私が病室にいる間ずっと訪ねてきて『ハンターになれ』とか『あの時やってた
剛についてはお父さんが教えてくれなかったから私に頼み込みに来たらしい。
教えてあげてもいいんじゃないかな、お父さん。多分教えるまでずっと言ってくるよ?
あ、でもわかった。
教えたら自分が負けるから嫌なのか。
……子供か親父ぃ~。
それにこの会長、とことん私達の事が気に入ったようでお母さんにもハンターライセンスを渡そうとしていた。
ただお母さんの場合、ハンターのルールに『配偶者である人物、血縁者の使用は認める』というルールを作ってくれってお願いしてた。
母さん、お父さんの流用する気満々だな。
話聞いただけでも公共料金の免除とか指定のお店での商品半額とかいろいろあったし。
で、今ネテロ会長は納得がいかないと言う様子で顔をしかめて私と一緒に並んで歩いている。
はぁ……
「だからハンター試験ちゃんと受けてから貰いますって。前言ったようにも私が試験受けずに貰ったら恨んだりする人出たりしますし」
「……わかった。もう言うまい……気長に待つことにしようかの。ちなみにいつ試験受けるつもりなんじゃ?」
「うーん……ビスケ達が受ける時私も受ける事にしますね」
「そうか、わかった。わしはあの二人を鍛える為戻るとする。基礎が出来ておるし、変な癖はついていなかったようじゃから、技術だけ教えてやればいいじゃろうな。念についても知って居るようじゃし。まったくあれ等を鍛えたのは一体何処の化け物じゃ……」
会長は苦笑しつつ、私と一緒に病院の玄関を出る。
「両親ですよ。……それじゃ」
「おぉ、またな」
そしてネテロ会長は短く挨拶をしてこの場から去っていく。
私はそんな満足感に溢れた様子の会長を見てから、久しぶりに浴びる日の光の中で、両親二人の所へと歩いていった。
※ちょこっと修正。
回想部分:彼らの試合~→彼らの『ウチのお母さんしかギャラリーの居ない』試合は~